概要・あらすじ
手芸専門店でバイトをしている女子大生・辻本雛子の趣味は人形作り。ある日客として訪れた凄腕のフィギュア・モデラーの久具津巧と知り合った彼女は、偶然彼が生き人形を作れることを知り、無理やり弟子入りしてしまう。久具津の妹も、雛子と同じ大学に入り、雛子の周辺は次第に賑わしくなっていく。同人フィギュア即売会にも参加するうち、雛子もフィギュアを作って売るようになり、この世界の厳しさと楽しさを実感するのだった。
その後、呪術的な要素を持つ生き人形製作技術を入手しようとする男が登場し、シリアスな戦いが繰り広げられていく。
登場人物・キャラクター
辻本 雛子 (つじもと ひなこ)
『DOLL MASTER』の主人公のひとり。S大人文学部に通う女子大生(S大のモデルは静岡大学で、作者の母校。現在は人文学部ではなく、人文社会科学部となっている)。美人だが、おとなしい性格で恋愛に関しても奥手。ただ、後に引けないと思うととことん頑張る強さは持っている。作品初登場時は19歳。手芸専門店でバイトをしている時、客として訪れた久具津巧と知り合い、彼の作った「生きている人形」を偶然見て感動し、強引に弟子入りする。 巧や高梨務のフィギュア製作販売活動を手伝うようになり、修業のため自分も同人フィギュア即売会Wフェスでフィギュアを作って売るようになる。このような活動を通して、次第に腕を上げていった。 当初、巧に恋愛感情を抱いてはいなかったが、フィギュアの教えを受けたり、周囲に煽られるなどしているうち、自分の感情に気がつく。巧の持つ生き人形製作の秘伝を得ようとする御文象に、精神的揺さぶりをかけられたり暴力行為を受けかけるが、巧の生きている人形の助けもあってなんとか撃退している。 生きている人形製作の才能はあるらしい。
久具津 巧 (くぐつ たくみ)
『DOLL MASTER』の主人公のひとり。凄腕のフィギュア・モデラーの青年で、久具津家に伝わる一子相伝の「生きている人形製作の術」(久具津の術)の継承者。彼にこの術を教えた祖父はまだ存命で、雛人形などを作っている。長い髪を後頭部でまとめて垂らし、長身。眼鏡をかけているが、前髪で右目が隠れていることが多い。 ヘビースモーカー。S大の卒業生だが、職につかず、駅前商店街の模型屋で店員のバイトをしている。生きている人形を辻本雛子に見られてしまい、彼女の情熱に負けて弟子にする。先輩の高梨務と、同人フィギュア即売会Wフェスで、作ったフィギュアを売っている。高校生の時に作ったマイティ・ミミーのフィギュアが人気を呼び話題となり、「伝説の原型師」と称されている。 御文象の騒動が終わったあと、プロの原型師となることを決める。オリジナル作品を作らなかったり、女性にさして興味を示さないなど、様々な謎があったが、全ては彼が初めて作った生きている人形が原因であった。雛子からは師匠、妹の久具津摩耶からはお兄、生きている人形たちからはマスターと呼ばれる。 プロローグでのみ「人は彼をドール・マスターと呼ぶ」というナレーションが入るが、このナレーションは『ブラック・ジャック』のパロディで、本編ではドール・マスターという名称は使用されない。
久具津 摩耶 (くぐつ まや)
久具津巧の6歳年下の妹で、登場時は高校3年生。後にS大人文学部に入学。彼女もフィギュア・モデラーだが、作る作品は18禁の女体エロフィギュアである(屋号は「豊満堂」)。ショートカットで、それなりの肢体を持つ美少女である。自分勝手な性格をしており、未成年の頃からやたらと飲酒し、その上酒癖が悪いという困った人物。 金にも貪欲で、大学に入った途端に男子学生に自作の未認可アニメキャラのエロフィギュアを売りつけるほど。こうなったわけはブラザー・コンプレックスで、兄の造形技術に憧れ、兄に認めてもらうべくフィギュア製作を始めたが、認めてもらえず屈折したことと、祖父・久具津源次郎からも「生きている人形製作の術」(久具津の術)の継承者たりえずと宣告されてしまったことによる。 このような経緯があるため、兄の弟子になった辻本雛子を敵対視している。作品後半で、御文象が巧の持つ生きている人形製作の秘伝を得ようとした際、彼に協力した。騒動が終わったあとも御文を恋愛対象とし、彼が同棲している若菜という女性と対立している。 この事件を通してブラザーコンプレックスは緩和された。
高梨 務 (たかなし つとむ)
久具津巧の先輩で、会社員。ガッチリとした体型で、温厚な性格。アマチュア・フィギュア・モデラーでもある。辻本雛子が巧に弟子入りするまでは、巧と高梨の二人でWフェスにディーラー参加していた。摩耶の引っ越しの手伝いに来た時に、同じく手伝いに来た彼らの従姉妹の久具津樂に一目惚れし、交際を申し込む。 悪い虫がつかないように祖父が樂の警護につけた生きている人形たちからの攻撃に耐え、幸せをつかんだ。
葵川 光彦 (あおいかわ みつひこ)
S大の男子学生で、辻本雛子の同期。二枚目でやたらと学内の女性を引っ掛けては泣かせているという噂の青年。しかし、実はかなり強度のフィギュアオタクで、久具津巧が凄腕のフィギュア・モデラーということも知っていた。Wフェスにもよく買い物客として通っている。雛子と付きあおうとしたが、すでに巧と師弟関係にあることを知って諦め、以後二人のフィギュアのファンとして作品を買い続ける。 S大模型研究会の主宰者でもあり、毎年女性会員を増やそうとするが、摩耶が入部して以降はまったく増えない状況。基本的にはコメディ・リリーフ。
久具津 樂 (くぐつ まどか)
久具津巧と摩耶の従姉妹(父の長兄の娘)。背が高く、眼鏡をかけ、長髪をポニーテールにしている。穏やかな美人。祖父の久具津源次郎や父母と一緒に住んでいる。一人っ子で、職業は家事手伝い。悪い虫がつかないように、祖父が生きている人形を警護につけており、そのため男女関係にまったく縁がなかった。 高梨務に一目惚れされ、高梨を久具津巧がバックアップしたため、高梨と幸せをつかむこととなる。弱点は車の運転がヘタで荒っぽいことであり、大きな事故にならないよう祖父のつけた生きている人形が常に体を張っている。
霜戸 (しもべ)
S大の男子学生で、久具津摩耶と一緒に人文学部に入学した。摩耶と学科も同じ(どの学科かは不明)。気が弱く、摩耶に声をかけられ、いきなりエロフィギュア「大開帳まりなちゃん」を31500円で売りつけられる。これは霜戸の2ヶ月分の食費にあたった。以後、名前のとおり、摩耶の下僕としてWフェスの売り子としてこき使われたり、コンパで酔って倒れた摩耶の世話を焼くなどした。 一度だけ「○○ヅラ」が語尾につく方言を口にしたことがあるが、どこの出身かは不明。
久具津 源次郎 (くぐつ げんじろう)
久具津巧・摩耶・樂の祖父。日本人形を製作する人形師で、練り頭の雛人形を作ることのできる日本有数の頭師である。彼の父も人形師で、本来は彼の兄が継承者となるはずであったが、戦争で利き腕を痛めたため断念。源次郎が跡を継ぐ事となった。それまで、人形作りは手伝い程度で、指先があまり器用でないせいで苦労した。 が、父の留守時に、父の作った「生きている人形」の修理を引き受けてしまい、以後「生きている人形」と縁が生じる。「お前は人形たちに好かれるようだ」と父から言われ、修業の後に「生きている人形製作の術」(久具津の術または「傀儡の口伝」)を教わる。源次郎の二人の息子には人形制作の才能がなかったため、自分限りで久具津の術は封印してしまうつもりだったが、巧の造形の腕を見て、一子相伝の秘術を伝える。 鍾馗・菅原道真・源義経・弁慶などの生きている人形を使役する。特に鍾馗・源義経を、可愛い孫娘の樂に悪い虫がつかないように付けていた。 生きている人形たちからは、お屋形様と呼ばれている。政治家などから、政敵を呪う器具として生きている人形の製作を頼まれることがあるが、そのつど追い返しては塩を撒いている。
御文 象 (みふみ しょう)
S大の大学院生で長身の男性。非常に目付きが鋭い。久具津巧と同期ではあるが、学科は違った。大学の卒論は、「人形にまつわる習俗」。呪術の知識があり、紙を用いた符術を操ることができる。久具津源次郎から「生きている人形製作の術」を教わろうとしたが、人形製作が伴わなければ教えられないと拒絶された過去がある。 久具津の術または「傀儡の口伝」によって、自らの呪術を極めようという野望があり、術を伝えられた巧を羨望し、辻本雛子や摩耶を利用して、巧の持つ生き人形の秘密を得ようとするが、結局失敗する。若菜という名の、長い髪の女性と同棲しているが、利用しようとした摩耶から恋愛感情を向けられて閉口している。 摩耶は、親しくなってからは、彼を御文っちと呼んでいた。
リリカル・リーナ
『DOLL MASTER』に登場する人形。久具津巧が作った架空のアニメキャラの生きている人形。プロローグと第1話に登場する。巧がディーラー参加した際の、Wフェスの展示品であったが、客にどうしても欲しいと言われ、20万円で売ってしまう。「(瞳に)ハイライトは入れるなよ」と忠告したが、購入者は彩色してしまい、実体化する。 これにより、アニメと同じ技を使って購入者を倒し、巧のアパートに戻ってしまった。
鍾馗 (しょうき)
『DOLL MASTER』に登場する人形。久具津源次郎もしくはその先代が作った、鍾馗の生きている人形(五月人形)。源次郎が孫娘の樂の護衛に付けた。普段は中折れ帽にトレンチコートを着て、普通の人間を装っているので、髭面のごついオヤジにしか見えない。樂に近づく男を暴力的に排除したり、樂の無茶苦茶な運転をサポートしたりする。 摩耶の入試に付けようとしたところ、「科挙に失敗して自殺した男の人形は縁起が悪い」と怒られ、菅原道真の生きている人形に替えられてしまう。
ハヤテ丸 (はやてまる)
『DOLL MASTER』に登場する人形。久具津巧が作った架空のゲームキャラの生きている人形。犬の顔をした、体格の良い忍者の姿をしている。辻本雛子のボディガード用に、巧が目にハイライトを入れて実体化させた。性格が良くて素直。雛子は「昔飼ってたポチにそっくり」といって喜んだ。何度も雛子や他のキャラクターたちの窮地を救う。
巧の人形 (たくみのにんぎょう)
『DOLL MASTER』に登場する人形。久具津巧が源次郎に久具津の術を伝授されてから、初めて作ったオリジナルの女性の生きている人形。名前はない。金髪で、足元まである非常に長い髪型。「ローレライの魔女」のようなイメージ。術が未熟なまま作ってしまったため、実体化した際に巧の命を削り、巧の精神を支配しようとした。 そのときは源次郎に救われ、封印している。出来が良かったことと精神支配の余韻のせいか、巧は廃棄することができず、「反省材料」として厳重に隠されていた。この作品のせいで、巧はオリジナルのフイギュアを作ることができなくなり、女性との付き合いにも及び腰であったが、プロデビューを契機に遺棄を決心する。 しかし、辻本雛子が何気なく封印を解いてしまったせいで、人形は巧との心中をはかり、雛子の命も危険にさらされる。
その他キーワード
ドリーマー・レイ
『DOLL MASTER』に登場する架空のテレビアニメ作品。人間の夢を悪夢に変えようとする存在と戦う魔法少女の物語。ドリーマー・レイとドリーマー・ルイ、レイの従姉妹で小学生の天才少女であるドリーマー・メイの3人が主要メンバー。また、支援マスコットとして羽の生えた獏のようなパクパクというキャラクターがいる。 辻本雛子が弟子入りを希望した際、久具津巧はこのドリーマー・レイのフィギュアの完成品を入門試験の題材にした(同時に自分も作っていた)。その後も、巧がドリーマー・ルイを作り、雛子がパクパクとドリーマー・メイを作ってWフェスで売った。