HEN

HEN

自分は異性愛者だと思って生きて来た美少女の吉田ちずるが初めて恋した相手は、同性の山田あずみだった。ちずるが自らの「変」な感情に戸惑い、時に暴走しながらも、少しずつあずみと距離を縮めていく姿を描く青春ガールズラブストーリー。「週刊ヤングジャンプ」1995年1号から1997年12号にかけて連載された作品。

正式名称
HEN
ふりがな
へん
作者
ジャンル
百合
 
青春
関連商品
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あらすじ

第1巻

桃百合高校の新任教師の唐沢寿明は、赴任して2日目の朝、1年生の吉田ちずるが学校に報告せずに、芸能活動しているのではないかと怪しむ。それはちずるにそっくりな女性が、CMに出演していたからであった。早速、寿明はちずるに直接訪ねようとするが、いざ対峙すると、ちずるの圧倒的な美しさに気圧(けお)されてしまう。そこで寿明は、ちずるとCMの女性は瞳の色が違う事から、ちずるがカラーコンタクトをして別人のふりをしているのではと考え、鎌をかける。するとこれがまんまと成功し、ちずるとCMの女性はやはり同一人物である事を確信する。しかしちずるは、寿明にはめられた事に怒ってしまうのだった。そして放課後、寿明はちずるを騙したお詫びとして、一晩家に泊める事にする。そこで寿明は、ちずるが家に戻らずに男性の家を渡り歩きながら、自分で生活費を稼いで暮らしている事を知る。そんなちずるに惹かれてしまった寿明だったが、その夜のアプローチは失敗に終わってしまう。翌日ちずるは寿明の家を去り、いつも泊めてもらっているヒロユキのもとへと帰る。ヒロユキが浮気したため別れを決意したちずるだったが、ヒロユキのマンションで別れ話をしている最中、通りがかった少女、山田あずみの事が気になってしまう。

第2巻

吉田ちずるは、同級生の山田あずみへの思いを自覚するが、せっかく告白したにもかかわらず冗談だと撤回してしまったうえ、同性愛などありえないと噓をついてしまう。これを信じたあずみは、ちずると友人として付き合っていく事になるが、その割には距離が近すぎるちずるの事を不思議に思っていた。一方その頃、ちずるはヒロユキとの関係も続けていた。しかし、ちずるの様子が以前と違う事に気づいたヒロユキは、ちずるが以前マンションで出会った少女、つまりあずみに恋をしているのではないかと疑う。これをヒロユキに尋ねられたちずるはそれを認めるが、あきらめきれないヒロユキは、あずみを自分のものにしてしまえば、ちずるも目が覚めるのではと考える。しかしいざあずみを自分の家に招いても、天然気味のあずみはまったくヒロユキの思惑に気づかず、二人はいっしょに楽器演奏しただけで終わってしまう。それから少し経ったある日、あずみは映画研究部に入部すべく部室へ向かい、そこで同じ1年生の小林龍一と出会う。意気投合した二人はいっしょに映画を撮りたいと盛り上がるが、龍一はその主役にちずるを起用したいと言い出す。

第3巻

吉田ちずるは、自分と山田あずみを主役にしたラブストーリーを撮るという条件で、映画研究部の作品に参加する事にした。しかし、あずみと小林龍一の仲睦まじい様子を見たちずるは、あずみが龍一に思いを寄せているのではないかと、考えるようになってしまう。嫉妬したちずるは映画の脚本にも口を出し、龍一の意向を無視して自分好みの内容に作り変えようとする。だが、その強引な姿勢に疑問を抱いたあずみは反論。もしちずるが龍一をクビにしたいのであれば、ちずるに意見した自分もクビにするべきだと言い放つ。結局、龍一だけが抜ける形で撮影は続行するが、あずみは一人で作品作りを始めた龍一の事が気になっていた。そんなあずみの優しさに触れた龍一は、あずみに映画研究部の作品と自分の作品を掛け持ちしてもらえないだろうかと考える。しかしこれは間違って伝わり、ちずるとあずみは、龍一がちずるを撮りたいのだと勘違いしてしまうのだった。一方ちずるは、あずみと龍一がいい雰囲気な事を察し、どうすれば二人を引き離せるか悩んでいた。そこでちずるは、自分が龍一に襲われたと噓をつけば、二人の関係は壊れるだろうと思いつく。しかし、そんな事をしてはあずみが悲しむと思い、実行する事はなかった。

第4巻

山田あずみは、映画の打ち合わせのために小林龍一の部屋を訪れた際、龍一の部屋に自分の写真が飾ってあった事に喜ぶ。これを知られてしまった龍一は、自分が本当は吉田ちずるではなく、あずみを主役に映画を撮りたいと思っていた事を告白する。しかしあずみは、そんな変更をしては、せっかくやる気になってくれたちずるに申し訳ないので、できないと断る。こうしてあずみと龍一はけんかになってしまうが、これを隠れて聞いていたちずるは感激する。そして、もしかすると脈があるのではと思うようになり、ちずるはあずみの気持ちを確かめようとするが、逃げられてしまう。その直後ちずるは、龍一から正式に主役を降りてほしいと頼まれる。ちずるはそれに応じるが、その際龍一がやはりあずみに恋をしている事を知り、焦るのだった。そして映画研究部の撮影中、ちずるはあずみに告白。同時に、自分が同性愛者である事を周囲に報告する。しかし、あずみがこの告白を受け入れなかった事で、翌日からちずるは学校に来なくなってしまう。自暴自棄になったちずるは、自らも同性愛者と名乗る杉田いずみの誘いに乗るが、これは罠だった。いずみはヒロユキの熱狂的ファンであり、以前からちずるが気に入らず、一度ひどい目に遭わせてやろうと考えていたのである。しかし、ちずるがそれを察し、さらに心配したあずみが迎えに来た事で、ちずるは事なきを得るのだった。

第5巻

吉田ちずるは、自分が同性愛者であると宣言した事で学校に行きづらくなっていたが、山田あずみとあずみの母親の説得で登校する事になる。すると、周囲の反応は意外にも温かく、ちずるは安堵する。同時に山田家の面々に家庭の事情を明かしたちずるは、当面のあいだ山田家に居候する事になり、ある日あずみが部屋に置いていた映画の台本を読んでしまう。これは現在あずみと小林龍一が二人で制作しているもので、ちずるは主役のあずみと龍一のキスシーンがある事を知る。ショックを受けたちずるはキスシーンを撮らないでほしいと頼むが、ちずるの思いには応えられないあずみは、一度だけ何でも言う事を聞くので、これからは友人として付き合ってくれないかと提案する。ちずるはこの提案を受け入れ、一度だけあずみとセックスする約束をする。こうしてあずみと龍一の撮影は予定通り行われるが、話し合った結果、二人はキスシーンを撮らず、台本から削除するのだった。こうして映画制作は終盤に差し掛かっていたが、そんなある日、龍一の転校が決まってしまう。さらに転校の日は、あずみがちずるとデートの約束をした日であった。あずみは悩んだ末、ちずるとの待ち合わせ場所に伝言の張り紙を残して先に龍一のもとへ向かうが、張り紙は風に飛ばされてしまう。これにより、ちずるに事実が伝わる事はなかった。

第6巻

以前、吉田ちずるが関係を持っていた男性が、エイズで亡くなった。ちずるは自分も感染の恐れがあると感じ、実際に体調を崩した事で死の恐怖に怯える。そこでちずるは、せめて最近落ち込んでいる山田あずみにできる限りの事をしてから死にたいと考え、有名な脚本家をあずみに紹介したり、アメリカに転校した小林龍一を呼び寄せていた。そんなある日、とうとう倒れてしまったちずるはヒロユキに介抱される。そこでヒロユキはちずるに、エイズの検査結果が陰性であった事を告げ、自分と関係したちずるもおそらく陰性だろうと安心させる。しかしその直後、あずみの代わりに脚本家に挨拶に行ったちずるは地すべりに巻き込まれ、鈴木一郎と二人で救助を待つ事になる。その際に一郎の弱みを握ったちずるは、しばらく鈴木家に泊めてもらう約束を取り付けるのだった。こうして二人は心配していたお互いの友人達に迎えられるが、ここで一郎が、男性の佐藤ゆうきに思いを寄せる同性愛者だった事が発覚する。さらにちずるとあずみの関係を知った一郎の友人のは、ちずると一郎に同性愛をあきらめさせるため、あずみとゆうきが交際すればいいのではと思いつく。

第7巻

山田あずみは、吉田ちずるに対して、以前とは違う感情を抱くようになっていた。しかしちずるは、先日の事故がきっかけで時の人となり、将来あずみと暮らす家を建てるために芸能活動も再開。その結果多忙を極め、なかなかあずみとは会えなくなってしまう。一方佐藤ゆうきは、に提案された作戦を実行すべくあずみに連絡を取るが、肝心の鈴木一郎は、ゆうきの事を必死であきらめようとしていた。そのために芸能活動まで始めた一郎だったが、ゆうきにそっくりな女性の高橋がマネージャーとなった事で、彼女に恋する事でゆうきを忘れようとする。そこである日、一郎は高橋を家に招くが、そこに偶然ゆうきが通りがかり、ゆうきは高橋と勘違いされてしまう。高橋の存在を知るゆうきは、一郎をからかおうと高橋のふりをしていっしょに家に入るが、一郎がゆうきの事を亡くなった恋人だと偽り、高橋と恋人になりたいと言い出した事で激怒。正体を明かした高橋は一郎を叱るのだった。この直後、ちずると一郎が出演するドラマ「希望の街」の撮影が始まるが、撮影中、一郎は俳優の永岡健二とけんかになってしまう。

第8巻

吉田ちずるが学校に来られなくなってしばらく経ったある日、山田あずみは転校生の武田奈々と出会う。どこかちずるに似ている奈々に親しみを感じたあずみは、彼女とすぐになかよくなる。二人で出かけたある日、奈々は同性愛者ではないが、ちずるの熱狂的なファンで、ちずるとならば恋愛できると思っている事を聞かされる。この直後、ちずるはあずみと会えない日々に耐えかね、自宅まで遊びに行くが、そこであずみが奈々といっしょに歩いている光景を目撃してしまう。二人を見失ったちずるは、その代わりに泣いている鈴木一郎を発見。その夜、一郎の自宅でセックスした二人は、恋愛感情は一切ないながらも、自分達の身体の相性が非常にいい事を知るのだった。これによって一郎は、佐藤ゆうきでも高橋でもなく、ちずると交際すれば幸せになれるのではと考えるが、そこでゆうきと偶然会い、実は自分は女性であると噓をつかれる。混乱した一郎は、やはり自分はゆうきだけが好きだと自覚するが、その直後、ちずるの妊娠が発覚。そして記者会見が開かれ、あずみはテレビでこの事実を知る事となる。

メディアミックス

テレビドラマ

1996年5月から6月にかけて、本作『HEN』のTVドラマ版『HEN Vol.2 ちずるちゃんとあずみちゃん』が日本テレビ系列にて放送された。監督は森田光則と根本実樹、脚本は青柳祐美子が担当した。吉田ちずる役を城麻美、山田あずみ役を木内美穂が演じている。

オリジナルビデオアニメ

1997年3月、本作『HEN』のオリジナルビデオアニメ版が制作された。監督は鈴木大司、脚本は関島眞頼、キャラクターデザインは梅津泰臣が担当した。吉田ちずる役を木地谷厚子、山田あずみ役を桜井亜弓が演じている。

登場人物・キャラクター

吉田 ちずる (よしだ ちずる)

桃百合高校1年8組に在籍する女子。前髪を目の上で切り揃え、太ももまで伸ばしたオレンジ色のストレートロングヘアにしている。背が高く、胸が非常に大きい。祖父がアメリカ人のため、日本とアメリカのクォーターである。瞳の色は青だが、ふだんはカラーコンタクトをつけて茶色に偽っている。気が強く、何事にも動じない性格をしている。しかし、山田あずみがらみの事になると、別人のように慌てふためいたり素直になれなかったりと、失敗を繰り返してしまう。成績優秀でスポーツ万能、スタイル抜群という完璧な美少女で、非常に男性にもてるが、特定の男性を好きになった事はなく、退屈な日常を送っていた。自分が女性を愛する事などありえないと考えていたが、ヒロユキの住むマンションで偶然出会ったあずみを好きになってしまい、初めての恋愛に戸惑う事となる。容姿を活かしてモデル活動をしているがあまりやる気はなく、アルバイト感覚でこなしている。しかし高校1年生の冬、地すべりによる崩落事故に巻き込まれた事でメディアの注目を浴び、芸能活動を再開する。あずみと暮らす家を建てるためにモデルだけでなく、女優や歌手活動も始める。寝る時は全裸になる。

山田 あずみ (やまだ あずみ)

桃百合高校1年8組に在籍する女子。前髪を目の上で切り、胸の高さまで伸ばした黒のストレートロングヘアにしている。小柄な体型で、身長は150センチにも満たない。そのため実年齢より若く見られる事が多く、小学生あるいは小動物のようだと評される事が多い。素直な性格なうえに、純粋で心優しい。九州出身で、基本的に標準語を話すが、時折博多弁が出てしまう事がある。高校1年生の8月に九州から東京都に引っ越す事になり、新居のマンションのエレベーターで、キスをしている吉田ちずるとヒロユキに出会う。その際は二人を別世界の人々だと認識していたが、やがてちずるに思いを寄せられ、熱烈なアプローチを受けるようになる。自身の事は異性愛者だと捉えており、高校1年生の夏頃は、性格も趣味も合う小林龍一の事が好きで、龍一がアメリカに転校する事になったのを機に両思いとなる。そのため、ちずるの思いには応えられないと思っていたが、ちずるといっしょに過ごしたり、女性にも魅力を感じる周囲の人々の話を聞いたりするうちに、考えを改めてちずるにも惹かれていく。家は父親と母親との三人暮らし。映画が好きで、将来の夢は脚本家になる事。

唐沢 寿明 (からさわ すしあき)

桃百合高校に勤める若い教師の男性。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした短髪にしている。名前が俳優の唐沢寿明と同じ漢字だが読み方が違い、「すし」という響きにコンプレックスを感じている。また吉田ちずるからは、「スシ君」と呼ばれている。非常にお人好しな性格で、やや頼りないところがある。ある夏の日、桃百合高校に赴任して2日目でちずると出会う。そこでちずるが、最近CMに出ているモデルと同一人物ではないかと考え、ちずるを意識するようになる。その結果、やはりちずるとCMの女性が同一人物であると突き止めるが、半ば騙すような形だったためにちずるに怒られ、そのお詫びに一晩自宅に泊める事になる。そしてすっかりちずるの事を好きになってしまうが、玉砕した。その後、別の女性と結婚した。

ヒロユキ

ロックバンド「BLOODY BLUE」のボーカルを務める若い男性。吉田ちずるの友人。前髪を肩につくほどまで伸ばし、真ん中分けのセミロングヘアにしている。顔の彫りが深く、まつげが長い。プライドの高い自信家だが、なんだかんだで親切な性格で、悪い事をしようとしても、悪人になり切れないところがある。ある日、偶然出会ったちずるに思いを寄せ、住むところのないちずるを頻繁に家に泊めているが、身体の関係のみに留めている。そのため、どうにかしてちずるの関心を自分に向けようとするが、別れを告げられてしまう。しかし、別れ話をしていたところに偶然通りがかった山田あずみと出会い、その日以来ちずるの様子が明らかに変わった事に驚く。これによってちずるがあずみに恋をしている事を悟り、あずみを自分のものにする事であきらめさせようとするが失敗。その後、引っ越してちずると距離を置くが、ある日ちずるがエイズに感染している疑惑が出たうえに体調を崩して倒れた際は、親の経営する病院で介抱して、検査を勧めた。親が医者をしているため、高級マンションに住み、高級車に乗っている。

小林 龍一 (こばやし りゅういち)

桃百合高校に通う1年生の男子。前髪を目の上で切った短髪にしている。まじめで心優しい性格で、やや気弱なところがある。小学生の頃から映画に興味を持ち、8ミリフィルムで撮影していた。将来は演出家になりたいと考えており、高校1年生の夏に転入した桃百合高校の映画研究部に入部しようとしたところ、同じく入部希望者の山田あずみと知り合った。そして映画が好きである事や、出身が同じ九州である事から意気投合し、あずみに思いを寄せるようになる。しかしこれによって、あずみに熱烈な思いを寄せる吉田ちずると三角関係になってしまう。その後、あずみと映画を仕上げたのち家族の都合でアメリカに引っ越す事になるが、その時に両思いである事が発覚。将来的にあずみを迎えに来る約束をして別れた。

杉田 いずみ (すぎた いずみ)

吉田ちずるが電車で出会った少女。前髪を目の上で切り、胸の高さまで伸ばしたロングウェーブヘアで、眼鏡をかけている。顔立ちや体型が山田あずみに似ており、顔立ちは鈴木早映菜とも似ている。ヒロユキの熱狂的なファンで、以前からヒロユキと関係を持っている吉田ちずるの事を、殺したいほど憎んでいた。そこである夏の日、電車でちずると出会った事で復讐を決意。自分は同性愛者であると偽って自宅に招き、ちずるを誘惑して裸の写真をインターネット上でばらまこうとした。しかし、部屋の様子や会話の内容から、ヒロユキのファンである事をちずるに見抜かれ、計画は失敗。そこですでに飲ませていた睡眠薬でちずるを眠らせ、弟に襲わせようとするが、直前にちずると電話していたあずみが心配して杉田家を訪れた事で、これも失敗した。

吉田 千春 (よしだ ちはる)

吉田ちずるの妹。前髪を顎の高さまで伸ばして真ん中で分けて額を見せ、顎の高さまで伸ばしたボブヘアにしている。顔立ちはちずるに似ているが、ちずるよりも中性的な雰囲気を持つ美形。ある日、ちずるとの待ち合わせ場所へ向かう途中に山田あずみを見かけ、自分はちずるの弟の「吉田春男」であると噓をついて声を掛ける。そこで吉田家の人間はみんな噓つきであるとして、ちずるの複雑な家庭環境について話をし、一体どこまでが本当の事なのかとあずみを困惑させた。

田畑 ケン (たばた けん)

小学校6年生の男子。前髪を目の上で切った刈り上げた短髪で、頭頂部の一部の髪の毛が寝癖のように逆立っている。三白眼で、耳が大きい。『ルパン三世』に登場する峰不二子の事が大好きで、彼女のような女性と交際したいと思っているが、あれほどスタイルのいい女性など実在するはずがないと、周囲にはからかわれていた。そんなある日、道でスタイル抜群の吉田ちずるを見かけ、しかも彼女が泊まるところに困っている事を知る。そこでちずるに声を掛け、家に泊める代わりに一晩だけ恋人になってほしいと頼み込む。その後、ちずるとどうにかセックスしようとするが断られる。しかし、哀れに思ったちずるのお情けで、いっしょにお風呂に入ったり、眠る事には成功した。実は同級生の女子から思いを寄せられているが、田畑ケン本人にはその自覚がまったくない。

鈴木 一郎 (すずき いちろう)

高校生の男子。佐藤ゆうきと奥の友人。鈴木早映菜の兄でもある。肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアをまとめたリーゼントにしている。硬派で、ぶっきらぼうな言動が目立つが、心優しい性格をしている。ゆうきに思いを寄せており、熱心なアプローチを繰り返しているが、男性であるからという理由であまり相手にされていない。また、美しく女性的な魅力あふれる早映菜に対しても、実の兄でありながら複雑な感情を抱いており、間違いを犯さないためにも距離を置かなくてはならないと考えている。そこである冬の日、早映菜と別居するためにマンションの下見に行ったところ、地すべりによる崩落事故に巻き込まれ、吉田ちずるとがれきの隙間に埋められた状態となる。その途中、耐えかねてお漏らしをしてしまった事からちずるに弱みを握られ、住むところのないちずるを一時的に鈴木家に住まわせる事になる。その後、ゆうきへの思いを断ち切るために、ゆうきに似た女性を探そうと芸能活動を始めたり、そこで出会った高橋と交際しようとしたり、ちずると関係を持ってみたりと、さまざまな行動に出ては苦悩する。ちずるとは、いつも喧嘩ばかりだが、同性愛者同士な事もあり共感し合っている。

佐藤 ゆうき (さとう ゆうき)

高校生の男子。鈴木一郎と奥の友人。前髪を目の上で切り、後の髪を肩につくほどまで伸ばした、ボブヘアに近い短髪にしている。顔立ちと体型が非常に高橋に似ている。明るく穏やかな性格だが、一郎からの熱心なアプローチに戸惑っている。そのため、一郎の事は友人として好きだが、仮に一郎と交際して、一生同性愛者として生きていくのは困難だと考えている。ある冬、一郎が地すべりによる崩落事故に巻き込まれ、心配して奥と共に現場に向かう。そこで吉田ちずると山田あずみと出会った事で、奥から、もし異性愛者であるあずみとゆうきが交際すれば、同性愛者のちずると一郎はあきらめざるを得ず、すべて丸く収まると提案される。しかしその計画はうまくいかず、一郎が自分にそっくりな高橋と恋愛しようとすれば腹を立ててしまう。さらに友人だと思っていた奥からも思いを寄せられるという、男性同士の複雑な恋愛模様に悩む事となる。

(おく)

高校生の男子。鈴木一郎と佐藤ゆうきの友人。前髪を目の上で切った短髪にしている。顔は眉が太く三白眼で、頰がこけている。非常に小柄な体型で、女性の中でも小柄である山田あずみよりさらに背が低い。目立たない容姿も手伝い、自分に自信のない性格をしている。一郎とゆうきの関係を友人として見守っていたが、ある冬、一郎が地すべりによる崩落事故に巻き込まれた際に、吉田ちずるやあずみと出会う。そして、異性愛者であるあずみとゆうきが交際すれば、同性愛者のちずると一郎はあきらめざるを得ないだろうと考え、ゆうきにあずみと協力するよう提案。だが、ゆうきは実は女性なのではないかと疑念を抱くようになり、その誤解が解けたあとも、奥自身がゆうきに惹かれるようになってしまう。

鈴木 早映菜 (すずき さえな)

鈴木一郎の妹。前髪を目の上で切って真ん中で分け、腰まで伸ばして切りそろえたストレートロングヘアにしている。顔立ちが山田あずみ、杉田いずみとよく似ているが、体型はあずみと違って非常に胸が大きくスタイル抜群。一郎と二人で暮らしていたが、ある冬の日、一郎が別々に暮らしたいと言い出したうえ、下見に行ったマンションで地すべりによる崩落事故に巻き込まれる。そこで心配して現地に向かったところ、吉田ちずるを心配してやって来たあずみと知り合う。その後、無事生還した一郎と再会し、ちずるとも知り合い、住むところのないちずるを一時的に鈴木家に住まわせる。しかし、あずみと似ているという理由でちずるから非常に気に入られ、頻繁にからかわれる事となる。

高橋 (たかはし)

芸能事務所で働く若い女性。鈴木一郎のマネージャーを務めている。前髪を目の上で切り、後ろの髪を肩につくほどまで伸ばした、ボブヘアに近いショートカットヘアにしている。顔立ちと体型が非常に佐藤ゆうきと似ている。明るく穏やかな性格で、一郎の姉的な存在として彼の面倒を見ている。一時はゆうきに似ているという理由で、一郎から思いを寄せられそうになるが、特に何もないまま終わった。山口県出身。

永岡 健二 (ながおか けんじ)

人気俳優の若い男性。前髪を目の上で切って真ん中で分けた短髪にしている。抱かれたい男性No.1と名高いイケメンで、非常に背が高い。極度のナルシストで、頻繁に鏡を見ては自分の容姿に見惚れている。ある冬、ドラマ「希望の街」に出演する事となり、共演の吉田ちずると鈴木一郎と出会う。意欲のかけらもない一郎に腹を立て喧嘩になるが、その光景を見ていたちずるに惹かれるようになる。そこでちずるにアプローチをするが、まったく相手にされずに終わった。

武田 奈々 (たけだ なな)

桃百合高校1年8組に在籍する女子。前髪を頭の左側は上げて額を見せ、右側は目の上で切った、胸の下まで伸ばしたストレートロングヘアにしている。顔立ちや雰囲気が吉田ちずるによく似ている。気が強い性格で、ちずるの熱狂的なファン。そのため、ふだんはクールな雰囲気を漂わせているが、ちずるの話題になると別人のようにはしゃいでしまう。高校1年生の冬、神奈川県横浜市から桃百合高校に転校し、となりの席となった山田あずみと親しくなる。そこであずみから、以前ちずるも桃百合高校に通っていた事を聞かされる。中学生の頃に女性から告白されるが、同性愛は考えられないという理由で断ったものの、ちずるのファンになった事で、同性でも恋愛できると考えるようになった。その後、あずみと共に訪れたちずるのライブで、理由はわからないが、ちずるがあずみを壇上に呼んでいる事で察する。そこであずみの背中を押し、二人を再会させた。

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