概要・あらすじ
人並み外れて丈夫な体の持ち主である中学生の飛嶋閃は、自身の頑丈さを誇示するため、高い崖の上から川に飛び込んだり、マムシを素手で捕まえるといった奇行を繰り返す、無軌道かつ無鉄砲な日々を送っていた。今は亡き父親の飛嶋堅と同じく、「自分らしく生きる」ことに強いこだわりを見せる閃の将来を危ぶんだ祖母の企みにより、夏休みを目前にしたある日、閃はいきなりやって来たトラックにさらわれ、山中にあるキックボクシングのジムに送られてしまう。
更正と称する雑用係を命じられて強い不満を覚えた閃は、さっそく脱走を試みる。しかし、ジムの門下生である澤橋考紀に発見され、そのまま殴り合いの喧嘩にまで発展。ただの素人に過ぎない閃は、考紀の繰り出すキックボクシングの技に圧倒されてしまうが、頑丈な体を活かして、遂に逆転勝利を収めるのだった。
その後、ジムの会長である桜和田源矢から在りし日の堅の話を聞かされ、キックボクシングに興味を抱いた閃は、前人未到の「打倒ムエタイ」を目指し、格闘家としての道を歩み始める。
登場人物・キャラクター
飛嶋 閃 (とびしま せん)
赤髪が特徴的な中学3年生の男子。父親である飛嶋堅譲りの頑丈な体が自慢で、崖から飛び降りて岩肌に体をぶつけたり、校舎の3階から飛び降りてもビクともしない。喧嘩でも相手が殴り疲れてしまうために、何もせずに勝利を収めてしまうほどの特異体質の持ち主。常日頃から無茶な行動を繰り返すうえ、学業では学年最下位の成績という問題児でもある。 あまりの無軌道ぶりに手に焼いた祖母により、更正のためと称して山奥にあるキックボクシングジムに、雑用係として預けられることになった。最初は猛反発していた飛嶋閃だったが、ジムの会長である桜和田源矢との出会いをきっかけに考えを改め、キックボクサーとしての道を歩み始める。技術的にはつたないが、頑丈な体と、プロのキックボクサーをもたじろがせる野生の気迫を武器に、着々とその実力を伸ばしていく。 人助けをして命を落とした堅を今でも尊敬しており、父親の生き様を胸に刻み、「自分らしく生きること」を実践している。そのため、堅の悪口を言われると激怒する。口癖は「ノーダメージ!」。
飛嶋 堅 (とびしま けん)
飛嶋閃の父親。頑丈な体の持ち主で、中学生の頃は初代番長を務め、「赤い鉄人」と呼ばれるほどの悪ガキだった。素行の悪さから閃と同様、桜和田源矢のジムに預けられ、源矢との試合を繰り返すうちに更正。源矢から、ともにキックボクシングで世界を目指すことを提案される。しかし、好き勝手にやってきた自分への反省から、誰かのために体を張りたいと言って、その提案を固辞した。 以後は建設会社の労働者として働き、一家の大黒柱として、家族の幸せのために生きていくことなる。男らしく頼りがいのある性格。仲間のミスをすべて引き受けたため上司との関係が悪化し、退職へと追い込まれた時も、恨みごとは一切言わなかった。とある夏の日に、氾濫した河川でおぼれた女性を救助するが、自身は37歳の若さで命を落とす。 不器用だがまっすぐな生き方は、閃に大きな影響を与えている。
桜和田 源矢 (さくらわだ げんや)
山奥にあるキックボクシングのジムの会長を務めている初老の男性。元キックボクサー。名うての悪ガキだった飛嶋堅を、キックボクシングで打ちのめして更正させた張本人。堅の才能と心の強さを認め、ともに世界を目指そうとしていた時期もあったが、本人から断られている。老いてはいるが体は若い。父親と同じく、更正のためにジムに預けられた飛嶋閃との試合で、強烈なローキックを見舞い、頑丈な閃を瞬時にノックアウトしていた。 格闘技を単なるビジネスと考えている息子・桜和田敦士との仲は険悪。
青藤 和真 (せいどう かずま)
桜和田敦士のもとでキックボクサーをしている男子中学生。幼少の頃から数々の大会で優れた実績を残してきた天才で、抜群の格闘センスと端正なルックスから、業界でも注目度No.1とされる期待のルーキー。柔軟な間接の持ち主で、同じモーションから上中下にキックを蹴り分けられる。打倒ムエタイを掲げて練習に打ち込み、タイでプロデビューを果たした後に日本へと凱旋してきた。 ビジネスとしての格闘技に傾倒する敦士の変わりように失望し、目標を失いかけていた。ところへ、素人ながら野生の殺気を持って勝負を挑んでくる飛嶋閃との試合を経て、かつての情熱を取り戻すことになった。幼なじみである桜和田鈴をとても気に入っており、「親公認の仲」を自称して、ことあるごとにちょっかいを出している。
桜和田 鈴 (さくらわだ すず)
桜和田敦士の娘で中学3年生。面倒見が良く、気立てのいい少女。現在は祖父である桜和田源矢のジムに出入りし、門下生の世話をしている。飛嶋閃の祖母たちに頼まれ、澤橋考紀と一緒になって、閃をジムへと連行する。青藤和真とは彼が入門してきた当初からの幼なじみ。何かにつけて「俺が頑張るのは鈴のため」と和真に言われるのを嫌がっており、そのせいで「桜和田ジム」を離れて源矢のジムに来ていた。
桜和田 敦士 (さくらわだ あつし)
「桜和田ジム」を営む中年男性。桜和田源矢の息子。青藤和真のコーチも担当している、やり手のビジネスマン。もともとは源矢と同じくキックボクシングに夢を見て、人生を懸けた一介のプロキックボクサーだったが、結果として何も得られなかったことが心の傷となっている。そのため、期待のルーキーである和真には、コーチであると同時にビジネスパートナーであることを強調。 マスコミへの露出を重視するスター路線で和真を売り込もうとしていた。そのことが原因となって源矢とは対立しており、結果的に和真のモチベーションをも失わせていた。
澤橋 考紀 (さわはし こうき)
桜和田源矢のジムの門下生。飛嶋閃の祖母たちに頼まれ、桜和田鈴と一緒に閃をジムへと連行する。会長である飛嶋源矢に対し、ことあるごとに生意気な口を利く閃を快く思っていない。閃が脱走を図った際にキックボクシングで叩きのめそうとするが、彼の頑丈な体の前に逆転負けを喫する。閃がジムに入門した以後は、互いに憎まれ口を叩く、ライバル的な存在となった。 元は「桜和田ジム」の門下生だったが、試合に負けたことをきっかけに源矢のジムに入った。キックボクサーとしては凡庸だが、己を曲げない閃の存在を意識してからは、しゃにむに練習をするようになる。
八美 久恵 (はつみ ひさえ)
桜和田源矢のジムの門下生。地元では有名な喧嘩自慢の少女。友人を助けるために、暴走族の男を完膚なきまでに叩きのめす。さらなる強さを求めて源矢のジムに入門。キックボクシングという競技の魅力に取りつかれ、高校を中退する。練習中に鼻血が出ても、一向にひるまない強靭な精神の持ち主。頼りがいのあるうえに友人想いなため、周囲からの人望は厚い。 町に遊びにでかける際はバッチリメイクを決める。
百瀬 龍生 (ももせ たつお)
桜和田源矢のジムの門下生。プロのキックボクサーで、18歳にして日本チャンピオンの座についた実力者。前髪を極端に伸ばして常に片目をふさぐ、という特徴的な髪型をしている。飄々とした、掴みどころのない性格をした男性で、誰に対しても、からかい目的で適当なウソをつく困ったタイプ。驚異的な動体視力と反射神経を持っており、相手の攻撃を寸前で見切って全力でカウンターを当てる、「フルスイングカウンター攻撃」を得意技としていた。
久太 (きゅうた)
桜和田源矢のジムの門下生。休みの日にジムにやって来る男子小学生。学校でのイジメに苦しんで「桜和田ジム」に入門していたが、そこでも同級生にイジめられ、両親の計らいで源矢のジムに入った。ジムの中ではワガママし放題だったが、飛嶋閃にその卑屈さを咎められ、近くの川へと逃げた際に怪我をしてしまう。八美久恵がお気に入り。
大木 洋介 (おおき ようすけ)
桜和田源矢のジムの門下生。でっぷりした体格をした、メガネをかけた男性。ダイエット目的でジム通いをしている。いったんしゃべりだすと止まらなくなるタイプ。非常に温厚な性格をしており、久太のわがままに手を焼きつつも、彼を叱ることはなかった。
祖母 (そぼ)
飛嶋閃の祖母。桜和田源矢とは古い友人で、かつては息子・飛嶋堅を、更正のために源矢のジムへと送り込んだこともある。日々無鉄砲な行動を繰り返す孫の閃を、堅と同じように源矢のジムへと預けていた。キックボクサーになることを決意した閃を、快く送り出す。