概要・あらすじ
福原錠太郎は、父親が急死したことによりホームレスから株式会社パーソンの二代目社長になった。しかし、ホームレス時代には鍵師として活躍しており、そもそも解錠の難しい金庫を開けることにセックス以上の快感を得る性癖があった。社長になってからは鍵師の仕事をやめていたものの、ある日、かつての相棒である長尾から仕事の依頼を受ける。
これをきっかけに錠太郎は、エキサイティングな解錠の快感を思い出していく。
登場人物・キャラクター
福原 錠太郎
株式会社パーソンの二代目社長。中肉中背の中年男性。多めの前髪を中央で分けていて、眉が太く目が大きい。父親の選んだ女性ではなく、自分の選んだ女性と結婚したため勘当されたが、その2年後には妻が交通事故で亡くなり、ホームレスになる。それから3年後に福原錠太郎の父親が亡くなった。その際に、錠太郎の勘当を解き、彼に会社を継がせると言い遺しており、木下がその行方を探していた。 ホームレス時代は金庫破りを得意とする鍵師として活躍していた。かなりの女好きで、解錠の依頼主が美人なら報酬としてセックスを要求することが多い。実際は、鍵を開けることにセックス以上のエクスタシーを感じる性癖の持ち主。
木下
株式会社パーソンの古参役員。専務を務めている壮年男性。初代社長の頃から尽くしてきた人物で、小太りで眼鏡をかけ、ややハゲている。初代社長の遺言で勘当されて家を出ていた福原錠太郎を探し出し、会社を継がせた。錠太郎が社長となってからは常に一緒に行動し、錠太郎を補佐している。
長尾
裏世界の壮年男性。福原錠太郎に解錠の裏仕事を持ってくる。少し下がったふさふさの眉に、長めの髪のくたびれた人物。なぜか錠太郎が女性とセックス中に依頼の電話をかけることが多く、その度に錠太郎は勃たなくなって女にあきれられている。業界の事情に通じており、サイレントKからも仕事を持ちかけられる。本名の「長尾」はほとんどの人に知られておらず、「哲」の通称で呼ばれている。
富田 金蔵
都内でパチンコ店を13店舗経営している資産家。税務署に目をつけられ、マルサが動き出している。資産を分散して隠しているが、10億円以上の申告漏れがあるといわれている。自宅にも1億円以上は隠しているため、その金庫を福原錠太郎に狙われる。
矢尻 (やじり)
戦後に立てられた築48年の教会の神父。教団の財務管理士でもある。スタンドカラーの黒い神父服に十字架を下げており、ややがっしりとした体形。眉は太く口はへの字で、気難しい顔立ちをしている。福原錠太郎から、古い教会を6000万円で買収するとの話を持ちかけられるが、きっぱりと断る。しかし裏では桜子を自宅に監禁するなど、別の顔があった。
桜子
若い美女。矢尻によって貞操帯をつけられ、裸で地下室に閉じ込められている。貞操帯と地下室の解錠を依頼し、成功のあかつきには自身を捧げると、鍵師の福原錠太郎に告げる。恋人の作蔵と逃げることを夢見ている。
作蔵
矢尻の屋敷の下僕。ひょろりとした頼りない雰囲気の男性。主人の地下室に閉じ込められている桜子の恋人。桜子の貞操帯を外し、ともに逃げ出そうと、鍵師の福原錠太郎に依頼する。
花田 早苗
花田金太郎の妻で美女。無類の女好きの夫に愛人が3人もいることに我慢できず、夫の会社の裏帳簿を盗みだすように、福原錠太郎に依頼。裏帳簿を明らかにしてハッピー商事が潰れれば、金太郎が愛人を囲えなくなる、との考えからだった。
花田 金太郎
ソープランドを6店舗経営するハッピー商事の社長。無類のセックス好きで、妻の花田早苗を毎晩抱くのはもちろん、新しく入店したソープ嬢はすべて味見し、他にも愛人を3人囲っている。長尾には、スーパーセックスマシーンとまでいわれた。
繭美
福原錠太郎が懇意にしているホステスの1人。明るめでウエーブがかかったロングへアの可愛いタイプの美人。元気な明るい性格で、錠太郎を外で見かけた時も、道路の向こうから、自分の店に来てくれと声をかけた。しかしそのおかげで、錠太郎が車と接触して骨折してしまう。病院にお見舞いに行った際には、錠太郎と病院のベッドの上でセックスした。
江口 智美
五輪銀行常務の娘。しとやかな美人。福原錠太郎の伯母が福原に紹介した見合い相手で、江口智美も錠太郎を気に入り、何度かデートを重ねた。一見ごく普通のお嬢様だが、元暴走族。セックスの経験も豊富だったことが解ったため、見合いは破談になってしまう。
芳美
資産家の老人の愛人をしている美女。ミスコンで優勝したことのある美しさと若さで、愛人手当は月150万円貰っている。老人が脳溢血で倒れてからは、遺産を狙って老人の家族と揉める。老人の妻からは「ドロボー猫」と罵られながらも、遺産を手に入れようと、福原錠太郎に老人の自宅金庫の解錠を依頼する。
桜田 健一
鶴亀信用金庫池袋支店の支店長代理を務める中年男性。眼鏡をかけ、真面目だが頼りなさそうな風貌をしている。同じ支店の女子職員が金庫内に閉じ込められてしまったため、金庫の解錠を福原錠太郎に依頼する。表沙汰になって醜聞になることを恐れる一方で、女子職員の健康状態も心配しており、一刻も早く開錠するよう錠太郎に頼み込む。
須崎 千津子
スザキ製パンの三代目社長。二代目社長だった夫に先立たれ、25歳の若さで女社長となった美しい未亡人。日本のリーディングカンパニーの経営者が集まる経済同志会のパーティーで、須崎千津子の美しさに目をつけた福原錠太郎と知り合う。恋愛には興味がなく、錠太郎のコンビニチェーン「パーソンズ」で、スザキパンを扱ってもらうようにアプローチする。 特撮ヒーロー「ウルトラ・ル」のようなパワフルさを持つため、彼の未亡人という意味を込め、陰で「ウルトラウィドウ」と呼ばれている。
瀬川 守
弁当や総菜を扱う会社「まったり屋」の社長の長男。眼鏡をかけていてひょろリとした、頼りない中年男性。厳しい父親に嫌気がさして10年前に家出したが、3年前には妻子ができ、生活が成り立たなくなって空き巣をするようになった。空き巣に入った家で、偶然金庫破りをしていた福原錠太郎と出会い、弟子にしてほしいと頼み込む。まったり屋が株式会社パーソンと企業提携しており、自分の父親と錠太郎が懇意なことは知らない。
サイレントK
スーツを着た神経質そうな男性。オールバックに細い吊り目、薄い眉が特徴。アメリカの裏社会で「ロックスミスの神様」と呼ばれている日本人。彼に解錠できない錠前は存在しないといわれている。しかも一度解錠した金庫は、二度と開かないように操作して去っていくという念の入れようで、被害者は盗難にあったことすら気付かなかった。福原錠太郎に強いライバル心を抱いており、互いに腕を競おうと、長尾に連絡を取る。
白川 真由
22歳のしとやかで美しいお嬢様。資産家の祖父と二人暮らししていた。祖父が中近東で行方不明になったため、死亡と決めつけた親類たちと、遺産のことで揉めている。祖父の愛した宝石「王家の泪」だけは、金庫から持ち出して別の場所の移しておきたいと、福原錠太郎に金庫の解錠を依頼する。
天神組の組長
大阪の小さな暴力団組織・天神組の組長。痩身に白髪の老人だが、今だ眼光鋭く性格も苛烈。賭場で2億円負けた際、裏金融の毒島久作から金を融通してもらったため、毒島の言いなりになっている。毒島の依頼で、パーソン大阪一号店への嫌がらせをする。
毒島 久作
裏金融で儲けている壮年男性。七三分けの髪形でチョビヒゲを生やし、唇が厚く太っている。天神組の組長にも、利子込みで8億円を貸し付けている。「毒島キララ」という18歳の娘がいる。この娘が福原錠太郎と関係を持ったことを知り、借金のある天神組を使ってパーソン大阪一号店に嫌がらせをする。
榊原 沙夜加
27歳の美しい未亡人。2週間前に歳の離れた資産家の夫が78歳で死亡し、夫の残した金庫の解錠を福原錠太郎に依頼する。榊原家の金庫は戦後事業に成功してすぐに購入され、関東大震災でも焼けずに残った年代物。それだけに錆ついており、まったく解錠できない状態にあった。実はホームレス時代の錠太郎と出会っており、当時恋人だった過去がある。
照姫
女神の里の教祖を務める若く美しい女性。卑弥呼を模した貫頭衣のような服装で、冠を身に着け、卑弥呼と同じく処女を守っている。かなりの大金庫を所有しているが、解錠することができなくなり、福原錠太郎に解錠を依頼した。しかし、解錠後は錠太郎と長尾を、口封じのために殺そうとする。
スチュワーデス
国内線の美人スチュワーデス。麻薬密売を手掛ける、北海道の大手スポーツ用品店「Zスポーツ」の傘下で、運び屋を務めている。北海道へ仕事で訪れた福原錠太郎と懇意になり、錠太郎とのセックスの際には麻薬を使うことを勧めた。
春川 竜夫
有名な舞台演出家の壮年男性。眉が太く、意思の強そうな顔立ちをした痩身の人物。若い頃は演歌歌手だったが、芽が出ない歌手生活に見切りをつけ、舞台のシナリオや演出を手掛けて才能が開花。そこからは飛ぶ鳥を落とす勢いで有名になり、ついに海外の劇団から依頼を受けるまでになった。異常な女好きであり、それが理由で妻の春川千絵子は家を出て行ってしまう。
春川 千絵子
春川竜夫の妻。竜夫が歌手時代に結婚し、19年連れ添ってきた。竜夫の異常な女好きに我慢ができなくなり、5年前から別居している。竜夫からはヨリを戻したいという申し入れがあり、悩んでいた。別居してからの5年間、女断ちをしていたという竜夫の言葉を確認するために、竜夫がつけている日記を確認しようと思い立つ。日記は厳重な金庫に入っているため、福原錠太郎に解錠を依頼する。
栗田 徹
元大学教授で古物蒐集家の老齢な男性。白髪に口髭、眼鏡をかけて着物を着ている。同じ古物蒐集の仲間である不動産屋から金庫を預かった。この不動産屋が急死したため、金庫の解錠を福原錠太郎に依頼した。しかし、金庫の中身は錠太郎より前に、既にサイレントKが盗み出していた。
集団・組織
天神組
大阪の小規模な暴力団。賭場で天神組の組長が2億円負けた際、裏金融の毒島久作に融通を頼んだが、現在はその利子が積もって8億円の借金を抱えている。そのため毒島には逆らえず、パーソン大阪一号店の営業妨害のため組員を派遣する。
女神の里
教祖の照姫を筆頭とした、女性だけの独立国家を作ると謳っている新興宗教。信者の多くは父親からの虐待を受けて育ったり、男性から暴力を受けたり、レイプされた過去がある女性たちで、男性を徹底的に憎んでいる。男性に対する暴力も行っており、既に公安警察に目をつけられている。
株式会社パーソン
創業25年を迎える大会社。大手コンビニチェーン「パーソン」を、関東から関西にかけて1200店舗経営している。今後、京阪神地区へ進出し、5年で2000店舗への拡大を見込んでいる。一代で財を築いた先代社長が亡くなり、現在は二代目の福原錠太郎が社長を務める。
場所
志愛女学園
恵まれた家庭の子女が通うお嬢様学校として有名な女子校。今どき珍しい純情可憐な女子高生ばかりと噂されている。冬でもアイスクリームが売れ筋のパーソンの支店があったため、福原錠太郎が確認しに行くと、近くの志愛女学園の女生徒たちが食べていたことが解った。錠太郎は鍵師の仕事で、この学校に潜入することになる。
Zスポーツ (ぜっとすぽーつ)
道内に12店舗を構える北海道きってのスポーツ用品店。しかし裏では麻薬、覚醒剤の密売を行っており、商社マンやスチュワーデスたちを運び屋に、スキーヤー、スノーボーダーを売人として使っている。福原錠太郎が関係したスチュワーデスも、この組織の一員だった。