KAREN

KAREN

19世紀末のロンドンを主な舞台に、不思議な力を持った少女・カレンの秘密や、カレンの持つ腕輪の謎を描くミステリアス・ファンタジー。「ちゃお」1994年6月号から1996年2月号にかけて連載された作品。コミックス第5巻には、カレンたちの未来を描いた番外編「2000年めの伝説」も収録されている。

正式名称
KAREN
ふりがな
かれん
作者
ジャンル
ファンタジー
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あらすじ

第1巻

19世紀末のロンドン。身寄りのない少女カレンは、ロンドンのホテルで働きながら暮らしていた。カレンは昔から不思議な腕輪を持っており、傷を負っても腕輪の力ですぐ治ってしまうため、周囲から気味悪がられていた。ある日カレンは、新聞配達中のエドと出会い、友達になる。その後、カレンを養子にしたいというリチャードが現れ、彼女は彼に連れられて屋敷へ向かう。しかしリチャードに関しては、「彼の屋敷に行った娘は戻って来られない」という噂がまことしやかにささやかれていた。カレンの危機を察したエドは屋敷へ向かい、彼女を救出。だが、カレンの腕輪を狙うリチャードは逃げるエド達を追い詰めていく。そんな中、目の前でエドがリチャードに撃たれてしまい、ショックを受けたカレンは、必死に呪文を唱える。その瞬間、腕輪が光を放ち、エドの傷を癒すと同時に別人のようになったもう一人のカレンが現れるのだった。その後、気を失ったカレンとエドは再びリチャードに捕まってしまう。意識を取り戻したエドは、カレンを連れて牢屋から逃げ出そうとするが、その途中、屋敷にはカレン以外にリチャードに捕らえられた娘が何人もいる事が判明する。しかし、逃げ出そうとした娘達は針山に落ち、次々と命を落としていく。

第2巻

エドジムと共に、チヒラを探すためエイブベリーに来たカレンは、リチャードが自分の父親であった事を知り、ショックを受ける。再びリチャードに追い詰められたカレン達だったが、ジムとエドが目の前で撃たれてしまう。怒りに奮えるカレンは、腕輪に秘められた「奇跡の力」を呼びさますため、呪文を唱える。再び目覚めたもう一人のカレンは、「アスカの民」を名乗り、腕輪はただの人間が持っていても意味がない事を告げる。そして、その言葉にショックを受け呆然とするリチャードを殺そうとするが、エドの制止により元のカレンへと戻るのだった。その後、リチャードにチヒラの情報を聞いたカレン達は、10年前にチヒラが最後にいたという、ストーンヘンジの遺跡に向かう事となる。しかし、ストーンヘンジに行っても腕輪は反応せず、カレン達は一旦ジムの養護施設に戻る。次の日、再びストーンヘンジに行ったカレン達は、地震により遺跡に異変が起こるのを目の当たりにし、そこで出会った学者のハロルドから、遺跡の異変の秘密を聞く。

第3巻

カレンの正体はアスカの民で、さらに腕輪と共に「最後の呪文」を継承した第10代継承者である事が判明した。アスカの民と呪文の秘密を解き明かすため、カレンはエドと共に再び旅立つ。しかし、その道中でエドは記憶をなくしてしまい、その記憶は幼少期まで戻り、カレンの事も忘れてしまう。のちにすべての記憶を取り戻したエドは、自分がカレンを守るために生まれた一族である事、そしてカレンとは結ばれてはいけない事を告げる。エドの話にショックを受けたカレンは、エドの一族の事、そして自分が生きる意味を知りたいと強く願う。後日、ストーンヘンジもう一人のカレンの話を聞いたエド達は、再びアスカの民の秘密を探るべく、アスカの民と関係しているアスコットに向かう事になる。アスコット城には、何年も子供の姿のままで、アスコットの住民達に恐れられるデビットが住んでいた。エドとジムはデビットに捕らえられ、カレンは一人になってしまう。一方捕らえられたエドとジムは、牢屋で使用人のジョナサンと出会う。デビットを哀れむジョナサンはアスコットの秘剣を渡し、デビットに突き刺すよう、エド達に願い出る。

第4巻

チヒラに「日出ずる国」に行くよう告げられたカレンは、エドと共に夏至を迎えたストーンヘンジで呪文を唱える。遺跡は謎の光を放ち、カレンとエドはジム達と離れ、別の国に飛ばされる事となった。カレンはそこでアスカの民神の一族を名乗る老人・と出会い、人として生きるのか、神として生きるのか、選択の時が来た事を告げられる。そんな中、仲間が血を流して倒れている幻覚を見たカレンは、そのまま気を失ってしまう。次にカレンが目覚めると、そこは日本の明日香村で、村の少年ジローと出会ったカレンは、村人達に介抱される事となる。一方、カレンと離れた場所で目覚めたエドは、明日香村の村娘ひなと出会う。その後、カレンはジローの案内を受け天女が出たという竹林に向かい、そこでチヒラと再会。彼女に連れられてたどり着いた奥の洞窟には、月の扉の封印を守りながら眠りにつく、チヒラの本体があった。チヒラが眠っている理由、そして自分達の一族の使命を知ったカレンは、残酷な運命に大きなショックを受ける。そんなカレンの前に再び長が現れ、神の一族の仲間になるよう、カレンを惑わそうとする。

第5巻

明日香村で村人達の残虐な行為を目にしたカレンは、人類には守る価値があるのか、彼らの犠牲になる覚悟があるのかとに問われ、強い葛藤を覚えてしまう。そんなカレンに長は、神として生き、封印を守るチヒラを殺して共に人間を滅ぼすよう命じる。だがその時、カレン達の前に、遺跡の異変で飛ばされて来たリチャードジム達が現れる。迷うカレンがチヒラを攻撃しようとする中、リチャードは命がけでチヒラを守る。それを見たカレンはエドやチヒラ達の言葉に支えられ、神ではなく人として生きる道を選ぼうと決意。そして人類に攻撃する長から大切な人達を守るため、彼の前に立ちはだかる。

登場人物・キャラクター

カレン

ロンドンのホテルで働いている、身寄りのない少女。ウェーブのかかった黒いロングへアで、エプロンドレスを着ている。幼い頃、母親のチヒラから腕輪と呪文を託され、置き去りにされた過去を持つ。腕輪を使って自分や人の傷を瞬時に治すなど、不思議な力を持っており、周囲の者からは忌み嫌われていた。チヒラから受け継いだ呪文を唱える事で腕輪の封印が解かれ、「アスカの民」を名乗るもう一人のカレンに変身する。のちにエドと共に、自身の正体とチヒラを探すための旅に出る。エドの事は大切な友人のように思っていたが、彼と旅を続けるうちに恋愛感情を抱くようになる。残虐なリチャードが実の父親であると知った際には大きなショックを受けたが、彼がチヒラを心から愛していた事を悟り、次第に心を許すようになる。心優しくおとなしいため気弱に見えるが、実際は芯が強くまっすぐな心の持ち主。エドとの旅の中でさまざまな出会いや試練を乗り越え、成長していく。明日香村での出来事をきっかけに、人として生きるか神の一族として生きるかの葛藤に揺らぐようになる。イギリス育ちだが、もともと一族の故郷が日本であるため、日本語がわかる。

エド

ロンドンで新聞配達をしている少年。幼少期や両親に関する記憶がない。仕事中に偶然カレンと出会い、友人になる。カレンがリチャードに連れ行かれた際に彼女を助け、以来カレンと行動するようになる。のちにカレン共に、チヒラと自分の記憶を探すための旅に出る。カレンと旅をする内に恋心を抱くようになり、命がけで彼女を守るようになる。明るく勇敢な心優しい性格で、自分の正体について不安を抱くカレンにとっての、心の支えとなっていた。エドの父の手がかりとなる、三角形のペンダントを大切にしている。アスコットへ向かう道中で崖から落ちて記憶喪失になり、幼少期まで記憶と人格が退行する。のちに幼少期を含めたすべての記憶を取り戻し、父親の事やチヒラとの関係も思い出す。カレンの一族を守る家系に生まれ父親からペンダントを受け継ぎ、幼い頃からカレンの事も知っていた。父親と共にいるチヒラの事は母親だと思い、6歳頃までは共に暮らしていた。のちに父親から、チヒラは本当の母親ではなく、父親にとって守るべき存在である事を知らされる。その後、ストーンヘンジで父親とチヒラと別れ、その時の事故で記憶をなくしていた。

リチャード

カレンの父親。カレンの腕輪に秘められた不思議な力を狙っており、強引に奪おうとする。目的のために冷徹で残酷な行為をするが、内心では娘のカレンと妻のチヒラを大切に思っている。カレンと和解した後は、チヒラ探しに協力するようになる。

ジム

ロンドン近くの養護施設で育った弧児の少年。身軽ですばしっこく、スリを得意としている。リチャードの屋敷から逃げていたカレンとエドに出会い、旅の仲間となる。最初はカレンの持つ力を恐れるが、ともに旅をするうちに、次第にカレンに想いを寄せるようになっていく。

ハロルド

考古学者の男性。カレンたちが、腕輪の秘密やチヒラの行方に関する謎を追う中、ストーンヘンジで出会った。他の学者とともに、ストーンヘンジの遺跡調査をしている。カレンたちの協力者となり、ストーンヘンジの謎解きの手助けをする。

デビット

アスコットにあるアスコット城に住む謎の少年。神を名乗っており、200年も子供の姿のままでいる。また千里眼を始めとした不思議な力を持ち、離れている人の会話や行動を見聞きできる。アスカの民と関係があり、自分と似た力を持つカレンを操り人形にしようとする。

ジョナサン

デビットの使用人をしている男性。デビットから、アスコット城の管理を任されている。主人であるデビットを大切に思うと同時に、長年の苦しみから解放してやりたいと願っている。カレンとともに城にやって来たエドたちに、デビットの救済を依頼する。

チヒラ

カレンの母親。アスカの民やエドの記憶と深い関係がある。娘のカレンを産んだ後、腕輪を狙っている夫のリチャードからカレンを守るために逃げ出す。その後、幼いカレンに腕輪と呪文を託し、行方不明となる。

ジロー

明日香村に住んでいる、ジムとそっくりの少年。ストーンヘンジから明日香村に飛ばされて倒れていたカレンを発見し、介抱する。いじっぱりな性格で、家の召使いであるひなをよくいじめているが、本音では大切に思っている。

ひな

両親にジローの家の奉公に出された、口のきけない少女。ストーンヘンジから飛ばされて明日香村の山奥に倒れていたエドを発見し、介抱する。気弱だが心優しい性格で、ジローを大切に思っている。奉公先に火をつけた犯人として疑われ、村人から暴行を受ける。

(おさ)

アスカの民の長を名乗る老人の男性。明日香村にたどり着いたカレンの精神に干渉し、アスカの民やカレンの正体に関する真実を伝える。人間を「愚かで見苦しい生き物」と考えており、カレンの力を通して人間を滅ぼそうとしている。

石乃 (いしの)

アスカの民の一人。カレンの祖先の女性で、一族の初代。もう一人のカレンと容姿が似ている。一族の中では神としての力をもっとも色濃く残しており、人類に残虐行為を繰り返す、神の一族を月に封印した。

ジムの父 (じむのちち)

ジムの父親。13年前、自分の帽子と共に、赤ん坊のジムをシスターの施設に預けた。以来息子とは会っていなかったが、ジムがカレン達と別れてイギリスに戻ったあと、ハロルドを通してジムとの再会を果たす。

チヒラの友人 (ちひらのゆうじん)

エイブベリーに住んでいる婦人。チヒラの友人で、チヒラが結婚して村を出てからは会っていないが、チヒラがカレン宛てに残した手紙と日記を預かっていた。エイブベリーを訪れていたカレン達と遭遇し、チヒラの事を話す。

シスター

ジムが暮らす養護施設で、シスターをしている女性。身寄りのない子供を預かり、何よりも子供達を大切に思っている心優しい性格。母親を探しているカレンを歓迎し、励ました。

エドの父 (えどのちち)

エドの父親。三角形のペンダントのもともとの持ち主。チヒラを守るのが使命で、幼いエドを連れながらチヒラに仕えていた。しかし、リチャードの追っ手がチヒラを連れ戻そうとした際、ペンダントの力を誤ってエドに放ってしまい、エドとは離れ離れになる。

もう一人のカレン (もうひとりのかれん)

カレンという女性の中に眠るもう一つの人格。カレンが呪文を唱え、腕輪の力を解放する事で現れる。普段のカレンとは性格や見た目が変わり、髪が白くなり足元まで長くなる。また口調や声も変わり、厳格な話し方と雰囲気になる。神の子孫、アスカの民を名乗っており、アスカの民としての力は腕輪によって封印されているが、呪文で封印を解く事でさまざまな力を使えるようになる。カレンの手から腕輪が外れてからは、カレンの心の状態によって呪文なしでも現れるようになる。

場所

アスコット

アスカの民と関係がある町。山側にはデビットとジョナサンが住む、アスコット城がある。町の人間の会話や行動は、千里眼を持つデビットに監視されている。イギリスに実在する、アスコットの街がもとになっている。

ストーンヘンジ

アスカの民の秘密や、チヒラの行方と関係がある遺跡。学者たちによって調査が行われており、カレンたちがハロルドに出会った場所でもある。夏至や冬至に異変が起こることでも有名。呪文を完成させることにより、カレンたちを日本に導く。イギリスに実在する、ストーンヘンジがもとになっている。

明日香村 (あすかむら)

アスカの民と深い関係がある村。カレンとエドがストーンヘンジから飛ばされ、ジローやひなと出会った場所でもある。山のあちこちに、空から天女が舞い降りたという伝説がある。日本の奈良県に実在する、明日香村がもとになっている。

エイブベリー

カレンがチヒラの手がかりを求めて立ち寄った小さな村。遠くから見ると円を描いたような、変わった形をしている。15年前までチヒラが住んでいた村であり、チヒラとリチャードが出会った場所でもある。

その他キーワード

腕輪 (うでわ)

アスカの民と関係のある黄金のブレスレット。幼いカレンがチヒラから託されたもの。行方不明となったチヒラを探す重要な手がかりとなる。表面には謎の文様が刻まれており、中央にある小さなくぼみは、エドのペンダントがぴったりはまる形状になっている。

アスカの民 (あすかのたみ)

「奇跡の力」を持った謎の民族。カレンの出生や腕輪の持つ力と深い関係がある。カレンは呪文によって腕輪の封印を解くことにより、アスカの民としての人格や力を目覚めさせることができる。アスコットや明日香村といった、「アスカ」と似た名前の地域に数々の伝承を残している。

アスコットの一族 (あすこっとのいちぞく)

「神」を名乗るデビットの一族。念動力や千里眼など人間離れした超能力を持ち、不老不死のままで何年も生きている。もともとはアスカの民で、アスカの民が地上に降りて二つに分かれた際に、神の力を色濃く残したまま、地上で生きる事を選んだ神の一族。

神の一族 (かみのいちぞく)

アスカの民の内、神としての力を残したまま生きる事を選んだ一族。長をはじめ、人間を忌み嫌っており、アスカの民の中でも冷酷な者が多い。人類を差別し虐げていたため、見兼ねた石乃によって月に封印されている。地上に降りた者の一部は、アスコットの一族として生きていた。

アスコットの秘剣 (あすこっとのひけん)

アスコットの一族に伝わる謎の秘剣。元はアスカの民が地上に降りた時、アスコットの一族に対し、カレンの先祖が渡した剣。カレンの一族の代々の名前が呪文として刻まれているが、普通の人間には読む事ができない。呪文を唱えて封印を解く事で、神秘の力が解放される。この状態で刺された相手は、アスコットの民であっても一瞬で人間と同じように年を取る。

最後の審判 (さいごのしんぱん)

アスカの民に伝わる伝説。神でも人間でもない第三者によって、西暦2000年に審判が下されるといわれている。誰によってどのような審判が下されるかは、チヒラや長も知らない。

月の扉 (つきのとびら)

石乃がかつて神の一族を月に封印した際に作られた扉。明日香村の竹林の奥の洞窟内にある。神の一族が封印されている月と地球をつないでいる唯一の場所。カレンの一族は代々この扉の人柱となって眠り、100年間ものあいだ、人類を守るために封印を守る使命がある。現在はチヒラによって封印が守られている。

三角形のペンダント (さんかくけいのぺんだんと)

小さな三角形のペンダント。エドが両親の形見として大事にしている。カレンの持つ腕輪にあるくぼみの部分に、ぴったりはまる形状になっている。元はエドの父が持っていたペンダントで、地球には存在しない異星の鉱物でできており、秘められた力を解放すると、他者の記憶を消す事もできる。カレンの一族を守るために、エドの家系に代々受け継がれて来た。

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