あらすじ
第1巻
赤ん坊の頃に大賢者のザンドルフに引き取られたフィル・フォン・セレズニアは、ザンドルフ以外の人間が住んでいない山奥で育てられた。ある日、ザンドルフは王都から訪ねてきたセリカ・フォン・セレスティアから、国王の隠し子であるフィルを次期女王候補として王都に招きたいとの申し出を受ける。セリカの素直な心意気に感心したザンドルフはセリカのことを信頼してフィルを託し、フィルには王都へ行くように命じる。王都で人々の暮らしを見たフィルは、ゴブリンから街の人たちを守れるような女王になることを決意。女王にふさわしい淑女になるため、礼節や教養などを学べるセレスティア王立学園へと向かう。しかし、学園では礼節科の編入を希望していたにもかかわらず、書類が改ざんされ、魔法科の試験が用意されていた。セリカは抗議するもまったく聞き入れられず、フィルは魔法科の試験に臨む。
第2巻
無事にセレスティア王立学園礼節科に編入したフィル・フォン・セレズニアだったが、入学早々に礼節科学科長のカミラから「作法が淑女らしくない」という理由で退学を命じられる。だが、セリカ・フォン・セレスティアの抗議もあり、明後日までに一人称を「ボク」から「私」に変えれば退学を免れることになる。しかしフィルは、「ボク」以外の呼び方だと身体が拒絶反応を起こすため、ふつうの方法では改善は不可能だった。シャロンからの情報で「古代エルフの蜂蜜」という秘薬を飲めば改善できるとわかり、フィルとセリカ、シャロンはエルフが住む森へ向かう。最初は排他的なエルフから信頼されずにいた三人だったが、エルフの村を襲ったゴブリンたちを撃退したことでエルフたちも態度を軟化させ、長老のフラールから秘薬をもらう。これでカミラに認められるはずだったが、王都の食堂で起こった騒動を解決するため、フィルは秘薬をエコに飲ませてしまう。
関連作品
小説
本作『古竜なら素手で倒せますけど、これって常識じゃないんですか?』は、羽田遼亮の小説『古竜なら素手で倒せますけど、これって常識じゃないんですか?』を原作としている。内容は漫画版と同じく、女王に相応しい淑女になるため、フィル・フォン・セレズニアが奮闘する姿を描いている。イラストは竹花ノートが担当している。
登場人物・キャラクター
フィル・フォン・セレズニア
大賢者のザンドルフの孫として育てられた少女。国王の隠し子。赤ん坊の頃にザンドルフに引き取られ、ザンドルフ以外の人間がいない、めったに人が立ち入らない山奥で育てられた。一人称は「ボク」で、それ以外の呼称は体が拒絶反応を起こしてしまう。ザンドルフだけから教育を受けているため、性別を判断するのに胸や股間を触るなど、一般常識に疎いところがある。人間の数倍はある古竜を素手になぐり倒したり、歴史上数人しか成功したことのない精霊王級の召喚魔法が使えるなど、身体能力や魔力は桁外れに高い。天真爛漫で身近な人が困っているのを見過ごせない優しい性格をしている。現国王が病に伏しており、次期の王候補として相応しい人物になるため、王都にあるセレスティア王立学園の礼節科に編入する。
ザンドルフ
フィル・フォン・セレズニアの育ての祖父。かつては勇者と共に魔王を討伐した男性で、「大賢者」とも評されている。フラールともいっしょに戦ったことがある。偉大な人物とは思えないほどフランクな性格をしている。王家の隠し子であるフィルを託され、人間が立ち入らないような山奥で隠遁生活を送りながらフィルを育てていたが、病気で余命わずかとなっていた。そんな時に知り合いの娘であるセリカ・フォン・セレスティアの、フィルを次期の王候補として王都に招きたいという要望を受け、セリカの人柄を認めてフィルを託す。その後、フィルの幸せを願いながら息を引き取る。
セリカ・フォン・セレスティア
セレスティア王国の国王家の分家の少女。実家の爵位は侯爵。侯爵令嬢として非の打ちどころのない振る舞いをし、セレスティア王立学園の魔法科で首席を取るなど、淑女として申し分ない人物。父親からフィル・フォン・セレズニアやザンドルフのことを聞いており、フィルを次期の王候補として招くためにザンドルフのもとを訪れる。ザンドルフからフィルを託されると、常識に疎いフィルにさまざまなことを教育する。
エコ
セレスティア王国の王都にある食堂で働く少女。幼い頃に目の前で実の母親が、盗賊に殺されたショックで声が出なくなってしまう。聴覚は問題ないため、コミュニケーションはふつうに取れる。食堂の女将に引き取られ、今は親子のように接している。階段から落ちたところをフィル・フォン・セレズニアに助けられ、同年代ということもあり、フィルやセリカ・フォン・セレスティアと友達になる。酔っ払い客が女将のことを馬鹿にしていることに我慢ならず、水をかけて客を怒らせる騒動を起こす。
キャシー・ゴールド
セレスティア王国の王都にあるセレスティア王立学園で、試験官担当教師を務める女性。フィル・フォン・セレズニアを不合格にするように命令され、書類を改ざんして礼節科への編入を希望するフィルに魔法科の試験を受けさせる。さらに試験内容もふだんから考えられないほどの難易度の高いものを選んだり、機械の設定をいじるなどの不正工作を行う。
シャロン
セレスティア王国の王都にあるセレスティア王立学園の学生寮で、メイドを務める女性。メイド服に並々ならぬ信念を持っており、メイド服について語りだすと、セリカ・フォン・セレスティアが制するまで止まらない。フィル・フォン・セレズニアが信用できる人物かわからなかった時は、一日中フィルをストーキングするなど、非常に行動力がある。
カミラ
セレスティア王国の王都にあるセレスティア王立学園で、礼節科の学科長を務める女性。厳格な性格で、フィル・フォン・セレズニアの魔法は認めているものの、淑女としては不適合だと考えている。そのため、礼節科に編入したフィルに退学を命じる。セリカ・フォン・セレスティアの抗議を受けて、明後日までにフィルの一人称を「ボク」から淑女らしい「私」に改めなければ退学という試練を課す。
ウィニフレット
エルフの村に住むエルフ族の少女。男勝りの性格で、口調も男っぽい。森の警備中に、森にいるフィル・フォン・セレズニア、セリカ・フォン・セレスティア、シャロンを見つけ監視する。フィルたちが悪意のない人間だとわかると、エルフの村に案内した。そしてエルフの村を襲ったゴブリンをいっしょに退治して、フィルと友達になる。
フラール
エルフの村に住むエルフ族の長老を務める老婆。長寿なエルフ族の中でもずば抜けて長い寿命を持ち、神々に近い存在ともいわれている。占術に長けており、フィル・フォン・セレズニアが「古代エルフの蜂蜜」という秘薬を求めてエルフの村を訪れることを予知していた。かつてはザンドルフといっしょに戦ったこともある。
テレジア
セレスティア王国の王都にあるセレスティア王立学園の礼節科に通う少女。見栄っ張りで高飛車な性格ながら、努力家で剣術の腕はかなりのもの。編入したフィル・フォン・セレズニアのクラスメイトで、何かと目立つフィルに対してライバル心を持っている。得意の剣術でもフィルに敗れたことで彼女に嫉妬心を抱き、嫉妬を糧にする悪魔を降臨させる器とされてしまう。
クレジット
- 原作
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羽田 遼亮
- キャラクター原案
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竹花 ノート
書誌情報
古竜なら素手で倒せますけど、これって常識じゃないんですか? 全7巻 双葉社〈モンスターコミックス〉
第6巻
(2022-10-28発行、 978-4575415155)
第7巻
(2023-08-30発行、 978-4575417210)