合唱団、クワイアと天使の歌声
本作の舞台は、神に選ばれた少年たちが集まる合唱団、クワイアの寄宿学校である。この世界では、飛び抜けて歌声が美しい男の子が生まれることがあり、周囲の大人は「天使が生まれた」と大騒ぎする。ほとんどの少年は変声期を迎えて青年になるが、「ほんとうの天使」は、その声の美しさが頂点に達したとき命を失い神に召される。クワイアは、そんな美しい歌声を持つ10~15歳の少年たちの合唱団である。AとBの二つのクラスに分かれているが、Aクラスが実質トップ集団で、「天使」はそこから出ることが多い。天使の歌声に達した少年は、死期が迫ると学校から少し離れたロッジで最期の時を迎える。なお、少年たちが世界中のイベントやミサで歌う収益の一部は家族に送られるため、金銭のためにクワイアに入る少年もいる。
少年たちの「才能」を巡る人間ドラマ
秋学期になり、クワイアは二人の新入生を迎えた。一人は、貧しい家庭に育ったガブリエル(ギャビー)、もう一人は希望に胸を輝かせているラザロである。新入生歓迎会でクワイアに来た動機を尋ねられたラザロは、天使になることを望んでおり、世界中を飛び回るツアーを楽しみにしていた。一方、ギャビーの動機は、自分がクワイアにいる間、家族に送られる金銭のためで、天使になって死ぬことを恐れていた。そんな対照的な二人だったが、クリスマスツアーでソリストに選ばれたのはギャビーだった。小さい頃から何をやっても二番手だったラザロは、ギャビーに嫉妬の感情を抱く。本作は、美しい歌声を持った少年たちが「才能」を巡って繰り広げる人間ドラマである。
合唱団の少年たちの群像劇
本作の第Ⅰ章はギャビーとラザロの物語である。ギャビーは全体を通しての主人公ではあるが、次章以降は別の少年にスポットが当てられる。第Ⅱ章は、変声期を待つばかりと思われていた最年長の少年、アベルの物語。ギリギリのタイミングで天使の歌声を手に入れたアベルは、移り住んだロッジの火事で、遺体となって発見される。アベルの死は神に召されたものか、自殺なのか。そんなミステリアスなストーリーが、3年前のある出来事と絡めて描かれる。第Ⅲ章は、神様を敬い深く信じている少年、シオンの物語。夏になるとクワイアに隣接するコテッジで合宿する帝室バレエアカデミーの女生徒、デボラとシオンの関係を描く。本作はクワイアの様々な事情を抱えた少年たちをオムニバス形式で描いた群像劇でもある。
登場人物・キャラクター
ガブリエル
合唱団、クワイアに入団したロングヘアーが特徴の少年。初登場時は10歳で、洗礼名はガブリエル。ルームメイトのラザロに「ギャビー」というあだ名を付けられた。Aクラスに所属しており抜群に歌がうまい。貧しい家庭に育ち、弟妹たちを養うために、身を売っていたこともある。金銭のためにクワイア入りを決意したため死を恐れており、天使の歌声を手に入れたいとは考えていない。
ラザロ
合唱団、クワイアに入団した明るい少年。初登場時は10歳で、洗礼名はラザロ。ギャビーと同日にクワイア入りしルームメイトになる。小さい頃から何をやっても卒なくこなすが、一番になれないことにコンプレックスを抱いている。クワイアで天使の歌声を得て神に召されることを望んでいる。
書誌情報
MAMA 全6巻 新潮社〈バンチコミックス〉
第1巻
(2013-03-09発行、978-4107716972)
第2巻
(2013-08-09発行、978-4107717153)
第3巻
(2014-03-08発行、978-4107717405)
第4巻
(2014-10-09発行、978-4107717788)
第5巻
(2015-04-09発行、978-4107718129)
第6巻
(2015-12-09発行、978-4107718600)







