キメラ(合成動物)の研究が盛んな世界
本作の舞台は、キメラ(合成動物)と呼ばれる、異なる生物を合成して製造された生物の研究が盛んに行われている世界。キメラ財務省の発表によれば、キメラ製品における国際収支の経常黒字は、前年比32.5パーセント増という好調ぶりである。新種のキメラを発明すれば一攫(いっかく)千金も夢ではないことから、キメラ学者を目指す者も多い。なお、キメラには、家畜や乗り物、鑑賞用など様々な種類が存在するが、マディのような人型の「キメラ人間」は、他に類を見ない存在である。
マディの親になる決意をしたクレイ
キメラ生物開発研究所をクビになったクレイは、田舎町の無人の研究所でマディの製造に成功する。しかしやけくそだったため、何一つ覚えていない。そこでクレイは、マディの生態を観察することで製造過程を思い出そうとしていた。そんなある日、二人はキメラ研究者の女性、スズと出会い、少しの間世話になる。するとマディは人間らしい生活や言葉を覚え始めた。クレイはいつも、マディのバカさ加減に呆(あき)れていたが、それは何も教えられなかったことが原因だった。クレイはマディを造ってしまった責任を初めて自覚する。そして、マディの親として知識や見聞を広めてやるべきだと考えを改め、マディに旅をさせることにした。クレイは彼に同行し、時には知恵を貸しながら、マディがたどり着く先を見守る決意をした。
珍しい人型のキメラ、マディを待ち構える危険
マディが誕生した田舎町に住む富豪親子は、ウマとチョウのキメラ、ペガサスや、ネコと鉄のキメラ・鉄皮猫(スチールキャット)など、珍しいキメラのコレクターで、マディを盗もうとした。また、キメラ人間の製造を目指していたキメラ学者のコランダムは、マディのことを知り、様々な手段で奪おうとする。しかし、その冷徹なやり方はコランダムの妹、ルビイの反感を買い、彼女の裏切りを生むことになった。珍しい人型のキメラに興味を持つ人間は多く、マディの行くところには常に危険が待ち構えているのだ。
登場人物・キャラクター
マディ
キメラ(合成動物)の元研究者、クレイによって偶然生み出されたキメラ人間。金髪の少年の姿をしている。クレイ(粘土)にちなんでマディ(泥)と名付けられた。身長112センチメートル、体重19キログラムだが、土を食べて巨大化することも可能。肉体は、細かい土の粒子が結晶になったもので、衝撃を受けると飛び散ることもあるが、粒子を再結成することで再生できる。主食は土。大量の水に弱い。生まれて間もないため、知識に乏しいが好奇心は強い。毎日定時にテレビの前に座り、「新幹線アンダーソン」のアニメを見るのが好き。
クレイ
キメラ(合成動物)の元研究者。22歳の男性。身長186センチメートル、体重59キログラム。金髪とゴーグル型眼鏡が特徴。14歳で博士号を取り、キメラ生物開発研究所の専属研究員になったが、以降なんの成果もあげられず解雇となった。田舎町の小さな研究所にたどり着き、そこで偶然、少年の姿をしたキメラ人間を造り出すことに成功。少年に、自分の名前、クレイ(粘土)にちなんでマディ(泥)と名付けた。生まれたばかりで何も知らないマディの見聞を広めてやるため、一緒に旅に出ることを決意する。
コランダム
未知のキメラ(合成動物)を造ることに取り憑(つ)かれたキメラ学者の男性。研究のためなら人の命もなんとも思わない冷酷無比な性格。24歳で、身長176センチメートル、体重63キログラム。地位や名声に興味がなく、有名になって雑音が入ることを拒み、正研究員の女性を隠れ蓑(みの)にして、陰で研究に邁進(まんしん)している。ルビイの兄であり、身体能力に優れる妹を利用し続けてきた。
ルビイ
キメラ学者コランダムの妹で研究助手。ロングヘアーが特徴の18歳で、身長171センチメートル、体重55キログラム。運動神経に優れ、怪力の持ち主。形状記憶能力を持ち、武器やその他あらゆる形に変形できるフェレット「紅鼬(こうゆう)」が相棒。また、高速移動が可能な乗り物「陽炎」を所持する。純粋で一本気な性格で、兄の命令に逆らい、子どものマディをさらうことをやめ、マディの護衛になることを宣言する。