人間として生きようとするロボット
高性能ロボットであるオリジンは、田中久重の遺言に従い、自らが納得できる「ちゃんとした生き方」を模索していた。その結果、正体を隠して人間として生きることを決意し、外見を人間そっくりに整えたうえで「田中仁」と名乗り、AEEのロボット開発チームに所属する。自らの燃料や部品の調達をこなしつつ自分の素性を知られないように仕事をすることは、いかにオリジンが高性能であっても困難だったが、それでも久重の最後の言葉を守るために奮闘する。なお、オリジンは「ちゃんとした生き方」に決まった答えがあるわけではないと考えており、たびたび「父さん」と過ごした日々を思い返すことでその定義を再考し、場合によっては思考そのものをアップデートしている。
世界有数のロボット開発企業
オリジンが「田中仁」と名乗って勤務する企業「アジア・ヨーロッパ・エクスプレス&エネルギー」(通称「AEE」)は、西暦2048年の世界において最大手といわれる複合企業。中でも現在、最も規模を拡大しているロボット開発チームには、「ロボット工学のレジェンド」と名高い坂本哲や、22歳でハーバード大学の博士になった崔燦正(チェ・チャンジョン)、イタリアの若き天才と称されるラウラ・フェルミなど、名だたるロボット工学の権威が名を連ねている。だが、オリジンはこの最先端の企業であっても、田中久重の技術力には遠く及ばないと考えている。オリジンは、自らがロボットであることを秘密にしたまま、ロボット開発チームの仲間たちと打ち解け、やがて同僚の一人である広瀬マイから好意を寄せられるようになる。なお、オリジンは久重の死にAEEがかかわっていると推測しているが、その真相は不明。
人類に牙を剥く、オリジンの兄弟たち
田中久重は、オリジンの兄弟機となる八体の戦闘用ロボットを開発していた。戦うことが存在理由でもある彼らは、「神」と呼ばれる情報集合体に近づこうともくろみ、人類に危害を加えつつ、独自の方法で各々のアップデートを進めていく。オリジンは、そんな彼らを人類を守るための障害とみなし、やがて兄弟機との直接対決を決断する。さらに、兄弟の一機である坎(カン)が、久重の姿で広瀬マイを殺害したことで、大切な二人の人間を汚されたと考えたオリジンは激怒。そしてオリジンは、兄弟たちによる凶行を阻止するのではなく、彼らの殲滅(せんめつ)を決意する。
登場人物・キャラクター
オリジン
「父さん」の作り上げた人型ロボットのプロトタイプ。20代の青年のような風貌をしている。自律思考型ロボットで見た目も人間とまったく変わらないため、人間にその正体がバレることはない。人間をはるかに超越する身体能力を持ち、戦闘時は隠し持っている柄を左腕に接続することで、切れ味の鋭い刀を生み出せる。感情が希薄であることからつねに冷静沈着で、窮地に陥っても決して取り乱すことはない。「父さん」が死に際に残した「空を仰いだ時に一点も恥じることのないよう、ちゃんと生きていけ」という言葉を自分なりに受け取り、ロボットによる人間惨殺を食い止めようと動き出す。しかし、人類を守ることだけを目的としているわけではなく、戦いの中で人間が犠牲になることは仕方ないと考えている。当初はヤクザの用心棒をしていたが、「田中仁」という偽名を使い、「父さん」の仇と思しき「AEEロボット開発チーム」に勤務している。しかし、これは「父さん」の仇を討つためというより、自らの正体を隠すために最適な環境であると判断したためである。
田中 久重 (たなか ひさしげ)
北海道に研究所を設立していた、科学者の男性。オリジンからは「父さん」と呼ばれている。極めて人間に近い姿のロボットの開発に携わっており、やがてオリジンをはじめとした複数の人型ロボットの開発に成功する。外見のみならず、内面も人間に近づけることを目指し、その試みの一つとして、ロボットそれぞれに特有の癖を設定することにした。すでに故人だが、死に際にオリジンに「空を仰いだ時に一点も恥じることのないよう、ちゃんと生きていけ」という言葉を残し、彼の行動理念を決定づけた。オリジンからは、AEEロボット開発チームの陰謀によって命を奪われたと推測されている。なお人類からは、田中久重が開発したロボットの存在は認知されていない。