あらすじ
第1巻
1980年、ヘルヴァイツ共和国では人と吸血鬼が手を取り合って暮らしており、平和を享受していた。そんな中、かつての悪名を轟かせた戦闘用オートマタ「白壇式」の一体である水無月は、正体を隠してカノン=ザンデルホルツと共に人間として暮らしていた。人間そっくりの言動をする水無月であったが、正体がバレれば忌むべき存在として追われることとなる。カノンも母親との絆の象徴でもある水無月を失うのを恐れ、彼の正体がバレないように細心の注意を払って生活を送っていた。しかし街中で、オートマタの暴走事故が発生し、水無月がオートマタを鎮圧した姿をリタ=ローゼンベルクに見られてしまう。辛うじて誤魔化すことに成功するものの、リタは水無月にご執心で、事態はリタと水無月の決闘騒ぎまで発展する。吸血鬼の王族であるリタは、ずば抜けた力で水無月を追い詰めるが、水無月は捨て身の攻撃で間一髪勝利する。決闘に勝利した水無月は、リタに急かされたこともあり、勝者の権利を行使。カノンが参加したがっているオートマタコンテストに参加するため、リタを仲間に加えてオートマタコンテストを目指すことを決める。
関連作品
小説
本作『リベリオ・マキナ』は、ミサキナギの小説『リベリオ・マキナ』を原作としている。原作小説版は、本作と同じくオートマタの少年である水無月が、カノン=ザンデルホルツやリタ=ローゼンベルクとの交流を通じて人を学び、家族となっていく物語となっている。電撃文庫より刊行された。イラストはれい亞が担当している。
登場人物・キャラクター
水無月 (みなづき)
国立ハイデン高等学校に通う男子生徒。黒い髪をたなびかせた涼しげな表情を浮かべ、落ち着いた性格をしている。従姉のカノン=ザンデルホルツとつねに行動を共にしており、彼女に皮肉めいた言動をよくする。その正体は、五体作られたといわれている白壇式の六体目「第陸号・水無月」。人間そっくりの言動をはじめ、体温まで再現されているため、カノン以外の人間にはオートマタだと気づかれていない。しかし、根本は人間とは違うため、どこか人間とはズレた言動をしてはカノンを困らせている。また、自らの存在意義を果たすため、戦闘用オートマタとの戦いを渇望しており、暴走したオートマタを見ると戦いたくなる衝動が抑えきれなくなる。吸血鬼との決戦用に作られた戦闘用オートマタであるため、その性能は通常のオートマタとは一線を画す性能を持つ。高い自己判断に、対吸血鬼用の武装も相まって吸血鬼の王族とも互角に渡り合えるポテンシャルを誇る。ただし、水無月はその正体を隠しているために実戦経験が少なく、その性能を完全に発揮できずにいる。
カノン=ザンデルホルツ
国立ハイデン高等学校に通う女子生徒。明るくまじめな性格で、銀色の髪をストレートロングにしている。オートマタ技師になることを夢見ており、現在では異端とされる白壇式の技術を研究し、その活用を目指している。しかしそれ故に、周囲からは陰湿ないじめに遭っており、学校では孤立しがち。本名は「カノン=ビャクダン」で、元皇太子妃にして白壇式の生みの親である、「ハルミ=ビャクダン=ヘルヴァイツ」の実娘。現在は大公家に保護されており、彼らのもとで生活している。母親の無実を信じており、自分なりの方法で母親の無実を証明したいと考えている。突如現れた水無月を己の従弟と偽り、彼と生活を始める。水無月のことを大切に思っているが、水無月のどこかズレた行動には不安を抱えており、彼がミスした際には大慌てでそのフォローをしている。またオートマタマニアで、希少な部品などを見つけると興奮する癖がある。
リタ=ローゼンベルク
吸血鬼族の第三王女。長く伸ばした赤い髪をツーサイドアップに整えた少女で、凛とした雰囲気を漂わせている。吸血鬼の王族に恥じない威厳と、実力に裏打ちされた確かな自信を持つ。共和国軍の「赤の乙女部隊(スカーレット・メイデン)」に所属し、「紅薔薇少将」の異名を持つ有名人。オートマタの暴走事故で水無月を実力者と見抜き、彼を自分の下僕にすべく国立ハイデン高等学校に転入してくる。彼に決闘を挑むが敗北し、水無月に勝者の権利を使われ、水無月のオートマタコンテストのチームに加入する。強者を好む吸血鬼の気質を色濃く持ち、白壇式も強い存在として一目置いており、人間のように白壇式を忌避してはいない。吸血鬼としての高い身体能力に、霧化(ネーベル)をはじめとした特殊能力を使いこなし、その戦闘能力は非常に高い。また吸血鬼の王族にのみ伝わるブラッディソードの一つ「風葬の薔薇(トルナルド・ローゼ)」を所持しており、本気を出した際には風をあやつり、嵐を生み出すこともできる。
マイヤー
国立ハイデン高等学校に勤める中年の男性教師。誠実そうな見た目で、カノン=ザンデルホルツたちのクラスの担任を務める。実は大公家から派遣されているカノンの監視役兼世話役で、彼女の正体がバレないように配慮しつつ、便宜を図っている。突如現れた水無月の存在を怪しんでおり、彼に関してひそかに調査を開始している。
場所
ヘルヴァイツ共和国 (へるゔぁいつきょうわこく)
ヨーロッパ大陸の中央あたりに位置する共和国。戦争以前は大公のおさめる「ヘルヴァイツ公国」という国名だったが、イエッセル条約締結後は吸血鬼も国政に参加するようになったため、共和国制へと移行した。これによって人間と吸血鬼が共存する国となり、世界で最も平和な国といわれている。ヘルヴァイツ共和国ではオートマタ技術が発達しており、その恩恵によって町は栄えている。このため、街中の至る場所でオートマタの姿を見ることができ、都市部では作業用オートマタの方が人間より数が多い場所も存在するほど。ただし、ケルナーの悲劇によって白壇式に関しては忌避する人が多く、その研究をするだけで異端視されるなど戦争の爪痕が未だに残っている。
その他キーワード
ケルナーの悲劇 (けるなーのひげき)
1972年にケルナー地方で起きた事件。白壇式が突如として謎の暴走を開始し、3日間にわたって敵味方問わず大量の人間を虐殺した。地方都市丸々一つ分の人が死に、犠牲者の中には白壇式の生みの親である「ハルミ=ビャクダン=ヘルヴァイツ」も居たとされる。最終的に吸血鬼王「ローゼンベルク」が人類側に協力を打診し、これによってヘルヴァイツ公国とローゼンベルク軍の共同戦線が実現した。両軍の協力によって白壇式が破壊されたことで事件は終結し、この戦いをきっかけにして人間と吸血鬼の和平が成立する。人間と吸血鬼の結んだ和平条約は、締結された地名を取って「イエッセル条約」と呼ばれている。
オートマタ
歯車で動く機械仕掛けの人形。18世紀頃に開発され、20世紀後半には一部の人の仕事を代替するために用いられるほど人々の生活に根ざしている。東洋では「絡繰人形」とも呼ばれており、さまざまな用途で作られるが、基本的に人を模した形で作られるのが特徴。ただし、オートマタはプログラムどおりの決められた行動しかできず、人間のように自由な判断や会話はできない。白壇式はオートマタの中で唯一高度な判断能力を持ち、人間と会話すらできたとされるが、ケルナーの悲劇を引き起こしたため、そららの技術は忌避される傾向にある。ヘルヴァイツ共和国はオートマタ産業で栄えた国で、ヘルヴァイツ共和国ではオートマタは判別のためのマークを刻印するように法律で定められている。また、戦闘用のオートマタの開発は法律で厳しく禁止されており、白壇式の件もあり、それらの技術は異端視されている。
白壇式 (びゃくだんしき)
吸血鬼との決戦のために作られた特別製の戦闘用オートマタ。製作者は1970年当時、ヘルヴァイツ公国の皇太子妃だった天才技師、ハルミ=ビャクダン=ヘルヴァイツで、「波動歯車(ハーモニー・ギア)」と呼ばれる特別な歯車を使っているのが特徴。「ムツキ」「キサラギ」「ヤヨイ」「ウヅキ」「サツキ」のたった五体しか製造されていないが、その五体で吸血鬼の全軍を打ち倒す英雄的活動を行った。しかし1972年に、彼らは謎の暴走を開始してケルナーの悲劇を巻き起こし、敵味方問わず虐殺を行い、皮肉にもその虐殺で人間と吸血鬼は手を取り合い、戦争終結のきっかけとなった。このため、戦争から7年たった現在でも白壇式は忌まわしい存在として歴史に名を残している。また公式記録では五体の白壇式はすべて破壊されたのち回収されたとされるが、ムツキのみ残骸が確認されていない。水無月は公式記録には存在しないはずの六体目の白壇式であるとされる。
吸血鬼 (きゅうけつき)
生命の血液を摂取することで超常現象を引き起こす力「魔術」を使える亜人種。長命でもとの身体能力も人間より高い種族で、ほかにも「霧化(ネーベル)」と呼ばれる特殊能力を持ち、短時間ながら自らの肉体を霧に変化させて、攻撃を無効化することができる。また、吸血鬼は吸血した相手を「魅了(シャルム)」することで意のままにあやつることが可能となっている。優れた能力を持つだけに吸血鬼は誇り高い者が多いため、中には人間を劣等種として見下す者も存在する。紀元前より人間の前には姿を現さず、隠れて生活していたが、1960年に表舞台に現れる。当時の吸血鬼王「ルートヴィヒ」による人類の奴隷宣言によって世界各国と敵対した。たった10日で一国を征服し、それを足掛かりにしてヨーロッパへと進行を開始した。当初は有利に進めていたものの、白壇式の登場によって次第に一進一退の戦いとなり、1972年にケルナーの悲劇によって吸血鬼王「ローゼンベルク」が人類と共闘。この戦いをきっかけにして、ローゼンベルク派に属する吸血鬼は人類と平和条約を結び、共存の道を歩んでいる。
クレジット
- 原作
-
ミサキ ナギ
- キャラクター原案
-
れい亜
書誌情報
リベリオ・マキナ 全2巻 KADOKAWA〈電撃コミックスNEXT〉
第1巻
(2020-01-10発行、 978-4049129717)
第2巻
(2021-01-09発行、 978-4049136128)
- SHARE
-
-
- EC
-
