Waltz

Waltz

伊阪幸太郎の小説『魔王』のスピンオフ作品、『魔王 JUVENILE REMIX』の登場人物である蝉が、プロの殺し屋へと成長していく過程を描いたバイオレンスアクション。「ゲッサン」2009年11月号から2012年3月号にかけて掲載された。

正式名称
Waltz
ふりがな
わるつ
原作者
伊阪 幸太郎
作者
ジャンル
アクション
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概要・あらすじ

裏社会で最悪の殺し屋との評判の名もなき少年は、日銭を稼ぐためだけに殺しを請け負っていた。そんな彼の前に現れた岩西はその少年にと名付け、稼げるプロの殺し屋に育てると言い放つ。最初の依頼を成功させた蝉は正式に岩西と組むことになり、プロの殺し屋「首折り男」の殺害依頼を請け負うものの、彼の命を狙うのは蝉だけではなかった。

殺し屋たちの策謀がうごめくなか、蝉は着実にプロの殺し屋として成長していく。

登場人物・キャラクター

(せみ)

ナイフを扱う殺し屋で17歳の少年。幼い頃から持ち続けた「弱ければ死んで当然」という考えを誰にも理解されず、2人暮らしをしていた父親とも折り合いが悪く、中学卒業を機に家を出ることになった。殺しが金になると知り、裏の業界へと足を踏み入れたものの、周囲からの評価は最悪。そんな折、突如として現れた岩西という男に蝉と名付けられ、以後はプロの殺し屋として雇われることになった。 ずっと一人で生きてきた蝉は、岩西に期待を寄せられることに戸惑いを感じながらもターゲットとなる殺し屋の「首折り男」を追うことになる。同じく「首折り男」を狙っていた殺し屋の組織チクタクと対戦した際に敗北を喫し、己の意識の低さと不甲斐なさを嘆いたあとはプロとして雪辱を晴らそうと、もがきながらも成長していく。

岩西 (いわにし)

殺しの依頼を受ける仲介業者を営む男。蝉の名付け親で、その名前の由来は「ミンミンうるさいから」。世の中は金があれば何でもできる、という持論の持ち主で、専属契約は交わさず依頼ごとに雇う殺し屋を抱えていた。コンビニの店長からの依頼で「首折り男」を暗殺できる人物を探していた際、桃から蝉を紹介される。「首折り男」を追う蝉がチクタクと交戦したことで、岩西も命を狙われるがかろうじて逃走に成功。 その後は単独でチクタク本部に乗り込み、「首折り男」を見つけ次第引き渡すという条件で自らの命の危機を回避するが、その裏でチクタクを出し抜こうと奔走する。ジャック・クリスピンというミュージシャンを崇拝しており、何かにつけて彼の作った曲の歌詞を引用する。

大藪 (おおやぶ)

「首折り男」の異名を持つプロの殺し屋。素手で相手の首をちぎれる寸前までひねりあげるという殺害方法から、そう呼ばれるようになった。失敗した仕事はないと言われるほど優秀な殺し屋で、その殺害依頼金額は1000万円以上。一方で見知らぬ老人を助けたりと、誰かの役に立ちたいという複雑な性格の持ち主。帽子卿と呼ばれる殺人鬼の存在に気づき、彼を襲撃しようと決意するが、逆に返り討ちに遭い帽子卿の運転する車に轢かれてしまう。 死亡したと思われていたが、直前に別人と入れ替わり生存している。その後も帽子卿を倒そうと執拗に彼を狙い続けている。

帽子卿 (ぼうしきょう)

帽子に異常なまでの性的興奮を覚える殺人鬼。大量に所有する帽子を愛するがあまり、それが似合いそうな女性を拉致しては首を切り落とし、その頭部に帽子を被せて飾り、作品と呼び愛でている。必要なのはあくまで首から上だけなので、残った身体を金にするためにチクタクと手を組む。派手な狩りをしたせいで「首折り男」の目に止まり彼の襲撃を受けたが、その場に居合わせたチクタクの一員によって助けられる。 再び「首折り男」に襲われるのではという強い恐怖から、チクタクに「首折り男」の殺害を依頼する。

コンビニの店長 (こんびにのてんちょう)

岩西と蝉に「首折り男」の殺害を依頼した男。内縁の妻を「首折り男」に殺されたという理由で依頼をしていたが、それはすべてデタラメで、実際は帽子卿とは中学時代からの知り合いであり、彼が帽子に異常な執着を見せるきっかけとなった人物でもある。自身も切り落とした首に帽子を被せるという異常な犯罪に手を染めているが、それらを無償で美しさを求めるための愛の行為であるとうそぶいている。

(もも)

アダルトショップを経営する傍ら、裏社会の情報屋も営むスタイル抜群の美女。甘い物が好きで常にスイーツを食べている。情報屋という職業がら金さえ貰えれば誰にでも情報を売る。蝉を岩西に紹介したのも彼女。

苺原 稔 (いちごはら みのる)

同級生からイジメを受けている大柄な高校生。バイト先でも役立たずと罵られ、携帯に遺書を打ち込み自殺を考えるほど思い悩んでいた。容姿が「首折り男」に酷似していたため誤認したチクタクに命を狙われるが大藪によって助けられ、以後は彼を憧れるようになる。大藪の知り合いである老夫婦のもとに匿われるが、山崎の脅しに耐えられず外出してしまい、結果として大藪を窮地に追い込んでしまう。 そのことを悔やみ苦しんだ末、「首折り男」の代役として動くことを決意する。

山崎 (やまざき)

苺原稔の同級生で苺原をイジメている張本人。苺原にバイトを紹介したうえで、給料をまきあげている。クラスで幽霊を見たことがあると話した際、空気を読まない苺原から幽霊の存在を否定されたことを逆恨みし、彼をイジメるようになった。

大藪のマネージャー (おおやぶのまねーじゃー)

大藪のマネージャーを名乗っている男。行方の分からない大藪を探していたが見つけることができず、情報をもとに出会った彼にそっくりな苺原稔に代役を頼み、チクタクの待つ場所に連れていく。しかし、現場でチクタクに襲われ深手を負う。

老夫婦 (ろうふうふ)

大藪に頼まれ、苺原稔を匿っている夫婦。以前に駅の改札で切符の買い方が分からず困っていたところを大藪に助けられたことがあり、大藪から親戚の子がイジメに遭っているという事情を聞かされたため、快く苺原を受け入れた。

寺原 (てらはら)

「令嬢(フロイライン)」という会社の社長。非合法の薬の売買や人身売買、臓器売買まで稼げることは何でも仕事にする会社を作り上げた人物。軟禁した女性に次々と子供を産ませ、その子を臓器移植用として海外に輸出しているという黒い噂も流れている。

比与子 (ひよこ)

「令嬢(フロイライン)」の社員の女性。常に和服を着ており、寺原と行動を共にしている。令嬢の商売敵になりそうなチクタクを調べているうちに岩西と蝉にたどり着き、彼らを監禁し拷問しようと試みる。

スズメバチ

靴の先に毒針を仕込み、傷つけた相手を死に至らしめる殺し屋。幼い少女のような見た目で、髪にリボンを付けエプロンドレスを着ている。両足の太ももに対になるように、蜂の入れ墨を入れている。

集団・組織

チクタク

帽子卿と手を組み「首折り男」を殺害するよう依頼を受けた殺人集団で、リーダーは女性。最近になって日本に手を伸ばしてきたアジアの新興勢力。計ったように正確な仕事ぶりを時計になぞらえ、チクタクと呼ばれている。帽子卿が切り落とした頭部以外を買い取ったうえで処分も請け負っており、帽子卿とは仕事上のパートナーでもある。 大藪のマネージャーが連れてきた苺原稔を「首折り男」と勘違いしたまま拉致した際、割って入った蝉と交戦することになり、完膚なきまでに叩きのめした。

デコーズ

組長の強制によって全員が額に入れ墨を入れている暴力団。人望の厚い組員である結城の依頼で組長の田淵は蝉によって殺害されるが、その結城自身も「ムカついた」という理由で蝉に殺されてしまう。残された組員は結城の敵討ちを画策するが、岩西の依頼を受けた蝉によって一掃されてしまう。デコーズとは岩西が皮肉で付けたあだ名。

クレジット

原作

伊阪 幸太郎

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