虫由来の能力を持つ殺し屋たち
蜘蛛が所属する「組織」は現代日本の闇に潜み、人を殺害し、その存在すら消し去ってしまう「殺し屋集団」。その組織は謎に包まれており、一般人には名前すら知られておらず、ただ単に「組織」と呼ばれ、裏社会では恐れられていた。本作に登場する殺し屋たちはそれぞれ虫由来の特殊能力や武器を持ち、それらを駆使して派手なバトルアクションを行うのが特徴となっている。珍しい種類の虫はもちろん、ありふれた虫にも隠された能力があることが解説されている。
少女と殺し屋
藤井有栖は生まれつき過剰ともいえる集中力を持つことから、一つの物事に集中するとほかの物事に注意を払うことができず、日常生活にも支障をきたしていた。母親は1年前に自殺し、素行不良な叔父に引き取られて虐待される日々を送っていた。学校でも孤独で、クラスメイトからはいじめを受けており、どこにも居場所がなかった。しかしある日、叔父が「蜘蛛」を名乗る殺し屋に殺される現場を目撃し、有栖も蜘蛛に殺されそうになるが、死の間際に驚異的な集中力を発揮して反撃する。この行動に蜘蛛は有栖の殺し屋としての才能を見抜き、彼女を連れ去って殺し屋の術を叩(たた)き込むのだった。
組織と有栖
藤井有栖は蜘蛛に保護され、殺し屋としての道を歩む日々を送っていたが、次第に蜘蛛に愛着を抱くようになり、遂には彼を父親のように慕うようになる。しかし、そんな日々も突然、蜘蛛の手によって幕が引かれる。突如、蜘蛛に襲われた有栖は反撃して蜘蛛を殺害してしまう。実は蜘蛛は自分の人生を嫌悪して死にたがっていたことを知った有栖は、彼の遺言に従って強く生きることを誓う。そして、有栖は組織に新たな「蜘蛛」として勧誘されるが、有栖は自分の名前を大切にするためこの申し出を拒絶。すると、組織から次々と刺客を送り込まれるようになり、否応なしに望まぬ戦いに身を投じていくこととなる。
登場人物・キャラクター
藤井 有栖 (ふじい ありす)
とある高校に通う1年生の女子。赤みがかった髪をボブヘアにしている。1年前にうつ病を患っていた母親が自殺し、叔父に引き取られるものの、虐待同然の扱いを受けている。先天的に過剰ともいえる集中力により、日常生活や社会生活に支障をきたす、「先天性集中力過剰(CEC)」という精神疾患を患っており、学校でもそのせいでいじめに遭っている。叔父に強姦されかかった際、殺し屋の蜘蛛が叔父を殺害する現場を目撃し、藤井有栖自身も殺害されそうになるが、驚異的な集中力を発揮して蜘蛛に反撃する。有栖同様に蜘蛛もCECの症状を抱えているため、蜘蛛に興味を持たれ、彼から殺し屋としての手ほどきを受ける。当初は蜘蛛のことを快く思っていなかったが、厳しくも生きる目的を教えてくれた蜘蛛を父親同然に思い始める。生まれつき素質はずば抜けていたため、すぐに暗殺に使う「蜘蛛糸(スレッド)」の使い方も習得し、蜘蛛以上の技術を身につける。そんな中、突如蜘蛛に殺されかけたため、反撃して致命傷を負わせる。その際に蜘蛛の真意と遺言を聞かされ、自由に生きることを誓う。蜘蛛に名前を大切にするように言われており、組織に名前を捨てることを強要されるが、この申し出を拒否したことで、組織から刺客を送られる日々を送ることとなる。
蜘蛛 (くも)
「組織」に所属する殺し屋の男性。ふだんは眼鏡をかけているが、殺しの際には黒いサングラスを着用する。藤井有栖の叔父を殺害し、その現場を目撃した有栖も殺そうとするが、反撃されたことで彼女の才能を見抜き、殺さずに保護した。組織からは「有栖も殺せ」と命じられるが、彼女をアジトに匿(かくま)いつつ有栖に殺しのノウハウを教えた。有栖と同様に先天性集中力過剰と呼ばれる精神疾患を抱えており、日常生活に支障をきたしていたが、皮肉にもその疾患のため驚異的な集中力をコントロールする術を身につけ、殺しの技を昇華させ、スゴ腕の殺し屋となった。幼少期から天涯孤独で、クズ同然の人生を送ってきたため、蜘蛛自身に嫌悪感を抱いていた。死に場所を求めていたが、殺す相手は自分以上のクズばかりで、同族嫌悪から彼らに殺されるのを嫌い、今日まで生き残ることとなる。そんな中、自らと似た境遇で、まっすぐに生きようとする有栖に希望を見出し、蜘蛛自身の殺しの術をすべて叩き込み、彼女と戦って殺された。組織に名を奪われ、道具同然に扱われていたことから、今際(いまわ)の際に「名前を奪われるな」と有栖に警告している。
クレジット
- 原作
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村田 真哉
関連
書誌情報
アラクニド 全14巻 スクウェア・エニックス〈ガンガンコミックスJOKER〉
第1巻
(2010-07-22発行、 978-4757529434)
第14巻
(2016-02-22発行、 978-4757548879)