王様がランキングされる世界で、非力な王子が友人を得て、立派な王になるために過酷な運命に立ち向かっていく成長ファンタジー。街の発展や王様自身の強さによってランキングが決められている世界。ボッス王国の第一王子であるボッジは、耳が聞こえず話すこともできない。非力なボッジを家臣や国民たちは軽視していた。ある日ボッジは城から離れた場所で謎のカゲを見つける。カゲはボッジの言葉を理解し、金を出せと要求するのだった。2021年10月にテレビアニメ化。
昔々あるところに。そんな言葉で始まりそうな、おとぎ話のような柔らかな絵柄が印象的な本作であるが、主人公であるボッジに課された過酷な運命とのギャップに驚かされるだろう。ボッジはボッス王国の初代国王、巨人族の戦士ボッスと巨人族の王妃シーナとの間に生まれた第一王子である。屈強な王だったボッスと元戦士の王妃の間に生まれたが、ボッジは子どもが振るような剣も持つことができず、話すことができず耳も聞こえない。いつも笑っているようなボッジであるが、強さがすべての世界では彼の周囲に人は集まらない。王は強く賢く国を導くとともに、人の痛みを理解できなければならない。ボッジは確かに非力であるが、人に寄り添える。王たる資質を確かに持つ王子である。
前世を思い出した第3王子の主人公が、ダラダラと過ごすために奮闘する異世界転生スローライフ。階段から落下し頭を強く打ったフィルは、衝撃から前世を思い出す。前世は両親を亡くし、苦労して生きてきた大学生。あっけなく終わってしまった前世を憂い、今世ではのんびり生活をしようと試みるフィルだったが、4人の兄姉に囲まれて休まる暇もない。勉強すると部屋に閉じこもったフィルは、目的のためにこの世界のことを学び始めるのだった。原作は朝比奈和の同名web小説。
異世界転生には夢がある。現代社会に生きる前世が不遇不幸でも、転生すればリセットされて再スタートが切れるからだ。再スタートの地点の良し悪しはあるが、前世の知識は強みだ。フィルは3歳半で前世を思い出した第3王子だ。前世は中学生で両親を亡くし、高校からは1人暮らしをしながら進学をした苦労人。勉強とアルバイトに追われ人生を謳歌することもなく若くして事故死してしまったという状況には同情を禁じ得ない。両親は温かい人柄だったようだが、母方の祖父との折り合いは悪い。家族の愛情に恵まれたとは言い難い人生だった前世を見ると、今世の家族仲の良さは救いである。王に向いているかどうかは話が別だが、勤勉であるというのは良い素質だろう。スローライフへの想いが勝つか、動向に注目だ。
弱小国家の王子が、国を売って悠々自適な生活を送るために行動した結果、稀代の名君となっていく国家運営ファンタジー。ナトラ王国は資金源に乏しく軍も貧弱な北方の弱小国家。国王が病に伏せているため、王子であるウェインが国政に携わるようになった。能力は天才的でも怠け者の性分のウェインは、国を売って悠々自適の生活を目論んでいた。ある時大国であるアースワルド帝国との交渉に乗り出したが、皇帝が急死してしまうのだった。原作は鳥羽徹の同名ライトノベル。
国家を売ってしまえば、元王子が悠々自適な生活を送れるかというと、そう簡単にはいかない気がする。かといって、弱小国家の為政者としてやることは山積みだ。そのため、ウェインは誰彼構わず国を売ろうと考えているわけではなく、自分や国家にとって有益な国はどこなのかを慎重に吟味している。国を預かる責任者として、守るべきところは守るのだろう。しかし、政治だけでなく剣術でも天才的な能力を発揮されてしまうと、このまま王様やってくれないかなあなどと、国民目線になってしまった。
侵略によって国を奪われた王子が、幾多の困難の中成長し、多くの忠臣を得ながら国の奪還を目指す歴史大河ファンタジー。栄華を極めるパルス王国の王太子アルスラーン。王や王妃からは関心を持たれていなかった。父王がルシタニアとの戦で帰還した際、捕虜を数名連れてくる。アルスラーンは街を歩いていた時、奴隷商人に引き渡され脱走したルシタニアの少年兵に捕まり人質にされてしまうのだった。原作は田中芳樹の同名小説。2015年のテレビアニメ化をはじめ、メディアミックス多数。
主人公はアルスラーン。人口約2千万という大国パルス王国の王太子である。約300年続いた王朝はアルスラーンの父であるアンドラゴラス三世の統治下で益々繁栄していた。アンドラゴラス三世は武勇に優れているが、アルスラーンは真逆。芯は強いが温厚で繊細な性格だ。両親から関心を持たれず、国民からは少し頼りないと思われている。現に冒頭では自国の民をかばってルシタニアの少年兵の人質にされてしまっている。逃亡する少年兵を弓で射ようとした臣下を止めたのは、その心根の優しさからだろう。異教徒だからと差別をせず、対話をしようと試みる姿に良き王の片鱗が見られる。が、人生は上手くいかない。心優しき王子は国を取り戻す戦いの中で、どんな王になるのか。まるで伝記を読んでいる気分になる。
人間を凌駕する能力を持つ超人の主人公が、地球侵略を目論む怪獣と戦うことでヒーローとして成長し、やがて正義超人として強敵に立ち向かっていく格闘技コメディ。1979年、地球に突然宇宙怪獣が攻めてくる。各地の有名ヒーローはすぐ駆けつけることが難しい状況。地球防衛軍の長官は、いつも負けているドジなヒーロー、キン肉マンの存在を思い出す。呼びつけられたキン肉マンはかつてない危機にやる気を見せるのだった。1983年のテレビアニメ化他メディアミックス多数。
主人公、キン肉マンことキン肉スグルは特徴的なビジュアルの持ち主だ。団子鼻にたらこ唇。額の肉の文字は強いインパクトがある。実はこれは素顔ではなく、マスクなのだ。キン肉族には素顔を見られてはいけないという掟があるのだそうだ。地球を守るために怪獣と戦うキン肉マンだが、実は地球から500億光年離れたキン肉星の王子なのである。うだつの上がらない弱小ヒーロー感がにじみ出ているのだが、星に帰るとどこか王子の風格が漂う。しかし、王子らしさが一番垣間見えるのは闘っている時だろう。試合前には逃げ出そうと画策するくらいヘタレであるにもかかわらず、仲間の危機は見過ごせず正義感が強い。強く優しいことはヒーローだけでなく、王子の条件としても重要だ。