魔法が当たり前に存在する世界で、鍛え抜かれた筋肉を持つ青年が活躍する筋肉魔法ファンタジー。舞台は魔法の巧拙で身分さえ決まる世界。そんな中、魔法の使えない青年マッシュ・バーンデッドは筋トレに明け暮れていた。家族である父との平穏な生活を望むマッシュであったが、ひょんなことから魔法学校に通うこととなる。魔法が使えないながら、鍛えた筋肉で次々困難を克服していくマッシュ。年に一度最も優れた学生が選ばれる「神覚者」になるために彼は奮闘する。
マッシュルームヘアーでシュークリームが大好きな青年・マッシュ。魔法は使えないが、鍛え抜かれた筋肉と並外れた身体能力が特徴である。その筋力は、素手で魔法をはじき返すほどだ。そんな彼が、次々と降りかかる試練を筋肉のみで打開していく。マッシュの朴念仁的な性格や、それに振り回される学友らの様子が楽しい作品だ。本格的な魔法作品でありながら、マイペースなマッシュの並外れた筋力がシュールで可笑しく、コメディ色が強い。設定だけに着目すると『ブラッククローバー』プラス『ワンパンマン』のような作品に思われるかもしれない。だが前述の2作品とはまた違った読み味の作品である。いずれもキャラが「立って」いる作品であるから印象が異なるのは当然だろう。今後が楽しみな作品である。
筋トレ好きの社長が筋トレによる生き方の改善を促す自己啓発コメディ。就職活動中のひ弱な男子大学生・星野はある日暴漢に絡まれたところを筋骨隆々の男性に救われる。その男性は「筋肉はこの世の99%の問題を解決する!!」と主張し去っていく。その後、渡された名刺を頼りにフィットネスジムへ男性を訪ねていった星野。実はジムの社長であったその男性に勧められ、気乗りしないながらも彼の元で筋トレとその重要性を学んでいくのであった。
社長のモデルは原作者「Testosterone(テストステロン)」だろう。SNSなどで発言が注目され、多くのフォロワーを持つ青年社長である。筋トレに関する著書を多数執筆する人物であるが、本作はそれらを分かりやすく漫画にまとめた自己啓発作品だ。例えば、本作では人間関係のストレスを筋トレになぞらえる。ダンベルなどの上げる動作(ポジティブ動作)、下げる動作(ネガティブ動作)を例に、他者による前向き後ろ向きな発言両方を筋トレで昇華、ひいては自分を成長させようという方法だ。日々使える筋トレ方法、のみならず気持ちのありようや考え方といった処世術が多数紹介されている。昨今の筋トレブームに一役買っている原作者の哲学を簡潔に学べる良書である。
やせ過ぎと太り過ぎな2人組が心と身体を鍛えなおす筋肉コメディ。ルームシェアをする2人組、早瀬隼人(はやせはやと)と井出伊吹(いでいぶき)通称・デイヴ。10年前はソフトテニス部の黄金ペアであったが、今では見る影もなくやせ過ぎ、太り過ぎてしまい、同窓会で大恥をかいてしまう。そのことがきっかけとなり通い始めたジムで、パーソナルトレーナーの関口さんと出会う。関口さんの指導のもと、2人は筋トレの方法やプロテインの選び方などを学んでいくのであった。
作者自らのトレーナー経験をもとにした本作。それもあってか本格的な筋トレや食事方法などが初心者にも分かりやすく描かれている。脱やせ過ぎと脱太り過ぎを目指す2人、それぞれへの筋トレ知識を楽しみながら学ぶことができる。鯖缶のみで1話使った話もあり、食事の方法なども詳しい。同窓会のエピソードから筋トレを志す2人。このエピソードには身につまされる読者も多いだろう。そして、隼人とデイヴの友情の物語として面白く読むこともできる。やはり、1人なら続かなくても、励まし合って頑張れるパートナーがいると、筋トレにも力が入るのかもしれない。漫画という特性も含め、描写が非常に分かりやすく丁寧なため、筋トレ初心者が、初めて手にする1冊としてもオススメの作品だ。
筋トレ好きのOLが周囲にばれないように鍛錬を決行する筋トレコメディ。29歳の女性編集者・丹練子(たんれんこ)。一見普通のOLに見える彼女には、筋トレが大好きという秘密があった。多忙な編集者とあって、なかなかジムに通えない彼女は、オフィスや会議室、出張先などで周囲にばれないよう、こっそり筋トレを行う日々なのであった。筋トレに飢えた彼女の目には、打ち合わせブースの鉄筋や、本棚の間の隙間すら筋トレのための空間として映るのだった。
練子が隠れた趣味である筋トレを周囲にばれないようにこっそり行う様子が可笑しい。例えば女子がオタク趣味を隠す苦悩を描いた作品では『トクサツガガガ』や『コンプレックス・エイジ』などがあり、同様の設定の作品がいくつか思いつく。だがその系統に属するであろう本作の「筋トレ」オタクという発想はなかなか斬新である。本作はコメディタッチながら、自分の好きなことを大っぴらにできないという悲哀が前述の2作品と共通する要素であろう。とはいえ、本作はコメディ色が強く、あからさまに筋トレをしているのに、なかなかばれないのはギャグ漫画的ではある。たとえるなら、往年のドリフターズの「志村後ろ後ろ」的なギャグであり、読者ははらはらしつつも笑ってしまう。
筋トレ部所属の女子が、意中の男子を思うあまり、空回りするお色気コメディ。筋トレ部所属で才色兼備の人気者である女子高生・黒蜜凛(くろみつりん)。彼女は意中の男子である新入部員の華奢男子・小豆樽斗(あずきたると)の前では素直になれず、暴走してしまう。そんな黒蜜の暴走っぷりをお色気たっぷりに描いた作品。そこに小豆の思い人で黒蜜に憧れる白玉和菓子(しらたまわかこ)も加わって三角関係となるのであった。
才色兼備で学園のアイドルなのに、小豆の前で素直になれない黒蜜が可愛らしい本作。そういった内容の作品では他に『早乙女選手、ひたかくす』が思いつくが、本作はよりお色気要素が強い。無論、それだけでなく、筋トレの豆知識も学ぶことができる本作。例えば第1話で紹介されるのは「ダンベルカール」。そのやり方と効能が紹介されるが、例えば鍛えられた力こぶは、ビールジョッキをたくましく持ち上げて飲む姿がかっこよく見せられるなどといった話が披露されるのも楽しい。恋愛に不器用な三者、黒蜜・小豆・白玉の三角関係となりますます展開を面白くしている。そして黒蜜が恋愛を経て可愛らしくなっていくのが、この漫画の最大の見せ場であり魅力である。