第二次大戦から高度経済成長、様々な物事がダイナミックに変化した昭和は、「激動の時代」と評されることが多い。変化に富んだ時代だけに、物語の舞台としても魅力的だ。今回はそんな「昭和」がタイトルに入った作品を紹介しよう。
「平成」が過去になる節目を控え、タイトルに「昭和」が入った漫画を紹介!
出典:白泉社
第二次大戦から高度経済成長、様々な物事がダイナミックに変化した昭和は、「激動の時代」と評されることが多い。変化に富んだ時代だけに、物語の舞台としても魅力的だ。今回はそんな「昭和」がタイトルに入った作品を紹介しよう。
出典:白泉社
高校生プロ棋士の奮闘を描いた、青春将棋漫画『3月のライオン』のスピンオフ作品。本編では将棋連盟会長を務める第16世名人・神宮寺崇徳の若かりし日々を描く。激動の昭和を駆け抜けた、棋士たちの激闘の記録だ。主人公・神宮寺崇徳は、18歳でプロ棋士となり、僅か4年で最上位のA級にまで登りつめた俊英だった。ところが、23歳で迎えた名人戦で大惨敗を喫して以来、3年もの間、泥沼のスランプに陥ってしまう。その後、彼はその泥沼で足掻いた経験を糧に、一回り大きな棋士となって復活する。
神宮寺崇徳は、豪放磊落な人物で、本編においては将棋連盟会長として、主人公・桐山零を始めとする若い棋士たちにも気さくに接する。70歳という年齢を感じさせない、かくしゃくとした老棋士である。本編に厚みを与える名バイプレイヤーの彼を主人公として、昭和の将棋界を描いたのが本作だ。昭和40年代、若かりし頃の崇徳は、本編以上に熱い人物で、己の全てを将棋に捧げる覚悟でいる。彼を変えたのが、名人戦での大惨敗。対戦相手である名人・田中七郎は、まさに将棋の化物であった。七郎を倒すには、自分も人間を捨て、化物になるしかない。そう思い立った崇徳は、自分に想いを寄せるアパートの隣人・小谷香織に後ろ髪を引かれつつも、修羅の将棋道に邁進していく。作中には、チキンラーメン、ホームランバー、ボンタンアメといった、昭和生まれの食品や風物詩が解説付きで登場。昭和の空気感を再現しているのも特徴の1つだ。
出典:マンガペディア
運命的な出会いをした師弟を中心に、昭和初期から平成初期に掛けての落語界の変遷を描いたヒューマンドラマ。昭和最後の大名人と謳われた落語家・有楽亭八雲。彼が慰問に訪れた刑務所で演じた「死神」に感銘を受けた与太郎は、出所と同時に弟子入りを志願する。弟子は取らないと決めていた八雲だが、自由奔放な弥太郎にある人物の面影を感じ、弟子入りを承諾。やがて2人の間には、強い絆が生まれていく。
落語界にとって昭和は、まさに激動の時代だった。戦時中は不謹慎であるとして、花柳物や艶笑物の名作古典が禁演となり、寄席も閉鎖が相次ぐ。そして戦後、落語界はかつての活況を取り戻す。さらにテレビという新たなメディアの潮流に乗り、空前の落語ブームが巻き起こる。しかし皮肉なことに、ブームの終焉をもたらしたのもまた、テレビだった。物語冒頭の昭和50年代、落語は漫才ブームの波に呑まれて青息吐息。そんな時代の流れにも関わらず、孤高の存在として世に認められているのが、昭和最後の大名人と謳われた八代目・有楽亭八雲。本作の主人公の1人である。八雲には、少年時代から同門で凌ぎを削った盟友がいた。その名は、有楽亭初太郎。後に助六を襲名する、自由奔放で天真爛漫、天才肌の落語家であった。物語は、2人が師匠に入門した昭和初期に遡り、落語界の変遷を描いていく。
出典:マンガペディア
不老不死の能力を持つ美女と、彼女を守る超能力者の少年の過酷な戦いを描いた、ハード・バイオレンスSF。本田昇平は、幼少の頃に受けたトラウマから、喋ることが出来なくなった16歳の男子高校生。微弱ながら超能力の持ち主である彼は、絶望の未来を待ち望む、少々危険な少年だ。彼はある日、マリアと名乗る謎の女性と邂逅。彼女から性行為による浄化の儀式を施される。浄化で言葉を取り戻した昇平は、マリアの訓練によって「覚醒者」として急速に成長。やがて彼はマリアと共に、彼女を狙う謎の組織「比丘尼クラブ」との戦いに身を投じる。
本作の主人公・マリアは、不老不死の能力を持つ「ヴァンパイア」と呼ばれる女性である。彼女は、刃物や銃弾で受けた程度の傷は、瞬時に治癒する。さらに肉体が限界に達すると、マリアは、単性生殖で自分の記憶を受け継いだ子どもを出産。そうして、数百年以上に渡って命を繋いできた。マリアは、いつの時代も、彼女の不老不死を得ようとする人間に付け狙われる。そのため彼女は、超能力を持つ「覚醒者」をパートナーとして、熾烈な戦いを繰り広げてきた。そして現代での「覚醒者」に選ばれたのが、本田昇平なのだ。なお、マリア自身は気付いていないが、彼女にはもう1人味方がいる。それは彼女を狙う「比丘尼クラブ」の幹部・十文字篤彦である。彼は幼い頃、マリアに育てられた孤児だったのだ。物語は昇平と篤彦という2人の男を中心に、昭和の時代を前後しながら展開していく。
出典:双葉社
昭和52年の東京を舞台に、思春期真っ盛りの男子中学生たちによる、煩悩に塗れた日々を描く、青春コメディ。物語の主人公・猿田清志は、中学1年生の陸上部員。ついついニヤけた視線で女性を見つめてしまう彼は、ニコシという渾名で呼ばれている。彼は、クラスメイトの新聞部員・滝沢礼二、野球部員・丸木正一郎らとつるんでは、未知の女体に妄想を膨らませるエロ少年である。ニコシたちは、己のリビドーに突き動かされながら、悶々とする日々を過ごしていく。
物語の舞台は、インターネットが一般に定着する遙か以前、ビデオすら普及していなかった昭和52年の東京。当時の中学生にとって、エロ情報入手の難易度は、現在とは比べ物にならないくらい高かった。現在ならば、ネットでちょっと検索すれば入手可能な情報も、当時は様々なハードルをクリアする必要があった。主人公・ニコシは、若さ故の衝動に駆り立てられ、懸命にエロネタを追い求める。例えば、現在ではほぼ絶滅したエロ本の自動販売機で、エロ本を入手しようと、深夜にこっそり自転車で家を出る。あるいは、親が寝ている隙に、深夜のHなテレビ番組を見ようとする。彼の悪戦苦闘ぶりは、涙ぐましくも微笑ましい。たとえ世代が異なっても、男ならば共感できる部分は多いはず。当時を懐かしむ昭和世代だけでなく、かつて思春期だった全ての男性におすすめの作品だ。
出典:小学館
作者・北見けんいちが自身の体験を元に、昭和の懐かしい風景を描いたイラストエッセイ集。満州で生まれた北見けんいちは、日本に引き揚げた後、東京で親戚の家を転々とする生活を送る。やがて母と弟と再会した彼は、戦後、急速に発展する昭和の日本を見つめながら成長していく。本作では、北見けんいちが目で見て、肌で感じた当時の風景を、フルカラーで描き、自身の思い出を綴っている。
本作は、激動の昭和を生きた作者・北見けんいちが、自身の体験と共に当時の社会情勢や出来事を綴ったイラストエッセイ集だ。本作は、77本のエッセイを、1月~12月までの月ごとに区切って掲載している。季節の移り変わりと、時代の変遷を同時に楽しめる作りと言える。興味深いのは、各月のエッセイの並びが、必ずしも年代順ではない点だ。例えば7月は昭和25年から始まり、23年、24年と続いて一気に43年に飛び、30年に戻るといった具合だ。また、年代が定かでないものに関しては、昭和4?年といった表記が成されている。想い出というものは、単純な時系列ではなく、体験者の印象で順序が変る。記憶が曖昧な部分は、敢えて朧気なまま語るも良し。そんな人間臭さ漂う構成も、本作の魅力だ。牧歌的で暖かみに溢れた作者の絵柄も相まって、実にほっこりした内容となっている。
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