概要・あらすじ
主人公与太郎は、刑務所慰問会で聞いた八代目有楽亭八雲の落語に惚れ込み、出所後八雲に弟子入りする。八雲は与太郎の奔放な噺の雰囲気にかつての親友であり兄弟子でもあった有楽亭助六の姿を見るようになる。落語家として成長する与太郎は天性の明るさと人懐こさで、八雲と助六に関わる人々のわだかまりをほぐしていく。
登場人物・キャラクター
与太郎 (よたろう)
茶髪で大柄の青年。かつてやくざの下っ端で、服役中に聞いた八代目有楽亭八雲の落語に惚れ込み弟子入りする。八代目有楽亭八雲の弟子だが奔放な芸風は八雲の兄弟子有楽亭助六に通じる。真打昇進と同時に三代目有楽亭助六を襲名する。小夏が出産した後、夫婦になろうと提案する。
八代目有楽亭八雲 (はちだいめゆうらくていやくも)
与太郎の師匠。痩身で切れ長の目の男。芸者の女系家族の中で居場所を失い落語の道へ入る。ストイックに芸を磨き、八代目有楽亭八雲を襲名し昭和最後の大名人と評される。無愛想で気難しい性格。かつてみよ吉と恋仲だった。親友有楽亭助六の死後引き取った小夏や弟子与太郎への愛情は深い。
有楽亭助六 (ゆうらくていすけろく)
癖毛を伸び放題にし、服装もだらしない事が多い。孤児の身だったが、落語が好きだったことから落語の道に入り、八代目有楽亭八雲と同門で修業する。自由奔放な落語で天才と評されることもあるが、伝統を重んじる落語協会からは疎んじられていた。みよ吉と夫婦になり小夏を授かる。 みよ吉と事故死する。
小夏 (こなつ)
有楽亭助六とみよ吉の娘。八代目有楽亭八雲に育てられた。気の強い女性。女中として料亭で働いているが実は女性でありながら落語家に憧れている。父親の有楽亭助六が死んだのは八雲のせいだと思っており、恨んでいる。有楽亭助六のことが大好きで似た面影を追って親分の子供を身籠り未婚の母になる。
みよ吉 (みよきち)
小夏の母親。芸者で男性への依存が強い。戦時中、満州で七代目有楽亭八雲に出会い愛人となる。紹介された八代目有楽亭八雲に心底惚れてしまい恋仲になるが別れを告げられる。その後有楽亭助六の子供である小夏を身ごもり有楽亭助六と共に田舎へ行く。八代名有楽亭八雲と再会した際に有楽亭助六と事故死。
七代目有楽亭八雲 (ななだいめゆうらくていやくも)
八代目有楽亭八雲と有楽亭助六の落語の師匠。厳しくも優しい人物だが八代目有楽亭八雲には甘い部分があり有楽亭助六とは落語への見解の違いから決裂する。実は有楽亭助六に落語を教えた助六と若い頃兄弟弟子だった。無理やり奪った八雲という名に強いコンプレックスがある。
助六 (すけろく)
有楽亭助六に寄せ場で落語を教えた人物。過去には七代目有楽亭八雲と兄弟弟子でありとてつもなく落語がうまかった。八雲の名を襲名できず有楽亭一門を去る。有楽亭助六が七代名有楽亭八雲に弟子入りする前に死んでいる。
松田さん (まつださん)
七代目有楽亭八雲の運転手兼お手伝いさん。柔らかい物腰で優しく親切な男性。七代目有楽亭八雲亡き後、八代目有楽亭八雲の家でも運転手兼お手伝いさんをしている。
栄ちゃん (えいちゃん)
芸者でみよ吉の勤める店の娘。今では料亭を営んでおりみよ吉の娘小夏のことも大事に思っている。親分の愛人。
萬歳師匠 (ばんざいししょう)
上方の落語家。先代から有楽亭一門と仲が良く二人会をする仲。気さくな性格。病気を患った後、亡くなる。
萬月 (まんげつ)
萬歳師匠の息子であり落語家。落語家でありながらテレビ出演ばかりに力を入れている。調子の良い性格。八代目有楽亭八雲のファン。
樋口 栄助 (ひぐち えいすけ)
作家の男性。学生の頃八代目有楽亭八雲に弟子入り志願するも拒否されている。落語や八代目有楽亭八雲に関するあらゆることを記録しようとしており、与太郎と新作落語を作ろうと企んでいる。
兄貴 (あにき)
与太郎がかつて所属していた組にいるやくざ。以前は与太郎の面倒を見ていた。与太郎を連れ戻しに来て最初は落語をバカにしていたが実際に見ることで与太郎の落語を認めた。
親分 (おやぶん)
与太郎がかつて所属していた組のやくざの親分。面影が有楽亭助六に似ている。栄ちゃんを愛人にしているが小夏とも関係を持っており、与太郎は信ちゃんの父親ではないかと考えている。
信ちゃん (しんちゃん)
小夏の子供。まだ幼い。戸籍上は与太郎が父親。くせっ毛や目元が有楽亭助六に似ている。
お千代ちゃん (おちよちゃん)
下座見習いの女の子。八代目有楽亭八雲が初めて付き合った女の子。疎開で離れ離れになる。
アマノ
文芸評論家。有楽亭助六をこき下ろし八代目有楽亭八雲の怒りをかう。演芸評論家であるアマケンの父親。
アマケン
演芸評論家。幼い頃から父親のアマノに連れられて寄席に出入りしていた。八代目有楽亭八雲の大ファン。
アニさん
八代目有楽亭八雲に弟子入りしたばかりの与太郎に寄席での仕事を教えてくれた。細やかな気配りができるが前座6年目で落語家としては芽が出ていない。
書誌情報
昭和元禄落語心中 10巻 講談社〈KCx〉
第1巻
(2011-07-07発行、 978-4063805147)
第2巻
(2012-01-06発行、 978-4063805543)
第3巻
(2012-10-05発行、 978-4063805925)
第4巻
(2013-06-07発行、 978-4063806311)
第5巻
(2014-02-07発行、 978-4063806700)
第6巻
(2014-08-07発行、 978-4063807080)
第7巻
(2015-03-06発行、 978-4063807523)
第8巻
(2015-08-07発行、 978-4063807882)
第9巻
(2016-02-05発行、 978-4063808322)
第10巻
(2016-09-07発行、 978-4063808766)