3月のライオン昭和異聞 灼熱の時代

3月のライオン昭和異聞 灼熱の時代

羽海野チカの代表作である『3月のライオン』のスピンオフ作品。日本将棋連盟現会長、第16世名人神宮寺崇徳の若かりし日々を描いた、昭和の激動の時代を駆け抜けた棋士たちの激動の記録。「ヤングアニマル」2015年9号から連載の作品。

正式名称
3月のライオン昭和異聞 灼熱の時代
ふりがな
さんがつのらいおんしょうわいぶん しゃくねつのとき
作者
ジャンル
将棋
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概要・あらすじ

昭和44年(1969年)、神宮寺崇徳は18歳で将棋のプロ棋士になり、破竹の勢いで頂点へと上り詰めようとしていた。そしてついに名人戦にまでたどり着いたが、結果はまさかの惨敗。対戦相手に完膚なきまでに打ち負かされ、崇徳は失意のどん底に落とされた末に棋界から姿を消した。そして3年の月日が流れ、崇徳は再び棋士の頂点を目指すべく、丸藤八段を相手に復帰戦へと臨むのだった。

登場人物・キャラクター

神宮寺 崇徳 (じんぐうじ たかのり)

将棋のプロ棋士で八段の男性。アパート「月光荘」の203号室に住んでいる。まだ若いが白髪で、白いワイシャツに黒いネクタイを締め、スーツを着用している。昭和17年5月5日、東京都千代田区神田で生まれた。両親はともに神田の中学校の教師。父親から将棋を教わり、若くしてその才能が開花。大人を相手にしても負け知らずで、12歳でプロ棋士を目指して棋界に入った。 18歳でプロ棋士になり、僅か4年で日本に10人しかいないA級棋士まで駆け上がる。マスコミからも注目を集め、「反骨の猛虎」「棋界の革命児」と呼ばれ、史上最短で名人まで上り詰めるのではないかと期待されていた。しかし、田中七郎名人との対局で完膚なきまでに打ち負かされ、直後に棋界から姿を消す。 そのまま戻って来ることはないと思われていたが、3年後に棋界に復帰し、丸藤八段を相手に復帰戦に挑む。棋界では異端児として有名で、対局に遅れたりくわえ煙草で将棋を指したりといった自由奔放なスタイルから、彼のことを快く思っていない棋士も多い。趣味は釣りで、粗雑で面倒くさがりな性格から、私生活ではチキンラーメンを好んで食べている。

小谷 香織 (こたに かおり)

神宮寺崇徳と同じアパート「月光荘」の202号室に住む女性で、娘の小谷留美と二人暮らしをしている。長い黒髪で、口元のほくろが特徴。白い半袖のブラウスに黒いスカートを着用している。昼は近所の仕出し屋で弁当詰めのアルバイトをし、夜は飲み屋で働いている。夜の仕事帰りに店の酔っ払い客に絡まれて困っていたところを崇徳に助けられ、以降は同じアパートの住人ということもあり、家族ぐるみの付き合いをするようになった。 誰からも好かれるような真面目で素直な性格で、その人柄から、女手一つで娘を育てている香織を支援しようとする者も多い。

小谷 留美 (こたに るみ)

小谷香織の娘で幼稚園児。長い黒髪をツインテールにしてリボンで結び、白い半袖のブラウスにサスペンダーをつけて、黒いミニスカートを穿いた小柄な少女。アパート「月光荘」で母親の香織と2人で暮らしており、香織が仕事の時は大家さんに世話になっている。家族ぐるみで付き合いのある、アパートの隣の部屋の神宮寺崇徳によく懐いており、対局に臨む崇徳を応援するために、大好物のボンタンアメをプレゼントすることもある。

柳原 朔太郎 (やなぎはら さくたろう)

将棋のプロ棋士で六段の男性。眼鏡をかけており、白いワイシャツにストライプ柄のネクタイを締め、スーツを着用している。神宮寺崇徳とは同期で、崇徳とは互いに「朔ちゃん」「徳ちゃん」という愛称で呼び合う仲。崇徳とは休日に一緒に市ヶ谷フィッシュセンターに釣りに行くなど、プライベートでも仲がいい。普段は温厚だが、時折弱音を吐く崇徳に対しては厳しく叱咤激励するなど、仲間思いで情に厚い性格ゆえに感情的になることもある。 長い期間四段から上がることができずにいたが、努力を重ねて現在は六段にまで上がり、これからの棋界は崇徳を筆頭とした、自分たち若い世代の時代に変わっていくだろうと確信している。アンパンと冷たい牛乳の組み合わせが好きで、銀座パーラーのメロンパフェが大好物。

田中 七郎 (たなか しちろう)

将棋のプロ棋士で、15世名人の男性。小柄な体格で、ダボダボの黒い羽織り袴を着用し、黒い髪をオールバックにして固めている。幼少時に母親から買ってもらった黒いフレームの大きな丸い眼鏡と、尖った2本の前髪が特徴。大正3年3月3日、北関東の貧しい小作農の7人兄弟の末っ子として生まれた。幼少時代から小柄で身体が弱かったため、父親や兄弟から疎まれ、「豆猿」「やせ蝗」と近所の子供たちに馬鹿にされていた。 小学生の時に将棋と出会ってその才能が開花し、父親の反対を押し切って上京。その後、プロ棋士に弟子入りして自身もプロ棋士デビューを果たし、現在は棋界の頂点に君臨する名人の座にまで上り詰めた。3年前に神宮寺崇徳と対局して4勝0敗で完全勝利を収め、惨敗した崇徳にその場で割腹しろと言い渡し、それが崇徳が棋界を離れるきっかけとなった。 お座敷遊びが大好きで、日本将棋連盟会長で兄弟子でもある角田雄蔵を時々連れ出しては高級料亭に通っている。

山南 博史 (やまなみ ひろし)

将棋のプロ棋士で八段の男性。黒い髪を中分けにして眼鏡をかけ、白いワイシャツにストライプ柄のネクタイを締めてピンストライプ柄のスーツを着用している。東京大学へ進学した兄が2人いるが、山南博史自身は大学へ進まず、プロ棋士になる道を選んだ。神宮寺崇徳の兄弟子で、崇徳が棋界に入った当初は門下でも新進気鋭の若棋士として知られ、弟弟子の面倒をよく見る、将棋が強くて優しい人物だった。 しかし、崇徳の才能が自身を凌駕しつつあることに危機感を抱いて精神的に追い詰められ、崇徳との関係は次第に悪化していった。現在は個性的な風貌と明るく高飛車なキャラクターで、テレビ番組などのメディアで人気を博している。正統派のしっかりした将棋を打ち、その棋風から「名刀 山南」と評されることもある。 既婚者で、山南良子という妻がいるにも関わらず、テレビ番組の司会を通して知り合ったタレントの佐倉ミミと親しい関係にある。

山南 良子 (やまなみ よしこ)

山南博史の妻。黒髪のショートカットで、タートルネックのシャツの上から襟のある長袖のセーターを着用し、ロングスカートを穿いている。博史がテレビなどのメディアで人気を博す前から、長く彼を支え続けて来た。神宮寺崇徳が棋界に入ったばかりの頃には、博史がよく自宅に連れて来ていたため、食事を振舞ったりと崇徳のことを可愛がり、崇徳からもまた「良子姐さん」と呼ばれ慕われていた。 包容力のある母性的な女性だが、一方で気が強く、博史が精神的に追い込まれスランプに陥っていた時期にはよく口喧嘩になり、手を上げられることも少なくなかった。博史と崇徳が疎遠になってしまった現在でも崇徳のことを気にかけており、博史との対局前に久しぶりに山南家を訪れた崇徳を歓迎し、彼の成長ぶりを喜んでいた。

美崎 智彦 (みさき ともひこ)

将棋のプロ棋士で八段の男性。年齢は36歳。長髪で、まつ毛が長く切れ長の目の、中性的な顔立ちをしている。対局には着物を着用して臨む。旧華族の出身で、不動産屋の三男として生まれたことから、周囲の人間からは父親の財産で悠々と将棋を指しているように見られている。そのため、同段位の神宮寺崇徳のように美崎智彦のことを快く思っていない者も一部に存在する。 美しい将棋を指すことをポリシーに、「打倒名人」を掲げて研究会を組んでいる異能の棋士で、崇徳の棋風を醜く汚れた泥臭い将棋と酷評している。既婚者で、黒髪の清楚で和服の似合う妻がいる。趣味は読書で、対局の直前まで小説を読んでいるほどの読書家。特にライナー・マリア・リルケなどのドイツ文学を好んで読む。 幼少時代は体が弱く、兄の美崎和彦と美崎秀彦に将棋でよく遊んでもらっており、それが彼の将棋の才能を開花させるきっかけになった。

美崎 和彦 (みさき かずひこ)

美崎智彦の兄。黒髪で白いワイシャツに黒いネクタイを締め、ベストを着用し、スラックスを穿いている。旧華族の出身で、不動産屋の長男として生まれた。次男の美崎秀彦とともに年の離れた末っ子で病弱な智彦をとても可愛がり、よく3人で将棋を指して遊び、それが智彦の将棋の才能を開花させるきっかけになった。しかし、国の徴兵制により戦地へ赴くことになり、そのまま帰らぬ人となる。

美崎 秀彦 (みさき ひでひこ)

美崎智彦の兄。癖のある黒髪で、眼鏡をかけており、白い立て襟のシャツにサスペンダーをつけて、スラックスを穿いている。旧華族の出身で、不動産屋の次男として生まれた。長男の美崎和彦とともに年の離れた末っ子で病弱な智彦をとても可愛がり、よく3人で将棋を指して遊び、それが智彦の将棋の才能を開花させるきっかけになった。 しかし、国の徴兵制により戦地へ赴くことになり、そのまま帰らぬ人となる。

丸藤 (まるふじ)

将棋のプロ棋士で八段の男性。坊主に限りなく近い短髪で、筋肉質で大柄な体型をしており、白い半袖のワイシャツに黒いスラックスを着用している。A級に通算8年在籍していた強者で、特に終盤の局面での力強さに定評があり、名人の田中七郎にも善戦をした経歴を持つ。真面目な性格で、対局に遅刻したり、対局相手に軽い調子で話しかけたりする神宮寺崇徳の振る舞いを快く思っていない。

角田 雄蔵 (かくた ゆうぞう)

日本将棋連盟会長の男性で、年齢は50歳。中肉中背の体型をしたロマンスグレーで、白いワイシャツにストライプ柄のネクタイを締め、スーツを着用している。仕事柄、雑誌「現代将棋」の編集長の浅井秀樹と仲が良く、秀樹のことを「秀ちゃん」と愛称で呼んでいる。田中七郎の兄弟子でもあることから、七郎に使い走りにされて困っている秀樹の相談に乗ることとなる。

浅井 秀樹 (あさい ひでき)

男性編集者で、年齢は43歳。黒いフレームの眼鏡をかけ、黒髪をリーゼントにして、白いワイシャツにネクタイを締めてスーツを着用している。雑誌「現代将棋」の編集長で、将棋連盟会長の角田雄蔵と仲が良い。若い頃から体力には自信があり、雑誌の編集作業に追われながら全国各地へ取材に赴く日々を送っている。愛煙家で、よく煙草を口にくわえている。

大家さん (おおやさん)

アパート「月光荘」の大家をしている男性。白髪の短髪で、ステテコ姿で腹部に腹巻をしている。息子を戦争で亡くし、現在は大家さんの妻とともに月光荘で静かな老後生活を楽しんでいる。月光荘の202号室に住んでいる小谷香織、小谷留美母娘とは家族ぐるみの付き合いで、とても仲が良い。香織の真面目で素直な性格に惚れ込み、女手一つで家族を養っている彼女の負担を少しでも減らしてあげたいという思いから、香織の仕事中に留美の面倒を見てあげている。

大家さんの妻 (おおやさんのつま)

大家さんの妻。白髪の長い髪を後頭部でまとめており、白いブラウスの上からカーディガンを羽織り、黒いパンツを穿いている。息子を戦争で亡くし、現在は夫とともに月光荘で静かな老後生活を楽しんでいる。月光荘の202号室に住んでいる小谷香織、小谷留美母娘とは家族ぐるみの付き合いで、とても仲が良い。香織の真面目で素直な性格に惚れ込み、女手一つで家族を養っている彼女の負担を少しでも減らしてあげたいという思いから、香織の仕事中に留美の面倒を見てあげている。

山本二等兵 (やまもとにとうへい)

軍人の男性。眉が太く、無精ひげを生やして、軍服を着用している。田中七郎が国の徴兵制により出兵させられたガダルカナル島で知り合った軍人で、米軍の圧倒的火力によって包囲殲滅されるなか、七郎とともにたった2人だけ戦地から生き延びた。だが、日本に帰国したら何をしたいかという希望を語り合っていたところで米兵に発見され、田中を逃がすためにおとりとなって命を落とした。 日本には子供を身ごもった妻がいる。

佐倉 ミミ (さくら みみ)

テレビ番組の司会などで、元気で明るいキャラクターとして人気上昇中の女性タレント。鋭い眉毛と目が特徴で、長い髪を後頭部で1つに束ね、両耳に大きなイヤリングを付けている。山南博史とは一緒にテレビの番組の司会を務めており、この番組をきっかけに博史と親交を深め、男女の関係になる。

赤松 (あかまつ)

テレビ番組制作会社「HTV」の男性プロデューサー。白髪の短髪で、口の周りに無精ひげを生やし、白いワイシャツにストライプ柄のネクタイを締め、スーツを着用している。タレントの佐倉ミミともめてしまったせいで番組の司会を干されそうになった山南博史を引き抜き、彼をメインにして秋からの新番組を制作しようと考えている。娯楽の殿堂となっているテレビの番組制作に命を賭ける情熱的な男性で、対局に敗れて消沈しバーで1人酒を飲んでいた博史に、一緒にテレビ番組を作ろうと熱意を持って説得する。

場所

市ヶ谷フィッシュセンター (いちがやふぃっしゅせんたー)

創業50年以上を誇る、三京水産(株)の総合観賞魚センターに併設された釣り堀。JR市ヶ谷駅から見えることでも有名で、開業当時から現在に至るまで、幅広い年齢層に人気のある娯楽施設。神宮寺崇徳が柳原朔太郎を連れてこの釣り堀で休日を満喫していた。実在の同名施設がモデルとなっている。

その他キーワード

チキンラーメン

1958年に日清食品創業者、安藤百福が開発した、世界初のインスタントラーメン。1袋30円で販売されており、お湯を注いで3分待つだけでラーメンができあがる。粗雑で面倒くさがりな神宮寺崇徳はお湯をかけずに生卵と一緒に口に入れて食べている。実在の商品、チキンラーメンがモデル。

クレジット

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