伝説の剣客「柳生十兵衛」に惚れた！オススメ漫画５選56 Pt.

歴史上の剣豪が多数登場する本作。宮本武蔵をはじめ、佐々木小次郎、そして柳生十兵衛三厳もその一人だ。刃らを討ち果たすため、鬼丸の手によって現代によみがえった十兵衛。だが、師である武蔵が刃らに助力していたため、あっさり刃一行に加わることとなる。剣の腕は、史実とたがわず非常に確かなものであるが、ストイックな性格ですぐに腹を切ろうとするのが玉に瑕である。こういった個性ある魅力的なキャラクターが本作には多数登場し、コメディタッチとシリアスな描写が絶妙なバランスで混ざり合う作風はこの作者の特徴である。この作品の後、連載を開始し大ヒットする『名探偵コナン』の妙味の片鱗ともいえるだろう。

本作の十兵衛は、堀一族の7人の女たちに剣術・兵法を仕込む指南役として登場する。助太刀にまわることに徹している十兵衛だが、その実力は当然折り紙付きである。ときに彼女たちの懐刀として戦う際は、十兵衛は般若の面をつけて正体を隠している。彼は気楽な性格だが、女心をつかめず苦心する場面もしばしばある。山田風太郎の小説「柳生忍法帖」を原作とし、独自の解釈をもって描き切った本作。十兵衛は山田風太郎作品の中でも人気のキャラクターで、原作では「魔界転生」、「柳生十兵衛死す」が「十兵衛三部作」と呼ばれる。なお作者・せがわは、他にも山田風太郎原作の『バジリスク ～甲賀忍法帖～』『山風短』『十 ～忍法魔界転生～』を手掛け、好評を博している。

『「坊っちゃん」の時代』、『孤独のグルメ』など多数の名作を手掛けた巨匠の、卓越した筆致で描かれる本格時代劇である本作。迫力のある剣戟シーンや、登場人物の巧みな表情描写といった作画はもちろんのこと、物語も虚実を巧みに交えた壮大な時代劇である。なぜ倒幕に「柳生秘帖」が必要で、勝海舟がそれを読んでなぜ無血開城を行ったのか。そのような謎解きの要素が本作にはある。そして「柳生秘帖」がどのような文書であったかという謎も最後に明かされる。また、将軍家の剣術指南役でありながら徳川の世の安定のため、ときに裏の仕事で手を汚してきた柳生一族の悲哀と生き様が、本作ではこれでもかと描かれる。本格時代劇でありながら、ハードボイルドな趣きがある傑作だ。

天然ボケのさやかが、無類の強さを持つ十兵衛として覚醒する、そのギャップが楽しい本作。睡眠中や気絶している間など、さやかの知らぬところで、十兵衛に覚醒しているのだが、これが後にさやかにも作用し、ともに成長していくことにもなるという物語である。敵は霧隠才蔵や猿飛佐助といった真田十勇士や、天草四郎の生まれ変わりや末裔といった難敵たち。また、荒木又右衛門の末裔である広域ヤクザの若で、十兵衛の強さに惹かれる服部高広（はっとり たかひろ）とさやかのじれったいラブコメ展開も見逃せない。年代的には『キューティーハニー』と『美少女戦士セーラームーン』という大ブレイク作の間にある作品で、後年大きなジャンルとして確立するいわゆる「変身ヒロインもの」の系譜に先んじた佳作である。

異能の集団「常夜衆」と柳生十兵衛の戦いを描いた本作。常夜衆とは、闇の中で生きることを強いられた者の末裔だという。1000年の昔から、ときの武芸者たちが常夜衆と暗闘を繰り広げており、柳生新陰流もその異能の技に対抗するために編み出されたというのだ。常夜衆を2度退けるも、自身も手痛いダメージを受ける十兵衛。左目を失った十兵衛が高尾山中の洞窟で光の届かない中、戦士として覚醒するという展開には胸が熱くなる。江戸時代を舞台にしたSFものである本作。一見忍者のような常夜衆であるが、外見や能力は妖怪じみており、そんな常夜衆に十兵衛が手も足も出ないところから、死闘を制する展開は手に汗握るものがある。確かな画力で描かれた本格派娯楽作品だ。