料理好きな女性と大食漢の女性が料理を通して距離を縮めていく姿を描いた、シスターフッド料理漫画。野本は料理が大好きな派遣社員の女性。彼女は自分の思うがままに様々な料理を作ってみたいと考えていたが、自分が少食であるためその望みは叶えられていなかった。ある日、野本は同じマンションで暮らす女性・春日が大食漢であることを知る。以来、野本は春日と食事を共にすることで、料理に対する欲求を満たすようになった。一緒に食事をする中で、2人は絆を深めていく。
料理好きな野本の悩みは、一人暮らしでありさらに自分が少食であるため、思うがままにたくさんの料理を作ることができないということだ。また、自分はただ料理が好きなだけなのに、それを周囲が女子力の高さや異性からの好感度の高さに結びつけてくることにも、ストレスを感じている。一方、食べることが好きな春日も、外食をすると女性だからという理由で勝手に料理を少なめに出されることに違和感を抱いていた。性別によって好きなことを思い切り楽しめないでいた2人が、一緒に食事をすることで胸に抱いていたモヤモヤを解消していき、やがてそこには友情と恋心が芽生えていく。野本と春日の関係の行方、あちこちにちりばめられた女性あるある、本格的な料理のレシピが見所の作品だ。
ビジネス百合カップルのもどかしい恋愛を描いた百合漫画。ビオラとひなは、ラブラブレズカップルチャンネルで動画配信を行っている2人組。レズカップルと言っても、実際は動画配信のために付き合っているフリをしているビジネスレズカップルだ。ビオラはひなに対して本当に恋心を抱いており、絶賛片想い中。ひなにとって自分はあくまでビジネスの相手で、この想いが叶うことはないと思っている。しかし実は、ひなもビオラに対して本気の恋心を抱いていた。
半年前、ひなとビオラは同じ店で接客業に従事する先輩後輩という関係だった。シフトが被ったある日の終業後、ひながビオラに動画配信サイトでのチャンネル開設を持ちかけ、接客業が苦手でありその頃からひなに想いを寄せていたビオラはそれを了承。2人は店を辞め、駆け出し動画配信者として活動を始める。本物の恋人同士とは程遠い関係だったが、ただの後輩の1人ではなく特別な関係になれて、ビオラは幸せだった。一方、ビオラを意識していない様子のひなであったが、実は彼女もビオラを特別に想っており、カップルチャンネルの開設を持ちかけたのは、ビオラを独占したいがためであった。強く想い合っているのに、不器用なせいでなかなか進展しない2人の焦れったい様子が魅力的だ。
2人の女子大生の恋愛模様と、2人を取り巻く人々の関係性を描いたガールズラブ漫画。主人公の犬塚みわは、スタイルの良い美女。男性からモテるのだが、彼女は誰とも交際したことはない。みわは、異性に興味を抱けない人間で、好きな人と両想いになった経験がないのだ。そんな彼女が大学で知り合ったのは、お調子者であるもう1人の主人公・猿渡冴子。実は冴子も、男性に興味がないという人物だった。互いが同性愛者であることを知った2人は、流れで付き合うことになる。
大学で出会って友人となったみわと冴子は、共に軽音楽サークルに入り飲み会に参加。酔った勢いで同性愛者であることを告白した。冴子はみわに「付き合ってみない?」と提案し、みわは戸惑いながらもそれを承諾。男女両方と付き合った経験がある冴子と違い、みわは生まれて初めて誰かと交際することになる。本作で描かれるのは、リアルな恋愛模様だ。男女の恋愛も、同性同士の恋愛も関係ない。世間に満ち溢れている恋愛あるあるが、そこかしこにちりばめられている。どんな性的指向を持つ人でも、恋愛をしたことがある人ならば共感できる部分が多くあるだろう。また、主人公2人の恋愛だけでなく、様々な人々の性的指向が描かれている点も、本作の特徴だ。
同じ会社に勤める2人の女性の関係を描いた、オトナ百合漫画。とある会社の営業部に所属しているOL・湯川は、コートラックに掛かっている自分のコートのポケットを覗くのを楽しみにしている。ひょんなことから知り合った企画部に所属するOL・水城からの、食事の誘いのメモが入っているかもしれないからだ。互いのコートのポケットにメモを入れ交流することを楽しんでいた湯川だったが、冬が終わってしまったらこの関係が終わるのではないかと不安に思うようになる。
湯川のコートのポケットには時々、水城からのお誘いのメモが入っている。それを見た湯川は喜んで、返事のメモを水城のコートのポケットに忍ばせていた。以前は、部署が違うので面識がなかったが、元々水城のことが気になっていた湯川。2人が知り合いになったきっかけは、2人のコートが似ていて、水城が家の鍵を湯川のコートのポケットに間違って入れてしまったことだった。コートを通して知り合い、コートを通して交流していた2人だが、やがてコートを必要としない季節がきてしまう。基本的に会社ですれ違わなければ会えない程度のふわふわした関係を不安に思う湯川だが、2人の関係はどうなっていくのか。湯川と水城のもどかしい距離感に、読者はキュンとさせられるだろう。
高校生の少女が亡き兄の嫁と一緒に暮らす日々を描いた、日常センシティブストーリー。主人公は17歳の女子高校生・岸辺志乃。彼女は幼い頃に交通事故で両親を亡くし、唯一の肉親であった兄も半年前に亡くした。そんな彼女が現在一緒に暮らしているのは、兄・岸辺大志の妻、つまりは志乃の義姉である岸辺希。血のつながりはないが、希は志乃を大切に思っており、志乃も希のことを慕っている。他人だけれど家族である姉妹の日常と、そんな2人を取り巻く人々との関係が描かれる。
志乃は兄の嫁である希のことを慕っており、希も夫の妹である志乃のことを心から可愛がっている。2人の関係は良好で、彼女たちが交わすユーモアたっぷりの会話は魅力的だ。軽妙なやり取りに、読者は思わず笑ってしまうだろう。しかし、本作は仲良し義姉妹の楽しい日々ばかりを描いた作品ではない。2人の関係は完璧なようでいて、実は歪だ。志乃と希をつないでいたのは大志という存在だった。どんなに楽しい時間を過ごしていても、互いがいることでふとした瞬間に2人は大志のことを思い出し、寂しさに襲われる。志乃と希の毎日は、傷を舐め合っている状態とも言えた。仲は良いが他人であるが故に決定的なすれ違いをしている2人が、大志の死を乗り越えて真の絆を紡いでいく姿を見守ろう。