漫画における≪ぼくらの秘密基地≫特集43 Pt.

秘密基地の原型といえば、子供たちが集って空き地で作る他愛のないもの。しかし『20世紀少年』で作られた子供たちの秘密基地は、その後世界に大いなる恐怖をもたらすことになってしまいます。子供たちが秘密基地で作った「よげんの書」に添って危機に陥る世界……それはつまり、あの秘密基地にいた誰かが世界を操っているということ。ノスタルジーと恐怖が交錯する「秘密基地」の物語です。

ある町の片隅にある廃墟に作られた少年たちの秘密基地「光クラブ」。高いカリスマ性を持つ少年“廃墟の帝王”ゼラを筆頭とする9人の少年たちは、秘密結社のような活動をしていました。ある日彼らはライチの実を動力とした人造人間ライチを造り上げます。美しいものを持ってくるようにと命じられたライチがカノンという少女を連れてきたとき、光クラブの崩壊が始まるのでした……。少年たちの秘密をテーマとした陰惨にしてグロテスクな美を描いた作品。別世界を覗きたくなった時、ページをめくれば彼らの秘密基地があなたを待っています。

そもそも基本的に「秘密基地」というものは、TV特撮ヒーロー番組のお家芸のようなもの。しかしそんな特撮的な秘密基地の要件を完璧に満たしているのがこの『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する組織・特務機関NERVの本部。作中の所在は芦ノ湖北湖畔にある「神奈川県第3新東京市」の地下、箱根大深度地下大規模空間（ジオフロント）にあり、そもそもこの第3新東京市自体が、使徒を迎撃するために作られたNERV専用都市なのです。そのスケールの大きな「秘密」感は物語の謎と相まって大きなワクワク感を与えてくれること間違いなし。

カモフラージュが秘密基地の定番とすれば、その最たるものは移動が可能な移動基地、移動要塞でしょう。周囲に怪しまれることがあれば即移動して場所を変えればいいのです。現実と虚構が交錯し世界が歪む超メタ漫画『第三世界の長井』に登場する「秘密防衛組織ドングリーズ」の「移動要塞ドングリ・フリーダム」はその最たるものかもしれません。作中のキャラクターにすら実在が疑われている怪しすぎる要塞なのですが、少なくとも空中を飛行している敵にどこからか砲撃を加える能力は有している模様。三巻でチラッと出てきたその姿は、艦首艦橋など色々なところに巨大ロボットの首が埋め込まれた異様なもの。ドングリという可愛い言葉の響きでは打ち消せない、むしろ何か恐ろしいものが増してくるような気さえする狂気の移動要塞なのです。