タタラのふりをして「白虎の刀」を手に立ち上がった更紗に、村の長老である祖父は「4本の刀を揃えよ」と告げた。「白虎の刀」はその昔、時を同じくして作られた4本の刀のうちの1本であった。王朝に逆らい続けていた、4人の英雄と呼ばれる者たちが「いつか国を救うため集まろう」と言い残し、4本の刀を1本ずつ携えてそれぞれの地に散っていった。
4本の刀は「白虎」「朱雀」「青龍」「玄武」。刀自体に特別な力があるわけではないが、所有者に集まる人々の心は、必ず強大なものとなり、国王でさえも倒せるという。祖父は「朱雀の刀」が九州の桜島にあると言い残し、更紗を助けるため赤の王が率いる軍勢の前に、身を差し出すのであった。
「白虎の村」は大いなる災いで砂漠化した山陽地方にある遊牧民たちの村。砂漠ではあるものの、地下水に恵まれており、野菜や畜産も可能。またこの地方では砂鉄が取れるため、鍛冶(かじ)が発達しており「鉄の里」や「鍛冶の村」とも呼ばれる。
そんな村の宝刀「白虎の刀」は、更紗の曽祖父で白虎の英雄、玄象(げんしょう)が初代の持ち主。玄象亡きあとは、白虎の村の守護刀として代々大切に保管されており、元服を機にタタラが所有するものとなった。
更紗は村を壊滅させ、大切な人々の命をたやすく奪い去った赤の王を恨み、仇(かたき)を取るためそして悪しき王を討つため、身も心もタタラとなり「白虎の刀」を携えて戦場に立つことを決意。まずは「朱雀の刀」があるといわれる「朱雀の村」を目指すのであった。
……しかし、運命のいたずらか、更紗はこのころ訪れた温泉で、朱理(しゅり)という青年に出会う。更紗と朱理は互いに惹(ひ)かれ合うが、朱理の正体は更紗が心から憎んでいる「赤の王」だった。更紗がタタラであること、朱理が赤の王であることをお互い知らないまま、心を通わせていく……。
「朱雀の村は九州の桜島にある」。赤の軍の追手を逃れ、長老の遺言通り九州に渡った更紗は一人の少年と出会う。彼の名前はハヤト。曽祖父は英雄朱雀の羅生(らしょう)、「朱雀の刀」の初代所有者である。ハヤトは正式な「朱雀の刀」の継承者であった。しかし、朱雀の刀は彼のもとにはなく、朱雀の村も今や羅生を裏切り、朱雀の権力を横取りした「猩々一族」が住む場所であるという……。
ハヤトを仲間にした更紗は、ともに桜島へ足を進めることに。しかし、地図に描かれている桜島があるべき場所は海に沈んでいた。朱雀の村はまるごと巨大な船に移され、猩々一族は「朱雀の刀」の持ち主が長となる掟(おきて)から、封建領主として私益を肥やしていた。
……猩々一族、赤の王の配下である四道(しどう)との戦が迫るなか、更紗と朱理は逢瀬(おうせ)を重ねる。朱理はいつでも文で連絡がとれるようにと、更紗にインコを贈るのであった。
「青龍の刀」は関東にある。それを知った更紗は仲間と別れて単身で関東に乗り込む。関東は暴虐を極めた蒼の王が統治し、人々は飢餓や病に苦しむ生活を送っていた。
そんななか、王家に仕えながら悪政を排除するタイミングを虎視眈々(たんたん)と狙っていた男が声を上げた。その男の名前は雷蔵(らいぞう)。青龍の刀を奉じていた、青龍の一族の生き残りであった。
青龍の村は、数十年前に王族によって支配され、女性や子どもまで殺され消失していたのだ。しかし、雷蔵だけは、その外見が黄金の髪の毛に青い目だったことから青の王に気に入られて、側近として生き延びていた。
雷蔵率いる独立軍の活躍により蒼の王は失脚。雷蔵を仲間にしたタタラは、次の地へ向かう。
……単身で関東へ向かうことにした更紗は、ときを同じくして青の王を討とうと関東に向かう朱理と出会う。二人は関東まで一緒に旅をすることとなる。正体を知らず、等身大の更紗と朱理として旅ができた時間は、二人の心の中にいつまでも残る思い出となる……。
東北・鹿角には四人の大将がおり、南から押し寄せる黒の軍と長年にわたり戦い続けていた。更紗は、風のうわさで彼らが「玄武の刀」を持つと聞き、同盟を組むためハヤトを東北に送った。しかし、彼は東北の地で行方不明に。タタラ軍はハヤトを助けるため、そして赤の王と戦うための戦力を得るため、鹿角に向かった。しかし、鹿角の者たちは更紗たちタタラ軍を受け入れず、網走の監獄に投獄する。
獄中にて、更紗は玄武の刀の使い手、多門(たもん)と出会った。玄武の刀の継承者である多門は鹿角の北端を守る大将の一人であったが、ひょんなことから黒の軍に捕まり刑務所に投獄されていたのであった。多門は刀の継承者の中でも風変りな存在で、相当な剣の技術を持つが決して刀を振るわず、人を傷つけることを嫌っていた。また「玄武の刀」は使用した者を魅了してしまうとされ、決して使うことがないように、初代所有者が竹で作った「竹光」を多門に至るまで継承している。
四つの刀を揃え、仲間を増やしたタタラ軍は赤の王を目指す。
しかし、更紗はまだ、心を通わせあっている朱理が「赤の王」だと気づかない。朱理もまた、向かってくるタタラが「更紗」だと気づかない。
そんな二人をよそに、タタラと赤の王が相まみえる瞬間が刻々と近づいていた。