幼い頃に天狗の世界へ去った少女と、天狗の国を作ろうとする天狗たちを描く伝奇ファンタジー。シノブは、小学校の入学式に遅刻したのをきっかけに、人間社会から離れ、天狗の「師匠」と行動を共にすることに。月日は流れ、22歳となったシノブは師匠と共に残飯をあさるみじめな日々を送っていた。ある日、シノブは、自分の生家で自分の偽物である泥人形がシノブとして暮らしているのを知る。それは師匠が最初に身代わりとして作った泥人形ではなく、他の天狗が作ったものだった。
天狗というと、人里離れた山に住むイメージがあるが、本作に登場する天狗は人間社会にまぎれこんで暮らしている。ある者はコンビニでバイトをしながらアパートに暮らし、ある者は店を営む。「山に棲む天狗は地上の人間に畏れ敬われ 欲しいもので手に入らぬものなどなかった」と嘯くシノブの師匠も、現代社会では残飯をあさる暮らしを送っている。とはいえ、彼らは全くの無力になったわけではない。普段、自身の本体を潜ませている人間の肉体から抜け出て、本来の烏類の姿に戻る「魂抜け」や、空を飛ぶ「雲踏み」もできる。泥人形により生家に居場所を失ったことを知ったシノブも雲踏みの力を手に入れる。やがて師匠は日本を天狗の国とするべく、「大日本天狗党」をたちあげるのだった。
断れない系女子が、天狗の子供と共に平日の高尾山を楽しむ4コマ漫画。三国ミドリは、デザイン事務所に勤めるデザイナー。頼まれると断れない性格で、いつも仕事はキャパオーバー気味だ。ある日、高尾山での合コンに頼まれて参加するが、ドタキャンされてしまう。せっかくだからと、おひとり様で高尾山を楽しもうとするミドリの目の前に、小さな天狗の子供が現れる。前作『高尾の天狗と脱・ハイヒール』から主人公を一新しつつ、前作で登場した天狗たちも活躍する。
高尾山は、東京都心からほど近い上に、豊かな自然を年間通して楽しめる人気の行楽スポットだ。一方で天狗にまつわる伝説が数多くある、天狗信仰の地でもある。主人公のミドリは、高尾山ビアマウントでの合コンに参加するために、初めて高尾山を訪れる。高尾山ビアマウントは、高尾山にある展望施設に夏季限定で開設される人気のビアガーデン。土日なら混雑必至のところだがその日は平日。そこへ、「いいタイミングで来たのう! 今日は比較的すいておるのぢゃ」と話しかける者が。彼は、高尾山に住む天狗の子供・聖(ひじり)。どうやら、聖の姿はミドリにしか見えないらしい。読者はミドリと共に、高尾山についてよーく知っている聖のガイドで、平日ならではの高尾山の楽しみ方を発見していくことになる。
天狗の秘宝「日輪の天狗面」を取り戻しにきた天狗の姫と男子高校生によるラブコメディ。天乃成行(あまの なりゆき)は、小さな頃に山で迷子になって以来、しゃべる天狗の面に憑かれている高校生。お面は人間の欲望を天狗力(てんぐちから)へと変え、妖を倒す力を与えてくれるのだが、持ち主が善行を積まないと呪いによって、木っ端天狗になってしまうという代物。成行は仕方なく善行を積む日々を送っている。そんなある日、成行のもとに、愛良綱屋次郎姫(あらづなや じろうひめ)と名乗る天狗の姫がやってくる。
いかめしい赤ら顔に、高い鼻という天狗のイメージを真っ向からくつがえす天狗が登場するのが本作だ。成行のもとに、空から舞い降りてやってきたのは、どこからどう見ても巨乳の美女。しかし、天狗の装束を身に纏い、背中には羽をもつ彼女は、正真正銘の天狗。彼女、次郎姫によると、鼻が高いのは一部の大天狗のみだという(実際、大天狗である彼女の父は、見事な鼻を誇っている)。天狗の秘宝である日輪の天狗面を取り戻すためにやってきたという次郎姫。しかし、天狗の世界に戻りたくない天狗面と木っ端天狗になりたくない成行は結託することに。成行の色欲をパワーに変えることができる天狗面は、巨乳な次郎姫のおかげでさらにパワーアップしてしまうのだった。
人間に化けられる狸を主人公に、ライバル狸や天狗や人間が入り乱れて京都の町を駆け回るファンタジー。森見登美彦の同名人気小説のコミカライズ。キャラクター原案は久米田康治。舞台は狸と天狗が人間に化け、人間社会にまぎれこんで暮らしている京都の町。主人公の下鴨矢三郎(しもがも やさぶろう)は狸の名門・下鴨家の四兄弟の三男坊だ。師匠である天狗の赤玉先生の世話を焼いたり、美しい弁天が気になったりと、にぎやかな日々を送っている。人間社会とはちょっと違う狸と天狗の世界がコミカルに描かれる。
150万人の人間が暮らす王城の地・京都の町は、鞍馬天狗をはじめ多くの天狗が暮らすといわれる土地でもある。矢三郎が師匠として慕う赤玉先生も、如意ヶ嶽薬師坊(にょいがたけ やくしぼう)という名を持ち、かつては京都にその名を轟かせた大天狗。京都の町の歴史は人間と狸が共に作ってきたと自負する狸たちに向かって「地を這う有象無象どもよ 我らを畏れ敬え」と豪語するような傲岸不遜な存在だった。空を自在に飛び回り、辻風を気の向くままに吹かせていたが、それは過去の話。矢三郎がおこした、とある事件以来、その強大だった力のほとんどを失っている。そして、この事件のきっかけを作ったのは、赤玉先生のもとで修行を積み、人間でありながら天狗への道を歩んだ美しい女・弁天だった。
天狗と人間のハーフの女子高生・秋姫の学園生活や恋を描く青春ファンタジー。刑部(おさかべ)秋姫は、僧正天狗である父・康徳坊と人間の母の間に生まれた15歳。人よりちょっと力持ちだけどいたって普通の女の子だ。康徳坊のもとで眷属見習いをしている幼馴染み・榎本瞬からは、天狗になる修行をしろといわれるけど、秋姫は憧れの同級生・神谷武(たける)のことで頭がいっぱい。武や瞬と共に群青高校に進学した秋姫は、憧れの高校生ライフを満喫しようと奮闘する。
天狗と人間のハーフが、普通に存在するちょっと不思議な世界観が本作の魅力。秋姫が暮らす緑峰町の人々は、緑峰山康徳神社の僧正天狗である秋姫の父・康徳坊を康徳さまと呼び、敬い慕っている。康徳坊は「お山」と呼ばれる神社の禁足地に暮らし、天狗を目指している瞬も、狐と狸といった他の眷属見習いと一緒にお山で修行中だ。一方、天狗の子供である秋姫はというと、緑峰町で母の春菜と二人暮らし。普通の女の子でいたい秋姫は、できれば天狗にはなりたくないのだ。いくら瞬から修行をすすめられても、修行をするのを避けてきた。そのため、天狗としての素質は抜群だが、制御することができずに力を暴走させてしまうことも。だが、秋姫はとある目的のために修行を始めることになる。