魅力的な京都を描くことで知られる人気作家・森見登美彦によるファンタジー小説のコミカライズ作品。舞台となるのは、150万の人間たちが暮らすという古都・京都。ここには人間だけでなく、大勢の狸たちも暮らしている。主人公の下鴨矢三郎は、京都で暮らす狸一家・下鴨家の三男。狸鍋にされた偉大な父と一族の名誉のため、狸と天狗と人間が入り乱れる京都の街を兄弟とともに駆け巡る。2013年7月にテレビアニメ化された。
昔から京都にはたくさんの狸たちが住んでおり、人間の姿に化けることで人間たちと共存していた。そんな狸の名門である下鴨家。下鴨家には4匹の子どもがおり、矢三郎は三男である。矢三郎たちには狸界の頭領だった父・総一郎がいたが、総一郎はある日人間たちに狸鍋にされ、亡くなってしまった。矢三郎は偉大な父の化け力と、面白いことを好む阿呆の血を受け継いだ狸。それらを受け継いだために、矢三郎は京都で巻き起こる様々な騒動に首を突っ込むことになる。本作の魅力は、狸と天狗と人間が入り乱れるファンタジーな世界観。矢三郎たち狸一家の絆や、矢三郎たちの父・総一郎の死にまつわる謎にある。人気の高い独特な森見登ワールドを、読みやすい漫画で堪能しよう。
京都のオカルトスポットをまとめたガイドブックを完成させるという仕事を与えられた主人公の奮闘を描く、妖し観光名所ミステリー漫画。京都の観光を扱う花形部署・京都府行楽課。主人公はそこに配属された男性・七木(ななぎ)涼太だ。せっかく行楽課に配属されたのに、涼太に与えられる仕事は掃除ばかり。ようやく掃除以外の仕事を任せてもらえると思ったら、与えられた仕事は京都のオカルトスポットをまとめたガイドブック「紫道標帖」通称・紫ガイドを編纂することだった。
京都には、触れてはいけない人ならざるものがいる。そんな触れてはいけない存在がいる場所についてまとめたのが「紫道標帖」通称・紫ガイドである。これは観光客に楽しんでもらうために作られたお遊びのものではない。府庁ができてから、つまり大正時代以降に実害のあった場所ばかりを載せている、言わば行楽課所有の裏・京都地図である。作成されていることは秘密とされているため、その存在を知っている者は少ない。一応はガイドブックであるため、それをまとめるのは行楽課の仕事。涼太は紫道標帖を編纂するため、様々なオカルト的事件に関わっていくことになる。涼太を通して、多種多様な怪異に遭遇するドキドキ感を楽しむことができる作品だ。
賄いの仕事をする主人公を通して花街と舞妓さんの日常に触れることができる日常料理漫画。舞妓になるために青森から京都にやってきた主人公の少女・野月キヨ。彼女は舞妓の才能がなかったため、現在は花街(かがい)の屋形「市」でまかないさんとして働いている。屋形とは舞妓たちが共同生活を送っている場所。まかないさんの仕事は、舞妓たちに毎日の食事を作り、彼女たちを支えることだ。今日もキヨは舞妓たちに美味しい食事を提供する。2021年2月にテレビアニメ化された。
京都を象徴する存在として知られている「舞妓」。彼女たちが普段どういう生活をしているのか気になっている人は少なくないはずだ。本作は、舞妓を支える仕事をしている少女・キヨを通して、知られざる舞妓の日常を覗き見ることができる作品である。働き終わった舞妓たちは屋形と呼ばれる家に帰り、そこで普通の女の子に戻る。舞妓の世界は華やかで優雅に見えるが、日々の仕事や稽古はとても大変。普通の女の子たちが舞妓として仕事や稽古に励めるよう、屋形で毎日美味しい料理を作り、舞妓たちそれぞれのスケジュールに合わせて提供するのが、キヨの仕事である。キヨを通して見ることができる舞妓の日常はもちろん魅力だが、キヨが作る美味しそうな料理の数々にも注目したい。
製菓学校を卒業した主人公の修業と恋を描く、和菓子職人4コマ漫画。主人公は、佐藤製菓学院和菓子専攻を卒業した20歳の男性・望月草太。和菓子に魅せられた彼は甘いものが苦手であるにもかかわらず、一人前の和菓子職人を目指して150年以上の歴史を持つ亰都の老舗和菓子屋「桜屋」で修業をしている。そんな草太の想い人は、桜屋の看板娘である桜葉牡丹。草太は修業に打ち込みながら牡丹に積極的なアプローチを仕掛けるのだが、ことごとく受け流されてしまう。
幼い頃、親戚の葬儀に出席した草太は、そこで出会った子どもから葬式饅頭をもらった。彼が和菓子職人を志すようになったのは、その葬式饅頭の味が忘れられなかったからである。草太が食べた葬式饅頭を作ったのは、亰都の老舗和菓子屋「桜屋」。そこで働きたいと思った草太は、桜屋の店主と友達であるという祖父の力を借りて、桜屋での修業にこぎつける。そこで出会ったのが、桜屋の長女・牡丹だった。牡丹に一目惚れした草太は、毎日修業に恋にと大忙しだ。本作の見所は、草太の和菓子職人としての成長と、牡丹との関係の行方。騒がしくてちょっぴりアホだがどこか憎めない草太の日常に、読者はほっこりするだろう。4コマで1つ1つの話が短く読みやすい点も本作のポイントだ。
高校生の少女と鑑定士見習いの青年が様々な日常の謎を解決していく様子を描いた、人気小説のコミカライズ作品。女子高生の真城葵(ましろあおい)は京都に移り住んで半年になる。ある日、彼女は祖父が遺した骨董品を鑑定してもらうために、京都寺町三条のアーケード街にある「蔵」という骨董店に足を踏み入れた。そこにいたのは、鑑定士見習いをしている22歳の京大院生・家頭清貴(やがしらきよたか)。彼は周囲から「ホームズ」という愛称で呼ばれる切れ者だった。2018年7月にテレビアニメ化された。
国選鑑定人・家頭誠司の孫で、まだ見習いではあるが鋭い鑑定眼を持ち、骨董品を見ただけで様々なことを読み取ってしまう寺町三条のホームズ・家頭清貴。骨董品に関する知識はないが作品の価値を直感的に見抜く力を持った女子高生・真城葵。本作は、この2人が京都にまつわる様々な出来事に遭遇し、問題を解決しながら絆を深めていく物語である。その魅力はストーリーを追いながら楽しく骨董品の知識を得ることができるということ。重苦しくはないがしっかりとした作りのミステリー要素。そして、清貴と葵の心ときめく恋模様だ。風情ある京都の街並みの描写も見所の1つ。清貴と葵が京都での日常の中にちりばめられた謎を解き明かしながら、少しずつその距離を縮めていく様子を楽しもう。