もはやダンジョンなしでは漫画は語れない！オススメ５選53 Pt.

ダンジョンを攻略する側ではなく、ダンジョンの近くの街にある、宿屋が舞台である。ゲームなどではよくお世話になるスポットだ。やはり宿屋の親父はこういうビジュアルじゃないと、と考えるゲーム好きは多いだろう。少々ふっくらとした体型をしており、頭頂部の髪はなく、ちょび髭というビジュアルは完璧である。魔物や魔王も存在するファンタジー世界であるが、親父の親父らしさはこちらの世界とそう変わりはない。だがエルフィンが宿を訪れる前の妻との会話に、現実世界とは異なるファンタジー世界の住人ならではの本音が見える。実はダンジョンにやたら詳しいとか、昔は冒険者だったとかいうわけではない。下ネタに敏感で、ナイスバディの女性に鼻の下を伸ばす、ただの親父である。我が道を行く冒険者たちへのツッコミは忘れず、歯に衣着せぬ物言いをするが、自分の宿を守ろうとする気概は十分だ。ダンジョンを攻略するかどうかはさておき、客となって親父と一度は会話をしてみたいものである。

例えば、スライム。どんな味がするのだろうか。そもそも味はあるのか。見た目はゼリーのようにぷるぷる。弾力があるのか、粘り気があるのか。それとも液体に近いのか。一体どこまでが食べて大丈夫なものなのか。敵として考えれば倒すだけだが、食料として考えてみると疑問が尽きない。本作のファンタジー世界におけるモンスターとは、現実世界で言うところの虫や、食料として認識されていない動物のようなもので、ライオスの仲間のエルフ・マルシルではないが、やはり得体の知れないものというのは口に入れるには抵抗がある。ライオスに、モンスター料理に異常に詳しいドワーフ・センシという心強い仲間が加わったことで、好奇心は止まるところを知らず、暴走していく。読者の感覚としてはマルシルのように、これは無理そうという側に傾くが、材料を知らなければ出来上がった料理はとてもおいしそうだ。ダンジョンは深く、時に命の危機にさらされる。死と隣り合わせの場所だからこそ、食事の意味を噛みしめる。

ダンジョンは自然発生するものではなく、手塩にかけて運営するものであるらしい。和也はダンジョンマスター「ユキ」として、世界を救うためにダンジョンを運営している。モンスターが出るだけのところではないのか、と思いきや本作の異世界では、ダンジョンには魔力を循環させる装置のような役割があるとのこと。その運営プロセスは街をつくるゲーム等を想像するとわかりやすいだろう。ダンジョンを自分の手で作り上げるという設定に、胸が躍る。ダンジョンを効率よく運営する方法を見つけるため和也は知恵を絞るのだが、その結果がトラップ満載のダンジョンづくりであるところが、実にダンジョンらしい。モンスターを討伐するだけでなく、知恵を絞って潜り抜けるところに、ダンジョン攻略の醍醐味がある。和也のダンジョンは出来立てほやほやで階層が少ないとのことだから、ダンジョンは成長していくものなのだろう。育成したモンスターたちも統率がとれており、やる気は十分。成長していくダンジョンがどうなっていくのか、見届けたい。

舞台は現代日本、四国にある小さな架空の島、ゲンゴロウ島である。いわゆる田舎の離島らしい小さな島で、どこかのんびりとしている。しかし、この島には古代遺跡が存在しており、日常的に巨大な怪物の脅威にさらされていた。古代遺跡には某アニメ映画に登場する石のような、オーパーツと呼ばれるアイテムが多数眠っているらしい。それだけ見れば宝の山だが、島の住人としては歓迎できない部分もあるだろう。島の生物は、当然ながら人間の生活を考慮していない。アライグマ風の生物から、トビウオと爬虫類の中間のような海洋生物まで、島で見かける遺跡関連の生物はとにかく巨大で、人間の立場からするとサイズ感だけで脅威である。島にある坂を巨大ダンゴムシたちが転がり落ちるさまはわりとキュートなのだが、家が潰されるくらいの重量となると、可愛いとは言っていられない。そんなダンゴムシに動じず、それらを拾って海に捨てている島のおばあちゃんたちが、実は最強なのかもしれない。

玄関の扉を開くと、そこは薄暗いダンジョンだった。外に出られないじゃないか、と透同様読者も戸惑うと思うが、窓は現代日本に通じている。透は自分のマンションの部屋を境に、ダンジョンと現代日本を行き来できるというわけである。ダンジョン内の休憩所という位置づけも、RPGっぽさのある設定だ。セーブポイントや回復ポイントの近くで、レベル上げに勤しんだ人も多いだろう。透にとっては玄関の外のダンジョンが異世界だが、ダンジョン世界の住人であるアリアにとっては、透の住む現代日本こそが不思議な世界として目に映るだろう。また、現代の食事やお菓子には体力回復や薬の効果があり、ダンジョン探索上、大変便利なことである。ダンジョンの攻略レベルはゆるい仕様ではなく、かなり本格的な様子。透とアリアの出会いにおいても、アリアは命の危機にさらされており、ダンジョン探索がけして気軽にできるものではないことがわかる。どちらにとっても、扉の向こうは異世界。驚く姿が新鮮でほほえましい。