古代の日本を舞台に、伝説の呪術者と弟子の少女が神に会うため旅をするファンタジー。人間と神が共存していた倭の国。すべては神の思惑次第だと信じられていたため、五穀豊穣を願う人々は「人身供犠(」を差し出す風習があった。12歳の妙(みよ)は、里の神・切風孫命神(きっぷうそんのみことのかみ)の供犠として選ばれ、死を待つ日々を過ごしていた。都に密かな憧れを持つ妙の前に現れたのは、高僧と噂の役小角(えんのこづの)の一行であった。
小角と弟子の善こと前鬼、謎の女性・後鬼は村人に薬を振る舞い評判は上場であった。しかし妙は彼らの振る舞っていたのが効きめのない偽薬だと知る。不信感を抱く彼女を後鬼は不思議な力で癒し、小角の術で切風孫命神の元へ。妙が神器に触れたことで神の怒りを買うが、小角の機転で切風孫命神から逃がれ、妙は命を救われる。彼女を供犠の運命から救った後鬼が未来の自分だと悟った妙は小角の弟子となり、善と三人で旅をすることに。行く先々で神と出会い、神器の力を授かる小角であったが彼もまた旅をする目的を抱えていた。飛鳥時代に実在した道士をモチーフに、作者の独自の解釈を注入した世界観が見どころだ。古代の日本を懐古し、小角が繰り出す術や神々との邂逅を大いに楽しむのがオススメだ。
古代中国を舞台に、実在した占い師・管公明(かんこうめい)とその親友・紀玄龍(きげんりゅう)が難事件を解決してゆく摩訶不思議な怪異譚。舞台は三国時代の魏の国。貴族であり名うてのプレイボーイの玄龍は、女性を連れ込んだ日に限り、邸宅を謎の火の玉が襲うという騒ぎに悩まされていた。そこで玄龍が頼ったのは、稀代の名占い師である幼なじみの公明。公明は、偶然墓荒らしの悩み相談に訪れていた女性・緑香(りょくこう)と龍玄にとある計画を持ちかける。
公明は、人形(ひとがた)を使った囮作戦を決行する。間もなく玄龍の家に鬼火が襲いかかるが、鬼火を操ることのできる緑香に反撃され狐が正体を現す。狐いわく、玄龍に惚れていたが浮気されたため嫉妬していたという。無事に事件は解決するも、緑香もまたお墓の中の住人であることが判明する。その後も玄龍は、なにかと女性絡みの難事件を引き起こしては公明に助けを求め、彼の術式によって解決してゆくのであった。太眉のチャーミングな風貌だが腕は抜群の公明と、浮気者だが女性を大切にするイケメン貴族の玄龍の幼なじみコンビは、バディものとして面白い。古代中国の風俗や易占をはじめとした文化の描写も詳しく、歴史に思いを馳せるのにもってこいの一作だ。
三姉妹の道士とワケありの豚による、「仙水」探しの旅をするドタバタ4コマ漫画。舞台は古代中国を思わせるとある国。浪費家で装飾品に目がない長女・青霞(せいか)、しっかり者の次女・紅蘭(こうらん)、のんびり屋の末っ子・珠々(しゅしゅ)の道士三姉妹は街に居を構え、仲良く暮らしていた。ある日、辻占いの仕事に励む珠々の前に、人語を話す豚が現れる。珠々は豚を家に連れて帰るが、時を同じくして皇帝の使いが三姉妹の元を訪れていた。
豚は三姉妹に、自分は呪いで豚に変身させられたのだと訴えるが、彼女たちは半信半疑だ。しかし間もなくして皇帝の使いが現れ、理不尽な理由で彼女たちの家を破壊してしまう。三人は激怒し、皇帝の居城「禁城」に直訴しに行くことに。豚も同行するが、実は彼の正体は皇帝の息子・超万里だった。彼は継母と折り合いが悪く、彼女に仕える仙人に豚にされてしまったのだ。彼を元に戻すには七種類の「仙水」が必要であり、三姉妹と超万里は各地に散らばる仙水を集めるべく旅をする。道中さまざまな事件に巻き込まれるうちに、超万里と紅蘭の間にほのかな恋心が芽生えてゆくのであった。本作は、ドタバタなギャグテイストに終始しており最後まで飽きさせない。あっと驚く結末を迎える二人の恋路にも要注目だ。
「僵屍(キョンシー)」と化した幼なじみを生き返らせるべく、道士修行に励む青年が奮闘するバトルファンタジー。主人公・宋玉生(ソンユーシェン)は大都市に住むしがない物書きだ。一方で、師と仰ぐ道士・胡才良(フーツァイリャン)から「腕の立つ道士」を探してくるよう命を受けている。それもすべて、命を落とし胡の術で僵屍となった幼なじみ・薛(シュエ)を反魂の術で生者へと戻すためだ。ある日宋は、胡にとある薬問屋の主人・黄旭(ホアンシュイ)が以前は薬の知識に長けた名のある道士だったことを伝える。
宋いわく、黄旭の店は阿片で儲け、怪しい薬丹で患者を薬漬けにして死に追いやるなど薬屋とは名ばかりのゴロツキ集団だったとのこと。胡たちは彼の元を訪れるが、薛を譲ってほしいという黄旭に黄旭の練った最高の丹となら引き換えると応じる。黄旭の罠を見破った胡は宋の助けもあり、薛と共に規格外の術式で彼らを皆殺しにする。宋は彼女のために胡の願いを聞き入れ奔走し、胡もまた己に課せられた目的のために宋の力を利用してゆく。薛を付け狙う道士たちとの闘いや仲間との出会いを経て、宋たちは最後の砦・冥界にたどり着く。一代ブームを巻き起こしたキョンシーをテーマに、道士たちのバトルが迫力満点だ。果たして薛は生き返るのか、結末まで目が離せない。
時代を超えて宿敵の「鬼」を追うべく転生を重ねる少年道士が主人公のバトルアクション。はるか昔、国を滅ぼす妖怪「西神鬼(せいしんき)」が猛威をふるっていた。とある道士が討ち取る寸前まで追い詰めたものの、西神鬼は自らの身体を千体に散じさせて逃亡し、道士は命を落とす。死ぬ間際に道士は幾時代を超えても追い続けると決意し、転生の術を使うのであった。時は流れ明治時代の横浜。奉公人の少女・和の前に転生した道士の生まれ変わり・アキが現れる。
和は高額な給金と引き換えに外国人・クリント・J・ミラルド卿の家に奉公人として働くことになるが、そこはミラルドの意にそぐわないと使用人が簡単に殺される恐怖の館であった。アキは街で偶然見かけた和の顔に死相が浮かんでいることから、ミラルド卿が西神鬼に取り憑かれていることに気づく。和が殺されそうになるすんでのところにアキが駆けつけ、ミラルド卿を殺害することに成功。しかし、それは西神鬼の一部に過ぎなかった。散り散りとなった彼をすべて殺すべく、アキは師匠である仙人の下で修行を積み闘いに挑んでゆく。アキは「猫猫棒(にゃんにゃんぼう)」なる猫の手型の棒を武器に、ユニークな術を使うのが特徴だ。宿敵・西神鬼とアキの意外な関係性が物語を引き立たせている。