軽飛行機乗りの少年の成長と、周囲の人々との交流を描く癒し系エアプレーン漫画。物語の舞台は現在の日本と少し異なる世界。自然が豊かで一軒一軒の距離が離れているため、人々は飛行機に乗って移動するのが当たり前となっている。主人公のイサキも、近所に住む女性から中古のレシプロ機「パイパー・スーパーカブ」を借り、自分の足として使っていた。そんな彼が、仲間との出会いをきっかけにさまざまな場所へと繰りだしていく。
少年にとって、初めて自分の「足」を手に入れた感覚は特別だ。一気に行動範囲が広がり、何処までもいける気分になる。現代社会では「バイク」がその役割を担うことが多いが、本作においては飛行機こそがその「足」だ。本作の舞台は、飛行機を使わなければ到底移動できないような世界。そこで少年が飛行機に乗り初めて山を越え、眼下に広がる雲海を眺めれば、感動で心がうちふるえることだろう。本作は、主人公であるイサキの目を通してそんな大空と、豊かな自然の美しさが描かれる作品。日常的な移動手段として使用されることからか、イサキが乗る軽飛行機の名前は、日本が誇る頑強低燃費バイクの名機「スーパーカブ」に因んでいる。
第一次大戦直後の世界を舞台に、女性パイロットの活躍を描く航空アクション。主人公のマリア・マンテガッツァはフリーランスのパイロット。「二枚翼のエンジェル」の異名を持つ彼女は、様々な依頼を受けて世界中の大空を飛び回る。あるときは諜報員の救出のため中東へ。またあるときは名女優を思い出の地であるアフリカへと送り届ける。常に新たな風を求め、マリアは危険を顧みずに宙を舞う。
第一次世界大戦は、航空機が初めて本格的に活用された戦争である。この戦いを経て、航空機は目覚ましい発展を遂げた。さらにこの時代は女性の社会進出が盛んになり始めた時期でもあり、主人公のマリア・マンテガッツァはそんな時代を象徴するような女性として描かれている。一流のパイロットである彼女は、フリーランスとして仕事を請け負いながら、世界中の空を飛び回る。危険な依頼や、国家間の陰謀に巻き込まれることもあるが、彼女が空を飛ぶのは行方不明の父を探すため。有力な情報が得られるならば、どんな危険な依頼でも躊躇わない。自分の信念を貫くマリアの高潔さとともに、大空が持つ「自由」の魅力が存分に描かれた作品だ。
飛行機と空港をこよなく愛する「航空オタク」の日常を描く、異色のサラリーマンコメディ。主人公の桐谷は、今どきの若手サラリーマン。そんな彼が、上司の竹内課長と初めての北海道出張に赴くところから、物語は幕を開ける。待ち合わせ場所の羽田空港に到着した桐谷は、竹内のディープな航空オタクっぷりに衝撃を受ける。だがこの出張を皮切りに、桐谷は徐々に飛行機と空港の魅力に目覚めていくことになる。
航空機がテーマの作品の場合、主役はパイロットを筆頭としたプロが多い。ところが本作の主人公は、飛行機を利用するただのサラリーマン。運用する側ではなく、乗客としての立場から空の旅と空港の魅力に迫る物語なのだ。主人公の桐谷はごく普通の若手会社員で、航空関係には全くの素人。それどころか、これまで一度も飛行機に乗ったことがない。そんな彼が、北海道への出張で、空の旅を初めて経験する。旅客機の窓から見下ろす雄大な雲海。関西空港のスカイビューで営業している、機内食が食べられるレストラン。読者にとってもっとも身近な視点から、空の旅と魅力を伝えてくれる作品だ。
女性パイロットだけで構成されたアクロバットチームで巻き起こる騒動を描く、アクションラブコメディ。主人公の石動拓也は、パイロットに憧れて航空自衛隊に入隊した三等空曹。夢半ばで挫折していたが、それでも飛行機への愛情を抱く彼は、航空整備士として第二の人生を歩むことを決断する。そんな彼が配属されたのは、女性搭乗員だけのアクロバットチーム選定を目的とする第801飛行隊であった。
各国の空軍の多くには、曲技飛行を専門とするアクロバットチームが存在する。米軍のサンダーバーズ、イギリス軍のレッドアローズ、そして日本の航空自衛隊のブルーインパルスなど、航空ショーイベントで鮮やかな飛行を披露する彼らの姿は、観客たちに大空への憧れを抱かせる。アクロバットチームに選抜されるのは通常、選りすぐりの精鋭パイロットだ。ところが本作で描かれる第801航空隊のメンバーは、精鋭と言うよりは問題児揃い。整備士として彼女たちをサポートする石動は、頭の痛い日々を過ごすこととなる。本作ではそんな第801飛行隊が様々なトラブルを乗り越えながら、徐々に絆を深めていく姿が描かれる。
グライダーで大空を舞う航空部員たちの、日常と恋愛模様を綴った青春グラフティ。主人公の都留たまきは、高校の3年間をバレーボール一筋の体育会系女子として過ごしてきた。しかし、初恋相手には体育会系であることを敬遠され、告白と同時に敢えなく失恋。そこで彼女は、大学入学を機にイメチェンを決意する。入学直後から運命の出逢いを求めていたところ、思わぬ偶然からグライダー部への入部を余儀なくされることとなる。
エンジンを搭載せず、気流のみで大空を飛ぶグライダー。離陸前に一本の索で繋がったウインチの牽引力で時速100㎞まで加速したのち、離陸後は索を切り離して滑空する。14歳以上の健康体なら練習許可書さえ取れば免許無しでも飛べる。風と一体になる感覚が味わえるのが最大の醍醐味だ。主人公の都留たまきは、キラキラな男女交際を求めて上京してきた大学1年生。ひょんなことからグライダーでの初飛行を経験すると、彼女の気持ちは一変する。たまきは空に「一目惚れ」したのだ。かくして彼女は、個性豊かな航空部員たちと共に、本気で大空と向き合っていく。