名前が「マリオ」なキャラが登場する漫画57 Pt.

1985年9月13日、任天堂はテレビゲームソフト「スーパーマリオブラザーズ」を発売。本作はテレビゲーム普及の起爆剤となっただけでなく、後にシリーズ化され、世界中のゲームファンを魅了する超ロングランタイトルとなった。その主人公にちなんで、「マリオ」が登場する漫画を紹介しよう。

特集の最初に取り上げる「マリオ」は、やはりゲームキャラクターである本人（？）だ。もっとも、本作に登場するマリオは、ゲームのキャラクタがベースとなっているものの、その性格はよりコミカルでエキセントリック。ボケにツッコミ、下ネタなど、なんでもこなせる超一流のエンターテイナーだ。コインやお宝に目がなく、少々卑怯な立ち回りをすることもある。どちらかというとマリオに敵対するキャラクターの、ワリオに近いような部分も見受けられるなど、ギャグ漫画の主人公に相応しいアレンジが行われている。こうした、本作独自のマリオの性格付けには、大阪出身で吉本新喜劇が大好きな作者・沢田ユキオならではのセンスが感じられる。

本作の「マリオ」は、彫刻家を志す健気な少年である。しかし、彼の前途は苦難に満ちている。最大の元凶となっているのは、彼が世話になっている孤児院の院長だ。年端もいかない少年たちに重い労働を課し、わずかでも意に沿わないと、ムチを振るうなどの激しい暴行を加える。マリオが彫刻をすることも気に入らない様子で、彼の作品や彫刻刀を火にくべるといった非道なことまでする。「意地悪ばあさん」という表現では収まりきらないほどの悪逆ぶりである。そんな院長の妨害に心を折られそうになりながらも、盲目の親友・ポトフの励ましなどを力に、マリオは彫刻家という夢への階段を登っていく。彼のひたむきさは、読む者の心を揺さぶること間違いなしだ。

本作に登場する「マリオ」は、マリオ・アンドレッティ。実在する伝説的な名ドライバーであり、Ｆ1でワールドチャンピオンに輝いているほか、アメリカのインディカー・シリーズなども制している。このマリオのように、本作には当時のレースシーンで活躍していた、実在のドライバーが登場しているのが特徴だ。マリオは、漫画内においても重要な位置づけのキャラクターで、主人公・研とワールドチャンピオンの座を巡って、熾烈な争いを繰り広げる。ちなみに、アンドレッティ家はレース界における名門一族で、マリオだけでなく息子のマイケル、ジェフや孫のマルコなどもレーサーとして活躍している。

本作における「マリオ」は、マリオ・コルデイロ。主人公の石堂夏央が「私は充実している人間を許さない」という歪んだ対抗心を燃やす、馬渡ゆず子の師匠である。マリオはブラジリアン柔術の達人で、500戦無敗の戦績を誇る伝説の格闘家だ。彼の娘・リンジィはゆず子の盟友であり、ブラジルのアマチュア格闘大会で、男子選手たちを下して優勝するほどの天才少女である。マリオは、リンジィのために日本での活動を決めたという、自称「コルジャ（ポルトガル語で「親ばか」）」でもある。天才肌でひねくれ者の夏央が、リンジィ、ゆず子という才能だけでは敵わぬ相手と出会い、どのような変化を遂げるのか。それが本作の見どころである。

本作の「マリオ」は、藤原毬男。主要キャラクターの一人・真山巧の就職先である、藤原デザイン事務所の社長だ。ちなみに毬男は双子の兄で、弟の名前は類二である。名前を読み解くと「マリオ」と「ルイジ」。言うまでもなく、「スーパーマリオブラザース」を元ネタとするキャラクターだ。二人は作中の建築業界では、名の知れた有名人である。個性的なキャラクターたちの恋愛模様が描かれる本作の中でも、毬男と類二のキャラは読者に強烈な印象を残した。なお、藤原兄弟は、羽海野チカの別作品『3月のライオン』でも、アマチュアの将棋大会の観客として登場。相変わらずの濃いキャラっぷりを見せつけている。