多くの人がキュンとした 2020年実写化恋愛作品特集vol.277 Pt.

牧をはじめとした仲間たちは、花井のほかに男前だがデリカシーに欠ける神木累（かみきるい）、高偏差値だがエロ本収集が趣味の野上英敏（のがみひでとし）と個性的だ。牧たちは女のコの訪問に喜ぶが、「乙女系」に目覚めた花井は今の自分の姿を黙っていて欲しいと懇願する。無事に彼女との逢瀬を遂げる花井であったが、結局乙女系男子であることがバレて破局してしまう。一方牧は、中学時代の彼女を事故で失ったことで一歩踏み出せずにいたが、ひょんなことから新しい恋を始めてゆく。神木は血の繋がらない姉、野上は歳上の養護教諭にそれぞれ禁断の思いを抱えていた。本作は、恋愛とは無縁の環境の中で各々の恋に全力投球する彼らの姿が魅力的に描かれている。特に男子校育ちの読者には共感をおぼえるポイント満載だ。

七瀬に声をかけられた浬は、彼女のことを覚えていないどころか冷たく突き放す。なんと浬は、腕は確かだが病院内で評判最悪な冷酷医師だった。おまけに、七瀬はそんな彼に果敢に声をかけたことから「勇者」というあだ名をつけられてしまう。七瀬は悔し涙を流しながらも彼に食らいつき、偶然にも同じマンションに住んでいることをきっかけに少しずつ距離を縮めてゆく。晴れて恋人同士となりラブラブな時間を過ごす二人だが、浬に留学の話が持ち上がる。本作の見どころは、仕事のトラブルや恋の障害に振り回されながらも、持ち前の根性で乗り越える七瀬の逞しさ。また、ドSな態度を取りつつも、時折優しく彼女を見守る浬のギャップに思わずキュンとさせられるだろう。

浮気の事実を知った女性は夫を殺し、明智の前で崖から身を投じる。その後、女性は「マグダラのマリア」を名乗り、明智に挑発的な求愛の手紙を送り始める。時を同じくして次々と食にまつわる殺人事件が発生し、明智は苺と共に事件を追うが犯人にたどり着けない。実は、すべての事件はマリアが当事者をそそのかし、相手を殺すよう差し向けたり直接手にかけていたのであった。とうとう大量殺人事件が起きてしまい、苺さえも誘拐されてしまった明智は彼女と対決することを決意する。「食」をテーマにさまざまな事件が起こり、グルメ漫画としての側面もあるので読み応えたっぷりだ。偏執的な愛を向けるマリアに翻弄されながら、徐々に惹かれていく明智の恋模様も面白い。

七桜は母の冤罪を信じ、和菓子職人への道を歩んでいた。知人の結婚式に出す和菓子を光月庵と競作することになり、15年ぶりに椿と再会する。しかし、椿は七桜だと気づかず突然プロポーズをする。戸惑う七桜であったが、事件の真相を知りたいと考え受諾し、光月庵に住み始めることに。彼女の存在を疎ましく思う椿の母の執拗ないじめにも負けず、椿とも本当の恋人になるべく関係を深めていく。しかし、七桜の出生に関する重大な事実が発覚し、店の火事をきっかけに二人は再び離れ離れになるのであった。本作は、父を殺された椿と濡れ衣を着せられ死んだ母を持つ七桜の憎しみを乗り越えた「どうかしている」恋愛が濃厚に描かれている。昼ドラさながらのドロドロの展開に目が離せない。

ゲイであった今ヶ瀬は、大学時代恭一に密かに恋をしていた。今ヶ瀬は、浮気の口止めと引き換えに、彼にキスを求める。その後、更なる浮気が発覚し、恭一は半ば強請られるようなかたちで徐々に身体を許していく。結局恭一は妻に離婚を切り出され、今ヶ瀬もまた彼氏と破局する。二人は半同棲のようなかたちで暮らし始めるが、恭一には常に女の影が付き纏い、今ヶ瀬はさまざまな男を渡り歩いたことからお互い劣情と嫉妬に身を焦がしていくのであった。「世間の考える男」として幸せになりたいと願う恭一と、同性愛者という性志向で生きてきた今ヶ瀬の「性」がリアルに描かれている。本来交わることのない世界で生きてきた二人の恋愛は刹那的であり、関係が深くなればなるほど物悲しい。