いじめられっ子の主人公が武術の修行を経て成長していく青春バトル漫画。温和で優しい性格の高校生の白浜兼一は、不良生徒のいじめの標的となっていた。ある日、強くなって見返そうと決意し、近所の道場「梁山泊(りょうざんぱく)」の門をくぐり、道場長の長老をはじめとする闘いの達人たちと出会う。兼一は、梁山泊での厳しい修行の日々を通じ、心身ともに成長していく。本作の設定を引き継いだ続編に『史上最強の弟子ケンイチ』がある。
兼一は、強者たちがひしめく梁山泊に入門し、長老の孫で同級生でもある女性武術家の風林寺美羽らとの出会いにより成長。いじめられっ子だった己の運命を変えていく。弱かった兼一が、厳しい修行を経て体ばかりか心まで鍛えられていく様子はとにかく熱い。たとえば、自分をいじめていた不良グループに勝つが、ボコボコになるまで仕返しをしては彼らと同じになってしまうと見逃す。強くなっても、彼の優しい心が失われていないという一幕だ。そんな兼一が強敵たちと渡り合う様子は、共感も含めカタルシスを感じることができるだろう。本作の登場人物が用いる武術の多くは実在のもので、作中では、それらの多種多様な技が紹介されている。技の使い手たちがみな個性的で格好良いのも魅力の一つだ。
悪の組織「ダークドリーム」に入社した主人公の奮闘を描いたコメディ漫画。主人公のココセは、女子高生型怪人。正義の変身ヒロイン「パリキュア」との戦いの中、ダークドリームの優しい先輩怪人たちの指導を受けながら成長している。そんなココセの日々と、悪の組織の突っ込みどころが実にコミカル。いわゆる「変身ヒロインもののお約束」を悪の組織の視点からシニカルに描かれている。『ゆけっ!! 悪の組織ダークドリーム!!』の続編。
主人公のココセが入社した悪の組織「ダークドリーム」の先輩怪人たちは、良識ある大人ばかり。パリキュアと互角に戦える力を持っていながら、「変身ヒロインの2人がまだ女子中学生だ」という理由により、殺さないように手加減している。ココセは、そんな先輩怪人たちに業を煮やしながらも日々奮闘。見るからに悪党な先輩怪人たちが心優しいことに比べ、可愛らしいココセの方がずっとよこしまで、そのギャップが面白い。また、変身ヒロインもののお約束を、悪の組織視点から冷静に見るいう内容も目から鱗だ。悪の怪人が集まり、真剣に論じている姿がおかしい。作者であるKAKERUの鋭い観察眼と突っ込み能力が、存分に生かされている作品だ。
主人公の「軍人くん」こと吉田一等兵と、仲間たちの日々をブラックユーモアたっぷりに描いた不条理ギャグ漫画。戦争のために火星に行くことになった吉田の隊には、主婦の石井照美上等兵や死神中佐、謎の存在「へんな奴」など個性的な面々が集まっていた。さらに、地球人に虐げられることを好む火星人も登場する。作者である吉田戦車のブラックでシュールな作風の片鱗が垣間見られる。『火星人マチ子』や『火星ルンバ』など火星シリーズの原点ともいえる作品。
本作には、いたるところに作者独自のギャグセンスが散りばめられている。たとえば、主婦でもある石井上等兵は、残してきた息子が戦場でも気になってならない。また、古典SF的なタコ体形をしている火星人は、ひどい被虐趣味だったりする。正体がよく分からない仲間「へんなやつ」や、宇宙揚陸艇「窒息号」といったネーミングセンスもキレがある。火星人の風貌以外も全体的な描写が、どこか愛嬌あるデザインになっており、リアルな戦争作品になっていないところも特徴的だ。そこが、ブラックな笑いながらも、嫌な読み味にはなっていない秘訣なのだろう。『伝染るんです。』などで知られる不条理ギャグ漫画の名手、吉田戦車の出世作だ。
主人公の番田長介が、日本一の番長を目指して戦うバトル漫画。番田長介は、かつて血みどろの戦いを勝ち抜いて日本一の番長となった番田長兵衛の息子だ。彼自身は虚弱体質だが、「ナース派手」こと派手明日奈が発明した超強化剤「ビックリX」を飲むと、超筋力と野蛮な性格の持ち主である「筋肉番長」に変身する。日本各地に散らばる番長たちから、日本一の番長の証である5つの「番長金ボタン」を集めるため、大迫力のバトルを繰り広げていく。
主人公の長介は、日本一の番長の座を守り続ける名家に生まれたが虚弱体質。戦いの旅に出ることを拒み続けた結果、番田家の将来を危惧する父に、幼馴染の麻里亜を人質にとられてしまう。彼女を救い出すためには日本一の番長にならねばならない。その条件である5つの番長金ボタンを集めるため、明日奈らと共に日本各地を旅しながら苦難の戦いを繰り広げる。長介を筋肉番長に変身させる超強化剤「ビックリX」や、必殺技「番長ゲタクラッシュ」、5つの番長金ボタンを巡る戦いが2000年にわたって繰り返されてきたなどの設定はやや大げさ。しかし、そういった良い意味でのケレン味が、作品全体が持つ熱感につながっている。細かいことを考えずに楽しめる豪快で熱いバトル漫画だ。
大人気作品『キン肉マン』の登場人物であるラーメンマンを主人公としたスピンオフ漫画。主人公の美来斗利偉・拉麺男(びくとりー・らーめんまん)は、幼少時代から「超人拳法」の師範である陳宗明(ちんそうめい)老師に師事し、拳法「超人一〇二芸」と、その極意「闘龍極意書」を授かった。その後、弟子のシューマイと修行の旅に出る中、さまざまな技を駆使し、時に苦戦しながらも強敵と拳を交えていく。1988年にテレビアニメ化された。
拉麺男は、幼くして賊に家族の命を奪われ、自らは一命を取り留めた後に、陳老師の元で12年間修行を続け復讐を果たした。しかし、復讐後に己の未熟さを痛感したため、修行の旅に出る。道中、強敵と戦ったり、立ち寄った土地の人々を救うなどし、成長をしていく。拉麺男が使う「百歩神拳」や、本編の『キン肉マン』にも登場した「機矢滅留・苦落血(キャメル・クラッチ)」、強敵・流星拳砲岩(りゅうせいけんほーがん)の「散弾流星脚」など、男子ならば真似したくなる必殺技も盛りだくさんだ。かつて戦った砲岩や毒狼拳蛾蛇虫(どくろけんがんだむ)らライバルたちが、拉麺男の心強い仲間として再登場する。後に拉麺男と共に「拳聖五歌仙」を結成するといった展開は、バトル漫画の定番ながらも胸が熱くなる。