浅草の街を満喫せよ！オススメ漫画５選115 Pt.

この作品の舞台は、浅草にある畳とふすまが懐かしい昔ながらの木造二階建ての下宿屋だ。木造建築の家々が多く残っている下町だが、遠くに現代的なマンションなどが見える、浅草らしい風景が印象的な場所だ。また、作中に、花やしきや、駒形橋など、浅草のランドマークも登場している。同じ下宿に住んでいる佐山は、徹とは正反対のモダンな性格。女性に対してもスマートに接し、奥ゆかしさを美学とする徹との対比が面白い。特別、浅草を意識している作品ではないが、テーマの大正浪漫という時代錯誤感が妙に浅草と言う土地柄とマッチしている。

この作品で描かれているのは現在の浅草。五重塔や花やしきに代表される浅草の定番とも言える景色はもちろん、路地裏の風景や食堂の店内など、細かいロケハンを行ったであろう背景が精緻に描かれている。また、主人公の実家であるファッションヌードシアター「イギリス座」は、ビートたけしなどがその舞台を踏んだことなどでも有名な「フランス座」を元にしていると思われる。本作は2002年の連載だが、現在電子書籍版として発売されているリイド社版では、東京スカイツリーが描かれている。こういう所からも「現在の浅草を描く」という作者の思い入れが読み取れる作品だ。

この作品での浅草は、二人が大好きな東京散歩のスタート地点として登場する。東京観光の定番と言える浅草・浅草寺の雷門だが、自他ともに認める語学オタクのトニーが見るポイントは、一般の日本人とはすこし違う。最初は一般観光客の多くが見逃しがちな、雷門の提灯の底に描かれている龍に注目。龍とドラゴンの違いという話から、ドラゴンとドラキュラは同じ語源といった言語うんちくに発展していく。好奇心旺盛な夫婦２人の散歩で見る浅草は、視点が少し違っていてとても面白い。

この作品で描かれている浅草は、大川端探偵社の事務所がある隅田川沿いの風景だ。窓から見える隅田川には、浅草、豊洲、東京ビックサイトなどを船でつなぐ水上バスや、東京湾へ繰り出す観光の定番である屋形船、そして東京都の鳥・ゆりかもめが飛ぶ姿などが精緻なタッチで描かれている。また、ランドマークとなっているアサヒビールのビルなど、浅草を象徴する景色が印象的に散りばめられている。小さな探偵社に持ち込まれる様々な依頼は、一つ一つが依頼人を主人公とするドラマだ。そのドラマに織り込まれる精緻な浅草、下町の風景は、物語をよりリアルに感じさせてくれる。

この作品で描かれている浅草は、佐武と市が暮らしている江戸時代の浅草だ。二人は浅草の竜泉寺裏にある長屋に住んでいるという設定だ。竜泉寺は現在の三ノ輪駅近くに実在していて、台東区竜泉という地名の由来にもなっている由緒ある寺院だが、実際には浅草の寺院ではない。この作品は時代劇漫画なので、現在の浅草を忠実に再現したものではなく、いわゆる浅草の名所なども登場しない。しかし、二人が住む下町の長屋や江戸の町並みはリアルに描かれていて、そこに暮らす人々の日常の姿などとも相まって、江戸の世界にどっぷりと浸ることができる。時代劇の爽快なアクションと本格的な推理が楽しめる作品だ。