あらすじ
浅草生まれ、浅草育ちの下町っ子・志村源は、志村源の父が経営しているファッションヌードシアター「イギリス座」の手伝いをしつつ、仲間たちと遊んだり喧嘩をしたりの日々を送っていた。そんなある日、源は父親から新しく「イギリス座」で働くことになった、関西No.1のストリッパーである蝶々の迎えを頼まれる。蝶々を見て一目で気に入った源は、蝶々との交流を深め、いつしか浅草を案内するまでの仲となる。そんな中、源は蝶々が東京にやって来た本当の理由が、関西で突然消息を絶った兄・カンタを探すためだったことを知る。どうしても蝶々の力になりたいと思う源は、カンタ探しに奔走し、ついに見つけることに成功する。しかし、カンタは関西でヤクザの覚せい剤に手をつけたという疑いをかけられ、組から追われている身であった。
メディアミックス
映画
2014年6月に中前勇児が監督を務める『ガキ★ロック』が公開された。脚本は大野泰広が担当している。主なキャストは志村源役を上遠野太洸、マコト役を前田公輝、蝶々役を佐津川愛美が演じている。
ドラマ
2017年4月にamazonプライム・ビデオにて、オリジナルストーリーの実写ドラマ『ガキ★ロック ~浅草六区人情物語~』が配信された。映画版の監督である中前勇児に加え、中田博之と山本浩貴も監督を務めた。主なキャストは志村源役を上遠野太洸、マコト役を前田公輝が演じている。
作家情報
柳内大樹は主に青年誌で活躍している漫画家。1975年生まれで、富山県出身。1995年「ヤングマガジンエグザクタ」に『別天地』が掲載されてデビュー。2003年には「ヤングキング」で『ギャングキング』の連載を開始し、これが代表作となった。他の代表作として本作『ガキ★ロック』がある。
登場人物・キャラクター
志村 源 (しむら げん)
生まれも育ちも浅草六区の男性。年齢は17歳。非常にヤンチャな性格で喧嘩っ早く、「ケンカ祭りの源」の異名を持つ。中学までは青い派手な髪をしており「ブルードラゴン」を名乗っていたが、結局その名は定着せず「吉中の青い方」と呼ばれていた。現在はファッションヌードシアター「イギリス座」で父親の手伝いをしながら、マコトをはじめとする友人たちと、つるんでは喧嘩をする毎日に明け暮れている。 実は未だに童貞で、マコトら友人からは、しばしばそのことについていじられることがある。
志村源の父 (しむらげんのちち)
志村源の父親。浅草にあるファッションヌードシアター「イギリス座」を経営しており、従業員からは「社長」と呼ばれている。浮気の常習犯で、何度も見つかっては志村源の母から手痛い仕置きを受けている。源には将来、「イギリス座」を継いで欲しいと考えている。
志村源の母 (しむらげんのはは)
志村源の母親。夫の浮気を見つけては、ナベや包丁を投げつける激しい気性の女性。源の将来については、ファッションヌードシアター「イギリス座」を継ぐよりも、自分の実家で営んでいる、昔ながらの職人気質の大工の跡取りになって欲しいと考えている。
マコト
志村源の友人の男性。年齢は17歳。中学までは赤い派手な髪をしており、「レッドスコーピオン」を名乗っていたが、その名は定着せず「吉中の赤い方」と呼ばれていた。現在は、人力車で観光客を案内する仕事をしている。昔からの暴れん坊気質は変わっておらず、何かと源と行動をともにし、いざ喧嘩となれば暴れまわっている。趣味でバンドをやっており、聞く音楽はすべて洋楽。 今時の女子が食いつくトレンドも熟知しており、女性の扱い方も上手いプレイボーイでもある。
ジミー
志村源の友人の男性。年齢は20歳。基本的に自虐的でネガティブな性格。更にインポテンツという欠点を持つが、博識で豆知識が豊富という意外な一面も持つ。ナンパをする際には「下半身を丸出しにする」というやり方で、女性をゲットしようとするド変態。
松っつん (まっつん)
志村源の友人の男性。年齢は23歳。基本的に表情が変わらないため、何を考えているかわからないところがある。しかし、ノリが悪いわけではなく、どのような場面にも器用に適応する。実は糖尿病を患っている。
水野 (みずの)
暴走族「シャマニズム」の総長を務めていた男性。当時、中学生だった志村源とマコトとの喧嘩に負けて、「シャマニズム」を解散に追い込まれており、それをいまだに根に持っている。その後は、少年院で過ごしていた。その間、ずっと身体を鍛えることに腐心しており、現在は強靭な肉体を手に入れている。かつて喧嘩した際、マコトには自分のパンチが一発も当たらなかったため、特にマコトと再戦することにこだわっている。
藤原 (ふじわら)
暴走族「シャマニズム」の幹部を務めていた男性。当時、中学生だった志村源とマコトに喧嘩を売った人物。その後、喧嘩に負けて「シャマニズム」を解散に追い込まれたことを、いまだに根に持っている。
前総長 (ぜんそうちょう)
暴走族「シャマニズム」で、水野の前に総長を務めていた男性。当時、中学生だった志村源とマコトに、水野と藤原が負けたことに激昂。水野と藤原にヤキを入れていた。しかし、その途中で使用していた木刀を水野に奪われ、返り討ちに遭っている。
島木 (しまき)
浅草で「最強」といわれていた伝説の男性。現在はヤクザ界の顔役として、源の暮らす街でさらに幅を利かせるようになっており、恐れられている。「ノックダウンゲーム」で島木の母親が何者かに殴られた時には、その敵を討とうとするなど、意外と母親想いのところがある。
プリズンのリーダー
アウトロー集団「プリズン」のリーダーを務める男性。「ノックダウンゲーム」を流行らそうとしており、自身もその「ノックダウンゲーム」を積極的に行っている。相手が中年の女性であろうと容赦なく殴るなど、良識が完全に欠如した危険人物。
蝶々 (ちょうちょう)
元関西No.1ストリッパーの女性。ファッションヌードシアター「イギリス座」にやって来た。「イギリス座」でも、所属してからたった1週間で、No.1の座を手に入れている。家族は兄のカンタしかおらず、幼少期から両親がいないため寂しい思いをしてきた。好物は「金たこ」のたこ焼き。
カンタ
蝶々の兄。両親がおらず寂しい思いをして、よく泣いていた幼少期の蝶々に、「金たこ」でたこ焼きを買って来てはなだめていた。現在は、関西でヤクザの覚せい剤に手を出したという濡れ衣を着せられ、東京へ逃亡している。
マサ
カンタを追っている関西ヤクザの男性。兄貴分とともに東京へやって来て、ファッションヌードシアター「イギリス座」で働いている蝶々の周りを嗅ぎまわっている。ケンカの腕が立ち、志村源も寄せ付けないほどの強さを誇る。気を失って、なお笑い続ける源を見た時には、「末恐ろしいガキ」と評していた。
マサの兄貴 (まさのあにき)
カンタを追っている関西ヤクザの男性。マサとともに東京へやって来て、ファッションヌードシアター「イギリス座」で働いている蝶々の周りを嗅ぎまわっている。マサの兄貴分にあたる人物で、ティアドロップ型のサングラスをかけている。
レイカ
ファッションヌードシアター「イギリス座」で働く女性。蝶々が「イギリス座」を去った後、新たにNo.1の座についた。志村源からは「カッコイイ」と評され、憧れの的になっている。勤との間にケン太という子供がいるが、勤の両親がレイカの職業を知ったため結婚することができず、ケン太とも別々に暮らしている。
勤 (つとむ)
レイカと付き合っていた男性。レイカとの間に息子のケン太をもうけたが、自身の両親から結婚を反対された。現在はレイカと別れて、ケン太とともに暮らしている。最近、仕事の関係で、東京から関西方面へ引っ越すことが決まっている。
勤の父 (つとむのちち)
勤の父親。厳格な男性で、勤の結婚相手であるレイカがストリッパーであることを知り、結婚に猛反対した。未だにレイカを快く思っておらず、「下品な女」呼ばわりしている。
ケン太 (けんた)
レイカと勤の息子。現在は勤とともに、レイカとは離れて暮らしている。パチンコを携帯しており、かんしゃく玉や爆竹などで、相手を攻撃することを得意としている。父親の仕事の関係で、関西方面へ引っ越すことが決まったため、会えなくなる前に、最後に母親のダンス姿を見たいと考えている。
よし男 (よしお)
よし男の彼女とともに花やしきでデートしていた男性。ケン太がよし男の彼女にぶつかって、買ったばかりのシャネルのバッグを汚されたので激怒した。子供のケン太に対しても容赦なく暴力を振るうなど、冷酷な人物。
よし男の彼女 (よしおのかのじょ)
よし男の彼女。よし男と一緒に花やしきデートしていた際にケン太とぶつかり、買ったばかりのシャネルのバッグを汚されてしまう。シャネルのバッグに対する執着は凄まじく、シャネルのバッグが投げられた方向に、反射的に走り出してしまう性質を持つ。
ケイナ
ファッションヌードシアター「イギリス座」で働く女性。その正体は、今を時めくアイドルの「前園ゆき」。幼い頃に父親が新しい女を作って家を出て行き、それからは母親に女手一つで育てられた。現在はケイナ自身が夢見ていたアイドルになれたものの、母親が難しい病気になってしまい、金が必要な状況にある。
水橋 (みずはし)
渋谷のアウトロー集団「カオス」の幹部を務める男性。ファッションヌードシアター「イギリス座」で働くケイナが、アイドルの「前園ゆき」であることを知り、それをネタにゆすろうとしている。武器としてナイフを携帯している。
バカボンド
浅草駅前にいるホームレスの男性。志村源とも顔見知りで、一人称は「アッシ」。蝶々にたこ焼きを渡そうとしていたところ、源に蝶々を狙う不審者だと勘違いされ、確認もされずにいきなり殴られるなど、不運な役回りが多い。情に厚い人物で、源蝶々とカンタとの兄妹話を聞いた時には、涙を流して感動していた。
射的屋のセガレ (しゃてきやのせがれ)
浅草にある射的屋の跡取り息子。志村源らのグループ「ガキロック」と事あるごとに衝突しており、これまで42戦もしている因縁の相手。マコトの鼻を二度も折っており、その喧嘩の実力は「ガキロック」の面々にも認められている。
のりお
浅草にある立ち飲み屋「立ち飲みのりおちゃんポーン」の店主を務める男性。店には志村源らのグループ「ガキロック」の面々がよく飲みに行っているため、全員と顔見知り。職業柄さまざまな話を聞く機会が多く、水野が少年院から出て来た情報も、誰よりも先に知っていた。
由美 (ゆみ)
志村源とマコトにナンパされた女子高校生。由美の友人とは対照的に冷静な性格だが、ノリの良さと今時の流行を追いかけている、という点では感性が合致している。流行を「悪」と決めつける人を何よりも嫌っている。
由美の友人 (ゆみのゆうじん)
志村源とマコトにナンパされた女子高校生。テンションが高く、笑い上戸。ノリの良さと今時の流行を追いかけている典型的な若者。自分の感性に合わないものは全否定する癖がある。
集団・組織
ガキロック
志村源を筆頭に、浅草六区で生まれ育ったメンバーにより構成されているグループ。他のメンバーはマコト、ジミー、松っつんの3人。全員がヤンチャな性格で、何かにつけては地元の人間と喧嘩をしている。特に射的屋のセガレのグループとはライバル関係にあり、42回もの抗争を行っている。
プリズン
浅草で「ノックダウンゲーム」を行っているアウトロー集団。ニュースで「ノックダウンゲーム」のことを知り、日本でも流行らせようとしている。メンバー数は数十人を超えており、全員ガラが悪い。
シャマニズム
水野が総長を務める暴走族。13代も続いていた由緒あるチームだった。しかし、当時中学生だった志村源とマコトの2人に、幹部を務めていた藤原と総長の水野が喧嘩で負けたことで、その後を継ぐ者が現れず、チームは解散した。
カオス
渋谷のアウトローで構成された凶悪な集団。金になるならなんでもする。幹部は「C」の字が入った眼帯を付け、ドクロと太陽を合わせたデザインのタトゥーを入れている。最近勢力を拡大しており、手当たり次第に他のグループの縄張りを荒らしている。
場所
イギリス座 (いぎりすざ)
志村源の父が経営しているファッションヌードシアター。志村源の実家であり、源も従業員として経営を手伝っている。地元の人間の憩いの場となっており、昼間から女性の裸を鑑賞するために、足を運ぶ人も少なくはない。主なルールは「おさわり禁止」「動画撮影禁止」「飲食物の持ち込み禁止」など。この店でストリッパーとして働く女性は、複雑な事情を抱えている者が多い。
金たこ (きんたこ)
関西にあるタコ焼き屋。子供の頃に蝶々が泣いていると、兄のカンタがなだめるために買いに走った。そのため、蝶々にとって金たこのたこ焼きは、「思い出の味」となっている。関東には支店がなく、東京の人間が食べるためには、わざわざ関西まで足を運ぶ必要がある。
その他キーワード
ノックダウンゲーム
アメリカで流行している、ゲーム感覚で行う暴力行為。無差別に人を殴り、その画像や動画をSNSなどにアップするというもの。あくまで単純な暴力行為であり、金や物取りを目的としたものではない。最近はそのニュースを見て触発された若者が日本でも多く、アウトロー集団の「プリズン」も、浅草で「ノックダウンゲーム」を行っている。