宇宙飛行士を目指す少年の成長を描いた、熱血スペース・ロマン。主人公の真上直進は、名前の通り思い立ったら一直線、少々お馬鹿ながら元気で直向きな少年だ。小学生当時の直進は、父が部品を作った宇宙ロケット・H-Ⅱの打ち上げを見学。その光景に感激した彼は、宇宙飛行士になることを決意する。
本作の特徴は、宇宙飛行士を目指す主人公・真上直進の成長を、丁寧に描いていること。小学生当時、H-Ⅱロケットの打ち上げに感激した彼は、宇宙飛行士なることを心に決める。そして彼は、まず手軽なロケットであるペットボトルロケットの打ち上げに熱中。続いて難関中学に合格した直進は、全国から宇宙好きの中学生が集まるコズミック・カレッジに参加。固体燃料エンジンを用いるモデルロケットを打ち上げる。その後、彼は宇宙飛行士が船外活動前に行うプレブリーズを疑似体験する。このように、物語は直進が宇宙飛行士への夢を追いかけていく様子を、段階を踏みながら描いていく。そしてその都度発生する困難や事件を、直進は持ち前のガッツと仲間たちとの絆で乗り越えていく。本作は、宇宙に憧れる少年のロマンに満ちた熱い物語だ。
遥かなる月を目指す、2人のタフガイの姿を描くサイエンス・フィクション。天才学生クライマー・猿渡吾郎は、親友のアメリカ人・ロストマンとともに、世界の名だたる名峰を制覇。エベレスト登頂をも果たした2人は、頂上で上空に浮かぶ人工衛星を見上げ、人類最後の未踏峰・宇宙を次なる目標に定める。2人は月を目指して、それぞれの道を歩き出す。2007年にテレビアニメ化。
本作は、月面を人類の新たなフロンティアとして描いている。本作は、核融合炉が実用化段階にある世界。そのエネルギー源となるヘリウム3が、月に大量に埋蔵されていることが判明。月は一気に世界の注目を集めることとなる。そんな中、親友であり、ザイルパートナーとして命を預け合った猿渡吾郎とロストマンの関係は、大きく変化していく。吾郎は月面開拓者として、宇宙へのロマンを抱き続ける。一方、月面開発を権力の頂に登るための手段と捉えるロストマンは、軍のポストから「月の王」を目指す。本作の特徴は、宇宙のロマンを描く一方で、権力闘争やブロック政治による対立関係など、ドロドロとした現実的な側面をもしっかりと描写している点だ。開発が進み、人種の坩堝となった月面では、様々な問題が発生。それらの問題を解決しようと足掻く、吾郎を始めとする人々のドラマが、本作の大きな見所だ。
宇宙科学研究所(ISAS)が打ち上げた小惑星探査機「はやぶさ」の業績をユニークな視点で振り返る、サイエンスコミック。物語の主人公は、恒星間を自由に行き来できる進んだ文明を持つ2人の宇宙人。ただし彼女たちは、新たなものを作ることができなくなり、進歩の行き詰まりを感じていた。そこで2人は、宇宙開発初期の文明の持つ活力に着目し、地球を目指していた。その道中、彼女たちは地球から打ち上げられた探査機「はやぶさ」と遭遇する。
本作が題材として取り上げているのは、小惑星イトカワに着陸し、世界で初めて小惑星表面のサンプル回収に成功した無人探査機「はやぶさ」。2010年6月の地球帰還時の様子は、世界的なニュースとなり、多くの人々の心に宇宙へのロマンを抱かせた。7年間、およそ60億㎞にも及ぶ「はやぶさ」の旅路は、決して順風満帆なものではなかった。むしろトラブルの連続で、地球にサンプルを持ち帰れたのは奇跡に近い。本作では、「はやぶさ」が度重なる困難をいかにして解決したかを、ギャグを交えながら丁寧に解説している。作者のあさりよしとおは、長年『まんがサイエンス』シリーズを手掛けており、科学解説には定評がある。宇宙を題材にしたSF作品も数多く、宇宙好きな漫画家でもある。本作は、そんな作者の真骨頂ともいえる、宇宙のロマンが存分に詰まった内容だ。
人類存亡を賭けた、壮大な計画を描いたサイエンス・フィクション。西暦201X年、恐竜を絶滅させた天体の100倍以上もの質量を持つ隕石が地球に接近する。月面に設置されたレールガンから、極小ブラックホールを射出することで、地球への直撃は免れたものの、隕石は月と衝突し、月は消滅する。そして、人類は木星の衛星であるエウロパを月の代わりに地球の周回軌道に移動させようとする。
作者の星野之宣は、宇宙を舞台にしたSF作品を数多く手掛けてきた第一人者だ。彼の作品は、科学的にリアリティのある背景と共に、宇宙の壮大なスケールを精緻な筆致で描いている。宇宙のロマンを語る上で、欠かすことの出来ない漫画家と言える。本作の舞台は、隕石の衝突によって、月が失われた地球。月は夜空をロマンティックに彩るだけでなく、人類にとって不可欠の存在だ。月の消滅によって、地球の地軸は安定を失い、極点は移動。アメリカ大陸は北極大陸に変貌し、日本と中央アジアは赤道直下の熱帯地域と化す。かつての北極・南極からは大量の氷が溶け、海面が上昇。人類は存亡の危機を迎える。この危機の打開策として浮上したのが、木星の衛星・エウロパを月の代わりにする計画だ。かくして、主人公を含む大型宇宙船ユピトロンのクルーたちは、木星へ向けて困難な航海に挑むこととなる。
蒼栄高校天文部の活動を描いた、宇宙のロマンが漂う学園青春ラブコメ。主人公の大八木朔は、読書好きで典型的なインドア派。ところが幼少期、彼は幼馴染みの明野美星に振り回され、アウトドア三昧な日々を余儀なくされる。引っ越しで美星と離れ、平穏な生活を取り戻した朔だったが、高校入学と同時に幼少期を過ごした町に再び転居。しかも、彼が入学した蒼栄高校には、美星が在籍していた。かくして朔の高校生活は、平穏とは程遠い騒々しいものとなっていく。
天文部は、宇宙のロマンがもっとも身近に感じられる部活動である。本作の主人公・大八木朔は、宇宙飛行士や天体物理学者を目指しているわけでもない。それどころか、元々宇宙にはそれほど興味もない、読書好きな男子高校生だ。彼が天文部に入部したのは、幼馴染みの上級生・明野美星の強引な勧誘に逆らえなかったからに他ならない。本来であれば、朔は星空など見上げず、読書に明け暮れる日々を過ごしていたかも知れない。しかし、美星を始めとする天文部の面々と過ごす内、星を見上げる感動に目覚めていく。雨の日のプラネタリウム、夏合宿での文芸部との交流。そして、県内高校ネットワーク観測会への参加。宇宙のロマンを追いかける天文部の活動は、徐々に広がり、それと同時に朔たちの青春も彩りを増すこととなる。