学園もの作品では定番の「体育」の授業。サッカー、バスケ、バレーなどのスポーツを通して、各キャラクターたちのいつもと違った魅力を発見することができる貴重なシーンだ。本作でも、2人が参加する体育の授業の様子が描かれている。足をくじいてしまい、授業を見学している和泉のもとに式守さんがやって来るところから始まる同エピソード。しばらくのあいだ会話を楽しむ2人だったが、その中で和泉はふと「せっかく今日式守さんがバスケやってるトコ見れるんだし…かっこいいトコ見てみたいなぁ」と口にする。タイミングよく出番がやって来た式守さんは、その場を颯爽と立ち去ってバスケの試合に参加するが、その際に和泉の方を振り向き、自身が着ていたジャージを「持ってて」とパスする。その時の式守さんの表情は、恋愛漫画でヒロインが思わずひと目惚れしてしまうイケメン男子さながら。もともと運動神経がよい式守さんが、大好きな和泉からの言葉に焚き付けられてやる気を出す場面にヒロインらしさを感じられる一方、表情や振る舞いは凛々しく、ヒーローのようでとても印象的だ。まさに可愛いだけじゃない“イケメン”な式守さんを堪能できるシーンである。
運動が苦手な和泉が雪上に転がるシーンから始まるエピソードでは、校外学習のスキー合宿を舞台にした2人のやりとりが描かれる。式守さんは人生初のスノーボードに挑戦するが、持ち前の運動能力を生かし、初日から上級者コースで滑るなど尋常ではない上達を見せる。そんな彼女は、和泉が少しでも上達するようにと練習に付き合うと言うが、和泉はなかなか一歩が踏み出せずに尻込みしてしまう。「絶対に受け止めるから おいで!」と、まるで姉のように声を掛ける頼もしい式守さんに背中を押され、勇気を出して滑り出す和泉。しかし彼の運動音痴は尋常ではなく、大きくコースから外れて木に激突しそうになってしまう。彼氏のピンチを目の当たりにした式守さんはものすごい速さで雪の中を駆け下り、和泉を抱きしめるように庇い、木との激突を回避させる。見開きで描かれる式守さんの姿は、まるで姫を助ける“ナイト”のようだ。本エピソードでは、このシーンをはじめとして全編を通して、和泉を絶対的に励まして守るような式守さんの発言、行動が際立っている。周囲から見ると、イチャついているようにしか見えないというギャグなオチもさることながら、可愛いだけじゃない“ナイト”な式守さんに注目してほしい。
和泉と友人たちが屋上に集まり、夏休みの計画について相談するエピソードでは、慈愛に満ちた式守さんが見られる。屋上に出るものの、日差し耐性0のために目眩を起こしてしまう和泉。そこに忍び寄った式守さんは冷たいペットボトルを彼の首筋に当てて驚かし、「ちゃんと水分摂ってくださいね」とほほ笑む。この時の彼女の表情はどこか小悪魔的にも見えつつも、和泉を常に見守る優しさを感じさせる。体調が復活した和泉は式守さんや友人たちと夏休みにどこに遊びに行くかで盛り上がる。海の話題で盛り上がる一同だが、友人たちは虚弱体質な和泉に合わせて、木陰の多い川へ行くことを提案。気を使わせたことに鬱屈とした思いを抱いた和泉だが、友人の一人である犬束の「皆で楽しめるトコいった方が楽しいから話し合ってんだろ」という一言で元気を取り戻す。全体的に和泉と周囲の友人たちとの友情が垣間見える青春回といえる本エピソードだが、ここでも式守さんは、和泉や友人たちをその言動でノックアウト。川遊びにも危険があることを危惧する友人に、式守さんは「大丈夫 私がついてる」と優しくほほ笑みながら言い放つのだ。その頼もしい言葉に友人たちは「かっこいい〜!」と黄色い声援をあげる。和泉だけではなく周囲にも安心感を与える、可愛いだけじゃない“慈愛”に満ちた式守さんが魅力的な回である。
学園ものの醍醐味と言っても過言ではない「文化祭」のエピソードも、本作にはもちろん登場する。そもそも、和泉と式守さんが付き合うきっかけとなったのは1年前の文化祭がきっかけ。「同じ番号の相手と結ばれる」ジンクスがある“カップルナンバー”という名物企画を通じ、和泉と式守さんはめでたく恋人関係になったのだ。学校の入り口で数字が書かれた紙をランダムで渡されるこの企画。前年は同じ番号を引いた和泉と式守さんだが、この年は違う番号を振り分けられてしまう。すでに恋人関係ではあるものの、今回もなんとか和泉と同じ番号をゲットしようと式守さんが闘志を燃やす一方、和泉と同じ番号を持っていたのは和泉と同じ図書委員の狼谷(かみや)さんだった。高身長なクール系美人、おまけにみんなに優しい人気者の彼女は、式守さんとはまた違った意味での“かっこよさ”を持ち、和泉にとって気さくに話せる数少ない女生徒。また、同じ図書委員として信頼を寄せている存在でもある。式守さんは狼谷さんに“カップルナンバー”の数字を交換してほしいと頼み、彼女もそれを快諾。しかし、その後式守さんは狼谷さんに数字を返しに戻る。理由は、狼谷さんの和泉への恋心に気付いてしまったから。式守さんは「私の好きな人を好きになってくれる人に悪い人はいないと思うから」と告げ、和泉への思いを語った狼谷さんを抱きしめる。恋敵に対して嫉妬をするわけでも、塩を送るでもなく、同じ人を好きな同士として“敬意”を払う式守さんの姿に、可愛いだけじゃない“誠実”な一面を感じるエピソードだ。