舞台は第一次大戦後、世界恐慌に荒れるイタリア、アドリア海で、飛行艇乗りの主人公マルコが、賞金稼ぎを生業としながら生きていく姿を描いたストーリーです。
大戦後、「栄光なき勝利」とまで言われたイタリアでは経済は不安定になり、先の見通しも立たない混沌の中、本作ではそれを感じさせない明るいキャラクターたちが活き活きと躍動します。そのギャップがまた観ていて楽しいです。
また、マルコたち飛行艇乗りが生活の場とするアドリア海の描写がとても美しく、家の茶色い屋根、山々の緑と海と空の青さとが色鮮やかに見事に描かれています。あの風景を見ただけで心が晴れるという人もいるのではないでしょうか。
本作の一番の魅力とも言えるのが、やはりなんと言っても主人公マルコのカッコよさでしょう。見た目は豚ですが、常にサングラスを掛けトレンチコートを身に纏い、言葉少なく佇む姿はオトナの男という感じで本当にカッコイイです。作中では密かに想い合うマダム・ジーナを顧みず戦場に飛び立つなど、かなりニクい男としても描かれています。
宮崎駿監督が、本作について「自分がやりたいようにやった映画」と語った話は有名ですが、主人公マルコにもその要素が存分に表れていると思います。
そのハードボイルドな世界とは一転、敵キャラたちはギャグ要員のような三枚目キャラクターばかりで、子どもたちにもいいようにされていて面白いです。中でもマルコ最大のライバルでもあるカーチスとの掛け合いは特に秀逸で、終盤ではマルコに惚れるヒロイン、フィオを賭けて殴り合いの決闘を繰り広げます。敵キャラながらどこか憎めない、世界観と非常にマッチしたキャラクターたちも本作の魅力のひとつです。