北斗の拳の人気キャラクターである「サウザー」がひたすらキレたりデレたりするさまを描いたパロディギャグ漫画。南斗六聖拳の使い手にして自らを「聖帝」と名乗るサウザーは、敵であるケンシロウと対峙していた。ケンシロウが北斗神拳を放つも、生まれついて帝王の身体を持つサウザーはびくともしない。とはいえ、「殴られても痛くないわけではない」と強がりいっぱいに語るサウザーに、ドン引きするケンシロウであった。2015年テレビアニメ化。
サウザーはお返しに南斗鳳凰拳をケンシロウに見舞う。その切れ味は、「女性バトル物で見られる読者サービス」のようにケンシロウの胸元だけを不自然にはだけさせ、彼を辱めるのであった。その後もケンシロウと友達になろうとデレたり、北斗神拳を食らっても痩せ我慢で耐えたりと、扱いにくい性格を随所で発揮する。しかし、サウザーの強がりは、辛い時に皆が青春をエンジョイしていたことへの嫉妬からくるものであり、その不憫さに皆涙を流すのであった。本作は、原作では冷酷無比なサウザーがおバカキャラ満載で描かれているのが特徴である。また、有名なエピソードの一つである、人質の少年がサウザーの脚を刺すシーンもしつこく描かれているのも楽しめるポイントだ。
就職難の世界を舞台に、図らずも拳王軍で働くこととなった少年とその仲間たちを描いた世紀末お仕事コメディ。199X年、世界は核の炎に包まれ就職難となっていた。主人公・ノブは「住み込み三食付き」「誰でもできる簡単な作業」との誘い文句に釣られて、就職先である「拳王軍」の門を叩く。しかし彼を待ち受けていたのは、屈強かつヤバい風貌のいわゆる「ザコ」たちであった。やたら口が臭い隊長のバーズにロックオンされ、彼の受難が幕を開ける。
ノブは、詐欺だと憤り出て行こうとするが、ザコたちに「お前の村を燃やす」と脅され渋々拳王軍の職務に就くことに。やることといえば村人を襲って殺害したり、略奪や窃盗といった悪事の限りだ。ノブは、ザコたちと理想の「断末魔」について語り合ったり村を襲おうとして返り討ちに遭ったりするうちに、徐々にバーズをはじめとした面々と打ち解けてゆく。けれど、そんな彼らの前にも遂に最強の敵が現れ、次々と死んでゆくのであった。本作は、いわゆる「モヒカンザコ」などと呼ばれる北斗の拳の名もなきモブキャラたちの日常が悲哀たっぷりに描かれている。原作を元にしたネタも豊富で、思い出しながら読み進めるのもオススメだ。拳王軍のブラック企業顔負けの理不尽さも面白い。
北斗の拳の登場人物で、南斗水鳥拳の正統伝承者でもあるレイの闘いと生き様を描いたバトルアクション。世界が核の炎に包まれた世紀末、レイは「胸に七つの傷を持つ男」を探していた。両親を殺害し妹を連れ去ったその男への復讐と、妹の救出のため、その行方を求めて情報を集めていたが、奴隷市場で「アズガルズル」という女性だけが暮らす城の存在を知る。旅の途中で出会った少年・ユウと共にアズガルズルに向かうが、そこでの出会いが彼をさらなる闘いの渦に巻き込んでゆく。
アズガルズルを訪れたレイは、女王・エバと出会い心癒される。遂には情を交わすが、翌日エバは何者かの南斗聖拳により暗殺されてしまう。エバ殺しの濡れ衣を着せられたレイは、町の自警団に襲われるが命からがら逃げ延び、ユウの助けを経て真犯人探しに奔走する。たどり着いたのは、かつての彼の師匠・ロフウであった。ロフウがアズガルズルを支配下に置こうと暴虐の限りをつくしていることを知り、レイは南斗水鳥拳の正統伝承者として彼と闘うことを決意する。本作は原作の中でもとりわけ美青年であり人気の高いキャラクター・レイの武勇伝として、イメージを壊すことなく描かれている。彼を取り巻く人間模様が複雑に絡み合っており、一つの物語としても楽しめるだろう。
世紀末の世界を舞台に一世を風靡したバトル漫画『北斗の拳』を、ジュニア英検3級のシナリオ担当が乱暴に翻訳したシュールギャグ漫画。人気キャラクターであるサウザーとケンシロウの闘いから物語はスタートする。反乱を起こした南斗聖拳の使い手・シュウに、サウザーは己の陵墓「聖帝十字陵」の聖碑を背負わせ、絶命させる。しかし、それを見ていた少年にサウザーは脚を刺され、「ディス ボーイ クレイジー!!」と叫ぶのであった。関連作に『北斗の拳 イチゴ味』がある。
本作は、サウザー編をはじめ、ケンシロウ編・ラオウ編など主要人物の名場面が「全力翻訳」というかたちで描かれている。セリフのすべてが雑な英語に翻訳されたものがカタカナで書かれており、日本人にも外国人にも読みにくいことこの上ない。しかし、原哲夫の原画をふんだんに用いた無骨な絵柄に、ジュニア英検3級程度のセリフをミックスさせることでジワジワとくる面白さを醸し出している。また、日本の古語を使って訳された原作の第1話は解読するのが一苦労なのに加え、平安時代の絵巻物風な絵柄になっており、そのアイディアの斬新さに驚かされる。また各話の間には、「北斗神拳」や「お前はもう死んでいる」など有名なフレーズを固有名詞まで英語翻訳したミニコーナーもあり、お楽しみ要素も満載だ。
21世紀の平和な世界で暮らす北斗三兄弟の日常を描いた、ほのぼのコメディ。199X年、世界は核の炎に包まれなかった。のどかな21世紀のある日、貧乏大学生のバットはバイト先のコンビニに向かっていた。店員から新入りを紹介されるが、革ジャン革パンに腕に包帯を巻いたキテレツな格好の若者を見てバットは驚愕する。しかし、その若者こそが1800年続く暗殺拳である「北斗神拳」の使い手・ケンシロウだった。2013年テレビアニメ化。
北斗神拳は、平和な世の中では何の役にも立たないただの特技だ。そのせいでケンシロウは無職だったが、店長の娘・リンのはからいでコンビニで働くことに。しかし、「玉子はもう終わっている」「お弁当『あたた』めますか」などの迷言を吐きバットを困らせる。疲労困憊でアパートに帰り着いたバットを待ち受けていたのは、偶然隣に引っ越してきていたケンシロウ、無職で病気がちな次兄・トキ、建設現場で働く冷酷な長兄・ラオウの三兄弟だった。三人は、合コンやキャンプに興じたりと平穏な生活を送りつつも、不意に出てしまう北斗神拳でバットを振り回してゆく。殺伐とした原作に比べて、ほのぼのとしたタッチで三兄弟の日常が描かれている。原作を知らずとも楽しめる作品だ。