世界観
舞台は弱肉強食の世紀末世界。199X年に核戦争が勃発し、その影響で国が滅び文明が失われた。生き残った人々は各地に「村」と呼ばれる集落を作り、肩を寄せ合って暮らしている。そんな弱者たちを虐げるのが、力のある悪党たち。彼らは徒党を組んで武装集団を結成、ある者は旅しながら村々を略奪し、またある者は定住して人々を奴隷のように支配した。組織だった警察機構も存在していないため、無法者どものやりたい放題となる。核戦争による文明崩壊と共に、銃器や化学兵器などが貴重品となったため、何よりも肉体の強さがものをいう時代となった。武器と言えば、棍棒やヌンチャク、刀といった原始的なものが多く、銃器に関してはほとんど出てこない。車は残っているものの、作中で描写される地上のほとんどが荒野化していることもあってか、バギーなど厳しい環境下で使われるものばかり。貨幣経済も消滅しており、価値ある貨幣が出てくるのは世情が比較的安定した物語の終盤のみだった。食料と燃料の物々交換が行われ、水場を求めて悪党どもが執拗に襲撃を繰り返すなど、生存に直結する物資が貴重品となっている。
こうした世紀末世界のモデルとなったのは、原作者の武論尊によれば映画『マッドマックス2』であるという。荒野化した世界、肩当ての目立つプロテクターを身につけた無法者ども、奴隷化される民衆といった描写にその影響が見られる。
文明社会が一度崩壊し、暴力による無法世界が生まれるという点では、永井豪の『バイオレンスジャック』、菊地秀行の『魔界都市<新宿>』とも共通。初期の『北斗の拳』は日本の関東地方を舞台としているが、『バイオレンスジャック』『魔界都市<新宿>』の舞台も同じく関東地方である。記念すべき第1話の1コマ目は「一九九×年 世界は核の炎につつまれた!!」というナレーションのもと、核兵器によるキノコ雲が立ちのぼっているというもの。その後、旅人が悪党どもに襲われる様が6ページを費やして描写され、主人公のケンシロウが出てくるのは12ページ目とかなり遅い。また、後の物語で無敵を誇るケンシロウも、この時点では水を求める行き倒れ寸前の姿。世紀末の荒野は北斗神拳伝承者にとっても過酷であるというわけだ。
また、キャラクターたちのファッションは、ユリアが着るドレスなど一部の例外を除き、現代社会における普段着とはかけ離れたものとなっている。戦う者の多くは肩に大きなプロテクターをしており、一目でその役割を見分けることが可能。『北斗の拳』が大ブームとなった陰には、こうした物語序盤における世界観描写の巧みさ、分かりやすさがあったからと言えるだろう。
作品が描かれた背景
連載が開始されたのは1983年で、同年に「フレッシュジャンプ」誌に掲載された読み切り版2作品がベースとなっている。
読み切り版は原哲夫の画力を活かしたいということで企画され、当時の担当編集者・堀江信彦が北斗神拳のアイデアを生み出した。
この時の主人公は日本人の霞拳四郎で、舞台も現代の日本。秘孔を突かれた相手が時間を置いて死亡する点、「あんたもう死んでるよ」という決めぜりふなど、骨子はここで完成を見ている。
読み切り版は原哲夫が脚本と作画を共に担当しているが、連載化が決定した際に原作者として武論尊が参加。当初は、高校生の霞拳四郎が脱獄し、仕置き人のようにして悪を倒すという内容が予定されていたが、現代劇ではダメだと感じた武論尊により世紀末の無法世界が舞台となった。
読み切り版に見られた「文明社会に生きる、日本人北斗神拳伝承者」というアイデアは、後に『蒼天の拳』の主人公・霞拳志郎として結実。舞台は各国の勢力が暗闘を演じる中国で、『北斗の拳』の世紀末世界ほどではないが暴力がものをいう世界である。なお、平和な文明社会での北斗神拳の活躍が、公式パロディ『DD北斗の拳』で使われているのも興味深い。
作品構成
村人や子供などの弱者が悪党どもによって虐げられ、怒りに駆られたケンシロウが北斗神拳を使って悪党共を倒すというのが初期における話の流れ。中期以降はケンシロウが敵の持つ事情を理解し、気持ちを汲んだ上で戦うという物語も増えた。どちらも共通しているのはキャラクターの生き様や感情の流れ・変化が丁寧に描かれているということで、こうしたドラマ作りにより『北斗の拳』は単なるバトル漫画を超えた作品になったと言えるだろう。
もちろん、様々な特性を持つ拳法どうしの戦いの面白さも魅力の一つ。身体を内側から破壊する北斗神拳対、外側から破壊する南斗聖拳や、相手の攻撃を受け流すトキの柔の拳対、全てを打ち砕くラオウの剛の拳など、特質の違う拳法・戦法のぶつかり合いが描かれている。
あらすじ
第一部(第1~136話)
199X年、核戦争後の世界は暴力が支配する無法の荒野となった。北斗神拳の伝承者であるケンシロウは、恋人・ユリアをシンに奪われ、胸に七つの傷を付けられてしまう。放浪するケンシロウはとある村に流れ着き、野盗の少年・バットと物言わぬ少女・リンと出会う。ケンシロウは経絡秘孔を突いてリンの言葉を取り戻し、村を救う。旅立つケンシロウにリンとバットが同行、奇妙な旅が始まった。
ケンシロウはシンの居城サザンクロスに乗り込み、死闘の末にこれを倒すが、恋人・ユリアは既に死亡していたことが明かされる。復讐を終えたケンシロウは再び放浪の旅に出るのだった。
のちに孤児たちを養っていたバットの母の敵を討ったケンシロウは、水の豊富な村に孤児たちを預ける交換条件として、野盗・牙一族の壊滅を請け負う。そこでケンシロウは、同じく用心棒として雇われた南斗水鳥拳の伝承者・レイと、村を守る女戦士マミヤに出会う。ケンシロウとレイは共に戦い、牙一族に囚われていたレイの妹・アイリを助け出すことに成功。ケンシロウ の名をかたってアイリをさらったジャギのことを知り、これを倒すために旅立つ。
ジャギとの戦いで義兄・ラオウが生きていることを知ったケンシロウは、北斗神拳伝承者争いの後始末をするため、彼らとの戦いを決意する。もう一人の義兄であるトキを救出し、拳王を名乗り世紀末世界を恐怖で統一しようとするラオウに共に立ち向かうのだった。
そんなとき、南斗聖拳の統率者である南斗最後の将もラオウに反旗を翻す。南斗最後の将が死んだはずのユリアであることを知ったケンシロウは、彼女と再会すべく居城へと急ぐ。ケンシロウと同じくユリアを愛していたラオウもまた、ユリアの忠実な部下である南斗五車星の命を賭した戦いからその正体を悟り、ユリアを奪おうとする。
強敵たちとの戦いを通し、悲しみから奥義・夢想転生を身につけたケンシロウ。そしてユリアとの出会いによって悲しみを背負い、同じく夢想転生を得たラオウ。二人はついに激突し、全身全霊をぶつけて戦う。死闘の中で両者は互いを認め合い、ラオウは自らの敗北を受け入れ、天へと帰っていった。
第二部(第137~210話)
ラオウが倒れた後も、世界に平和は訪れない。安定した世情が貧富の差を生み出し、天帝の軍勢が圧政を敷く新たなディストピアが生まれていたのだ。
そんな中、成長したリンとバットは北斗七星を旗印とする叛逆軍・北斗の軍を結成。天帝支配下の郡都を解放していくが、その戦いは絶望的なものだった。北斗の軍が苦戦し、リンとバットが己の無力さを呪う中、再びケンシロウが現れ、天帝の軍勢を打ち倒していく。
自らを狙う賞金稼ぎのアインと和解、天帝を守護する元斗皇拳の使い手・ファルコとの戦いに勝利したケンシロウは、彼らと共に天帝を助けるため帝都へと赴く。卑劣なジャコウによって傀儡とされていた天帝の正体、それはリンの双子の姉・ルイだった。ケンシロウらの戦いによって帝都は陥落し、民衆は解放されるものの、ジャコウの息子によってリンが修羅の国へと連れ去られてしまう。
強さが全てという異様な価値観のもとで統一される修羅の国。さらわれたリンは修羅の国転覆を狙う野望の男・シャチの手に落ちてしまう。シャチの狙い通り、ケンシロウ はリンを救うべく修羅の国の猛者たちと戦いを繰り返す。そこでケンシロウは自らの出生の秘密を知るが、ラオウとトキの実兄であり、北斗神拳を呪う男・カイオウの奸計により、記憶を失った実兄・ヒョウと戦うことになってしまう。
ケンシロウと対峙するカイオウだが、人質に取ったリンの記憶を消し、目覚めて最初に見た者を愛する経絡破孔を突いた上で野に放つなど、卑劣な策略を巡らせる。しかし、ケンシロウはその広い心でカイオウが過去に負った心の傷すらも呑み込んだ。カイオウもまたケンシロウに心を開き、これまでの行いを悔いてヒョウと共に天へ帰っていく。
第三部(第211~245話)
カイオウとの戦いを終えたケンシロウは、ラオウの遺児・リュウを北斗神拳の伝承者として育てようとしていた。そんな中、リュウの養父母が卑劣漢・コウケツの手下に殺されてしまう。怒りに震えるリュウの戦いをケンシロウは手助けする。
その後、リュウと共に世界を巡る旅に出たケンシロウは、不治の病に冒されたサヴァ国の国王・アサムに出会い、後継者争いにうつつを抜かす王子・カイ、ブコウ、サトラたちの抹殺を依頼される。互いに譲らぬ三人を、ケンシロウは敢えて彼らを圧倒的な力で叩きのめすことにより、親子の情愛の大切さを教えるのだった。
サヴァ国に突如攻め込んで来た隣国・ブランカ。豹変の謎を解くべく、ケンシロウ とサトラはブランカへと乗り込む。そこで二人は、ラオウに心酔し、力こそが全てと信じる男・バランに出会う。
バランの死から哀しみの心を学んだリュウ。その姿を見たケンシロウは、もう教えることはないとしてリュウの前から姿を消すのだった。
一方バットは、リンの消された記憶を取り戻し、彼女とケンシロウとの愛を成就させようと考える。かつてケンシロウと共にたどった旅路を再びたどるバットとリン。そんなとき、リンと結ばれることを良しとしないケンシロウは突如記憶を失ってしまい、その状態でバットとリンと再会を果たす。
だが折悪しく、ケンシロウに復讐しようとする盲目の悪党・ボルゲが迫っていた。戦闘能力を失ったケンシロウを守るため、バットはケンシロウの身代わりとなって絶望的な戦いに挑む。
特殊背景
北斗神拳は、身体にある708の経絡秘孔を突くことにより相手に様々な効果をもたらす暗殺拳。人体を内面から破壊する拳とされ、悪党どもの頭や身体が破裂する様が読者に強烈なインパクトを与えた。
当時、原哲夫の担当編集者だった堀江信彦が、たまたま入った書店で読んだ中国の医学書にインスパイアされたアイデアであるとされる。
最大の特徴は、経絡秘孔の種類ごとに異なる効果が時間差で効果が発動するというもの。この設定は逆転勝利や相手の技を封じて勝利するという少年漫画バトルの黄金パターンと非常に相性が良く、優れた観察力で動きを読む敵に対し、視力を失わせる秘孔・瞳明を突いて無力化したり、身体を硬化する相手に対し筋肉をブヨブヨの脂肪にする秘孔・大胸筋を突いて硬化を解いたりなど、経絡秘孔というアイデアを活かした戦いが描かれた。
やられた相手が上げる「あべし」「たわば」といった奇妙な悲鳴は原哲夫のアイデアによるもの。人間が苦痛を感じた際は、言葉として成立していない声を上げることから、リアリティを追求する一環としてこうした悲鳴が生まれたという。
悲鳴の中でも最も有名なのがハートの「ひでぶ」。長らく誤植であるという俗説が囁かれていたものの、「痛え」が「ひでっ」となり、その直後、身体が破裂した瞬間に「ぶ」という声が上がっていることを表現したのだと原哲夫自身によって語られた。また、敵を殺した残虐性よりも爽快感を上回らせたいという狙いもあったのだという。
関連作品
スピンオフ
2006年から「週刊コミックバンチ」や「ビッグコミックスペリオール」「月刊コミックゼノン」にて、原作に登場したキャラクターのそれぞれに焦点を当てたスピンオフがスタートした。
『天の覇王 北斗の拳ラオウ外伝』: ラオウと、その軍勢に所属する仲間たちが、乱れた世を統一するために戦う。2008年にアニメ化。
『北斗の拳 ユリア外伝 慈母の星』:核戦争で崩壊する前の世界を舞台に、ユリアとシンの出会いやケンシロウとの物語が描かれる。
『蒼黒の餓狼 -北斗の拳 レイ外伝-』:レイがケンシロウと出会う前の物語。さらわれた妹・アイリを探して旅するレイは、南斗水鳥拳の先代伝承者ロフウと戦う。
『銀の聖者 北斗の拳 トキ外伝』:ケンシロウを助けて死の灰を浴びたトキが、人々を救うために奇跡の村を設立、ラオウと戦って敗れるまでの物語。
『北斗の拳 ジャギ外伝 極悪ノ華』:原作の前日談。ジャギとリュウケンの出会い、そして北斗神拳の伝承者となるべくまい進してきたジャギがケンシロウによって挫折し、核戦争後に彼と戦って倒される様が描かれる。
『彷徨の雲 -北斗の拳 ジュウザ外伝-』:ユリアとの報われぬ愛に苦悩するジュウザは、彼女をシンから守れなかったケンシロウを追って旅をする。
『北斗の拳外伝 金翼のガルダ ~南斗五車星前史~』:パチスロ『北斗の拳 転生の章』のオリジナルキャラクター、ガルダの物語。南斗最後の将を倒そうとするガルダと、これを守る五車星が戦う。
『北斗の拳外道伝 HEART of Meet あの日の約束』:病弱な少年、アルフレッドがシンと出会い、巨体の悪党・ハートになるまでが描かれる。
小説版
原作者の武論尊自身が小説化。『小説・北斗の拳-呪縛の街-』として1996年に発行され、原作の後日談として、水を独占する独裁者・サンガとケンシロウの戦いを描く。
『DD北斗の拳』
2010年より「月刊コミックゼノン」にて連載開始。二頭身キャラクターとなったケンシロウたちが、核戦争の訪れなかった平和な現代社会で悪戦苦闘する様が描かれる。2013年にアニメ化された。
『北斗の拳 イチゴ味』
2013年より「『WEBコミックぜにょん』」にて連載開始。原作に似せた絵柄で描かれたキャラクターたちによるギャグ漫画で、サウザーが主人公。2015年にアニメ化。
メディアミックス
TVアニメ
1984年~1987年に放映された「北斗の拳」ではケンシロウとラオウの決着までが描かれた。1987年~1988年の「北斗の拳2」では、ケンシロウが修羅の国に渡りカイオウ打倒までがアニメ化されている。
タイトルこそ「北斗の拳」「北斗の拳2」となっているものの、実際には「北斗の拳」最終回の翌週に「北斗の拳2」が始まっており、続編というよりは連続した1作品。話数は前者が109話、後者が43話の合計152話。頭部が破裂するなどの残虐描写については、透過光をバックにしたシルエットとして描かれた。
劇場アニメ
1986年に劇場アニメ化。原作冒頭からケンシロウとラオウの戦いまでが描かれる。残虐シーンもTVアニメ版と異なり、シルエットではなく克明に描写された。劇場公開時と映像ソフトで結末が違い、前者はケンシロウが敗北、後者では互角の引き分けとされている。
OVA版
『小説・北斗の拳-呪縛の街-』が2003年に3部構成でアニメ化されている。
真救世主伝説 北斗の拳
武論尊と原哲夫が『北斗の拳』を再構成し、全5部それぞれで原作中の異なる時期のエピソードが描かれる。2006年に始まったこのシリーズは、第一部、第三部、第五部は劇場映画、第ニ部、第四部はOVAとしてリリースされた。
第一部『真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章』ではケンシロウとサウザーの戦いがテーマに。第二部『真救世主伝説 北斗の拳 ユリア伝』はユリアの視点でケンシロウとの物語が描写される。第三部『真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 激闘の章』は、ケンシロウとラオウの決戦が、第四部『真救世主伝説 北斗の拳 トキ伝』ではラオウとの戦いに挑むトキの心情が描かれる。第五部『真救世主伝説 北斗の拳ZERO ケンシロウ伝』では、 シンにユリアを奪われた後にケンシロウがどうしていたかが初めて言及される。
実写映画
1995年にはハリウッドで製作された実写映画「北斗の拳 -Fist Of The Northstar -」が公開された。原作初期がベースで、元キックボクサーのゲイリー・ダニエルズが主演し、ケンシロウとシンの戦いをテーマとしている。
ゲーム
格闘技をテーマとしたアクションという題材がゲームと相性が良かったのか、『北斗の拳』のゲームは30本以上の作品が発売されている。アドベンチャーゲームから始まりアクションゲーム、RPG、格闘ゲーム、キーボードでのタイピングを練習するゲームなど、ジャンルも幅広い。
『北斗の拳』の魅力といえば、アニメ版におけるクリスタルキングのテーマソングやケンシロウ役の声優・神谷明の演技、そして悪党どもの悲鳴なども大きい。ファミコンやスーパーファミコンといった8~16ビット機ではハードウェアの限界からセリフや悲鳴は文字で表示されていたが、PlayStation やセガサターンなど32ビット機以降はアニメ版そのままのものが楽しめるようになった。
キーボードを叩く動作を、経絡秘孔を突く動作に見立てて名セリフなどを入力することでタイピングを練習する『北斗の拳 激打』や、ケンシロウ・ラオウ・レイになって指示された通りにパンチミットを叩く『パンチマニア 北斗の拳』など変わり種も多い。
その始まりは1986年にリリースされたパソコン用アドベンチャーゲーム『北斗の拳 バイオレンス劇画アドベンチャー』。
1986年よりナンバリング作品がファミリーコンピュータで4作、スーパーファミコンで3作の合計7作発売された。『北斗の拳』『同2』が横スクロールアクション、『同3』~『5』がRPG、『6』『7』が対戦格闘ゲームと、その時々に流行したジャンルでゲーム化されている。中でも『5』は、無敵であるはずのケンシロウが死亡するというオープニングが話題となった。
2000年のPlayStation版『北斗の拳 世紀末救世主伝説』ではアニメ版のキャストそのままにケンシロウとラオウの戦いまでを描くアクションゲーム。原作のストーリーを再現するデモシーンのセリフを自由に入れ換える「世紀末シアター」モードや、自分の入力で悪党どもの悲鳴が変化する「リアルタイムあべしシステム」といった、『北斗の拳』のサブカルギャグ的な楽しみ方が公式ゲームでフォローされた希有な例となった。
また、MMORPG(大規模多人数オンラインロールプレイングゲーム)としてオンラインゲーム化されたが、2008年の正式リリースから1年ほどでサービスを終了している。
2005年には『北斗の拳 審判の双蒼星 拳豪列伝』としてアーケード型対戦格闘ゲームがリリース。工夫次第でどこまでも繋がる連続技や、原作の名シーンを再現し相手を一発で倒す「一撃必殺奥義」による派手な試合展開が特徴。発売当初こそトキなど一部キャラクターの突出した強さが問題になったものの、自由度の高いシステムによる奥深さが評価されることに。
2010年になるとハードスペックが格段に上がったPlayStation3およびXbox360用ゲーム『北斗無双』が登場。数多の敵を一掃する爽快感が売りのゲーム・『無双』シリーズと『北斗の拳』とのコラボに大いなる期待が寄せられる。しかし、本作はゲームとしての造りにあらが目立ち、特に熱心なファンから酷評されることも多かった(のちに不満点を改善した『真・北斗無双』がリリースされる)。
また、2015年にはスマートフォン用アプリ『パズル&ドラゴンズ』ともコラボを行っているなど、『北斗の拳』のキャラクターたちは世代を超えてゲームに登場し続けている。
パチスロ
2003年に『北斗の拳』がリリースされ、累計販売台数62万台というヒットに。また、これを家庭用ゲームソフトに移植したものが販売本数100万本突破を果たしている。シリーズは現在も継続中で、2015年には『パチスロ 北斗の拳強敵』が発売されるなど、パチスロにおける定番の一つとなった。
社会に与えた影響
当時の「週刊少年ジャンプ」はラブコメブームに押され、発行部数も300万部から伸び悩んでいた。「週刊少年ジャンプ」もラブコメ路線を進めていこうという意見があったが、『北斗の拳』連載後に400万部を突破し、従来の「友情・努力・勝利」の伝統的少年漫画路線を堅守できたということが当時の編集長・西村繁男によって語られている。単行本の累計発行部数は日本国内で6000万部、海外も含めると1億部超。
少年層を中心にブームを巻き起こしたものの、保護者からは頭が破裂するなどの残虐描写が問題視され、アニメ版は1986年の「好ましくない番組ワースト10」の7位に選ばれた。
『ハイスクール!奇面組』の北殿軒戻樹、『うる星やつら』の北斗君、『超人キンタマン』の南斗下骨茶など、パロディキャラクターが多数生み出された。また『ジョジョの奇妙な冒険』第六部では、ケンシロウとラオウが名前だけだが登場している。
精緻で特徴的なアートワークと「あべし」「たわば」「ひでぶ」といった奇妙な悲鳴の組み合わせがギャグの一種として捉えられることも多く、当時の『月刊ファンロード』『月刊OUT』といったサブカル寄りの漫画・アニメ誌では、読者による多数のパロディが投稿された。また、こうしたギャグ的な捉え方は後に公式パロディ『北斗の拳 イチゴ味』として作品化されることに。
登場人物の中でもアミバは重要キャラクターでもないにもかかわらず、その小物ぶりから大きな人気を獲得。後のパチスロ版でもフィーチャーされることになる。
ケンシロウがパンチを高速で繰り出す北斗百裂拳は、以降の漫画における必殺技の定番となった。『聖闘士星矢』のペガサス流星拳、『ジョジョの奇妙な冒険』に登場するスタープラチナのパンチラッシュ、『妖怪ウォッチ』のジバニャンが使うひゃくれつ肉球など、北斗百裂拳に似た技が無数に登場。
ビデオゲームでは『ストリートファイターII』に百裂張り手・百裂脚という北斗百裂拳風の連打技が登場。連打技を「百裂系」と呼ぶスラングが生まれた。
また、ケンシロウを思わせる無口な主人公が悪人を倒して回るというフォロワー的な作品が大量に登場。これを見た武論尊は、『北斗の拳』におけるドラマ作りではなく、表層的な残虐描写のみを追求したことに憤慨したとされている。
2003年にはパチスロ化され、第2次ブームが到来。これ以降、マンガやアニメをパチスロ化する動きが加速した。
著名人との関わり
元格闘家で現在はレフェリー/タレントの角田信朗は、息子に賢士朗(ケンシロウ)、娘に友里亜(ユリア)と名付けるほどのファン。
『デトロイト・メタル・シティ』で知られる若杉公徳は、『ハチミツとクローバー』の中にケンシロウが登場したらどうなるだろうかという発想の元で『KAPPEI』を構想。原哲夫から正式に許可を得た上で連載を開始している。
精神科医の名越康文は、「週刊コミックバンチ」キャラクターのセリフから深層心理を分析する「北斗神話の深層心理カルテ~北斗神拳とはなんだったのか~」を連載。
ゲイリー・ダニエルズは実写映画「北斗の拳 -Fist Of The Northstar -」でケンシロウ役を演じたことから、息子にもKenshiroと名付けた。
タレントの堂本剛は『北斗の拳』好きを公言し、愛犬に「ケンシロウ」の名前を付けている。
作家情報
原哲夫(はら てつお)
1961年9月2日、東京都渋谷区生まれ、埼玉県越谷市育ち。師匠は高橋よしひろ、小池一夫。アシスタントに巻来功士、森田まさのり、今泉伸二、真船一雄など。画風はフランク・フラゼッタ、大友克洋、ニール・アダムス、シド・ミードの影響を受ける。『北斗の拳』は『鉄のドンキホーテ』に続く2本目の連載作品だった。
武論尊(ぶろんそん)
長野県佐久市出身。1947年6月16日生まれ。本宮ひろ志のアシスタントから漫画原作者に転向。別名に史村翔。『北斗の拳』の世界観に関しては、映画『マッドマックス2』と、カンボジアのキリングフィールド(ポル・ポト政権による虐殺現場)から大きな影響を受けている。
登場人物・キャラクター
ケンシロウ
青年男性。北斗神拳を使う拳法家。一子相伝の暗殺拳・北斗神拳の伝承者で、、余人を寄せ付けない優れた戦闘力を備える。筋骨隆々の逞しい肉体を持ち、胸には北斗七星の形に並んだ七つの傷がある。北斗神拳の伝承者候補として集められた4人の中では最年少だったが、義父のリュウケンより天賦の才を見いだされ、伝承者となる。 精神的に甘い部分を残していたが、恋人のユリアをライバルのシンに奪われ、復讐のために放浪するうちに非情さを獲得。世紀末世界で苦しむ人々の思いを受け、暴力による支配を画策する義兄・ラオウとの戦いへ赴く。暗殺拳の伝承者ながら、戦う相手の心情を汲み取る度量の広さを持ち、世紀末を終わらせる救世主として周囲から期待されるようになっていった。 弱い者、苦しむ者に対して優しい一方、人々を苦しめる悪党に対してはとことん非情で、北斗神拳の特性を活かした処刑めいた殺し方をすることも多い。普段は物静かで口数も少ないが、ひとたび怒ると上半身の筋肉が隆起し、着ていた上着を吹き飛ばす。北斗神拳の様々な奥義を身につけているほか、戦った相手の技を我がものとできる力も持ち、その戦闘能力は計り知れない。
ラオウ
青年男性。北斗神拳を使う拳法家。全身筋肉の塊のような巨体を持つ。北斗神拳の元・伝承者候補で、ケンシロウにとっては義兄にあたる。また、同じ伝承者候補のトキは血が繋がった実の弟。全てを打ち砕く剛拳を持ち、伝承者の最有力候補と目されていた。選に漏れるも、掟による北斗神拳の封印を拒み、義父のリュウケンを殺害して出奔。 拳王を名乗って手下を集め、暴力と恐怖で世紀末世界を統治しようと目論む。己の力のみを信じる、誇り高く苛烈な性格。たとえ自分に刃向かう相手であっても、意志の強い者に対しては尊敬を払う一方、媚びるものや生存に伴う戦いを回避しようとする者を嫌う。戦いに際して、自分の意に反して助力した部下を「敗れて命を拾おうとは思わん!」と殺害し、自分を愛するあまりに自決するトウに「想いが届かぬならなぜこのおれを殺さぬ!」と激昂するなど、その苛烈さは周囲の者にも向けられる。 世紀末覇者として恐れられる一方、リュウガなど、その生き様に心惹かれていた者もおり、単純に悪人と評することのできない人物。
トキ
青年男性。北斗神拳を使う拳法家。暗殺拳・北斗神拳の元・伝承者候補で、ケンシロウの義兄で、ラオウの実の弟にあたる。ラオウやケンシロウと共に修行に励んでいたが、伝承者の選に漏れた。核戦争勃発時、ケンシロウとユリアにシェルターを譲り、死の灰を浴びたことで不治の病に冒されてしまう。 兄・ラオウとは対照的に優しい心の持ち主。世界が無秩序状態に陥ってからも、北斗神拳を医学に応用して人々を助けていた。戦いに際しても、相手に快感を与えつつ死に至らしめるような秘孔を用いる。拳法に関しては天賦の才を持ち、相手の攻めを受け流す柔の拳の使い手。それゆえにラオウに危険視され、ケンシロウが柔の拳を学ばないように幽閉されていた。
ジャギ
青年男性。北斗神拳を使う拳法家。ケンシロウにやられて醜くゆがんだ顔を鉄仮面で隠す異形の人物。暗殺拳・北斗神拳の元・伝承者候補だが卑劣漢で、勝つためであれば銃や含み針の使用も辞さない。ケンシロウに伝承者の座を奪われたことから戦いを挑むが、情けをかけられて命を取り留める。 これを恨みに思い、ケンシロウの名を騙って各地で凶行を繰り返し、その評判を貶めていた。そのために、自らの身体にケンシロウと同じ七つの傷を付けるなど、自分の欲望のためなら手段を選ばない。また、核戦争後にシンをそそのかしてケンシロウの恋人・ユリアをさらわせるなど、狡知に長けている。
ユリア
成人女性。ケンシロウの恋人。気高く慈悲深い女性で、ラオウやトキ、シンといった多数の拳法家から思いを寄せられていた。核戦争後、ケンシロウと共に旅立とうとするところをシンにさらわれる。シンからは贅沢な暮らしを与えられたが、それが人々を苦しめてのものであることを知っており、決して心を許すことはなかった。 実は南斗聖拳の諸流派を束ねる南斗最後の将であり、慈母星の宿星の持ち主。世紀末の世が終わることを願う。
シン
青年男性。南斗聖拳の一派、南斗孤鷲拳の拳法家。南斗六聖拳の一人で、愛に殉じる殉星の男。ケンシロウのライバルで、プライドの高い人物。かねてからユリアに思いを寄せており、ジャギの扇動に乗ってケンシロウを倒し、ユリアを強奪する。その際に、ケンシロウの胸に北斗七星を象った七つの傷を付けた。 ユリアに贅沢な暮らしをさせるために悪党どもを束ねてKINGを組織し、サザンクロスの町を築き上げるなど歪んだ愛情を注ぐが、その思いが報われることはなかった。
レイ
青年男性。南斗水鳥拳を使う拳法家。南斗六聖拳の一人で、他者に尽くす義星の男。女性と間違えられる美貌の持ち主。さらわれた妹アイリを捜して放浪の旅を続ける中でケンシロウと出逢い、行動を共にする。当初は女性に化けて悪党をだまし討ちするなど、世紀末世界の弱肉強食を肯定するエゴイスティックな男だったが、ケンシロウたちと関わり合うことで無償の友情に目覚める。 妹を人質に取られると何もできなくなるなど精神面に脆い部分があったが、妹の成長を見届け、自らも人間として成長した。手刀で全てを切り裂き、空を舞う姿は美技として称えられる。ケンシロウを深く信頼する。
アミバ
青年男性。南斗聖拳・北斗神拳を使う拳法家。うぬぼれが強く、自らを天才と信じて疑わない。元は南斗聖拳の拳法家だったが、独学で北斗神拳を身につける。トキが病人を癒す奇跡の村で、トキの患者に勝手に施術したところ症状が悪化。これに怒ったトキに殴られたことを深く恨む。 トキがラオウに捕らえられた後は、トキになりすまし、新たな秘孔を見つけ出すために非道な人体実験を繰り返していた。トキになりきってケンシロウを騙すためにわざわざトキと同じように背中に傷まで付けるという用意周到な人物。自らの才能を誇りに思うが、いざとなれば人質を盾に取るなど、その性格は醜くゆがんでいる。
ユダ
青年男性。南斗紅鶴拳を使う拳法家。南斗六聖拳の一人で、他者を裏切る妖星の男。自らの美貌と強さに絶対の自信を持つが、その自分が心奪われたレイに対して愛憎入り交じった感情を抱く。無法者の部下を従え、巨大な城に美女を侍らせる。美しさとは裏腹に、その性格は残忍にして冷酷。部下を捨て駒として悪びれることがなく、村を水浸しにしてレイのフットワークを封じるなど、様々な知略を巡らせる。
マミヤ
成人女性。世紀末の無秩序状態の中、豊富な水のある村を守るリーダー。ケンシロウら一流の拳法家にはかなわないものの、戦いの心得があり、ボウガンやヨーヨー、峨嵋刺(鋼鉄でできた棒状の武器)といった武器を振るって戦う。本来は女性らしく優しい人物だが、かつてユダにさらわれた経験から女性であることを捨てた。 村を守るため、人質となった弟を見捨てるなど、その覚悟は徹底。村の用心棒としてケンシロウとレイを雇い入れ、共に行動をする中でレイに心惹かれるようになる。
バット
小柄な少年。こそ泥のようなことを繰り返して生きてきたが、ケンシロウの強さに惚れ込んで押しかけ同行者となる。悪ぶってはいるが心根は優しく、育ての親の負担を減らすために自ら家を出たという過去を持つ。各地を放浪した経験から世慣れており、時にケンシロウの旅を助けることも。当初は世紀末世界に生きる人間らしく姑息な面もあったが、ケンシロウの戦いを間近で見続けたことから考え方が変化。 青年となってからは、レジスタンス・北斗の軍の中核人物として、虐げられた人々のためにその身を削って戦う。リンに思いを寄せている。
リン
年端もいかない少女。目の前で両親を殺された経験から言葉を失っていたが、ケンシロウに秘孔を突かれて喋れるようになった。バットと共にケンシロウの旅に同行し、様々な経験を積む。子供ゆえに拳法の経験もなく、戦う力は皆無に等しいが、悪党に服従して生き長らえるよりは死を選ぼうとする、強い心と誇り高き魂を持つ。 成長してからはバットと共に北斗の軍の中核人物として天帝の圧政と戦う。実は天帝の双子の妹。
サウザー
青年男性。南斗鳳凰拳を使う拳法家。南斗六聖拳の一人で、将星の男。北斗神拳の効かない肉体を持ち、自らを最強と強く信じる傲岸不遜な性格。多数の悪党どもを従えて独裁を行う。反抗しない子供を強制労働させてピラミッド型の墓・聖帝十字陵を作らせ、飢えた子供達の前で料理をぶちまけるなど、他者の苦しみを意に介さない暴君。 元々は純朴な少年であったが、南斗鳳凰拳を伝承する際に師匠・オウガイを知らずに手に掛けてしまってから、愛や情けの一切を拒絶するようになった。
シュウ
青年男性。南斗白鷺拳を使う拳法家。南斗六聖拳の一人で仁星の男。盲目だが、心眼によってまるで目が見えるかのように戦う。また、庇護している子供の嘘を見抜くなど、洞察力にも優れている。強さと慈悲深さを兼ね備え、人々を束ねてサウザーの支配に対抗。ケンシロウが子供の頃に組み手に敗れて殺されかけていたところを自らの目と引き替えに助けた。 シバという息子がいる。
リュウガ
青年男性。泰山天狼拳を使う拳法家。ユリアの実兄で、ラオウの部下。天狼星の宿星を持つ。ラオウが姿を消した際、その領村を素早くまとめ上げた有能な人物。ラオウに仕えてはいるが、本心では世紀末の乱世を終息させることを望んでおり、時代がケンシロウとラオウのどちらを望んでいるかを確かめようとする。 その際、ケンシロウを怒らせて真の力を発揮させるべく、敢えて弱者を殺戮して汚名を被るなど、大局観の持ち主。
ヒューイ
青年男性。南斗五車星の一人で、風の拳士。風の中に真空を走らせ、鋼鉄をも断ち切る風の拳を操る。南斗最後の将を脅かすラオウを倒すべく、バイクに乗った兵士で構成された風の旅団を率いて挑むも、その圧倒的な強さにあえなく敗れた。
シュレン
青年男性。南斗五車星の一人。燐を使い、触れた者を炎に包む五車炎情拳を操る。全身を朱色の武装に包み、火矢を使う朱の軍団と共にラオウと戦った。部下から慕われており、恐怖で兵を従えるラオウとは対照的。ヒューイのことを「弟星」と呼び、その敵討ちを誓うが、「弟星」とは血縁関係なのか義兄弟なのか兄弟弟子なのかは本編中では描写されていない。
フドウ
年齢不詳の巨体の男性。その体躯はリンやバットを軽々と肩の上に乗せられるほどに大きい。南斗五車星の一人。山の拳士。巨大な岩をも持ち上げる怪力だが、その心根は優しく、捨てられた子供たちを引き取って育てている。かつては悪鬼のフドウと恐れられる無頼漢だった。両親を知らぬまま育ち、それ故に命の尊さも知らないと豪語。 試合で倒した相手を平気で殺害する残忍な人物だったが、ユリアと出会ったことで命の大切さを知り、穏やかな性格となった。南斗五車星の使命を重く考えてはいるものの、自分を慕う子供たちも見捨てられない情け深さを持つ。その拳はラオウをすら恐怖させるほど凄まじい。
リハク
壮年の男性。南斗五車星の一人で、「海」の男。海の軍団を率い、指揮の手腕はラオウから「世が世なら万の軍勢を縦横に操る天才軍師」と賞されるほど。様々な策を用いてラオウを止めようとする。後に北斗の軍に加わり、リンやバットの戦いを支えるように。
ジュウザ
青年男性。南斗五車星の一人で、「雲」の男。ユリアの母違いの兄。何ものにも縛られない、飄々とした性格。拳法に関して天才的な才能を誇り、型にはまらない我流の拳を使う。ユリアを愛していたが、兄妹ゆえに思いが叶うことがないと知って出奔。自らの南斗五車星としての宿命から目を背けて気ままに暮らす日々を送っていた。 南斗最後の将がユリアであることを知り、南斗五車星として立ち上がる。
ファルコ
青年男性。元斗皇拳の使い手で、天帝であるルイに仕える優れた人物。ラオウが元斗の村を襲撃しようとした際、これを止めるため自らの足を切り落とすほどに忠義深い。天帝に忠誠を誓うが、天帝の名を借りて圧政を敷くジャコウに仕方なく従っている。ジャコウの命令で望まぬ戦いを強いられたが故に、涙を流せなくなっている。 部下や村人から慕われる人格者。
ルイ
成人女性。北斗七星を従える太極星を宿星として持ち、天帝として崇められる。元斗皇拳の戦士らを従え、その軍はラオウの没後急速に勢力を拡大、世紀末世界に新たな秩序を築き上げるに至った。しかし、ルイ自身はジャコウに幽閉されており、その名を利用されるだけの存在。リンの双子の姉であり、天帝が2人いることによる世の乱れを不安視した部下により、幼い頃に引き離された。
ジャコウ
壮年の男性。ルイを幽閉し、総督として権力を悪用。圧政を敷いて人々を苦しめた、邪悪な謀略家。暗闇とそこに輝く北斗七星を極度に恐れるあまり、人々を奴隷として照明のために発電機を回させるという奇行に走る。
アイン
青年男性。お尋ね者を捕らえる賞金稼ぎで、娘のアスカを何よりも大切に思っている。ケンカ拳法の使い手。ケンシロウにかけられた賞金を狙い、北斗の軍につきまとうが、娘のアスカが胸を張って自分のことを語れる歴史を作るという決心をし、北斗の軍に加わる。
カイオウ
青年男性。常に甲冑を身にまとっている。北斗琉拳を使う拳法家。ラオウとトキの兄。悪を信奉し、仁・義・信を最も嫌うと公言してはばからない苛烈な人物。元々は天才的な拳法の才能と人望を持つ少年だったが、周囲からは北斗宗家の従者としての分をわきまえるように虐げられてきた。北斗宗家のヒョウとの試合にわざと負けて醜態をさらすよう命ぜられたばかりか、北斗宗家の血を引くケンシロウとヒョウを助けるために母が死亡。 さらに性格の激しさ故に自分だけが北斗神拳習得を許されなかったことから、北斗神拳、北斗宗家と自らの血を呪うようになる。その後、北斗琉拳を習得し、修羅の国を作り出した。 それだけでは飽きたらず、ヒョウとケンシロウを相打ちさせて自らが世紀末救世主となり、天帝の血を引くリンと子を成して自分の血を清めようとするなど、怨念と妄執に基づいた策謀を巡らせる。拳法家としての実力が充分備わっている上に、有毒ガスが吹き出す場所を決戦の地に選ぶなど、勝利のためには手段を選ばない。
ヒョウ
青年男性。額に大きな傷痕がある。北斗琉拳を使う拳法家。ケンシロウの実兄で、北斗宗家の血筋を引く。従者であるカイオウを友と呼び、彼の妹であるサヤカを愛するなど、力が全ての修羅の国にあっても人間味に溢れる人物。ケンシロウ、ラオウ、トキが北斗神拳を学ぶために異国へ送られたが、カイオウとヒョウは北斗神拳への入門を許されず、生き別れとなった。 恋人・サヤカの死がケンシロウによるものだとカイオウに信じ込まされ、ケンシロウと戦うことに。
シャチ
青年男性。北斗琉拳を使う拳法家。父・赤鯱が修羅の国を攻めるが敗北し、ひとり修羅の国に取り残された。学んだ北斗琉拳で修羅の国を治める羅将を倒し、恋人・レイアが安心して暮らせる世界を作ろうとしていた。志半ばで自分が倒れてもレイアが傷つかぬよう、狂気の男を演じるという深い思いやりを持つ。 当初はケンシロウを羅将を攻略するために利用しようとしていたが、やがてケンシロウに心酔。戦闘不能のケンシロウを守るために自らの目をえぐり出すなど、全身全霊をかけてケンシロウに尽くすようになった。
リュウ
少年。ラオウの息子。北斗神拳伝承者となるべく、ケンシロウと共に試練の旅に出る。子供ながら村人を苦しめる悪党に立ち向かい、ただ一人でコウケツの住処へ向かい、囚われの子供たちを率いて反乱を起こすなど、英雄としての資質を見せる。
コウケツ
中年男性。元はラオウの馬番だったが、周囲に媚びる卑屈さから軽んじられていた。ラオウ亡き後のどさくさで大地主に成り上がり、甘言で騙した人々を奴隷同様に働かせる。
集団・組織
南斗六聖拳 (なんとろくせいけん)
『北斗の拳』に登場する拳法家の集団。南斗聖拳の諸流派の頂点に立つ者たちで、南斗孤鷲拳、南斗水鳥拳、南斗紅鶴拳、南斗鳳凰拳、南斗白鷺拳と南斗最後の将の6名。それぞれが持つ宿命の星にそった生き様を見せる。
南斗五車星 (なんとごしゃせい)
『北斗の拳』に登場する役職で、南斗最後の将を守る役目を持つ五人の拳法家のこと。作中ではヒューイ、シュレン、ジュウザ、フドウ、リハクがこれに当たる。五つの星が円形に並んだ刺青をしており、これを通して仲間の動静が伝わる模様。それぞれが独自の軍団を率いており、有事には南斗最後の将の敵に立ち向かう。
北斗の軍 (ほくとのぐん)
『北斗の拳』に登場するレジスタンス組織。天帝の圧政から人々を救うべく、囚人護送車を襲い、天帝の支配地域を攻撃するなどの活躍を見せ、「神出鬼没の武闘集団」と呼ばれる。成長したリンとバットがリーダーを、リハクが軍師を務めている。勢力に勝る天帝の軍隊を相手に果敢な戦いを続けた。旗印は北斗七星。
北斗宗家 (ほくとそうけ)
『北斗の拳』に登場する集団。北斗神拳と北斗琉拳を生み出す母体となった。ケンシロウとヒョウが正統の血を引いている。内部では血統が重視されており、正統でないカイオウが正統のヒョウを凌がぬよう、暴力を振るったり、訓練の際に負けるよう強要したりといった行為が行われていた。
場所
修羅の国 (しゅらのくに)
『北斗の拳』に登場する国。ケンシロウとラオウが戦っていた場所からは海を隔てた場所に存在しており、戦いにおける強さこそが全てという価値観が国の根幹。男性は12歳から15歳の間に100回戦い、勝てば修羅という特権階級になり、敗れた者は殺されるが、なお生き残った者はボロとして蔑まれる。修羅になってから更に勝利を重ねれば地位と権力が向上していく。 国民全員がこの価値観を是としている訳ではないようで、中にはシャチの恋人・レイアのように平和を説く者も。しかしそうしたものは邪教として迫害されている。
その他キーワード
北斗神拳 (ほくとしんけん)
『北斗の拳』に登場する拳法。ケンシロウ、ラオウ、トキ、ジャギが使う。人体に708存在する経絡秘孔(秘孔)を突き、身体を内部から破壊する。例えば秘孔・頭維を突く「北斗残悔拳」なら、指を抜いて3秒後に頭が破裂。秘孔・牽正を突く「北斗有情破顔拳」なら、快感を覚えながら手足の関節が逆に曲がっていくなど、その効果は様々。 一子相伝の暗殺拳であり、伝承者の選に漏れた者は、拳を潰すか記憶を消されるという掟がある。また、「北斗現れるところ乱あり」という伝承も伝わっていた。
経絡秘孔 (けいらくひこう)
『北斗の拳』に登場する、人体に708存在すると言われるツボ。北斗神拳の使い手が、指などを使って刺激を与えることにより、人体の内部から影響を引き起こす。頭を破裂させるような破壊的なものから、痛めた足を治療するような医療的なものまで、その働きは様々。
南斗聖拳 (なんとせいけん)
『北斗の拳』に登場する拳法。北斗神拳が秘孔を突いて身体を内部から破壊するのに対し、南斗聖拳は身体の外部から攻撃を加えて破壊するという対照的な原理を持つ。北斗神拳は一子相伝の暗殺拳だが、南斗聖拳は多数の流派が存在しており、こちらもまた対照的である。
南斗孤鷲拳 (なんとこしゅうけん)
『北斗の拳』に登場する拳法。シンが用いる。連載時には南斗聖拳とだけ呼ばれており、後の設定でこの名が付けられた。強力な突きや蹴りで相手の身体を外部から破壊するという技で、シンはユリアと旅立つ前のケンシロウを蹴り技・南斗獄屠拳で倒している。
南斗水鳥拳 (なんとすいちょうけん)
『北斗の拳』に登場する拳法。レイが用いる。手刀で相手を切り裂く技が特徴的。その手刀はあまりの素早さに真空状態を生み出し、カマイタチの刃を飛ばすようなこともできる。足さばき(フットワーク)にその神髄があるとされる。
南斗紅鶴拳 (なんとこうかくけん)
『北斗の拳』に登場する拳法。ユダが用いる。衝撃波を相手に放って戦う。その拳の素早さから、攻撃を受けた身体の前面ではなく、背中側が裂ける。ユダは、レイと戦う際に周囲を水浸しにしてレイのフットワークを封じていたが、ユダ自身は普通に戦えていたことから、南斗水鳥拳よりは足さばきが重視されない。
南斗鳳凰拳 (なんとほうおうけん)
『北斗の拳』に登場する拳法。サウザーが用いる。南斗聖拳最強の拳法とされ、制圧前進を旨とするため防御の構えを用いない。ただし対等であると認めた相手に使う奥義・天翔十字鳳という構えが存在する。また、天に舞う羽根とも称される、跳躍からの技も特徴。
南斗白鷺拳 (なんとはくろけん)
『北斗の拳』に登場する拳法。シュウが用いる。足技を主体とした拳法で、逆立ちしたまま両足で相手を蹴るようなトリッキーな技も存在している。その蹴りは、相手に刃物で切られたかのような傷を与える。
南斗最後の将 (なんとさいごのしょう)
『北斗の拳』に登場する役職。作中ではユリアがこれに当たる。南斗聖拳の諸流派を束ねる役目を持つが、自身が拳法を使っている様子はなく、直接的な戦闘能力に関しては不明。世を乱すラオウに対し、配下の南斗五車星を差し向けるなどして、その進軍を止めようとした。
元斗皇拳 (げんとこうけん)
『北斗の拳』に登場する拳法。ファルコら天帝に仕える拳法家が用いる。闘気を飛ばして戦う技。闘気の効果は様々で、相手を切り裂く光の輪を放ったり、周囲を凍らせたりすることが可能。天帝を守護するための拳法で、北斗神拳を凌ぐ暗殺拳であるとされる。
北斗琉拳 (ほくとりゅうけん)
『北斗の拳』に登場する拳法。北斗神拳から分かれた拳法であり、北斗神拳同様、相手の身体を突いて内部から破壊する。北斗神拳でいうところの経絡秘孔は経絡破孔と呼ばれ、人体に1109個あるとされる。心を狂わす拳法とされており、使い手が心に大きな衝撃を受けると「魔界」に入り、相手の平衡感覚を失わせる魔闘気を使えるようになる。
アニメ
書誌情報
北斗の拳 新装版 全18巻 コアミックス〈ゼノンコミックス DX〉
第1巻
(2023-09-13発行、 978-4867205402)
第2巻
(2023-09-13発行、 978-4867205419)
第3巻
(2023-09-20発行、 978-4867205426)
第4巻
(2023-09-20発行、 978-4867205433)
第5巻
(2023-10-20発行、 978-4867205440)
第6巻
(2023-10-20発行、 978-4867205457)
第7巻
(2023-11-20発行、 978-4867205464)
第8巻
(2023-11-20発行、 978-4867205471)
第9巻
(2023-12-20発行、 978-4867205488)
第10巻
(2023-12-20発行、 978-4867205495)
第11巻
(2024-01-20発行、 978-4867205501)
第12巻
(2024-01-20発行、 978-4867205518)
第13巻
(2024-02-20発行、 978-4867205525)
第14巻
(2024-02-20発行、 978-4867205532)
第15巻
(2024-03-20発行、 978-4867205549)
第16巻
(2024-03-20発行、 978-4867205556)
第17巻
(2024-04-20発行、 978-4867205563)
第18巻
(2024-04-20発行、 978-4867205570)
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