幼き頃に出会った「王子さま」を探す少女が学園内の闘争に巻き込まれていく学園バトルロマンス。主人公・天上(てんじょう)ウテナはピンクの学ランを纏った凛々しい性格の中学生だ。幼少時に両親を亡くし、失望していたところを救った通りすがりの男性を王子さまと慕い、その行方を探していた。ウテナは、毎年彼女の元に届く「バラの刻印」の入った手紙の送り主が王子さまだと確信し、彼がいると思われる私立鳳(おおとり)学園への転校を決意する。1997年にテレビアニメ化。
鳳学園に転校したウテナを待ち構えていたのは、「バラの刻印」といわれる独自の掟により、「デュエリスト」と呼ばれる生徒たちが己の利権を争う戦渦だった。決闘に勝った者だけが、世界に革命を起こす力を持つ「ディオスの剣」と、「バラの花嫁」こと姫宮(ひめみや)アンシーを自由にする権利を与えられるのだ。ウテナは戦いを余儀なくされ、苦闘の末勝利しアンシーを解放する。そしてウテナは、生徒会長の桐生冬芽(きりゅうとうが)から掟の謎と、デュエリストが「世界の果て」から送られる手紙で選ばれることを知る。「世界の果て」の正体とは何か、彼女が憧れていた王子さまとは一体誰なのか。戦いに身をやつす少女の悲哀と、衝撃のクライマックスは見ごたえたっぷりだ。
とある学園を舞台にした、女子高生たちの出会いと心の揺らぎを描いた百合ファンタジー。嵐が丘学園に通う主人公・椿輝紅羽(つばきくれは)は地味で存在感のない「透明」な16歳だ。そんな紅羽に唯一声をかけてくれるのが、美少女転校生の百合城(ゆりしろ)銀子であった。クラスの人気者で百合の香りがする彼女と親しくなるのが嬉しい反面、他人の心の機微に敏感な紅羽は銀子に対してある疑念を抱いていた。2015年にテレビアニメ化。
紅羽は銀子の行動や仕草から彼女の正体が「クマ」ではないかと疑い始める。そんな中、銀子を大好きな百合ヶ咲(ゆりがさき)るるが転入し三角関係になるも、同居をすることで打ち解けていく。ある日、銀子は母から紅羽を食べるよう命令されるが実行できず「この世界は全てクマでできている」と涙ながらに紅羽に打ち明ける。るるから「銀子は彼女の母の作り上げたクマの世界に閉じ込められている」ことを聞かされた紅羽は、彼女に寄り添うことを決意する。本作は「クマの世界」という突飛な設定ながら、彼女たちの母親の過去と関係性を丁寧に描くことで、一つの百合作品として成立しているのが特徴だ。紅羽と銀子がお互いを思いやり、運命の人として結ばれていくさまに胸が熱くなる。
謎のペンギンと共に運命を乗り越えようとする兄弟を描いた、幾原邦彦監修作品である人気SFテレビアニメのコミカライズ。双子の兄弟である高倉冠葉(かんば)と晶馬(しょうま)には難病で余命幾ばくもない妹・陽毬(ひまり)がいた。ある日、3人は家族の思い出の場所である水族館へと出かけたが、陽毬の容態が急変し帰らぬ人となってしまう。霊安室で悲しみにくれるあまり取っ組み合いの喧嘩をする2人の目の前で、いきなりペンギンの帽子を被った陽毬が起き上がる。
息を吹き返した陽毬は、ペンギン帽を被っている時だけ別人格である「プリンセス・オブ・ザ・クリスタル」を宿す身体になっていた。プリンセスは、陽毬の命を延ばす代わりに「ピングドラム」を手に入れるよう彼らに命じる。そうして彼らは、ピングドラム探しのヒントとなる存在、高校生・荻野目苹果(りんご)を見つけた。苹果の亡き姉が所有していた「運命日記」にピングドラムとの関連性があると考えた彼らは、日記を譲り受ける代わりに苹果と協力関係になる。ピングドラムの謎やペンギン帽の正体、高倉兄弟と苹果との浅からぬ因縁など様々な要素が絡み合っているが、根底にあるのは「兄弟愛」である。陽毬への思いから最終的に2人が決断した「運命の選択」と、結末に感涙必至だ。
幾原邦彦監督の人気テレビアニメ「さらざんまい」に登場する警官を主人公に据えた、スピンオフ漫画。浅草皿交番に勤務する新星玲央(にいぼしれお)は、金髪のワイルドな警官だ。そんな玲央と勤務を共にしているのが、一見クールなメガネ警官の阿久津真武(あくつまぶ)である。ある日2人は、道端で皿の上に置かれた赤ん坊を拾得する。病院に連絡するが満床のため預かってもらえず、図らずも2人は赤ん坊の面倒をしばらくみることとなった。
「サラ」と名付けられた赤ん坊は、事あるごとに「でぃっしゅ☆」とつぶやくなどコミカルな愛らしさ満点だ。2人は本当の母親が見つかるまで彼女を育てることとなったが、職務を遂行しながらの子育ては至難のわざである。それでも周りの住人とのふれあいや、お互いが協力していく中で彼らは親としての自覚に目覚めていく。しかし、幸せな日々も長くは続かず、大人になったサラが別れを告げる夢を2人は見てしまう。本作はスピンオフということもありテレビアニメと内容が異なっているため、差異や類似点を考察しながら楽しめる。また、料理好きの真武が「玲央に食べてもらいたい」と上半身裸エプロンでホットケーキを作ったり人形焼きを振る舞うなど、優しい日常幅径も魅力のひとつだ。
駆け落ち中の少女と少年が、謎の組織に追われ逃避行するファンタジー。主人公のお団子頭の美少女・世羅(セラ)ヒツジは、クマの着ぐるみを纏った羽熊塚(ハグマヅカ)イタルと恋人関係にある。2人は駆け落ちを試みるが、その道中、とあるカフェに車ごと突っ込んでしまう。そこへ登場したのが、2人を追う敵対組織で「燃えるキリン」のトップ・兎河(トガワ)ギンだった。彼らの包囲網をかい潜り、2人はとある教会へたどり着く。続編に「ノケモノと花嫁+(クロス)」がある。
2人は教会で結婚式をあげようとするも、ヒツジは「燃えるキリン」から派遣された彼女の実父・晶午(ショウゴ)に捕らえられてしまう。イタルは協力者と共に、ヒツジの救助に向かうが、記憶が混濁した彼女は、彼のことさえも忘れていた。しかし、着ぐるみの中の彼の素顔を見たヒツジは、すべてを思い出し脱出に成功する。一方で、大人を全否定する子供だけの組織・燃えるキリンの独裁者であるギンに反対する勢力が動き始めていた。構成員がなぜ子供だけなのか、ヒツジに執着する理由は何か。組織の謎が解き明かされると共に、登場人物の壮絶な過去が炙り出される。ラブストーリーとしての側面を持ちながら、裏に隠された「虐待」というテーマを考えさせられる作品だ。