数字であそぼ。

数字であそぼ。

名門と知られる吉田大学理学部に入学したものの、高校の数学と大学の数学のレベルの違いに苦悩する横辺建己のキャンパスライフや、個性的な学友との交流を描いた青春コメディ。小学館「月刊flowers」2018年8月号から掲載の作品。第69回「小学館漫画賞」受賞。

正式名称
数字であそぼ。
ふりがな
すうじであそぼ
作者
ジャンル
青春
レーベル
フラワーコミックス α(小学館)
巻数
既刊10巻
関連商品
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あらすじ

幼少期から暗記を得意としている横辺建己は、見た光景や文章を正確に記憶できる映像記憶能力の持ち主で、周囲から神童ともてはやされながら、悠々自適な人生を送っていた。身内や友人、先生からの期待を寄せられ、将来は物理学者としてノーベル賞の受賞も夢ではないと言われていた建己は、勧められるままに物理学者を目指すため、京都の名門として知られる吉田大学理学部に現役合格を果たす。自信満々で初日の授業に臨んだ建己だったが、その日の2限目に受けた「微分積分学」の授業のレベルが高すぎてまったく理解できずに困惑する。ほかの同級生もこの難解な授業を理解できるわけないと声をかけて回る建己だったが、夏目まふゆからわかりやすい講義だったと返されたことで、これまでにない絶望感を味わう。これをきっかけに人生初の挫折を経験した建己は、高校と大学の数学のレベルの違いと、自分に理解できない授業があったことへのショックから下宿先の紫陽花荘に引きこもるようになり、大学にも行かずにそのまま2年間留年してしまう。そして入学から3年目経った春、このままでは自主退学するしかないと悩む建己は、大学から届いた手紙を見て留年生向けの面談に参加することを決める。この面談で教授の早乙女万里雄から友人を作るよう言われた建己は、大学生活をやり直すためにまずは友人を作ることから始める。だが、2年間も通学していなかった建己に友人を作ることは難しく、気落ちする毎日を送っていた。そんな中、建己は同じく二留している北方創介と出会い、彼に数学を教わったりサポートされながら、再び通学ができるようになる。それでも高校時代の数学とは異なり、単に公式を覚えるだけでは解くことのできない大学の数学に悪戦苦闘する建己は、創介から紹介された猫田賢から過去の問題集のコピーを買い取り、暗記術を活用してなんとか単位を取ろうとする。建己は頭脳明晰ながら奇人・変人ばかりの学生や、マイペースな教授に囲まれ、キャンパスライフを送る中で理学部の学生たちとの交友も少しずつ広がり、彼らを通して数学は「理解して積み重ねていく学問」だということを思い知る。そんな建己の前には次々と難題が降りかかり、そのたびに苦悩や葛藤に苛まれるものの、友人たちの助けを借りながら困難を乗り越えていく。

登場人物・キャラクター

主人公

吉田大学理学部に在籍する青年で、おだやかな性格の常識人。奈良県出身。前髪が長めの黒髪ショートヘアにしている。父親譲りの映像記憶の持ち主で、生まれつき見た物をそのまま記憶できるため暗記を得意としている。... 関連ページ:横辺 建己

北方 創介 (きたかた そうすけ)

吉田大学理学部に在籍する青年。高知県出身。真ん中分けの黒髪ショートヘアで、垂れ目で眼鏡をかけている。横辺建己とは同期で、彼と同様に入学後は一単位も取得できず、留年生向けの面談を受けて再び大学に通い始める。再履修の中、友人を作ろうと必死になっている建己に留年生のオーラを感じ取り、彼に声をかけて自分と同じく二留であることを知り、すぐに意気投合して友人となる。その後は建己と助け合いながら共に講義に出席するようになるが、北方創介の留年理由は単にパチスロに熱中していただけで、建己のように数学の授業で難しさを感じたことはない。パチスロに限らずギャンブル全般にはまっており、ギャンブルは期待値ではなく分散(統計学)に賭ける楽しさについて、建己に力説していたこともある。このジャンキーさながらのこだわりを建己に呆れさせているが、大学の数学を教えたり、過去問題集を持っている猫田賢を紹介したりと、何度も建己を助けているため何かと頼りにされている。また、旅行や集中講義にいっしょに参加するなど、大学生活やプライベート共にいっしょに過ごすことが多い。実奈、菜美という名前の双子の妹がいる。

猫田 賢 (ねこた けん)

吉田大学理学部に在籍する青年で、つねににこやかな笑みを浮かべている。東京都出身。よくも悪くも生真面目な性格で、物事をはっきり言うタイプ。時にはその率直すぎる発言で、場の空気を悪化させたり相手を傷つけることもあるが、数学的な思考には優れている。横辺建己と同期だが、物理から数学に志望を変更したため、3回生の夏時点では単位を取り切れずに、一留している。理系科目を中心に吉田大学の過去問題集を20年分も集めており、そのコピーをほかの学生に時価に合わせた価格で売っている。過去問題丸暗記で単位取得を目指している横辺建己とは、パチスロ仲間から噂を聞き付けた北方創介を通して知り合う。過去問題集の内容自体は好評だが、売る前には数学パズルの引っかけ問題を相手に解かせたうえで、解答内容に合わせた価格で売るという手法も取っているため、建己のように数学が理解できていない者は高額で購入する羽目になる。その後も建己、創介と夏期集中講義でいっしょになったり、建己の帰省に付き合ったりと、時おり彼らと交流している。裕福な家庭で育ち、現在は親が所有する高級マンションで一人暮らし中で、実家からフォアグラが送られてくることもある。

夏目 まふゆ (なつめ まふゆ)

吉田大学理学部に在籍する女性で、ボブヘアにしている。新潟県出身。マイペースな性格で、つねに冷静でどこか冷淡な印象を与える。横辺建己とは同期で、数学においては天才的な才能の持ち主だが、遊びに忙しく大学をサボがちなため一留している。入学当初の講義終了後、数学の難解さに困惑する建己から声をかけられた際に、大学の講義の方が高校の授業よりも却ってわかりやすいと返答し、ショックを受けている建己にさらに追い打ちをかける。この出来事は建己が留年するきっかけにつながっているが、夏目まふゆ自身は発言どころか建己のこともまったく覚えていなかった。建己が復学した3回生の夏の集中講義にて建己と再会し、友人となる。成績は優秀ながらかなりの変わり者で生活能力は欠如しており、下宿先の女性専用マンションの自室は汚部屋と化している。基本的に他人には興味がなく流行にも無頓着ながら、胸が小さいことにコンプレックスを抱き、スタイルのいい友人に羨望を向けるなど、年頃の女子らしい一面も秘めている。食い意地が張っており、建己の実家の帰省に付き合って奈良に行った際は、シカ肉やシカせんべいのことばかり考えていた。

大八木 (おおやぎ)

横辺建己の下宿先である「紫陽花荘」の大家を務める老齢の女性で、京都弁で話す。夫と愛犬のだんごと共に暮らしている。いつも着物を身につけており、にこやかな笑顔を浮かべている穏やかなおばあさん。唯一の下宿人である建己には優しく接し、何かと気にかけている。建己が引きこもっていた時はだんごの世話を彼に任せていた。大きな京町家で暮らす姉とは、顔が瓜二つ。

だんご

横辺建己の下宿先「紫陽花荘」で飼われている雑種犬で、性別はオス。大家を務める大八木の愛犬で、人懐っこい性格をしている。引きこもっていた建己から、食事や散歩の世話をされていたが、復学した現在も時おり建己の部屋に潜り込んで寝ることもあり、かわいがられている。暑い時は庭に穴を掘って涼んでいたが、その癖を見かねた大八木によって紫陽花荘にクーラーが設置されることとなる。

甘野 (あまの)

吉田大学理学部に在籍する青年。黒のスポーツ刈りで、糸目と色黒の肌が特徴。横辺建己の入学から2年後に入学しているが、二浪しているため建己と年齢は同じ。大学の寮に住んでいる。人力車の車夫や家庭教師をはじめ、複数のアルバイトをかけ持ちしている。観光用人力車のアルバイト中に、京都観光を楽しんでいた建己、北方創介と知り合う。数学的な思考に長け、家庭教師をしていることから教えるのもうまく、建己のトラウマともいえる入学当初の「微分積分学」の授業についても丁寧に解説した。

早乙女 万里雄 (さおとめ まりお)

吉田大学理学部数学科の教授を務める老齢の男性で、口ヒゲと顎ヒゲを生やしている。いつもニコニコしているため人格者に見えるが、つねに独特なテンションでマイペースに行動しており、学生はもちろんほかの教員も振り回している。大学に来なくなった横辺建己と北方創介を心配して手紙を送り、留年生向けの面談を行った際に、まずは友人を作るべきだと勧めていた。これ以降は集中講義などで建己を見かけるたびに、数学教室に勧誘している。夏期集中講義では生物専攻に進むべきか悩む建己に数学の面白さを説いていた。スイーツが大好きで、持参したお気に入りのクッキーなどを学生に振る舞っている。

建己の母 (たてきのはは)

横辺建己の母親。奈良にある実家で、夫と共に暮らしている。大きな期待を寄せながら建己を吉田大学に送り出したが、大学に入学以降はあまり連絡を取れておらず、入学以来一度も帰省していない建己が留年していることは知らぬまま、順風満帆な大学生活を送っていると思い込んでいた。建己が復学した最初の夏休み、家に大勢の親戚たちを呼んで建己の帰省を楽しみにしていた。しかし再会した建己の様子がおかしいことに気づき、大学で変なサークルや宗教にハマったのではないかと心配していた。その後、建己や北方創介がうっかり留年のことを漏らしたため、建己が2年間も引きこもっていたことを知る。

場所

吉田大学 (よしだだいがく)

横辺建己が進学した、京都市にある国立大学。ノーベル賞受賞者を多数輩出しているため、京都にある大学の中でも名門として知られている。建己が在籍する理学部は、2年次終了までは数学系や物理学系などに分かれることなく理学部理学系として単位を取得し、必要な分の単位を取得したあとに進みたい専攻を決めることになっている。理学部の大半は大学院に内部進学しているため、大学の時点で就職活動をする学生は少ない。

紫陽花荘 (あじさいそう)

横辺建己の下宿先。築60年を越える古い建物なうえに風呂とエアコンがないため、真夏の京都の猛暑に下宿人は苦しめられることになる。大家は大八木が務めており、現在は建己以外の下宿人はおらず、建己と愛犬のだんごと暮らしている。吉田大学の目と鼻の先にあるため、近所のあちこちで吉大生が歩いているため、引きこもり中の建己を精神的に苦しめていた。建己が挫折から2年後に通学を再び始めた頃には、エアコンが設置されるが、建己のためというよりは暑いと庭に穴を掘って涼む変な癖があるだんごのためである。

書誌情報

数字であそぼ。 10巻 小学館〈フラワーコミックス α〉

第1巻

(2018-12-10発行、 978-4098702817)

第2巻

(2019-06-10発行、 978-4098704521)

第3巻

(2019-12-10発行、 978-4098706655)

第4巻

(2020-05-08発行、 978-4098710249)

第5巻

(2021-01-08発行、 978-4098712748)

第6巻

(2021-07-09発行、 978-4098712984)

第7巻

(2022-01-07発行、 978-4098715602)

第8巻

(2022-09-08発行、 978-4098717149)

第9巻

(2023-03-09発行、 978-4098720330)

第10巻

(2023-08-10発行、 978-4098722136)

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