ロマンス暴風域

本作の第一部（1巻）は、34歳の非常勤講師、佐藤民生と風俗嬢の運命の出会いから始まる。佐藤は大学のときにできた彼女と別れてから6年、ずっと独り身が続いていた。婚活をしてみても、講師の仕事が非正規雇用だと聞くと女性は相手にしてくれない。普通に出会えていた女の子が自分の前から少しずつ消えていく。「女の子とは偶然に必然に出会うもので、お金と引き替えに出会うものではない」と考えていた佐藤だが、ふと訪れた性風俗で、風俗嬢の芹香を見た瞬間、彼女こそ運命の女性だと直感する。そして佐藤は芹香への一途（いちず）な思いを募らせていく。

佐藤と芹香は店の外でデートするようになり、交際をはじめるが、芹香はすでに決まっていた相手と結婚する。それでも芹香を諦めない佐藤と、恋愛と結婚は別だという芹香は濃密な恋愛の日々を過ごす。佐藤は、結婚も風俗も辞めてほしいというのが本音だが、それを切り出して芹香を失いたくはなかった。しかしある日、佐藤が芹香の家を訪ねてその夫と話をしようとしたことで事態は急変。二人の関係は終わってしまう。

芹香との蜜月を描いた一部から一転、第二部（2巻）の佐藤は、スナックやガールズバーで次々と女性と出会い、彼女たちと関係を持っていく。芹香を忘れられない佐藤は、女性たちの柔らかい体に受け入れられる安心感を唯一の拠り所として日々を過ごしていた。そして佐藤は性風俗で会った、なっちゃんというぽっちゃりした女性と同棲（どうせい）しはじめる。塾講師に転職して過ごす毎日、友人の結婚や出産、新たな彼女候補との出会いなどを通じて、佐藤の揺れ動く思いが緻密に描かれていく。