アイネクライネナハトムジーク

アイネクライネナハトムジーク

伊坂幸太郎の小説『アイネクライネナハトムジーク』のコミカライズ作品。理想の出会いを探すサラリーマンの佐藤をはじめとする、ごくふつうの人々が巻き起こす小さな出会いから生まれる恋愛や奇跡を描いた、六つのエピソードから成るヒューマンドラマ。「デンシバーズ」で2018年10月から2019年8月にかけて連載された。

正式名称
アイネクライネナハトムジーク
ふりがな
あいねくらいねなはとむじーく
原作者
伊坂 幸太郎
漫画
ジャンル
ラブコメ
 
恋愛
関連商品
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あらすじ

第1巻

平凡なサラリーマンの佐藤は、先輩の藤間が犯した失敗の尻ぬぐいとして、課長の命令で街頭アンケートを行うことになる。佐藤は街の人に声を掛けるものの、なかなかアンケートに答えてくれる人が見つからず苦戦していた。そんな中、フリーターの女性がふと立ち止まり、アンケートに快く協力。これをきっかけにアンケートに応じる人が増え、佐藤は彼女への感謝の気持ちで一杯となる。この小さな出会いが、佐藤にとって奇跡的な出会いでもあった。同い年でもあるフリーターの女性に親近感を覚えた佐藤は、彼女がカバンに付けていたキーホルダーが気になっていた。後日、友人の織田一真織田由美から、そのキーホルダーがアニメ「トイ・ワールド」のキャラクターだと教えられる。そして佐藤は一真たちにDVDを借りて、トイ・ワールドに興味を持つようになる。そんな中、佐藤は仕事帰りに通りがかった工事現場で、アルバイト中のフリーターの女性に偶然再会する。(エピソード「アイネクライネ」。ほか、2エピソード収録)

第2巻

化粧品メーカーで働く窪田結衣は、同僚の佳織との雑談中、学生時代にいじめに遭っていた過去を告白する。学生時代、地味で小太りな見た目だった結衣は、クラスメートの小久保亜季から陰湿な嫌がらせを繰り返し受けていた。結衣は信頼していた亜季にいじめられた出来事を、今でも小さなトラウマとして抱えていた。話を聞いて不憫に思った佳織は、亜季になんらかの復讐をすべきだと結衣にせまるが、結衣はいまさら復讐をするつもりはないと答える。そんな中、結衣たちの会社に大手広告会社の営業として亜季が訪れ、結衣は期せずして亜季と再会を果たす。しかし容姿や名字が変わっていた結衣は、亜季に気づかれることはなく、しばらく彼女と仕事を共にすることになる。亜季と再会したことを知った佳織は、今こそ復讐のチャンスだと再び結衣にせまる。そんなある日、結衣は亜季に誘われて仕事関係の合コンに参加することになる。(エピソード「メイクアップ」。ほか、2エピソード収録)

関連作品

本作『アイネクライネナハトムジーク』は、伊坂幸太郎の小説『アイネクライネナハトムジーク』を原作としている。本作と同様、六つのエピソードから成る連作短編集で、佐藤をはじめとする平凡な人々の出会いが紡ぐ、奇跡的な出来事や恋愛模様を描いている。

登場人物・キャラクター

佐藤 (さとう)

平凡なサラリーマンで、マーケットリサーチを行う会社に勤めている。織田一真、織田由美とは大学時代からの友人で仲がいい。一真と由美が幸せそうな結婚生活を送っているのを羨ましく思い、運命的な出会いを求めている。会社のデータを消失させた先輩の藤間の尻ぬぐいをさせられ、夜の街で街頭アンケートを行うことになった際にフリーターの女性と知り合い、アンケートの回答から同い年だと知って親近感を覚える。さらに、彼女がカバンに付けていたキャラクターグッズがアニメ「トイ・ワールド」のキャラクターと知って興味を持ち始める。のちに、道路工事のアルバイトをしているフリーターの女性と偶然再会を果たし、交際を始める。藤間とも仲がよく、家族と別れたことにショックを受けている彼を心配している。また藤間がウィンストン小野のファンだと知り、サインを手に入れようとしている。

藤間 (ふじま)

システム管理者のサラリーマンで、佐藤の先輩。冷静で落ち着いた性格ながら、妻と娘が家を出て行ったショックで意気消沈し、仕事のデータを消失させてしまう。仕事はつねに堅実にこなす一方で、プライベートは非常にずぼらで整理整頓が苦手なタイプ。この性格が災いして徐々に妻に愛想をつかされてしまい、別れる原因となった。運転免許証の更新のたびに運転免許センターで出会う、子連れの女性のことが少し気になっている。ウィンストン小野の大ファン。

子連れの女性 (こづれのじょせい)

藤間が運転免許センターで出会った、藤間とは誕生日が一日違いの既婚者の女性。幼い息子を連れて運転免許証の更新に来た際に、藤間から眼鏡を借りたのがきっかけで彼と知り合う。藤間と同じくプライベートは大雑把なタイプで、家事をたびたび放棄することもある。その後、5年ごとに運転免許センターで藤間と再会するようになり、出会ってから5年後の再会時に、夫と別居中であることを報告した。それからさらに5年後の再会時は、夫との離婚を免れたことを報告する。それと同時に、通帳を記帳して残高を確認した方がいいと藤間に助言した。

課長 (かちょう)

佐藤と藤間の上司であるサラリーマン。妻と娘とテーマパーク「ネズミ―ランド」をこよなく愛する中年男性。部下への説教やアドバイスをするときは、物事を外交に例えて話す癖がある。

フリーターの女性 (ふりーたーのじょせい)

佐藤が街頭アンケートを行っている時に出会った、フリーターの女性。黒髪のロングヘアを後ろに束ね、地味な黒いスーツを着ている。アンケートの回答から佐藤と同じ年齢であることが判明する。自分の手をメモ帳代わりにする癖があり、買い物の品も忘れないように手に書いている。アニメ「トイ・ワールド」の大ファンで、キャラクターグッズをカバンに提げている。のちに工事現場のアルバイトを始め、偶然通りがかった佐藤と再会を果たし、彼と付き合うようになる。

織田 一真 (おだ かずま)

佐藤の大学時代の同級生で、織田由美の夫。昔アルバイトをしていた居酒屋のチェーン店で、現在は店長を務めている。がさつな性格で独特な考えを持ち、よく奇妙な英語を話す。由美と結婚するために、21歳の頃に大学を中退した。由美と娘の織田美緒、息子の織田一樹の四人で幸せな生活を送っている。

織田 由美 (おだ ゆみ)

佐藤の大学時代の同級生で、織田一真の妻。旧姓は「加藤」。自他共に認める容姿端麗な美女で、学校の男子からも非常に人気があった。美奈子とは高校時代からの友人。

美奈子 (みなこ)

美容師の女性で、美容院の常連客の板橋香澄とは友人のように仲がいい。織田由美とは高校生時代から親交があり、彼女と織田一真の三人で時折食事をしたり、いっしょに斉藤の店へ行ったりしていた。なかなか彼氏ができないことに悩んでいたが、香澄から紹介された彼女の弟と電話で交流を始め、悩み相談や近況報告などをするようになる。しかし、格闘技が苦手なのを懸念した香澄から意図的に隠されていたため、弟がボクサーのウィンストン小野(小野学)だとは知らなかった。のちに世界王者となった学に告白されて付き合うようになり、彼を心身ともに支えるために結婚した。

板橋 香澄 (いたばし かすみ)

美奈子が勤める美容院の常連客の女性。美奈子とは友人のように仲がいい。明るく気前のいい性格で、彼氏ができないと悩む美奈子に弟を紹介する。しかし格闘技が苦手な美奈子には、弟がボクサーのウィンストン小野であることは隠していた。

ウィンストン小野 (うぃんすとんおの)

プロボクサーとして活躍する男性。実は板橋香澄の弟で、本名は「小野学」。香澄の紹介を受けて美奈子と、電話でたびたび交流をするようになる。香澄の助言で、自分がボクサーのウィンストン小野であることは、美奈子には隠している。何度か電話での交流を交わすうちに美奈子に惹かれていき、思いを寄せるようになる。のちにヘビー級タイトルマッチに勝利し、日本人初の世界王者となった。これをきっかけに美奈子に告白し、付き合うようになる。

斉藤 (さいとう)

帽子を深くかぶった謎の多い男性で、路上で露天商を営んでいる。客からは「歌をくれる人」と呼ばれている。100円払って今の気持ちや悩みを告げることで、客の気分にマッチした曲を流すという活動をしている。非常に無口で、客相手であってもほとんどしゃべらない。美奈子や織田一真がよく利用していたが、ある日を境に路上からいなくなってしまう。

織田 美緒 (おだ みお)

織田一真と織田由美の娘。母親の由美によく似た容姿で、学校でも男子からの人気が非常に高く、クラスのマドンナ的な存在。高校では久留米和人や藤間亜美子と同じクラスになる。駐輪場の駐輪シールを盗んでいる者がいると気づき、いっしょに犯人を捕まえてほしいと和人に依頼する。犯人を捕まえたあとに偶然出会った、久留米邦彦のことを気に入っている。

織田 一樹 (おだ かずき)

織田一真と織田由美の息子で、織田美緒の弟。少年時代は少年野球チームに所属していた。

深堀 朱美 (ふかほり あけみ)

久留米和人や織田美緒たちの高校で英語を担当している教師の女性。旧姓は「笹塚」で、笹塚耳鼻咽喉科の次女。三十代後半とは思えぬほどの若々しさで、一部の男子たちから人気があった。スレンダーな体形で胸は小さい。大学生時代は教育学部に在籍し、レストランでアルバイトをしていた。アルバイト中に面倒な客に絡まれているところを、久留米邦彦に助けられる。これがきっかけで邦彦と付き合うようになるが、のちに彼と別れて別の男性と結婚する。教師となって和人と初めて出会った時から、彼が邦彦の息子であると確信し、邦彦との再会をひそかに望んでいた。和人と美緒が駐輪場のシールを盗んだ犯人と揉めているところを発見し、かつて邦彦が助けてくれた時と同じ方法で、美緒たちを助ける。その際に、偶然近くを通りがかった邦彦と再会を果たす。

久留米 和人 (くるめ かずと)

織田美緒のクラスメートの高校生男子。ハンドボール部に入部するが、先輩のしごきに耐えられずに辞めてしまう。父親の久留米邦彦とは顔が瓜二つで、遠目には見分けがつかないほど。しかし平凡なサラリーマンである父親のことは昔から好きになれず、彼にそっくりな自分の容姿がコンプレックスになっている。美緒に片思いしており、男子にとってのあこがれの場所でもある彼女のとなりの席になったことで、ささやかな幸せを感じている。美緒から駐輪場のシールを盗んだ犯人をいっしょに捕まえてほしいと依頼される。

久留米 邦彦 (くるめ くにひこ)

久留米和人の父親で、サラリーマン。息子の和人と顔が瓜二つで、時々まちがえられることがある。大学時代は深堀朱美と同じ大学で工学部に在籍し、彼女よりも二つ年上。アルバイト中の朱美を助けたことで付き合っていたが、のちに別れて和人の母と結婚した。胸の小さな女性が好み。

和人の母 (かずとのはは)

久留米和人の母親。二十代の頃に夫の久留米邦彦と出会って結婚し、彼の仕事の関係で仙台に移住した。結婚後すぐに和人が生まれる。スレンダーな体形で胸が小さい。

藤間 亜美子 (ふじま あみこ)

藤間の娘。高校では久留米和人や織田美緒と同じクラスになり、美緒とは親友同士。両親の離婚後は母親と二人暮らしをしている。

窪田 結衣 (くぼた ゆい)

化粧品メーカーに勤めている女性で、旧姓は「高木」。学生時代は小太りな体形で地味な見た目だったことから、小久保亜季にいじめを受けた経験がある。成長とともにスレンダーな美人になり、高校時代に気になっていた同級生と結婚した。会社に営業として訪れた亜季と偶然再会するが、容姿や名字が変わっていることから彼女には気づかれていない。同僚の佳織にうながされ、亜季への復讐の機会をうかがっている。

佳織 (かおり)

窪田結衣の同期で同僚の女性。明るく正義感の強い性格をしている。結衣との雑談中、彼女が学生時代に小久保亜季からいじめられていたことを聞き、亜季になんらかの復讐をすべきだと彼女にうながす。

山田 寛子 (やまだ ひろこ)

窪田結衣の上司の女性で、広報部の部長補佐を務める。タバコが大の苦手。ヘヴィメタルバンドのライブをきっかけに知り合った美奈子とは親交がある。26歳の頃に彼氏と別れて斉藤に流してもらった歌を聞いたことで、仕事に打ち込むようになった。

小久保 亜季 (こくぼ あき)

大手広告会社で営業として働いている女性。学生時代は窪田結衣と同じクラスで、彼女にたびたび陰湿ないじめを繰り返していた。結衣の会社に営業として訪れ、偶然結衣と再会することになるが、容姿や名字が変わったことで、彼女が学生時代の同級生だとはまったく気づいていない。仕事関係の合コンで知り合った辻井のことが気になっている。

辻井 (つじい)

小久保亜季の仕事関係の合コンに参加した男性。合コンで出会ったデザイナーの女性が気になっていたが、亜季から「彼氏がいる」とウソの情報を教えられる。実は既婚者という噂がある。

難聴の少年 (なんちょうのしょうねん)

中学生男子で、小学生の頃に難聴を患って補聴器を付けている。会話は手話が中心で、めったにしゃべらない。無口で不愛想だが、見た目は姉や周囲に認められるほどの美青年。公園で同級生にいじめられているところを、佐藤やウィンストン小野に助けられ、小野にあこがれを抱くようになる。成長後はボクシングのラウンドボーイとなり、小野の試合でもラウンドボーイを務めた。のちに、海外モデルとして活躍するようになる。

クレジット

原作

伊坂 幸太郎

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