月華美刃

月華美刃

故郷を追われて穢星に渡った月の皇女、竹之内カグヤが、皇位を守るために戦う、SF要素を含んだ和風ファンタジー作品。『竹取物語』をモチーフとしている。集英社「ジャンプスクエア」2010年6月号から2012年2月号にかけて連載された作品。

正式名称
月華美刃
ふりがな
げっかびじん
作者
ジャンル
和風ファンタジー
レーベル
ジャンプコミックス(集英社)
巻数
全5巻完結
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あらすじ

第1巻

月の統治者、銀后竹之内フジヤの娘であり、後継者でもある竹之内カグヤは、窮屈な稽古や勉強を抜け出しては、気ままな生活を送っていた。自由な生活を望むカグヤは、母親の跡を継いで新たな銀后になる事に納得できずにいたが、すでに皇太子になる儀式「成女の儀」が迫っていた。そんな時、フジヤの体調が悪化し、倒れてしまう。カグヤは、母親の力になるため儀式に出る事を決意するが、そんなカグヤの命を狙ってクーデターが発生する。

第2巻

故郷を追われて穢星に辿り着いた竹之内カグヤは、母親のために月に戻る事を目指しながら、穢星で出会った近衛兵の高野ミクニと共に旅を続けていた。竹之内家の基地を目指す二人だったが、誤って敵である梅之内家の基地に侵入してしまう。そこには、カグヤを捜す梅之内家の近衛達によって囚われた、無罪の女達が収容されていた。カグヤは彼女達を助けたうえで、敵地からの脱出を図ろうとするのだった。

第3巻

力が暴走して気を失っていた竹之内カグヤは目覚め、讃岐ミヤツコマロから松之内家の存在を知らされる。凶悪な力から「禍つ皇家」として追放され、穢星で途絶えたはずの松之内一族の子孫達は、穢星でまだ生き続けているという。カグヤ達は松之内家を仲間にするつもりでいたが、異変に気づいた松之内キルヒトがカグヤ達を襲撃してきた。キルヒトと対峙したカグヤ達は、16年前に松之内家で起こった惨殺事件について知る事となる。

第4巻

死んだと思われていた松之内家第三皇女の松之内兎読子は、竹之内カグヤに促されて兄の松之内キルヒトと再会するため、京(みやこ)に向かう事を決意する。一方キルヒトは、従者の富士原から16年前に起きた惨殺事件の真相と、妹の兎読子が生きている事を知る。そして彼は、惨殺事件の真の黒幕であった松之内イビルヒトと戦う事を決意するのだった。

第5巻

松之内キルヒトと共に松之内イビルヒトを倒した竹之内カグヤは、梅之内イズミヤが本格的に動き出した事で、月に危機が迫っている事を知り、再会した臣下や仲間達と共に月に戻る事となる。「鎮魂ライブ」と称して玄武ヶ丘アリーナにて大量虐殺を企むイズミヤを止めるため、急行するカグヤだったが、そこには梅之内カマドヤを手に掛けたイズミヤが立っていた。

登場人物・キャラクター

竹之内 カグヤ (たけのうち かぐや)

銀后の竹之内フジヤの娘であり、月の皇女でもある少女。窮屈な事が嫌いで、幼い頃から皇女になるための勉強や稽古事をよく抜け出していた問題児。強気で男勝りな性格だが、根は素直で、甘えん坊な一面もある。幼い頃より母親のフジヤの事を尊敬しており、彼女が倒れてからは皇女としての自覚が強くなり、母親のような立派な銀后になる事を目指している。 成女の儀式中に起きたクーデターにより、フジヤ達に逃がされる形で故郷を離れて穢星に渡るが、梅之内家の刺客から命を狙われ続けている。

竹之内 フジヤ (たけのうち ふじや)

44代目の銀后であり、竹之内カグヤの母親でもある。迦護女都の臣民達から広く慕われている優れた統治者であり、娘のカグヤがもっとも尊敬する人物。気が強く勇ましい性格で、カグヤを優しくも厳しく、大切に育ててきた。身体が弱い中、長年無理して公務を続けてきたため、体調を崩して倒れてしまう。カグヤを穢星に逃がしたあとは行方不明となる。

しらたま

「ウササギ」と呼ばれる、長い垂れ耳を持ったウサギのような生物。幼い頃の竹之内カグヤが捕まえて以降、いつもカグヤといっしょにいる。鳴き声は「キュー」。長い耳を活かして浮遊する事ができる。趣味はカグヤに添い寝する事だが、食べ物と間違えた彼女に食われかける事もある。

讃岐 シシマロ (さぬき ししまろ)

竹之内フジヤと竹之内カグヤに仕える近衛大将。讃岐ミヤツコマロの息子。大柄な体格の、穏やかな性格をした人物で、顔には大きな傷跡がある。カグヤの幼い頃からの教育係・恩人でもあり、問題児な彼女に手を焼きながらも、その成長を優しく見守ってきた。フジヤと共にカグヤを穢星に逃がし、父親のミヤツコマロに、カグヤを託す。

高野 ミクニ (たかの みくに)

穢星に渡った竹之内カグヤと出会った少年。一人称は「ミー」。竹之内家に仕える近衛兵の訓練生であり、穢星にて駐留・訓練をしていた。もともとは女性に持て囃されるようなロックシンガーを目指していたが、近衛士官の息子であるという理由で、無理やり入隊させられる。演習中に川で気絶しているカグヤと偶然遭遇し、梅之内家の強力な刺客と戦う彼女の勇ましい姿に惚れ込み、彼女の護衛として行動を共にするようになる。

讃岐 ミヤツコマロ (さぬき みやつこまろ)

讃岐シシマロの父親で、讃岐スズメの夫。「威捕の翁」の異名を持つ。元・六衛府総大将で、99歳の老人だが大柄で勇ましく、力も強い。穢星の治安改善のために穢星に派遣され、妻のスズメと共に暮らしていた。穢星に逃れて来た竹之内カグヤを保護し、梅之内家に命を狙われている彼女をスズメと共にサポートしている。 両手は義手になっており、スズメの改造により、さまざまな機能を備えている。

讃岐 スズメ (さぬき すずめ)

讃岐ミヤツコマロの妻。一見おっとりした性格の老婆だが、高い戦闘能力を持ち、暗器使いやメカニックとしても優れている。夫のミヤツコマロと共に竹之内カグヤをサポートしている。

梅之内 イズミヤ (うめのうち いずみや)

梅之内家に生まれた皇女。梅之内フユヒトと梅之内カマドヤの娘。一人称は「私(こち)」。竹之内カグヤの幼なじみでもある。愛らしい容姿と可憐な振る舞いで民衆や兵士からの人気も高いが、残忍で冷酷な性格と銀后の座を狙う野心を秘めている。暴君として恐れられた梅之内ハトヤの血族であるため、穢れた忌み子として、周囲から忌み嫌われながら育った過去を持つ。 ハトヤの代から続く梅之内家のマイナスイメージを払拭するために、アイドル活動をしている。

梅之内 フユヒト (うめのうち ふゆひと)

梅之内家の婿養子で、親王の男性。梅之内イズミヤの父親。娘のイズミヤを溺愛しており、自らの地位のために策謀を駆使して、彼女を銀后の地位につかせようと目論んでいる。迦護女都で発生したテロやクーデターを起こしたテロ組織とは裏で内通しており、竹之内フジヤが倒れたのをきっかけに、皇位の転覆を狙うようになる。

梅之内 カマドヤ (うめのうち かまどや)

梅之内家現当主の女性。梅之内フユヒトの妻。梅之内イズミヤの母親。また、梅之内ハトヤの一人娘でもある。娘のイズミヤを大切に育て、銀后の座につかせようとしていた。しかしハトヤのような残虐な暴君と化していくイズミヤを徐々に恐れるようになり、竹之内カグヤ達の協力を借りて娘を止めようとするようになる。

梅之内 ハトヤ (うめのうち はとや)

42代目(先々代)銀后の女性。梅之内イズミヤの祖母。銀后となったあと、巫暈支の力を悪用して「選民」を名目に多くの臣民を殺害した。これらの凶行により、後世でも「スリコギ帝」や「狂皇」の呼び名で恐れられており、梅之内家が忌み嫌われるようになる原因を作った人物でもある。

ヨシフサ

穢星の梅之内家の基地にて、竹之内カグヤが遭遇した老人。大きな鉄の仮面をかぶっている。十数年前に梅之内ハトヤに仕えていた元・太政大臣。ハトヤの悪行に力を貸した罪人として、穢星へ流刑されたが、放免後は梅之内家の基地で下働きをしていた。カグヤの持つ巫暈支の安全弁を外し、その力を解放させようとする。

海部 アビコ (あまのべ あびこ)

迦護女都出身の天才ハッカーの少年。悪い政治家や官僚の不正をいくつも暴いてきた善良ジャーナリストの父親が、口封じのために逮捕・流刑されたため、孤児となってしまう。のちにハッキングを駆使して、父親に関する真相と、梅之内家の悪事を暴こうしたが、国家反逆罪で逮捕され、穢星の牢獄に収容されていた。牢獄から脱出した際に讃岐スズメに助けられて竹之内カグヤ達と遭遇し、行動を共にするようになる。

子安 ガイ (こやす がい)

梅之内家に仕える暗殺者「求魂者」の男性。階級は将校クラスの大納言。見た目や口調はオカマだが、オカマと呼ばれるのを嫌っている。穢星に逃げた竹之内カグヤの命を狙っている。ムチのような武器で戦う。

松之内 キルヒト (まつのうち きるひと)

松之内家に生まれた青年で、松之内イビルヒトの息子。穢星で生まれ育った。16年前に起こった惨殺事件の犯人が竹之内フジヤであると勘違いし、母親と妹の松之内兎読子の仇として、竹乃内家を深く恨んでいた。従者の富士原を通して事件の真相を知ったあとは考えを改め、竹之内カグヤと共に、暴走するイビルヒトを討とうとする。

松之内 兎読子 (まつのうち とよみこ)

穢星の山奥にある田舎村で、竹之内カグヤが出会った女性。カグヤよりも小柄だが、年齢は21歳。病を治したり、害獣を追い払う不思議な力を持つ。松之内キルヒトの妹だが、16年前に松之内家が襲撃された際に村に流れ着いたところを村民に拾われた。本当の身分を隠して、村娘の「奇子」として生きていた。女性を忌み嫌う松之内家の者に腫れ物扱いされる中、優しく接してくれた兄のキルヒトを慕っている。 またカグヤにキルヒトの面影を感じ、姉のように慕っている。

富士原 (ふじわら)

松之内家に仕える男性。松之内キルヒトと松之内兎読子の従者であり、妻の三千代と共に二人が幼い頃から教育係として、大切に見守ってきた。我が子をも手に掛けようとする松之内イビルヒトの魔手から、二人を守ろうとしている。

松之内 イビルヒト (まつのうち いびるひと)

松之内家の現当主。松之内キルヒトと松之内兎読子の父親。穢星にある京(みやこ)の帝でもある。かつては温厚な人物であったが、先祖の松之内ミチルヒトと松之内カケルヒトの念にとりつかれて、月を過剰に憎むようになり、我が子や妻をも容赦なく殺そうとする残忍な暴君と化す。

松之内 ミチルヒト (まつのうち みちるひと)

30代目銀后、松之内イリヤの息子で、松之内カケルヒトとは双子の兄弟。女性しか生まれないはずの月の皇族に、本来生まれるはずのない男児として生まれ、弟のカケルヒト共々、化物や忌み子として嫌われながら育った。また誕生時に母親のイリヤを暈力によって死なせており、同族の松之内家の人間からも腫れ物のように扱われている。 成長後は梅之内ヨシノヤの婚約者となるが、のちに彼女と竹之内シロキヤを殺害した罪で、脳梁切断されたうえで、カケルヒトと共に穢星に流された。

松之内 カケルヒト (まつのうち かけるひと)

30代目銀后、松之内イリヤの息子で、松之内ミチルヒトとは双子の兄弟。ミチルヒトと顔が似ており、周囲からはよく見間違えられるが、性格はミチルヒトよりも温厚。ミチルヒトと同様、周囲に忌み嫌われながら育つ。成長後は竹之内シロキヤの婚約者となり、シロキヤに希望を見出し、自らが生きた証を残そうとしていた。しかし、罪を犯したミチルヒトの巻き添えで脳梁切断されたあと、カケルヒトと共に穢星に流された。

梅之内 ヨシノヤ (うめのうち よしのや)

梅之内家の末家に生まれた女性。松之内ミチルヒトの婚約者となる。自らが上皇の地位を得るために、ミチルヒトとのあいだに子をもうけようとしていたが、皇族を信用できなくなったミチルヒトによって殺害されてしまう。

竹之内 シロキヤ (たけのうち しろきや)

竹之内家の末家に生まれた女性。松之内カケルヒトの婚約者となる。カケルヒトに対しては純粋な好意を抱いており、良好な関係を築きつつあった。しかし皇族を信用できなくなった松之内ミチルヒトによって殺害されてしまう。

集団・組織

梅之内家 (うめのうちけ)

竹之内カグヤの家系、竹之内家の分家に当たる一族。「うめ」とも呼ばれる。梅之内ハトヤの悪行によって、民衆やほかの皇族からは忌み嫌われている。皇位転覆を狙う梅之内フユヒトの命令により、この家系の多くの者が竹之内カグヤの命を狙っている。

松之内家 (まつのうちけ)

竹之内家、梅之内家に並ぶ、皇室御三家の一つだった一族。竹之内家とは親交が深い。忌み子(本来生まれるはずのない)の男児である松之内ミチルヒトと松之内カケルヒトを生み出し、彼らが凶悪な暈力を持っていたため、月から追放されていた。表向きは追放先の穢星にて途絶えた事になっていたが、実はミチルヒトとカケルヒトの子孫にあたる松之内イビルヒト達が、穢星にて存続している。 子孫の多くは自分達を追い出した月の者を蛮族として恨み、復讐心を抱いている。また、ミチルヒトとカケルヒトの念の影響で女性を「災いをもたらす存在」として嫌う慣習があり、月も「汚れた星」として嫌悪している。

場所

迦護女都 (かごめのみやこ)

銀后によって統治されている月の皇都。竹之内カグヤの故郷でもある。空はドーム状のパネルで覆われている。高度なテクノロジーによって、天敵や天災もなく安定を築きながら発展して来た。技術なども近未来的で、宇宙船なども存在している。

穢星 (えぼし)

本作『月華美刃』のもう一つの舞台となる惑星で、地球の別名。月と比べて治安は悪く、月の罪人が、流刑のために流される場所でもある。このため月の住民達からは、汚らわしい死人の星として忌避されている。治安と印象をよくするために、竹之内フジヤによって近衛軍を始めとした月の住民が派遣されている。

その他キーワード

巫暈支 (ふつぬし)

銀后が代々引き継いできた御神刀。剣のような形をしている。竹之内フジヤが所有していたが、のちに竹之内カグヤが継承し、所有するようになる。「楔」と呼ばれる安全弁が掛かっており、外す事で真の力を発揮するようになる。暈力と呼ばれる皇族に宿る力を増幅させる効果があるが、長時間使用すると使用者の身体・精神に強い負担が掛かったり、我を忘れて暴走する事もある。 謎が多いが、強力な力を秘めた月の秘宝であると同時に、銀后の証・象徴的存在であり、梅之内家を始めとする多くの人間から狙われている。

銀后 (ぎんこう)

月の支配者であり、迦護女都をおさめる女皇の通称。また歴代の銀后は、神器の巫暈支を引き継いで武器としている。臣民などから、親しみを込めて「銀さま」とも呼ばれる。

暈力 (はろ)

銀后を始めとする月の皇族が生まれつき持っている、不思議な力の通称。巫暈支によって増強・変化する。もともとは、月に飛来する隕石から身を守るために、月の住民に生まれつき引き継がれてきた力だった。

書誌情報

月華美刃 全5巻 集英社〈ジャンプコミックス〉

第1巻

(2010-09-03発行、 978-4088701301)

第2巻

(2011-02-04発行、 978-4088701837)

第3巻

(2011-07-04発行、 978-4088702438)

第4巻

(2011-11-04発行、 978-4088703404)

第5巻

(2012-03-02発行、 978-4088703800)

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