あらすじ
出会い
今日から葦原大和は高校生となった。入学に先立ち、大和は一人暮らしを始めることになり、10年前まで両親と暮らしていた思い出の町に引っ越してきた。幼い頃に事故で両親を亡くした大和は、これまで親戚の家を転々とする生活を続けてきた。複雑な家庭環境だったため、大和にとって貴重なティーンエイジの前半は、孤独と寂しさに苛まれる日々を送っていた。しかし、今日からは晴れて自由の身となった大和は、これから訪れるであろう麗しい高校生活への期待に胸を膨らませる。そんな中、引っ越し業者から耳にしたのは、この町には知らない人がいないとされる絶対的な美少女の噂だった。ルックスとスタイル抜群で、成績優秀に加えて品行方正な彼女は、神に選ばれし高貴な存在だった。登校初日の朝、まだ時間に余裕のあった大和が近所を散策していると、住宅地の中に鳥居を発見し、中に入るとそこは立派な佇まいの神社だった。大和は祀ってある兎の石像に手を触れると、そこが幼い頃よく訪れていた神社だったことを思い出し、ここで出会った少女との記憶に思いを馳せる。神社では、巫女姿の女性の神来社天満と知り合うことになるが、天満の妹が姿を現した時、その美しさのあまり、彼女が絶対的な美少女と噂される神来社真白その人であると気づくのに時間はかからなかった。真白と大和が入学するのは偶然にも同じ三邦高校だった。さらに真白と同じクラスになった大和は、これから始まるであろう青春本番への期待値が否応なしに高まっていく。幼なじみで親友の五十屋との再会を経て、高校での新しいスクールライフをスタートさせた大和だったが、その直後、自分が住むはずの稲葉荘にダンプカーが突っ込み、アパートが大破してしまう。絵に描いたような不運に巻き込まれて一気にどん底に突き落とされ、絶望する大和。しかし事情を知った天満は、大和にいっしょに神社に住めばいいと提案。うろたえながらも真白の了承を得て、美少女たちと同居生活を始めることになる。
異性との接触
家を失った葦原大和は、神来社天満、神来社真白、神来社千隼の住む神社での居候生活を始めることになった。同居初日、お風呂場で全裸の千隼と鉢合わせするアクシデントに見舞われた大和は、千隼と真白の素肌にうっかり触れてしまう。すると、千隼に犬の耳と尻尾が、真白には兎の耳と尻尾が生え、自分の理解の範疇を超えた状況に大和は大混乱する。その後、天満からの説明で、神来社家が神に仕える動物「神使」の末裔であること、天満は牛の、真白は兎の、千隼は犬の名残を受け継いで生まれたという大きな秘密を知ることになる。彼女たちに耳や尻尾が生えてしまうトリガーとなるのは、異性との接触。天満、真白、千隼は男性から素肌に触れられると勝手に耳と尻尾が生えてしまい、元に戻るためにはもう一度異性に触れてもらわなければならない。そのため、特に学校生活においてはさまざまな危険をはらんでおり、細心の注意を払って日常を送る必要があった。女の子の素肌と想像するだけで、大和の頭の中はエッチな妄想が膨らんでしまう。しかし、冷静に考えれば、ただ手に触れるだけでいい話だということに気づき、真白を前に右往左往する自分の浅はかな考えをごまかしながら、大和は真白が差し出した手にそっと触れ、顔を赤らめる。こんな自分と違って、クールな真白はすました顔をしているのだろうと思い、大和が真白の方に目を向けると、そこには呼吸が乱れ、困惑した様子の真白が頰を赤らめていた。
夏休み
うだるような暑さ、騒がしいセミの声と、いつもなら煩わしく感じるはずの夏が、葦原大和にはまったく気にならなかった。それは、今日から待ちに待った夏休みが始まるから。青春において重要かつ貴重なイベントである夏休みに期待する大和は、これまで約10年のあいだ親戚の家で世話になっていたため、夏休みを楽しめるような状況ではなかった。大和が旅行にも行ったことがないことを知った神来社真白が、夏休み中の旅行を前向きに検討し始める中、大和の電話が鳴る。相手は大阪に住む親戚で、大和が住む場所を失ってクラスメートの家に居候していることを知り、今すぐ大和を引き取るという話だった。親戚宅に住むということは、大阪に転校しなければならない。真白は大和を引き止めようとするが、大和は自分を引き取ってくれる親戚がいることのありがたみを口にし、それに従うつもりであることを告げる。大和の顔には、あきらめと寂しさの感情がにじみ出ていたが、大和は神社をあとにして大阪へと向かってしまう。真白と神来社千隼が、大和というかけがえのない存在を失った喪失感に苛まれていた時、五十屋から真白に電話がかかってくる。それは真白に、大和を親戚宅から連れ戻してくれないかとの依頼だった。そして五十屋は、大和がこれまでずっと自分の気持ちを口に出せず、いい子でいることで自分を守ってきたと語り、真白といることで自分を取り戻しつつあったと告げる。すべてを知った真白は、大阪に向かった大和を連れ戻すため、千隼と共に行動を起こす。
博多
神来社真白と神来社千隼は、大阪で葦原大和と合流したのち三人で新幹線に乗った。大和はてっきり東京に着くものと思い込んでいたが、新幹線を降りるとそこは東京とは真逆の博多だった。真白は千隼と計画し、旅行に行ったことがないと言っていた大和を連れて、博多旅行へ行くことに決めていたのだ。九州は神様が最初に降り立ったといわれている場所で、神様にまつわる言い伝えや所縁のある神社がたくさんあり、神来社家の分家もあった。そのため、博多では分家が管理する別荘を利用することになり、一行は真っすぐ別荘へと向かう。そこで大和が出会ったのは、真白たちの従妹の神来社沙依だった。沙依は真白を慕い、異常なまでの執着心を抱いていた。そのため、真白と親しげな大和に明らかな敵意を向け、なんとしても大和を陥れてやろうと、スタンガンで攻撃したり、真白の見ていないスキに真白の浴衣の裾をめくって大和に濡れ衣を着せ、大和を痴漢扱いしたりと画策する。真白はすべてが沙依のいたずらによるものだとわかっており、沙依を叱るものの、沙依は自分の非を認めようとしない。沙依は真白が自分を信じてくれないと、涙を流して悲しむふりをするが、それを見た真白の口から語られたのは、大和はそんなことはしないという、大和と真白の強い絆を感じさせる言葉だった。その日は悔しさを滲ませて自宅へと帰宅することになった沙依だったが、翌日から毎日、真白につきまとい始める。
二学期
東京に戻った葦原大和は、再び神来社天満、神来社真白、神来社千隼との同居生活を始めた。夏休み最後の週末、朝から忙しくしているのは、博多から神来社沙依が引っ越してきたため。沙依が神社で共に暮らすことが決まったのと同時に、沙依の姉妹である神来社瑞貴と神来社心露も上京し、神社近くに住むことを決めたのだ。この日大和は、沙依たち三姉妹の引っ越しの手伝いに奔走していた。沙依の大和への態度は、博多で起きたさまざまなアクシデントを乗り越えたことで、ある程度は緩和されたように見えた。大和を認め、二人の関係も良好になると思われたが、それでもなお、真白への執着が消えることはなく、むしろ大和を挑発するかのように真白とのイチャイチャを見せつけようとするため、大和にとってはかなりのストレスになっていた。夏休みが明け、新学期初日を迎える。転校してきた沙依は、真白や千隼、大和のクラスメートとなり、新たな美少女の出現に学校中から一躍注目を浴びることになる。大和のスクールライフはより一層にぎやかになり、大和と真白の恋愛模様も少しずつ進展していく中、青春に欠かせないイベント、文化祭に向けての準備が始まる。そして同時に、神来社家に関する秘密が少しずつ明かされていく。
大雨
文化祭から葦原大和は、いくつかの悩みを抱えていた。一つは神来社千隼が大和と顔を合わせると逃げるようになってしまったこと。そしてもう一つは、神来社真白が何か悩んでいる様子であることだった。大和は、神来社家に関する秘密を知ったことで、自分がこれ以上踏み込んではいけない気持ちになっていた。そのため大和は気を遣い過ぎて、ついつい当たり障りのない言葉ばかりが出てしまうようになり、それに気づいた神来社天満は、人に気遣うことはいいことだとしながらも、「女の子っていうのは時には強引に男の子に中まで入って来て欲しいものなのよ」と意味深な助言をする。一歩踏み込みたい気持ちがありながら、それができない大和は、天満の言葉を頭の中で繰り返しながら悶々と過ごす。しかしその後、真白や千隼と過ごす時間の中で、二人との距離が、自分が思っていたよりも近くなっていたことに気づき、嫌われていなかったことにほっとするが、二人が抱く大和への思いが意味するものに、この時大和は気づいていなかった。そんなある日のこと、千隼は急な発熱によって神来社瑞貴の家で世話になることになり、祈禱に出かけた天満は大雨の影響で足止めを食っていた。そのため、同じく大雨の影響で帰宅せず学校にとどまっていた大和は、自宅に真白が一人ぼっちになったことに気づく。自分の経験上、一人ぼっちが平気な人などいないと考えた大和は、大雨の中急いで神社へと戻る。するとそこには、風呂からあがったばかりで生まれたままの姿の真白が立ち尽くしていた。ふだんはどんなに不埒な妄想を繰り返そうとも、いざこういう場面に出くわしてしまうとただ固まるしか術はなく、大和は裸の真白を前に言葉を失ってしまう。そして、堰を切ったように今の自分の状況を説明し始め、真白を一人にしたくなかった自分の思いを吐露する。自分の思い込みで行動したこと、さらに裸を見てしまったことを反省しようと、大和が真白に背を向けた時、真白は全裸のまま大和を背中からそっと抱きしめる。
登場人物・キャラクター
葦原 大和 (あしわら やまと)
三邦高校に通う男子。幼い頃、突然の事故で両親を亡くして以来、親戚の家を転々としてきたため、10代前半の大切な時期に青春を謳歌できないまま育った。それから10年、高校入学を機に以前家族で住んでいた町で一人暮らしを始めることになり、これからの高校生活を麗しいものにしようと意気込んでいる。神社近くの稲葉荘に引っ越すが、登校初日にダンプカーが突っ込んできたため、住む場所を失ってしまった。しかしその日に知り合った神来社天満から、いっしょに住むことを勧められ、同じ学校に通う神来社真白や神来社千隼が暮らす神社に居候させてもらうことになった。それ以降、居候させてもらうお礼として、朝食の用意やお弁当作りを担っている。その後、事情を知った親戚から大阪に来るように言われ、引っ越しを決意するが、神社で三姉妹と暮らしたい思いが強く、その気持ちを汲んで動いてくれた真白のおかげで、引き続き三姉妹との同居生活を続けることになった。真白に対しては、あこがれの気持ちが次第に恋心に変わっていく。真白の従妹である神来社沙依からは、博多で直接知り合う前から敵視されており、何かと攻撃的な態度を取られ続ける。だが、のちに和解して東京で三姉妹に加え、沙依とも同居生活を送ることになる。日常的に妄想を膨らませ、脳内で勝手に盛り上がる傾向にあり、天国の両親に向けて心の中で報告する癖がある。思い込みの激しいところがあるが、性格は優しく思いやりがある。事故で両親が亡くなったのは自分のせいだと苦悩しており、当時両親を急かしたことを後悔している。両親が亡くなった時には、あまりの理不尽さに近くの神社の神様に意義を申し立てに来たことがあり、そこですでに幼い頃の真白と知り合っていた。両親の死後、親戚間をたらい回しにされたことで、暴力や精神的抑圧などさまざまなストレスを受けていた。そのためつねにいい子でいることで、自分の生活を死守する必要があり、自分の本当の気持ちを表に出すことはない。ふだんから孤独や寂しさと戦う日々を送っており、高校生になってようやくこのストレスから解放され、本当の自分を取り戻し始めた。どこへ引っ越してもどんな場所でも神社には必ず狛犬がいることから、狛犬が好き。
神来社 真白 (からいと ましろ)
三邦高校に通う女子。ルックスとスタイルが抜群で、成績優秀な上に品行方正なため、町内で神来社真白を知らない者はいないほどで、神に選ばれし絶対的美少女と評されている。実は神に仕える動物の神使の末裔で、種類は兎。姉の神来社天満、異父妹の神来社千隼と神社で暮らしていたが、同じ学校に入学した葦原大和と知り合い、ダンプカーが突っ込んできて住む所を失った大和といっしょに暮らすことになった。中学に通う3年間、制服私服を含めて一度も夏服を着たことがないという噂がある。しかしそれは、異性に直接触れられると兎の耳と尻尾が生えてしまうため、それが起こらないようにするための防衛策である。元に戻るにはもう一度異性に触れてもらう必要があるため、日常生活にはかなり気を遣っている。おとなしい性格で、自然と人と距離を取ろうとするため、周囲からは冷たい人物と思われがち。自分がふつうじゃないことを自覚しているため、なるべくふつうに見られようと猫をかぶっている。人に好かれたい思いが強く、これまでにもらったラブレターなどはすべて箱に入れて残している。大和とは、いっしょに暮らし始めてからどんどん心の距離が縮まり、千隼と大和のかかわりを気にするようになり、さらに大和を意識するようになっていく。夏休み、大和が親戚の家に同居を勧められた際には、大阪の親戚宅まで足を運び、再び大和が自分たちといっしょに暮らせるようにと奔走した。本家では、主人の神来社朝陽の次に強い力を受け継いだといわれており、非常に大切な存在として扱われている。まだ幼かった頃、本家で暮らしていた際に、トラックに轢かれそうになった男児を助けようとして直接触れてしまい、外の人間に耳と尻尾を見られるという事案が発生した。神来社家の秘密を洩らしたということで、真白が朝陽からお仕置きを受けることになったが、真白をかばって名乗り出た千隼が身代わりになり、お仕置きを受けたため、真白はいっさいのお咎めはなかった。朝陽には自分がやったと打ち明けたが、取り合ってもらえなかった。その後、お仕置きのために声を失った千隼と共に天満に連れられて本家を出ることになり、三人での暮らしが始まった。
神来社 天満 (からいと てんま)
神来社真白の姉で、神来社千隼の異父姉にあたる。実は神に仕える動物「神使」の末裔で、種類は牛。先祖の名残で、異性に直接触れられると牛の耳と角、尻尾が生えてしまう特異体質で、元に戻すにはもう一度異性に触れてもらう必要がある。これまで妹二人と神社で暮らしていたが、真白、千隼と同じ学校に通う葦原大和と知り合い、のちに彼が住む所を失ったのを知り、居候させてあげることを決めた。大和と触れ合うことには積極的で、真白や千隼が大和と親しくなることにも好意的。目元と口元、胸元にほくろがあり、色っぽい。一方で、白米にイチゴジャムを乗せて食べるなどかなりの味音痴で、真白や千隼は慣れてしまっているが、新たに生活に加わった大和を驚愕させた。
神来社 千隼 (からいと ちはや)
三邦高校に通う女子。姉の神来社天満、神来社真白と神社で暮らしていたが、同じ学校に入学した葦原大和と知り合い、事故で住む所を失った大和といっしょに暮らすことになった。実は神に仕える動物「神使」の末裔で、種類は犬。先祖の名残で、異性に直接触れられると犬の耳と尻尾が生えてしまう特異体質で、元に戻すにはもう一度異性に触れてもらう必要がある。ショートヘアのヤンチャな性格で、わがままな一方で寂しがり屋なところもある。同じ年齢の真白との仲はよくないため、顔を合わせればケンカばかりしている。胸が小さいことと、本家から狛犬が神使として扱ってもらえないことを気にしている。誰かといると不本意にも相手を傷つけてしまうことがあり、一人でいようと心がけている。しかし、自分を偽らないところが周囲に好感を持たれ、自然と人が集まってくるため、意外にも友達は多い。天満、真白とは父親が違う異父姉妹。本家から認められなかった父親が、男妾的な扱いを受けているため、神来社千隼も本家からぞんざいな扱いを受けている。そのため、学校でも本家でもお姫様のように大切にされる真白をうらやましく感じている。昔本家で暮らしていた時、真白がトラックに轢かれそうになった男児を助けようとした際、耳と尻尾が出てしまい、神来社家の秘密が漏れそうになったことがあった。その時、かかわった真白がお仕置きされそうになったため、彼女をかばって自分がやったと名乗り出た。そのため、神来社家の本家の主である神来社朝陽からお仕置きを受けることになり、声を出せないように奪われ、離れに閉じ込められた。見かねた天満によって、本家から連れ出され、真白と三人で神社で暮らし始めることになったが、それでもなおしばらくのあいだは声が戻らずつらい思いをした時期があった。ちょうどその頃、神社によく現れた男の子のことを隠れ見ており、それが大和であると気づく。次第に大和に思いを寄せるようになるが、自分の気持ちは言い出せないでいる。
五十屋 (いそや)
三邦高校に通う男子で、葦原大和とは10年来の親友。軽くてチャラチャラした印象で、昼休みにはたくさんの女子に囲まれているが、情報通な面もあり、大和のことは陰ながらいつも気にかけている。幼い頃の大和の不幸な状況を知っているため、友達として大和を心からフォローしてあげたい気持ちが強く、大和が大阪の親戚宅への引っ越しを決めた際には、神来社真白に連絡して大和の本質を打ち明けた。そのおかげで、真白が行動することになり、大和が神来社家での居候を続けることができるようになった。何かと察しがよく勘が鋭いところがあり、そもそも、大和から真白の家に居候していることを聞いていたわけではないが、大和が住んでいるはずのアパートは事故で大破したことと、最近真白や神来社千隼と仲がよさそうな状況を知り、大和が神社に居候していると察した。
井上 (いのうえ)
中学2年生の頃、神来社真白のクラスメートだった男子。真白に二度告白したが、交際は断られた。二度目の告白の時、思い余って真白に抱き付こうとしたが、全力で拒絶されてしまう。その際、容姿端麗な真白に自分のようなふつうな人間が触れられるわけがないと発言。だからと言って突き飛ばされるほど嫌われているとは思わなかったため、真白に拒絶された悲しみを一方的に吐露し、別れを告げた。
神来社 沙依 (からいと さより)
神来社真白の従妹で、年齢は真白と同じ。姉の神来社瑞貴と、妹の神来社心露と共に博多にある神来社家の分家で暮らしている。海の神に仕えていた先祖のなごりで、異性に直接触れられると白ヘビの尻尾が生えてしまう特異体質で、元に戻すにはもう一度異性に触れてもらう必要がある。真白を慕っており、すぐにでも東京の真白のそばに行きたいと思っているが、本家からの言いつけを守って、高校卒業までは博多で過ごし、大学進学と同時に上京して真白のそばに行こうと計画している。ツインテールの美少女で、こてこての博多弁をしゃべる。一見人懐こそうに見えて、内心は警戒心のかたまり。真白が好き過ぎて、真白が受け入れた葦原大和に強い敵対心と嫉妬心を抱いている。旅行という名目で、真白と神来社千隼、大和の三人が博多を訪れた際は、真白の気を引くために大和にいたずらしたり、真白にいたずらして大和のせいにしたりした。しかし、自分がどんないたずらをしようと、大和と真白のあいだにゆるぎない信頼が存在することを知り、ますます大和を嫌いになっていく。だが海に落ちた時、大和が迷わず飛び込んで自分を助けようとしてくれたのがきっかけで、大和を認めて受け入れることができた。その後、予定を大幅に繰り上げて、上京することを決意。真白と大和、神来社天満、千隼が暮らす神社での同居を始め、三邦高校に通うことになる。
神来社 心露 (からいと こころ)
神来社瑞貴と神来社沙依の妹で、女子中学生。神来社真白、神来社天満、神来社千隼の従妹。博多にある神来社家の分家で、姉妹と暮らしている。人懐こく明るい性格で、ツインテールをくるくるとまとめたお団子ヘアにしている。葦原大和が、神来社家の秘密について知っていることを確認したのち、思う存分男性の体に触れてみたかったと言いながら大和にせまろうとした。のちに、沙依の上京に合わせて自分も瑞貴と共に上京することを決意。住まいは、真白や大和、天満や千隼が暮らす神社から徒歩10分ほどの所にある部屋を借り、瑞貴と二人暮らしを始めた。
神来社 瑞貴 (からいと みずき)
神来社沙依、神来社心露の姉で、神来社真白、神来社天満、神来社千隼の従妹。博多にある神来社家の分家で、姉妹で暮らしている。冷静沈着な物静かな性格で、ポニーテールの髪型にしている。職業は医者で、博多で葦原大和が熱を出した際には大和のもとを訪れて診察した。のちに、沙依の上京に合わせて自分も心露と共に上京することを決意。住まいは、真白や大和、天満、千隼が暮らす神社から徒歩10分ほどの所にある部屋を借りた。また新天地での職場は、三邦高校に決まって校医として学校に通うことになる。その際、大和が神来社家と深くかかわることで、本家の神来社朝陽に目をつけられることを恐れ、大和にこれ以上かかわることをやめるように忠告した。
神来社 朝陽 (からいと あさひ)
神来社家の主で、一番強い力を受け継いだ女性。昔、神来社真白がトラックに轢かれそうになった男児を助けようとした際、耳と尻尾が出てしまい、神来社家の秘密が漏れそうになった。そのため、かかわった真白をお仕置きしようとしたが、彼女をかばって、神来社千隼が名乗り出たため、千隼の声を出せないように奪って離れに閉じ込めた。その際、真白は自分が悪かったと名乗り出たが、狛犬は私たち神の身代わりだとゆずらず取り合わなかった。
集団・組織
神来社家 (からいとけ)
代々日本の神に仕える動物「神使」の末裔の家系で、高貴な家柄。神の使いとして、神からの言伝を伝えたり、神に代わって土地を守ったりしている。そのため、家系の者の中にはごくまれに神使のなごりを受け継いで生まれる場合があり、その場合は異性から直接素肌に触れられると、耳と尻尾が生えてしまうという特異体質を持つ。天照大神が鎮座する伊勢の本家をはじめ、神が最初に降り立った土地、高千穂のある九州に分家があり、本家や分家以外の場所で暮らす者を含めると、一族は200人を超える。一族の主である神来社朝陽は、頂点に立つ者として一番強い力を受け継いでいる。立派な別荘を所有しているほか、三邦高校や学校の敷地となる土地にも神来社家が深くかかわっている。
書誌情報
兎にも角にも 5巻 講談社〈シリウスKC〉
第1巻
(2020-01-09発行、 978-4065182369)
第2巻
(2020-03-09発行、 978-4065187555)
第3巻
(2020-05-08発行、 978-4065193549)
第4巻
(2020-10-09発行、 978-4065208595)
第5巻
(2021-05-07発行、 978-4065224885)