聖凡人伝

聖凡人伝

安アパートの一室に暮らす平凡な若い男の平凡でない日常を笑いたっぷりに描く。一話完結のギャグで成人向けの笑いが主になっている。松本零士による『男おいどん』『元祖大四畳半大物語』といった「四畳半物」に分類される作品の1つ。「マンガ娯楽」1971年8月19日号から1973年11月15日号にかけて掲載された。

正式名称
聖凡人伝
ふりがな
せいぼんじんでん
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
 
下ネタ
 
その他ギャグ・コメディ
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概要・あらすじ

断崖絶壁で飛び降り自殺を試みようとした出戻始は、同じ目的でやってきた男女数人によって思いとどまらされる。その翌朝、一緒に1泊した彼等は遺書を残して本懐を遂げてしまう。始はやむにやまれず会社に戻るものの、1週間の無断欠勤を理由に即クビになってしまう。無職となった始は自宅のアパート荘の部屋に戻るが、留守の間に首吊りがあったことから、波瀾万丈の暮らしが始まる。

程なくして、アパートの中で首吊りが続発し、借り手がいなくなることを憂慮したバーさんの配慮で、始はアパートに家賃なしで住めることになる。その後も首吊りは続発し、奇想天外な事件も頻発するようになる。アパートは時に全焼や全壊の危機に遭遇しながらも、相変わらず無職のままの始と彼を巡る人々は、飲んで騒いで男女の営みにも励みながら、たくましく快適な日々を過ごしていく。

登場人物・キャラクター

出戻 始 (でもどり はじめ)

チビでがに股の冴えない男。アパート荘で起きるさまざまな事件に巻き込まれる。無職で仕事を探しているが、勤めに出てもわずかの期間でクビにされてしまう。部屋の家具も貰い物ばかりだが、さまざまな事件に関わって大金を手にすることがあり、なぜか酒と食と女性には困らない日々を送っている。事件に遭遇すると酒を飲んで騒いで寝てしまうのが毎度のパターン。 女性に養ってもらうことや、仕事をしない生活を拒む男気のある一面も持っている。

バーさん

アパート荘の大家。本名不明。たびたび首吊りが起きるので、サクラとして出戻始を無料で住まわせている。毒舌家で自虐的に自分のアパートを首吊り荘などとこぼしているが、始のことを一番に心配する実は頼りになる人。奇想天外な事件が起るとアパートの住人や早名礼子と大酒を飲む。始と小久保がバーさんと呼んでいる。 夫に先立たれ、アパートの管理をしている未亡人。

早名 礼子 (はやな れいこ)

美貌と財力を兼ね備え、アパート荘の住人には女の中の女と慕われる隣のマンション「大マンション」のオーナー。出戻始に好意を持っていて、その愛情表現は尋常ではない。酒や食品の差し入れは日常のことで、始の部屋で一夜を共にしたり、警察署に留置された始の身元引受人になったこともある。美貌だけでなく、性格も優しく気が利く人物で、バーさんの酒に付きあうこともある。

小久保 (こくぼ)

アパート荘の出戻始の部屋の隣に引っ越してきた中年男。第二次世界大戦中では自らが大活躍したと言い放ち、当時の話になると俄然口数が多くなる。部屋ではセックスコンサルタントを生業として、忙しい日々を送っている。義理堅い一面もあるようで、始に対する非礼を詫びる時には日本酒を携えて謝りに行った。エロ方面の造詣も深い。

屋台のおでん屋 (やたいのおでんや)

毎日大マンションの前で屋台を開いているおでん屋。事あるごとに奢りといっては出戻始、バーさんや小久保におでんを振る舞う。屋台には強い焼酎を置いてあり、これを客に飲ませて酔っぱらわせて喧嘩に勝つという技を持つ。早名礼子の部屋や大マンションに屋台を引っ張っていくこともある。実は立派な家と車を持っていて奥さんもいるが、本名は不明。

野田さん (のださん)

アパート荘に引っ越してきた住人。出戻始やバーさんと仲良く酒を飲み、始と行動を共にすることもある。夜中になるとしくしくと泣く性癖があり、それを理由に住居を転々としていた。入居してすぐにアパート荘で首を吊る。

ナニカ

出戻始の部屋に住む四つ足の獣。その姿は猫にも見え、狸にも見え、そしてイタチにも見える謎の生き物で、始によれば雄か雌かも区別がつかないらしい。「何かわけのわからない生物」を短くして「ナニカ」と名付けられた。

場所

アパート荘 (あぱーとそう)

バーさんが大家で、出戻始と小久保が住んでいるアパート。4畳半と6畳の部屋があり、風呂はなくトイレは共同。首吊りが多発するので新規の住人が集まらず、住人は少ないが、それでも首吊り事件は絶えず頻繁にパトカーがやってくる。何度も倒壊し、一度は全焼までしているが、その都度同じ形で建て直されている。アパート名も最初はアパート荘だったが、「大連込荘」を経てついには「首吊り荘」の名前が付くようになった。

大マンション (だいまんしょん)

早名礼子がオーナーを務める高級マンション。住人は金持ちの男性の愛人ばかりが住んでいる。礼子の自宅の窓は出戻始の部屋の向かいにあり、そこから荷物を投げ入れることができる。アパート荘の後に建てられた高級新築マンションのはずなのだが、建築上のトラブルが絶えず、屋根が抜けたりボイラーが壊れたりするので、その度に始がトラブルに巻き込まれる。 しかも、アパート荘同様、首吊りや屋上から飛び降りる人が絶えない。

その他キーワード

セックスコンサルタント

小久保の職業。過去の戦争で殺戮の限りを尽くした彼が、今後は世のため人のために尽くすべく開業した。男女の行為の実技を教えることが主で、その手の資料や猥褻な書籍の膨大なコレクションを有する。小久保の部屋の扉には「セックスコンサルタント」の張り紙があり、部屋が使えない時は、出戻始の部屋やアパート荘の庭や大マンションの屋上が仮営業所になる。 仕事は盛況のようで、昼夜を問わず生徒らしき女性が指導を受けている。

英宗 (ひでむね)

出戻始、バーさん、小久保、早名礼子らが集まって飲んでいる日本酒の銘柄。屋台のおでん屋に置いてある日本酒も、時々始のもとに届く酒もすべてこの酒である。一升瓶の精密に描かれたラベルを見ると、新潟県佐渡の酒蔵で作られた銘酒であることが分かる。

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