階段下の猫

階段下の猫

築60年超えの古いアパートが舞台。野良猫の主水さんの視点から、アパートの住人たちの生活や、村田愛と村田舞を取りまく家族模様を描く。それぞれの思惑を交えながらも成長していく猫と、彼の目から見た人間たちが織りなすヒューマンドラマ。全六章のストーリーが展開され、章をまたぐことで時間が大きく進む場合もある。「おとなのねこぱんち」十二から十七にかけて連載された作品。

正式名称
階段下の猫
ふりがな
かいだんしたのねこ
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
関連商品
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あらすじ

第1巻

野良猫の主水さんはアパートのアイドル的な存在で、住人たちから人気を集めている。小学生の村田舞も、主水さんをかわいがっており、帰宅後に面倒を見ることを楽しみの一つとしていた。そんな舞と、姉の村田愛の部屋に、二人の叔母である滝本和子が訪ねてくる。和子に懐いている舞は素直に喜び、彼女と共に公衆浴場で楽しい時間を過ごす中で、和子は舞にいっしょに暮らさないかと申し出る。その場は和子の冗談ということで話は終わったものの、その夜、舞は偶然ながら和子こそが自分たちの実の母親で、お母さんお父さんは和子の両親であることを知ってしまう。和子はあらためて、両親にアパートで暮らすことを打ち明けるが、愛は和子が自分たちを嫌っていると思い込み、彼女に拒絶の意思を伝える。しかし、いっしょに生活する中で徐々にわだかまりも解消し、晴れて和子は村田家の一員として迎えられた。そして、和子が村田家で共に暮らすようになって数か月後、アパートに二匹の子猫がやって来る。早速、舞はアパートに寝床を作ってあげようと考えるが、アパートのルール上、それが難しいことを知る。しかも主水さんまでもが、アパートの住人たちに迷惑を掛けないよう、あえて突き放す素振りを見せる。納得がいかない舞は、ルールを定めた一人である田所に不満を口にするが、のちに彼女がアパートを引っ越した先で二匹を飼うことを知り、申し訳なく思う。また、主水さんも本心では子猫たちを気に掛けており、それを表すかのように三匹で遊びに出かけるのだった。

登場人物・キャラクター

主水さん (もんどさん)

村田家が住むアパートに出入りしているオスの猫。茶色の縞模様が特徴で、額に三日月のような形のあざがある。アパートの正式な飼い猫というわけではなく、野良猫という扱い。主水さん自身もアパートのルールを熟知しており、できる限り彼らに迷惑が掛からないように振る舞っている。雨風をしのぐ際にアパートを利用することはあるが、餌はもらっておらず、自力で調達している。アパートの住人たちからはさいさつをされたり、ドアを開けてアパートの玄関に入れてもらったりするなど、半ばアイドルのような存在。主水さんもアパートの住人たちに懐いており、村田舞と村田愛の姉妹や、高橋翔太とは特になかよしで、よくいっしょに遊んでいる。おとなしい性格で、のんびりと過ごしていることが多い。その一方で、人の気持ちを敏感に感じ取ることができ、アパートの住人が寂しがっているときなどは、元気づけるために鼻をこすりつけたり、膝の上に乗っかろうとしたりする。アパートの住人以外には警戒心をあらわにしており、滝本和子に対してはなかなか心を許さず、誤ってケガをさせてしまったこともある。のちに、彼女もアパートの一員として認識するようになり、次第に懐くようになった。

村田 舞 (むらた まい)

主水さんが出入りしているアパートに住む、小学生の少女。明るく活発な性格で、家族と非常に仲がいい。共同浴場で過ごすことと、主水さんと遊ぶことが大好きで、学校から帰ってきてからの時間を何よりの楽しみとしている。学校で住んでいる場所や家族に関する悪口を言われ、姉の村田愛から心配されているが、村田舞自身はまったく気にしていない。住人たちとの仲も良好で、高橋翔太とは当初折り合いが悪かったが、斎藤たかしからのとりなしや、主水さんとの交流の末に心を許すようになる。また、たかしがひそかに愛に好意を抱いているのを知っており、中学生になってからはその気持ちを応援するような言動を取ることが多くなる。滝本和子を叔母だと認識しており、なかよくしていたが、ある時、和子とお母さんの会話から、和子こそが本当の母親であることを知ってしまう。当初は和子の冗談であると考えるものの、本当であることを確信すると、彼女を母親として受け入れようと努力するようになる。以前、カゼをこじらせて肺炎を発症させてしまったことがある。

村田 愛 (むらた あい)

主水さんが出入りしているアパートに住む小学生の少女で、村田舞の姉。舞とは対照的にまじめな性格で、料理などの家事もそつなくこなすが、どこかドライな一面を見せることも多い。ただし、舞をはじめとした家族との仲は基本的に良好で、主水さんに対して自作の寝床を提供するなど、内面は非常に優しい。また、家族の中では最も機転がきき、空気を読んで行動することが多く、感情的な舞をそれとなくなだめている。舞と同様に、アパートに住んでいることや家族について悪口を言われることがあり、村田愛本人は聞き流しているものの、舞が気にしていないか心配している。滝本和子が実の母親であることを知っているが、彼女に半ば捨てられたと思っており、彼女に対して頑なな態度を取っていた。そのため、和子からも自分が嫌われていると思われ、互いに歩み寄れずにいたが、舞が和子に懐いていることや、お母さんやお父さんの言葉で、次第に心を開くようになる。高橋翔太からちょっかいを受けることが多かったために、彼を敬遠している。実は高橋から好意を抱かれており、ちょっかいを掛けられていたのも好意の裏返しだったが、それに気づくことはなかった。

お母さん (おかあさん)

主水さんが出入りしているアパートに住む女性。村田舞や村田愛からは「お母さん」と呼ばれており、心優しく穏やかな性格で、家族たちからも慕われている。しかし、娘の舞や愛の母親としては年を取りすぎていることを若干気にしている。実際は滝本和子の母親で、舞と愛の祖母にあたるが、舞は長らくそのことを知らずにいた。和子のことを気に掛けており、彼女が娘たちといっしょに暮らしたい意思をあらわにした際には、その実現のために尽力した。また、彼女が仕事と家事のために無理をしていることを心配している。一方で娘たちを思うあまりに、高橋翔太となかよくしているのを嫉妬したり、妄想にふけったりする様子を目の当たりにした時は、さすがに呆れたような素振りを見せる。

お父さん (おとうさん)

主水さんが出入りしているアパートに住む男性。村田舞や村田愛からは「お父さん」と呼ばれているが、実際は滝本和子の父親で舞たちの祖父にあたる。愛同様に冷静で理知的な性格で、主水さんの様子を見ただけで彼の望んでいることを把握したり、娘のために尽力する和子を心配する様子を見せたりするなど、情にも厚い一面を見せる。また、和子が舞たちといっしょに暮らしたいと言い出した際も、お母さんといっしょに賛同し、そのための準備に尽力した。

滝本 和子 (たきもと かずこ)

村田家の親族で、表向きは彼女たちの叔母ということになっている。しかし実際は、村田舞と村田愛の母親で彼女たちに強い愛情を抱いている。かつて彼氏に借金の肩代わりをさせられたほか、舞と愛の父親ともうまくいかずに終わるなど、男を見る目が致命的なまでにない。だが、それでも娘たちのそばにいることを望み、実の両親であるお父さん、お母さんの助力を得ながら、懐いていた舞に自分が本当の母親であることを受け入れてもらい、お互いに距離を置いていた愛との和解も果たす。それからはアパートで家族と共に暮らすようになり、ほかの住人たちとも交流を深めていく。主水さんからは、当初はよそ者として警戒されており、誤ってケガを負うこともあったが、娘たちの助けもあって徐々に懐かれるようになった。アパートに引っ越してからは、仕事に打ち込みながら娘たちの朝食やお弁当を用意するなど、一生懸命になるあまり、無理をしすぎていないかと両親に心配されるようになる。のちに新しい男性と交際し、結婚も視野に入れるようになるが、愛と舞のために破談となった。

斎藤 たかし (さいとう たかし)

カメラマンを生業としている青年。主水さんが出入りしているアパートの一室を借りて、写真を現像するための暗室として使用している。まじめな性格で人当たりがよく、高橋翔太や村田愛など、子供たちからも慕われている。特に高橋からは尊敬されており、斎藤たかし自身も、彼を暗室に招いてカメラに興味を持つきっかけをつくったり、村田姉妹との関係に悩む彼にアドバイスを送ったりするなど、兄弟のように接している。滝本和子とは幼なじみの間柄で、彼女がアパートに引っ越してきてからは、相談に乗ったりしている。和子がかつて男性関係で苦労したことは知らず、村田舞や愛と暮らしたい思いでアパートを訪れた際に、彼女の葛藤を思い、同情を示すこともあった。舞からは、和子と付き合っているんじゃないかと期待されていたが、実際は単なる友人関係だった。のちに共美と付き合うようになり、舞が中学に上がったあとに結婚の報告を行った。

高橋 翔太 (たかはし しょうた)

主水さんが出入りしているアパートに住む、小学生の少年。斎藤たかしを兄のように慕っており、彼がカメラマンのために高橋翔太自身もカメラを趣味としている。小学生の頃は気難しいところがあり、村田舞や村田愛とも折り合いが悪く、悪口を言って彼女たちを怒らせたこともあった。しかし、主水さんには親切に接するなど優しい性格で、斎藤から素直になるようにアドバイスを受けたことで、次第に村田姉妹との距離も縮まった。実は愛に好意を抱いており、意地悪をしてしまうのは彼女への照れ隠しという一面もある。高校生になってからは、かつての気難しい性格もすっかり鳴りを潜め、アパートの建て替えが決まった際に、渋る舞を説得するなど、斎藤のようなおおらかな人柄に変わる。しかし、愛に対する好意は変わっておらず、舞からは応援されている。

田所 (たどころ)

主水さんが出入りしているアパートに住む女性。アパートに集まる猫たちにエサをあげないというルールを重視しており、二匹の子猫が現れた際は、村田舞に対してルールを守るように注意した。このことから、舞からは田所が猫を嫌っていると思われていた。しかし実際は猫が大好きで、かつて野良猫を放っておけずにエサをあげていたところ、アパートの付近に多くの猫が捨てられるようになり、仕方なくルールを定めた。二匹の子猫のことも内心では心配しており、息子の嫁である田所久恵の勧めによってアパートから引っ越すことが決まると、自分で飼うことを決意する。また、この事実を知った舞から謝罪を受けた。

田所 久恵 (たどころ ひさえ)

主水さんが出入りしているアパートに住む女性。田所の息子の嫁で、同年代の滝本和子とは、彼女がアパートに引っ越してきたことで親しくなる。和子が無理をした時にはお母さんといっしょになだめるなど、しっかりとした性格の持ち主。田所の脚が悪くなったことを懸念し、アパートから低層の家に引っ越すことを提案した。これによって暮らしていた部屋を引っ越すことになり、村田舞と村田愛といっしょに暮らせるよう、和子に自分の部屋をゆずることを決める。

子猫 (こねこ)

主水さんが出入りしているアパートの近くに捨てられていた、二匹の子猫。いずれも真っ黒な体毛に覆われており、人懐っこい性格をしている。主水さんを慕うようになり、頻繁に彼の後ろをついて回るが、アパートへの迷惑を懸念した主水さんから、一度は突き放されてしまう。村田舞から気に入られるが、アパートのルールでエサをあげてはいけないため、彼女は葛藤することとなる。しかし、自らの手でエサを取ってくるなど、たくましいところを見せたことで、彼女の不安はある程度解消した。のちに、田所がアパートから引っ越すことが決まると、彼女に引き取られていった。

大桑 (おおくわ)

主水さんが出入りしているアパートに住む男性。アパートの庭を管理しており、さまざまな種類の種を植えたり、花壇の手入れをしたりしている。時折、花壇に侵入する主水さんを快く思っておらず、彼が花を踏み荒らした際には、怒ってホウキを振り上げたこともある。そのため、滝本和子からは粗雑な人だと思われていたが、斎藤たかしからはまじめな人柄を評価されている。主水さんのことも嫌っているわけではなく、彼が花壇に入らなくなってからは、素直でないながらも好意的に接するようになる。のちにアパートの建て替えが決まった際には、手塩にかけて管理していた庭がなくなってしまうことに寂しさを感じていた。

和子の上司 (かずこのじょうし)

滝本和子と同じ会社で働く、彼女の上司にあたる女性。厳しいながら気配りのできる性格で、仕事でミスをした和子を注意しつつも、彼女を取りまく環境に理解を示す言動を取った。さらに、和子が帰宅する際にお菓子の入った袋を渡し、村田舞や村田愛といっしょに食べるように勧めた。

共美 (ともみ)

斎藤たかしと交際している女性。明るく朗らかな性格で、村田舞からもかわいいと評されている。共美自身も、舞や村田愛のことを斎藤から聞いており、彼女たちを一目見るなりなかよくなる。二人からも斎藤とお似合いだと褒められ、付き合うようになる。

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