概要・あらすじ
月の女王ディアナ・ソレルが発した地球帰還作戦に志願し、月から地球へ先遣隊としてやってきたロラン・セアック。ロランは、そこで地球人のキエル・ハイムや、その妹ソシエ・ハイムと知り合い、彼女たちの世話で鉱山で働くようになる。それから2年の月日が経った頃、ディアナの私設軍隊であるディアナ・カウンターは、地球への平和的帰還を果たすため地球への降下作戦を開始。
地球の軍隊であるミリシャとの戦闘が巻き起こる中、戦火に巻き込まれたロランは、ホワイトドールと呼ばれ祭られていた御神像が、黒歴史の時代に作られた人型機動兵器モビルスーツの一種であることに気づく。ロランはホワイトドールへと乗り込み、地球と月の間の平和のため戦い始める。
登場人物・キャラクター
ロラン・セアック (ろらんせあっく)
肩までの長さの銀色の髪に緑の瞳を持つ、少女のような風貌のムーンレィスの少年。ディアナの地球帰還作戦の先遣隊として地球に降下し、運転手としてハイム家に仕える。地球に降下したディアナ・カウンターのモビルスーツ襲撃の際、動きだした∀ガンダムに乗り込み、同胞であるディアナ・カウンターと戦うことになる。 ムーンレィスの前に姿を現すときは、女性パイロット・ローラに女装し、素性を隠している。ブリキ金魚のメリーを常に持ち歩いており、キエルとソシエと出会い、ハイム家に保護されるきっかけにもなった。
ディアナ・ソレル (でぃあなそれる)
人工睡眠を繰り返しながら月を統治している女王。豊かな金髪に青い瞳を持ち、正義感、責任感が強い。地球とは平和的な関係を望んでいる穏健な人物だが、地球帰還作戦を実行し、それまで接触することがなかった地球と月の間に戦争が起きるきっかけを作った。私設軍隊であるディアナ・カウンターを率いているが、周囲には反対勢力も多く、心を許せる人間は親衛隊のハリーのみ。 ハイム家のキエルと容姿・声が瓜二つで、近しい人間でも見分けるのが難しいほど。ちょっとした悪戯心で始めた、お互いに入れ替わる遊びから元に戻るタイミングを失ってしまい、地球と月、それぞれ逆の立場の人間を演じることになる。
キエル・ハイム (きえるはいむ)
ハイム家の長女でソシエの姉。裕福な家系で育ちながらも自立心が高く、故郷を離れグエンの秘書官を務めている。ディアナと瓜二つの容姿をもち、悪戯心で始めた入れ替わりから元に戻れなくなった後は、ディアナとして女王の役割を演じることになる。唯一事情を知る親衛隊のハリーに絶対的な信頼と想いを寄せているが、ハリーが守るのはあくまでディアナであり、自分自身ではないと思っている。
ソシエ・ハイム (そしえはいむ)
ハイム家の次女でキエルの妹。キエルと共に、月から降りてきたロランと出会った最初の地球人。気が強いお転婆な性格で、よく使用人であるロランを困らせていた。最初のディアナ・カウンターによる襲撃で父を失い、以後はムーンレィスへの復讐を誓い、ミリシャへと入隊。マウンテンサイクルから発掘された機械人形カプルに乗り戦闘にも参加する。 ロランに対してほのかな好意を寄せているが、彼がムーンレィスであることには気づいていない。
ギム・ギンガナム (ぎむぎんがなむ)
月の武家であるギンガナム家の出身の男性。私設軍隊であるギンガナム艦隊を率い、自らモビルスーツターンXに登場して戦闘にも参加する。ギンガナム家はソレル家を守る武の役割を果たす家系だが、ディアナによって地球帰還作戦から外されたことを忠義への裏切りと捉え、ついには対立することになる。 軍隊でありながら2500年もの間、実戦を行えなかったため、戦いを心から楽しんでおり、兄弟機である∀ガンダムとの決着に固執する。ただし戦闘一辺倒という訳ではなく、ディアナや反抗的な地球の勢力を叩くため、グエンと手を結んで一大勢力を築くなど、優れた戦略家としての一面も持ち合わせている。
グエン・サード・ラインフォード (ぐえんさーどらいんふぉーど)
地球の都市の一つであるイングレッサを治めるラインフォード家の御曹司。地球の産業革命を目指す野心家で、地球の発展のために優れた技術をもつムーンレィスとの交信を行っていた。地球と月の間で戦争が勃発してからは、地球側の軍隊ミリシャの代表としてディアナ・カウンターと戦う。だが月の神殿で目の当たりにした黒歴史の技術に魅せられ、ギンガナムと手を結んで地球の支配を目論む。 男色家の気があり、ロランを女装させ、常にローラと呼び続けていた。
ハリー・オード (はりーおーど)
ディアナ親衛隊の隊長を務める青年。階級は大尉。金色のモビルスーツスモーに搭乗し、非常に高い操縦技能を誇る。親衛隊長としてもっともディアナから信頼を寄せられる人物でもあり、自身のディアナへの忠誠心も高い。ディアナとキエルが入れ替わった際にも、すぐにその正体を見抜き、キエルの立場を理解する唯一の存在としてその心を支えた。 目元全てを覆う形状のサングラスを常にかけており、私服のファッションセンスも非常に独特。
ギャバン・グーニー (ぎゃばんぐーにー)
ルジャーナ・ミリシャの機械人形部隊の隊長を務める男性。機械人形ボルジャーノンに搭乗する。ソシエに興味をもっているようで、ロランとキエル(正体はディアナ)の関係に嫉妬し単独行動をとっていたソシエを気にかける場面も見られた。マウンテンサイクルに埋まった核弾頭を発見した際、隊長としてロランに代わってもっとも危険な運搬役を買って出るが、核爆発に巻き込まれて戦死する。
コレン・ナンダー (これんなんだー)
ディアナ・カウンターに所属する軍人で、階級は軍曹。ディアナへの反乱を企てた兵士を惨殺した罪で冷凍刑に処されていたが、ディアナと折り合いの悪いアグリッパ・メンテナーによって地球へと送り込まれる。ガンダムという存在に対して異常ともいえる執着を見せ、∀ガンダムを執拗につけ狙う。 ロランに敗れた後は、僧侶のようないで立ちで各地をさすらい、人格も穏やかなものとなっていた。ディアナに対する忠誠心は高く、ギンガナムによる地球侵攻の際には、ミリシャの一員としてディアナのために戦闘に加わっている。
集団・組織
ミリシャ
『∀ガンダム』に登場する組織。アメリア大陸の各領地が所有する軍隊で、作中ではイングレッサとルジャーナのミリシャが登場している。ムーンレィスに対抗する地球側唯一の組織だが、主な戦力は走行車や複葉機と前時代的で、技術力では大きく水を空けられている。そのため、ディアナ・カウンターとの戦争が始まった後は、マウンテンサイクルの発掘を積極的に進め、発見された機械人形や戦艦を修復して主な戦力として運用している。
ディアナ・カウンター (でぃあなかうんたー)
『∀ガンダム』に登場する組織。地球帰還作戦に際し、強行的な手段を主張するギンガナム艦隊に代わり設立されたディアナ・ソレルの私設軍隊。隊員のディアナへの忠誠心は高かったが、地球での戦争の長期化により食糧難へと陥り、ディアナへの不満が噴出。フィル・アッカマンによるクーデターで、ディアナの指揮下から離れて行動するようになる。 ギンガナムによる地球侵攻の際にディアナに助けられたことで、再び指揮下へと入る。
その他キーワード
∀ガンダム (たーんえーがんだむ)
『∀ガンダム』に登場する架空の兵器。パイロットはロラン・セアック。機械人形の一種だが、マウンテンサイクルから発掘されたものではなく、ホワイトドールと呼ばれ石造の姿で祭られていた。その正体は、月光蝶と呼ばれるナノマシン散布システムによって、かつての地球文明すべてを滅ぼしたとされる恐るべき兵器。長きにわたって稼働していなかったため、当初は本来の性能が発揮しきれなかったが、後から発掘されたビームライフル等の武装を駆使し、ミリシャの主戦力としてディアナ・カウンターの機械人形と互角以上に戦った。
ターンX (たーんえっくす)
『∀ガンダム』に登場する架空の兵器。月のマウンテンサイクルから発掘されたモビルスーツ。パイロットはギム・ギンガナム。∀ガンダムと同様の、ナノマシンによる復元、月光蝶システムを搭載した兄弟機ともいえる存在で、ギンガナムはターンXを兄として捉えている。身体中を自在に分離して操作することができ、分離したパーツで全方位から攻撃するオールレンジ攻撃を得意とし、Iフィールドによるビーム兵器への防御など攻防ともに隙がない性能を誇る。 最後は∀ガンダムと相打ちとなり、互いの月光蝶システムによって眠りに就いた。
ムーンレィス
『∀ガンダム』に登場する用語。女王ディアナ・ソレルによって統治された、月面に住む人々を指す。彼らは黒歴史と呼ばれるテクノロジーをもちながら、滅亡する地球から脱出し、月へと移り住んだ。故郷である地球への思いを馳せる人々が多い一方で、優れたテクノロジーを持つが故に、地球の人々を蛮族と称し、下等な存在であると見下す傾向がある。 政治を司るソレル家と、武門を司るギンガナム家、眠りを守るメンテナー家の3つの家系によって治められていたが、ディアナが発案した地球帰還作戦をきっかけに、その力関係は崩れ去ることになる。
黒歴史 (くろれきし)
『∀ガンダム』に登場する用語。過去の宇宙文明の時代から幾度となく繰り返されてきた、人類間の戦争の歴史の総称。∀ガンダムの月光蝶により地球の文明は壊滅的打撃を受けたことで、黒歴史は終わりを迎える。その他の『機動戦士ガンダム』シリーズで描かれた物語が全て内抱されている。月の歴史を守るアグリッパ家によって冬の神殿にて厳重に管理されており、月の住人であっても限られた人間しか知ることができない。 その中には月光蝶によって失われた数々のテクノロジーが含まれており、その力に魅せられたグエンは、ギンガナムと通じて地球統治を目論むこととなる。
モビルスーツ
『∀ガンダム』に登場する用語。人型の機動兵器の地球側からの総称。地球人からは機械人形とも呼ばれる、かつての宇宙文明の戦争で使用された兵器。ミリシャが使用する兵器とは比較にならないほど高性能で、地球と月の技術格差を見せつけることとなった。ディアナ・カウンターに対抗するべく、地球のマウンテンサイクルから発掘された多くの機体が、ミリシャの貴重な戦力として運用されることとなる。 また自ら開発・生産を行うことができるムーンレィス側の中でも、ターンXは唯一の例外として月のマウンテンサイクルから発掘され使用されている。
クレジット
- 原作
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矢立肇 , 富野由悠季