世界観
本作『ぼくは地球と歌う 「ぼく地球」次世代編Ⅱ』では、前作『ボクを包む月の光 -ぼく地球(タマ)次世代編-』から4年後の世界が描かれている。小林蓮の両親である小林輪、小林亜梨子をはじめとする月基地組の七人は前世が異星人であり、「サーチェス」と称されるESPを使用する事ができる。また異星人の前世を持つ登場人物達は、自らの前世を夢に見る、または前世の自身と精神世界で会話する事でかつての記憶を取り戻す事ができるなど、独自の設定が盛り込まれている。
あらすじ
第1巻
生と死の境から生還し、成長した小林蓮は小学6年生になっていた。キチェ=サージャリアンとしての能力が日に日に強まっていく中で、幼なじみであり、ほのかな恋心を寄せる薬師丸日路子とのあいだに精神的な溝が深まっていく事に苦悩する蓮。そんな折、父親である小林輪の夢の中に、妻、小林亜梨子の前世である木蓮の姿をした偽物が現れる。大人達が波乱の予感を覚える中、蓮は妹の小林地球子から、現在が「かつて観測していた平和な未来」でない事を知らされる。
第2巻
小林輪達の月基地組の会合の場に、裏ヘンルーカが現れた。自身の目的を他者のESP摂取による食事だと明かした裏ヘンルーカは、輪とESPでのバトルを開始する。その後、小林亜梨子に接触した事でなんらかのショック状態に陥って昏睡したヘンルーカの肉体は、小林家に保護される事となった。かつて夢の中でヘンルーカと出会い、彼女に対して好感を抱いていた小林蓮は、大人達が戦ったというヘンルーカの話に違和感と疑問を覚える。
第3巻
小林蓮はオイから、ヘンルーカの精神が肉体から追い出されている状況と、裏ヘンルーカの存在を教えられ、助力を求められる。さらにその最中、自分の前世であるロジオンからキサナドの一つ黒聖歌と、それに関連するロジオンの大罪について説かれそうになるが、蓮は咄嗟にそれを拒絶して逃げ出す。その後、蓮はアスワドの幻影に取り憑かれてしまうが、ヘンルーカに助けられて、なんとか幻想を振り切る事に成功するのだった。だが次に蓮が目覚めた時、彼は自分が自宅付近から遠く離れた富士山近くにある神社にいる事に気づく。
関連作品
本作『ぼくは地球と歌う 「ぼく地球」次世代編Ⅱ』は、小林亜梨子(当時は坂口亜梨子)と小林輪が主人公を務める『ぼくの地球を守って』の続編シリーズにして、小林蓮の小学2年生時の物語『ボクを包む月の光 -ぼく地球次世代編-』の直接的な続編にあたる。作中には『ぼくの地球を守って』に登場した月基地などの重要施設が頻繁に絡むと共に、前作の回想も多く描かれており、これまでのシリーズのストーリーに深くかかわる。なお、薬師丸未来路は日渡早紀の別作品である『アクマくんにお願い』『ブラック・ミニオン』『魔法★BITTER』の3作品からなる「アクマくん」シリーズの登場人物であり、未来路に加え、パメラやソルなどのEPIA所属メンバーは、同じく日渡早紀の別作品『記憶鮮明』にも登場している。
登場人物・キャラクター
小林 蓮 (こばやし れん)
小学6年生の男子。小林輪と小林亜梨子の長男で、小林地球子の兄。4年前に生と死の境から生還して以降、それまで見えていた紫苑と木蓮を目視する事ができなくなった。またその際に、自身の前世が木蓮の父親、ロジオンである事を知った。キチェ=サージャリアンであり、サイコメトリーのESPを持っている。 脳内に膨大な量のキサナドを保管しており、それらを管理するロジオンが日本語に変換する事で、歌う事が可能となる。また、亜梨子と木蓮、輪と紫苑の精神がブレンドされている際の割合を直感で判定する事ができる。地球子には「歴代最高のキチェス」と評されており、亜梨子に聞こえない歌や音まで聞く事ができる。しかしこれが原因で幼なじみの薬師丸日路子との関係は溝が深まっており、その事に苦悩している。 ヘンルーカとは夢の中で初めて対面し、「いっしょにいるだけで幸せになれちゃうような子」と好意を抱いている。錦織杏からは「れんれん」、オイからは「きてさん」と呼ばれている。
小林 地球子 (こばやし ちまこ)
小林輪と小林亜梨子の長女で、小林蓮の妹。年齢は3歳。他人のESPを増幅させる事ができる能力を持っている。生まれる前から意識を持っており、蓮のキチェ=サージャリアンとしての才能が歴代で最も強い事なども理解している。普段はごく普通の子供として振る舞っているが、蓮の能力を大人達に理解させようとする時などは、大人びた話し方や卓越したパソコン操作を行ってみせる。 亜梨子の胎内にいた頃は未来を覗く能力を持っていたが、生まれ落ちてからはその能力が使用できず、自分が見てきた未来から変更されている事に不安を覚えている。錦織杏とは大の仲よし。多くの場合、「ちま」と呼ばれている。ロジオンによって、前世がアスワドである事が明かされた。
小林 輪 (こばやし りん)
小林亜梨子の夫で、小林蓮、小林地球子の父親。年齢は28歳で、月基地組の一人。作曲家として生計を立てている。紫苑を前世に持っており、生と死の境を経て現在は同化を進めている状態。互いの個性が強いため、ブレンド率を上げる事はできても完全な同化には至っておらず、別々の人格として存在している。ヘンルーカには初対面時にいい印象を持っていなかったが、オイがヘンルーカに憑依して語った、ヘンルーカに憑依している通称裏ヘンルーカの存在を知って以降、対応が軟化しつつある。 妻の亜梨子には頭が上がらない。蓮の行動に関しては、過去の自分のほうがよりやんちゃをしていた自覚があるため許容している。子供達からは「お父さん」と呼ばれている。
小林 亜梨子 (こばやし ありす)
小林輪の妻で、小林蓮、小林地球子の母親。年齢は37歳で、月基地組の一人。歌手として活動しており、輪が作曲した曲をリリースする事も多い。木蓮を前世に持っており、亜梨子自身も地球史上初めてのキチェ=サージャリアン。木蓮とは生と死の境を経て、現在は同化を進めている状態だが、互いの個性が強いため、ブレンド率を上げる事はできても完全な同化には至っておらず、別々の人格として存在している。 他人の感情に共感しやすい性格で、輪の意見を押しのけて子供達に賛同する事が多い。ヘンルーカの居候も小林亜梨子が許可を出した。子供達からは「お母さん」、小椋迅八からは旧姓のまま「坂口さん」と呼ばれている。
薬師丸 日路子 (やくしまる かちこ)
薬師丸未来路の精子とパメラの卵子を用いて生まれた娘。小林蓮の幼なじみ。京都で育てられたため、関西弁で話す。未来路がEPIAの職務で留守がちなため、小林家に居候している。畠翼に想いを寄せている反面、蓮に対しても強い庇護欲を持っている。本来は未来路をEPIAから退職させるために使われるはずだったピラミッドが、理由も告げられずに使用禁止を宣告された事に腹を立て、橋の上から川に捨てた。 生と死の境以降、蓮が遠くなったと感じており、焦りから蓮に対してキツく当たる事が多くなった。親しい人間からは「カチコ」と呼ばれている。前世がマージである事が示唆されている。
木蓮 (もくれん)
豊かに波打つ長い金髪を持った女性。小林亜梨子の前世で、かつて月基地から地球を監視していた異星人。ロジオンとマージのあいだに生まれたキチェ=サージャリアン。亜梨子とは、生と死の境を経て、現在は同化を進めている状態だが、互いの個性が強いため、ブレンド率を上げる事はできても完全な同化には至っておらず、別々の人格として存在している。 小林蓮を我が子同然に可愛がっており、蓮から視認する事ができなくなった現在でも、有事の際には力を貸している。蓮からは「美女」または「守護天使」と呼ばれており、本名は「コウ=ハス=セイ=テ=モク=レン」という。
紫苑 (しおん)
浅黒い肌と鋭利な眼差しを持った男性。小林輪の前世で、かつて月基地から地球を監視していた異星人。輪の人生を振り回した罪悪感を持っていたが、現在は解消しており、魂が同一でありながら友人のような関係になっている。輪とは、生と死の境を経て、現在は同化を進めている状態だが、互いの個性が強いため、ブレンド率を上げる事はできても完全な同化には至っておらず、別々の人格として存在している。 小林蓮を我が子同然に可愛がっており、蓮から視認する事ができなくなった現在においても、有事の際には力を貸している。蓮からは「イケメン」または「守護天使」と呼ばれており、本名は「ザイ=テス=シ=オン」という。
ロジオン
木蓮の父親だったキチェ=サージャリアン。小林蓮の前世で、豊かに波打つ金髪と、つねに着用している黒い外套が特徴。蓮の脳内にもともと存在している大量のキサナドの監理人として、蓮といつでも会話する事ができる。異星の言葉で記されたキサナドを、すべて日本語に変換して蓮に伝えている。心優しく繊細で、感動、悲哀、どちらの意味でも非常に泣き虫な性格。 生前に「大罪を犯した」と語っており、蓮が前世の夢を見るようになってから非常に後悔している。また、その大罪の一因にはアスワドがかかわっている事が示唆されている。マージからは「ロージャ」という愛称で呼ばれている。
マージ
ロジオンの妻で、木蓮の母親だったキチェ=サージャリアン。繊細なロジオンをアスワドが利用していると考えていた。またキチェ=サージャリアンでいるにはロジオンは優しすぎると考え、ロジオンの心を守るために二人で、純潔と共にキチェ=サージャリアンの徴である「キチェ」を捨て、楽園から抜け出る事を提案した。
アスワド
「リム=リアン」と呼ばれる役職の男性。かつてロジオンの身の回りの世話をしていた。褐色の肌が特徴で、マージからはロジオンを利用していると考えられていた。ロジオンによって、小林地球子の前世である事が明かされた。
ヘンルーカ
EPIAでずっと眠り続けていたとされる少女。ランクはP級とされる。1年前に眠りから目覚め、記憶形成もあやふやな状態だったが、三か月前にピラミッドを盗んで脱走したとされる。裏ヘンルーカに体をあやつられ、小林輪と派手なバトルを繰り広げたが、小林亜梨子によって小林家に保護された。以降はオイがヘンルーカに憑依し、小林蓮達にヘンルーカ本人の状況を説明している。 オイいわく、裏ヘンルーカによって意識を体から引き離されてしまっているが、裏ヘンルーカの目論みを阻止しようと、オイの協力を得て尽力している。輪、もしくは亜梨子が近辺に存在する事で、裏ヘンルーカの覚醒を抑制できるとされている。
裏ヘンルーカ (うらへんるーか)
オイが名付けた、ヘンルーカの体を使用している謎の人格。ESPを摂取する事ができ、地球を欲しているとされる。三か月前、ソルやティモシーの能力をコピーし、EPIAを脱出、ピラミッドを盗んだ。東京タワーにある装置を使用しようとしており、月基地組の夢の中に木蓮の姿で現れ、全員のキィ・ワードを確認しようとしていた。 しかし「パスワード」と発言したため、小林輪に木蓮ではない事を見抜かれている。月基地組の会合には輪の姿で潜入していたが、本物の輪と鉢合わせし、ESPを用いて派手なバトルを繰り広げた。輪の事を「大嫌いなキサマ」と言い放っており、地球外の存在である事も自称して紫苑に固執している事から、紫苑の生前の関係者である事が示唆されている。
オイ
111年間生きている猫又。すず子が宮司を務める富士山近くにある神社の敷地内に棲む。歴代の宮司には「託宣をもたらす不思議な猫」として扱われてきた。ヘンルーカと深くかかわりがある事が示唆されている。二足歩行する、50音表を手で差して言葉を伝える、絵を描く、大きさを自由に変える事などができる。「きすなと(キサナド)」を詠唱できる「きてさん(キチェ=サージャリアン)」を待ち続けていた。 夢の中では流暢に話をするが、現実では固有名詞を順不同で覚えていたり、カタカナをうまく発音できない。
すず子 (すずこ)
富士山近くにある神社に常勤している女性宮司。中年に見えるが、年齢は不明。ふくよかで、頬にえくぼがある。のんびりとした性格で、小林蓮が突然神社に現れた際にも慌てず、「まれびと」として温かく迎え入れた。オイの特殊性も熟知しており、「きてさん(キチェ=サージャリアン)」を待ち続けている事も知っている。
マリ
駆け出しの民俗学者を自称する女性。オイの特殊性に魅せられ、惚れ込んでいると話しており、富士山近くにある神社が含まれる村に引っ越し、神社にも通い詰めている。しかし何者かに調査を依頼されている様子があり、小林蓮が神社に現れ、オイの待ち続けていた「きてさん(キチェ=サージャリアン)」だと知ると、密かにどこかへ連絡を取っていた。
アリス=マリー=アース
ご神体の女性。すず子が宮司を務める富士山近くにある神社の奥にある禁足地に、別宮の社を建て祀られている。オイは「遠い宇宙から地球に飛来した、ヘンルーカの母親」と語っているが詳細は不明。巨大な神木の地下で根と同化しており、皮膚も木肌と同質になっているが、神木と共に生きているといわれている。
錦織 一成 (にしきおり いっせい)
錦織桜の夫で、錦織杏の父親。年齢は37歳。前世は「槐」と呼ばれていた女性で、月基地組の一人。小椋迅八とは学生時代からの親友。前世である槐が迅八の前世、「玉蘭」に想いを寄せていた事もあり、家族同様、迅八と玉蘭の事も守ると誓っている。また前世である槐の本名は「ト=フェコ=ロール=エン=ジュ」という。
錦織 桜 (にしきおり さくら)
錦織一成の妻で、錦織杏の母親。年齢は37歳。前世は「繻子蘭」と呼ばれていた女性で、月基地組の一人。歯に衣着せぬ物言いがきつく感じられるが、心配性なところがある。同じ月基地組の小椋迅八、笠間春彦、土橋大介が未だ独身である事を心配している。また前世である繻子蘭の本名は「ロキ=シ=アノール=シュス=ラン」という。
錦織 杏 (にしきおり あんず)
錦織一成と錦織桜の長女。年齢は3歳。月基地組が会合を開くたびに同席しているため、小林蓮、小林地球子とは非常に仲がよく、幼なじみとして接している。
小椋 迅八 (おぐら じんぱち)
考古学者の男性。年齢は37歳。前世は「玉蘭」と呼ばれていた人物で、月基地組の一人。夢の中で裏ヘンルーカが木蓮に扮してキィ・ワードを聞き出してきた件を、小林輪の仕業ではないかと疑っていた。また前世である玉蘭の本名は「オ=アンティ=シャ=ギョク=ラン」という。
笠間 春彦 (かさま はるひこ)
褐色肌の絵本作家の男性。年齢は37歳。前世は「秋海棠」と呼ばれており、月基地組の一人。また前世である秋海棠の本名は「レム=サイ=ネ=シウ=カイドウ」という。
土橋 大介 (どばし だいすけ)
言語学者の男性。年齢は37歳。前世は「柊」と呼ばれており、月基地組の一人にして、月基地に滞在していたメンバーの最高責任者。夢の中で裏ヘンルーカが木蓮に扮してキィ・ワードを聞き出してきた件を、小林輪の仕業ではないかと疑っていた。また前世である柊の本名は「オク=タコ=サノール=ヒイ=ラギ」という。
薬師丸 未来路 (やくしまる みくろ)
関西弁を話す男性。薬師丸日路子の父親。EPIAに所属しており、最高ランクの超能力者として多忙な日々を送っている。能力が枯れるまで使い潰される事がわかっているEPIAを辞め、日路子と生活するためにピラミッドを使用する予定だったが、小林輪から使用禁止の宣告と謝罪を受けて断念した。日路子からは「お父ちゃん」と呼ばれている。
パメラ
EPIAに務めている超能力者の女性。薬師丸日路子の卵子提供者で、日路子からは「お母ちゃん」と呼ばれている。薬師丸未来路に好意を抱いていたが、自分を省みず、必要ともしてくれない寂しさに耐えられず、ソルと結婚した。
ソル
EPIAに務めている超能力者の男性。EXBとして生まれた。ランクはP級とされる。パメラの夫だが、さまざまな女性のもとを渡り歩いている。特殊な出生ため、同じEXBであるティモシーやヘンルーカを家族として大切にしている。他人の網膜に幻影を焼きつけて、他人であるように見せかける「影武者」と呼ばれる能力を使用でき、ヘンルーカが脱走後、この能力を用いてヘンルーカのフリをし続けていた。 薬師丸日路子からは「ばかちん」と呼ばれている。
ティモシー
EPIAに務めている超能力者の男性。EXBとして生まれた。ランクはP級とされる。見た目は子供のようだが、22歳の男性。特殊な出生ため、同じEXBであるソルやヘンルーカを家族として大切にしている。ESPを匂いとして嗅ぎとる事ができ、インターネット上でメールを交わした相手の匂いまで記憶できる。ソルがヘンルーカの変装をしている事も、匂いですぐに見破る事ができた。
イーサン
EPIAに務めている超能力者の男性。無精髭にくわえタバコ、くたびれた雰囲気が特徴。ヘンルーカが脱走後、上層部からの指示を受け、ソルがヘンルーカの代わりを務めているのを支援していた。
ラーレ
EPIAに所属している超能力者の少年。能力が発展途中のため、仕事をしている様子はない。ソルを敬愛しており、ティモシーからヘンルーカの事を聞いた際にも非常に興味を持っていた。以前は日本に住んでおり、小林蓮に精神的に助けられてから交流を続けている。
畠 翼 (はたけ つばさ)
小林蓮の親友。薬師丸日路子から想いを寄せられている事に気づいているが、気づかない振りをしている。友人達からは「カプつん」と呼ばれている。
集団・組織
月基地組 (つききちぐみ)
かつて月基地から地球を観察していた異星人を前世に持つ七人の総称。現在もたびたび会合を開いており、小林蓮ら子供達の成長を見守っている。また土橋大介と小椋迅八は、小林亜梨子を除いたメンバー全員の夢の中で、裏ヘンルーカが木蓮に扮してキィ・ワードを聞き出してきた件を、小林輪の仕業ではないかと疑い、男性メンバーだけでの会合を開いた。
EPIA
アメリカのボストンに存在する組織。薬師丸未来路やラーレをはじめとする複数人が所属している。正式名称は「国際連邦科学情報局」。未来路達が務めているのはESPの研究機関で、強力な超能力者は能力が枯れるまで利用され続けるともいわれている。能力の強さによってランク分けされているが、詳細は不明。EXBなど、人工的に超能力者を作り出す研究も行っている。
場所
東京タワー (とうきょうたわー)
小林輪が小学2年生の頃、月基地の遠隔操作装置を設置した場所。月基地組の前世である七人が生前に設定したキィ・ワードを設定順に入力する事で月基地を起動させる事ができる。裏ヘンルーカは輪の夢の中で、「お前が使わないなら私が使ってやる」と発言している。
富士山近くにある神社 (ふじさんちかくにあるじんじゃ)
すず子が常勤の宮司をしている神社。富士山にほど近い村に存在する。オイの棲み家でもあり、歴代の宮司はオイを託宣をする不思議な猫として大切に扱ってきた。奥へ入っていくと樹海につながっている禁足地があり、巨大な桜の木がご神木として立っている。その下には地下空間があり、そこを下るとアリス=マリー=アースが祀られた社が建っている。
楽園 (ぱらだいす)
木蓮達の棲んでいた星に存在した、キチェ=サージャリアンの保護施設。男性と女性で完全に居住区が分けられているが、抜け道が存在する事をかつてロジオンが木蓮に教えていた。楽園内において、キチェ=サージャリアン達は基本的に裸で生活している。黒い森と呼ばれる場所が存在し、キサナドの一つである黒聖歌を覚えるために必ず入らなければならないとされる。
黒い森 (くろいもり)
楽園内にある、瘴気に包まれた森。内部ではキサナドの一つである黒聖歌が流れ続けており、中に入るといつの間にか暗唱できるようになっている。またこの森はいつ、どのキチェ=サージャリアンが入ったのか記憶しているとされ、森の外で歌った者が現れた場合は、夢の中にまで浸食して来るといわれている。
月基地 (つききち)
月基地組の前世である、異星人の男女七名が地球を監視していた月面基地。地球外の文明で製造された兵器なども存在しているとされる。内部には異星で神として崇められている「サージャリム」を祀る祭壇があり、以前木蓮はその前でキサナドを歌った事がある。その際、植物を成長させる能力を持つキチェ=サージャリアンの歌であるにもかかわらず、すぐに植物が成長しなかった事を挙げて、土橋大介は、この祭壇になにか秘密があるのではないかと推論している。
イベント・出来事
生と死の境 (せいとしのさかい)
4年前に小林輪が瀕死に陥り、輪の精神と共に小林蓮と、生まれる前の小林地球子が訪れた精神空間、およびそこで起こった出来事。輪と紫苑、小林亜梨子と木蓮が同化していくきっかけとなった。この時、蓮の前世がロジオンである事や、ピラミッドが輪の生死に深くかかわるものである事などが判明した。
その他キーワード
ピラミッド
小林輪が薬師丸未来路のために製作したピラミッド型の機械。内部には月基地組の七人のESP(「サーチェス」)データと未来路のESPデータ、マイクロデータチップ入りの錠剤が収められている。錠剤を服用すると、未来路のESPが枯れたように偽装でき、EPIAを円満退職、未来路は薬師丸日路子と暮らせるようになるはずだった。 しかしこのピラミッドを使用する事で輪が死亡する未来に繋がる事が発覚し、輪が手元で保管していた。しかし充分な説明がないまま約束を破棄された日路子の手によって投げ捨てられ、EPIAが管理していた。その後、裏ヘンルーカがEPIAから脱走時に盗難されている。
キチェ=サージャリアン
異星において、神「サージャリム」の御使いとされる超能力者。キチェ=サージャリアンには例外なく、額に「キチェ」と呼ばれる四つ葉の徴がある。植物と会話する事ができ、歌う事で植物を急激に成長させる事ができる。異星においてはキチェ=サージャリアンは楽園で保護、養育され、キサナドを教え込まれる。男性のキチェ=サージャリアンは短命で知られている。 性行為によってその資格と能力を失い、「キチェ」も消えるため、楽園での男女の生活圏は分けられている。しかし、抜け道が存在する事をかつてロジオンが木蓮に教えていた。木蓮だけはなぜか、性行為のあとでもキチェが消えていなかったため、小林亜梨子もまた二児出産後も、キチェ=サージャリアンとしての能力を有している。 地球では小林蓮、亜梨子がキチェ=サージャリアンであり、能力が発動する時に限り、額にキチェが浮かび上がる。短縮して「キチェス」とも呼ばれ、オイには発音の難しさから「きてさん」と呼ばれている。
キサナド
神「サージャリム」を讃える聖歌。キチェ=サージャリアンが楽園で学習するもので、キチェ=サージャリアンの持っている植物の成長を促す能力を、さらに高める効果を持っている。全部で318章ある。
黒聖歌 (くろせいか)
キサナドの第49章にあたる聖歌。ほかのキサナドとはまったく違う効果を持っており、この黒聖歌を歌うと、植物は枯れたようになり、深い眠りについてしまう。キチェ=サージャリアンの最高機密ともいわれており、黒い森の中に入る事で学習できる。
キィ・ワード (きぃわーど)
月基地において、月基地組の前世の七人が各自設定した任意のパスワード。このキィ・ワードを設定順に入力する事で月基地を起動させられる。本来は設定した本人以外に教え合う事を禁じられていたが、小学2年生の頃、東京タワーから月基地を遠隔操作しようとした小林輪によって一度集められた。現在は裏ヘンルーカが月基地組の夢の中に入り込んで集めており、その際には「パスワード」と表現している。
EXB (えくすとらべびー)
EPIA内の特殊な方法で誕生した子供達の総称。人工的に作り出された超能力者。借り腹もない完全な試験管ベイビーであるため、同じEXB同士は互いを家族として大切に思い合っている。
ESP
超能力の別称。EPIAをはじめとする地球の超能力者達は「ESP」と称しているが、月基地組など異星に関連している人間は、神「サージャリム」の恵みという意味を込めて「サーチェス」と呼ぶ。ESPとサーチェスは、能力こそ非常に似ているものの実は波長がまったく逆となっている。小林輪はサーチェスの波長で薬師丸未来路のESP波長を相殺し、未来路の能力が枯渇したように偽装できるのではないかと考え、ピラミッドを製作した。
前作
ぼくの地球を守って (ぼくのちきゅうをまもって)
日渡早紀の代表作。記憶鮮明シリーズの東京編。自分の前世を思い出した坂口亜梨子たちが、前世の因縁を巡って葛藤する様子を描いたSF作品。 関連ページ:ぼくの地球を守って
ボクを包む月の光 -ぼく地球次世代編- (ぼくをつつむつきのひかり ぼくたまじせたいへん)
ごく普通の少年が、両親から前世の記憶と超能力を受け継いだことで、様々な困難に巻き込まれながらも成長していく姿を描く。日渡早紀による漫画作品『ぼくの地球を守って』の続編。 関連ページ:ボクを包む月の光 -ぼく地球次世代編-
書誌情報
ぼくは地球と歌う 「ぼく地球」次世代編II 9巻 白泉社〈花とゆめコミックス〉
第1巻
(2016-02-19発行、 978-4592214816)
第8巻
(2023-02-03発行、 978-4592214885)
第9巻
(2024-07-05発行、 978-4592214892)