概要・あらすじ
たおれ荘で暮らしている小さな女の子靖子(ヤッコ)は、天使がビッコの子犬に宿るという童話を聞いて、インチキ露天商からビッコの子犬を買う。子犬に望みをかなえてもらうため、たおれ荘の住人たちから、それぞれの願いを聞いて回るヤッコ。大家から立ち退きを迫られていることを筆頭に、住人たちの悩みはそれぞれ。
ヤッコ自身も願いがあり、それは外国に仕事に行っているという父親に会いたいということだった。
登場人物・キャラクター
靖子 (やすこ)
4歳くらいの女の子。髪を頭の横2ヶ所でリボンで結んでいる。母一人子一人でアパートたおれ荘で暮らしている。父は仕事で外国に行っていると聞かされているが、実は殺人を犯した指名手配犯である。幼稚園には行っていない。鳩を見つけては捕まえようとするが、失敗ばかりしていた。たおれ荘で暮らす童話作家志望の先生から、天使が死にかけのビッコの子犬に宿るという話を聞いて、インチキ露天商からビッコの子犬を30円で買う。 たおれ荘に住むみんなの願いを天使に叶えてもらおうとする。ヤッコ自身は父親に帰ってきてほしいと願いを告げた。だが、天使は病気になり、なかなか治らない。そんな中、先生たちと原田のボクシング観戦に行ったが、願いの1つであった原田の勝利は叶わず、ヤッコは「うそつき」と天使にあたる。 その頃、ヤッコの父が家を訪ねてきて、そのまま逃亡。実は父娘は、一度だけ、それと知らずに出合ってはいた。そして、ヤッコが帰るとそこに天使の姿はなかった。
天使
『あかんべえ天使』に登場する子犬。右後ろ足がビッコ。インチキ露天商が拾ってきた野良犬だった。靖子(ヤッコ)は、「大きくなったら5000円くらいで売れるかもしれない、血統書付きの名犬が30円」だと説明された。やきいものおばちゃんに止められ、一度は諦めたヤッコだったが先生の話を聞いて、子犬のことを天使だと思って購入。 天使ちゃんと呼ばれる。いつもヤッコと一緒で、彼女の話を向かい合って聴くことが多い。くしゃみしはじめると、すぐに寝込んでしまう。ヤッコが留守の日、母の靖江は天使が寝床で静かになったことに気付く。
靖江 (やすえ)
靖子(ヤッコ)の母。母一人子一人でたおれ荘に暮らしている。夫が指名手配中の殺人犯であることを、靖子には隠している。このことは先生など数人が知っているらしい。昼は仕事に出ていて、ヤッコの世話は先生たちたおれ荘の住人に頼んでいる。夫の昔の仲間たちがたおれ荘周辺に現れて不安を感じていた。 その仲間たちに追われるようになった夫が、ヤッコたちがボクシング観戦に行った日に現れる。ヤッコには会わせないと告げると、夫は窓から逃亡。その後を仲間たちが追い、数発の銃声が聞こえた。しばらく泣いた後、天使の寝床が静かになっていることに気付く。
先生 (せんせい)
丸メガネと口髭の老人。童話作家志望で出版社に持ち込みにも行っているが成果は出ていない。靖子(ヤッコ)に即興の創作童話を聞かせていて、びっこの子犬に天使が宿る物語もそうした一つ。ヤッコとその母の靖江の母子と一緒に食事をすることが多い。料理自慢で靖江が外で働いているため、夕食を担当している。 靖江と夫の事情を知っているなど、たおれ荘の相談役。大げさな詩的な比喩表現をすることがが多い。
登美 (とみ)
たおれ荘の住人で、姉の久美と二人暮らし。髪は腰まで届く長い1本の三つ編みにしている。中学生。靖子(ヤッコ)には姉のように接している。姉・久美の負担になっているではないかと感じている。
久美 (くみ)
たおれ荘の住人で、妹の登美と二人暮らし。髪は短めのポニーテール。夕方から働きに出ている。両親を亡くしてからの貧乏生活を脱するために、結婚相手は裕福でないと、と考えている。美人でいろいろな男に誘われてデートをしているが、原田のことが好き。ただ、原田のプロポーズは裕福でないために断っていた。 それでも彼のボクシングの試合を見て、原田との結婚を決意する。
原田 (はらだ)
朝、登美たちと玄関を出ていくシーンがあるためたおれ荘に住んでいると思われる。山内米店で働いている青年。久美が好きで結婚を申し込んだが、貧乏暮らしは嫌だと断られた。いいボクサーになって金を稼ごうとジムに通い出し、デビュー戦を迎える。観戦にきた久美の前での初試合はKO負け。 だが、思いは届き、久美はプロポーズを受けた。
ベース
たおれ荘の住人で、妻と二人暮らし。ヒゲを蓄えた青年。夫婦揃ってバー勤めで、ベースを抱えて出勤している。アパートではサックスを吹いていることもある。父の仕事を継ぐのが嫌で、妻との結婚も反対されたため、家出をしてたおれ荘に落ち着いたという。その父が病気で倒れたため、探偵を雇った妹に居場所を突き止められてしまった。 妹の説得を受けて実家に帰ることにする。靖子(ヤッコ)たちがボクシング観戦に出かけた日、再び姿を現して靖江に一通の封筒を託した。
やきいものおばちゃん
たおれ荘の住人。屋台の焼き芋屋のおばあさん。鼻がサツマ芋のような形をしている。靖子(ヤッコ)を甘やかす先生に対して、ちょっとだけ厳しい。たおれ荘の住人には、いつもおまけをしている。神経痛で寝込んでいることがある。
学生 (がくせい)
たおれ荘の住人。頬がこけている黒ブチメガネの男。いつも詰め襟の学生服姿で本を手に、咳をしている。大家の立ち退き話など、難しい話に立ち会う役どころ。
場所
たおれ荘 (そう)
木造二階建てのオンボロアパート。玄関台所共同。大家は現在の住人を全員を立ち退かせようとしている。1ヶ月以内の立ち退きを迫る張り紙までした。