亡くなった娘に化けるタヌキ
すいかは山で暮らしていたタヌキだが、かつて人間に酷い目に遭わされたことから、人間をたくさん泣かせてやろうと復讐に燃えていた。そんな中、すいかは侵入した家に飾られていた写真を見て柚子に化ける。柚子は菜奈と浩平の娘だが、若くして亡くなっていた。二人はすいかがタヌキであることを知りつつ、化かされたふりをしたまま、久しぶりに家族として幸せな生活を送っていた。しかし、市役所に所属する化けアニマルの猫・きなこが、「嘘の子供制度」を三人に紹介したことを機に、形だけの家族関係が変化していく。
「嘘の子供制度」とは何か
「嘘の子供制度」とは法的に認められた制度で、化けアニマルの保護を第一目的としており、化けアニマルを戸籍上人間として登録し、人間の養親と法的な親子関係を結ばせる制度のこと。この制度を利用することは強制ではなく、養親となる人間と化けアニマルの意思が尊重される。だが、建前上は化けアニマルの保護を目的としているが、市役所職員の中にはこの制度を「遺族のための制度」と考えている者もいる。
優しくて、嬉しくて、悲しい物語
きなこから「嘘の子供制度」を紹介された菜奈と浩平、そしてすいかは、これまで化かし化かされていたふりをしていたことをやめ、すいかを1匹のタヌキと認識し、亡くなった娘の柚子とは別の存在として受け入れるようになる。亡くなった娘に再び出会えた両親の愛情に触れ、復讐心に燃えていたタヌキが二人と打ち解けていく様子に心洗われる。
登場人物・キャラクター
すいか
メスダヌキの化けアニマル。一人称は「俺」。菜奈と浩平の亡き娘、柚子に化けているが、つねにタヌキの尻尾が出ている。侵入した家に飾られていた写真の柚の姿に化け、菜奈の前に現れた。感動のあまり菜奈に強く抱きしめられ、その心地よい暖かさで眠ってしまいタヌキに戻ってしまう。菜奈にはすぐに正体がバレてしまうが、すいかは自分がタヌキであることがバレていないと思い込んでいる。当初は名前がなかったことから「ゆず」と呼ばれていたが、のちに「すいか」という名前を付けてもらった。昔人間に酷い目に遭わされたため復讐を誓っているが、詳細は不明。すいかの一挙手一投足に菜奈と浩平は娘を偲んで涙ぐみ、すいかもそんな二人を慕って、よく甘えている。難しいことを考えるのが苦手で、「嘘の子供制度」についてはよく理解していない。
菜奈 (なな)
幼くして亡くなった娘の柚子の母親で、浩平の妻。黒髪をうなじでまとめている。すいかが柚子と瓜二つの姿に化けて菜奈の前に現れると涙を流して喜び、強く抱きしめた。すぐにすいかがタヌキだと認識するものの追い出すことはせず、我が子同様にかわいがっている。柚子の好物だった唐揚げを作って食べさせると、そのあまりの美味しさにすいかは「世界一」の唐揚げと絶賛した。市役所職員の化けアニマルの猫、きなこが「嘘の子供制度」を紹介するためにやってきたことで、ようやく菜奈と浩平は「すいかと柚子は別個体である」ことを現実と実感して涙を流す。それ以降はすいかを一人の人間として尊重し、どう関係を築いていくかを考えるようになる。
書誌情報
嘘の子供 4巻 スクウェア・エニックス〈ガンガンコミックスJOKER〉
第1巻
(2023-03-22発行、 978-4757584792)
第2巻
(2023-07-22発行、 978-4757586734)
第3巻
(2023-11-21発行、 978-4757589063)
第4巻
(2024-07-22発行、 978-4757593107)