あやかしトライアングル

祭里とすずと妖

花奏すずは、幼い頃からふつうの人間には視（み）えない「妖(あやかし)」と触れ合うことができた。小学校の友達からは、気味が悪いと陰口を叩かれて敬遠されながらも、すずが人間嫌いにならずに済んだのは、同じく妖が視える幼なじみの少年、風巻祭里の存在のおかげだった。ところが中学に進学した頃から、祭里はすずに、妖にかかわらないようにと警告し、すずの近くにいる妖を追い払うようになる。祭里家は代々、人の世に害をなす妖を退治する「祓忍(はらいにん)」を生業としており、祭里が家業を継承したからだった。祓忍となった祭里は、修行と妖退治に日々明け暮れるようになる。最近は顔を合わせるとケンカばかりしていたが、お互い高校生となり、すずは祭里と男女としての仲を深めることに淡い期待を抱いている。そんなすずは、近所で見つけた猫の姿をした妖のシロガネを気に入り、かわいがっていた。しかしシロガネの正体は、400年も生きている妖の王であり、妖にとって極上の馳走とも呼べる「妖巫女(あやかしみこ)」であるすずを喰らおうと狙っていたのだ。祭里が祓忍を継ぎ、すずを妖から遠ざけるようになったのも、すずが妖巫女であることを知った祭里が彼女の身を守るためだったのだ。危機を察知した祭里はすずのもとへ駆けつけ、祖父の風巻清弦から受け取った巻物を使って、正体を現したシロガネの封印を試みる。だが、シロガネは封印を逃れるためと、祭里とすずがイチャイチャするのを阻止するため、秘術「性醒流転(せいせいるてん)」によって祭里を女の子の体に変貌させる。祭里はシロガネの封印には失敗するものの、シロガネの妖力を巻物に封じ込め、すずを守ることに成功する。女の子になってしまった祭里は、すずを守るために男を捨て、女の子として高校生活を始めることになるのだった。

波乱の学園生活

シロガネの秘術によって女の子の体にされてしまった風巻祭里は、女子高校生として花奏すずと共に高校生活を始めるが、シロガネは自らの妖力を封じ込められた巻物を祭里の手から取り戻そうと狙っていた。一方、祭里は男の体に戻るためには、シロガネに秘術を解いてもらう必要があった。しかし、シロガネに妖力を持たせると妖巫女(あやかしみこ)であるすずが危険なため、祭里は男を捨ててすずを守る覚悟を決めていた。だが、祭里が好きなすずは、祭里を男の体に戻すことをあきらめていなかった。そんな中、二人が入学した高校では、祓忍としても先輩である二ノ曲宗牙が祭里の入学を待ちかねていたが、入学して来た祭里が女の子になっていることに驚愕。女子耐性ゼロの宗牙は大いに戸惑いながらも、祓忍としてシロガネ退治に執念を燃やす。女の子になった祭里は、すずの中学時代からの友人、鳥羽弥生、月丘ルーシーともなかよくなり、高校生活を楽しんでいた。

人妖の襲撃

花奏すずは、男子生徒の日喰想介から呼び出される。想介は学園で人気のイケメンながら、その正体は人の残留思念の淀（よど）みから育った異魂から進化した、妖の最上位種、人妖で、妖巫女(あやかしみこ)のすずを喰らおうとしていた。すずを廃墟に拉致した想介は、風巻祭里がすずを救出しに来るのを待ち受ける。想介はすぐにはすずを喰らわず、祭里が殺されて恐怖と絶望に染まったすずが最高の食材となるのを狙っていたのだ。到着した祭里は忍法を使って想介を退治しようとするが、生命力である魄を喰われて倒れてしまう。愛する祭里の死を目の当たりにし、泣き崩れるすずは、妖(あやかし)にとっての至高の料理であった。その時、シロガネが倒れた祭里から巻物を奪って妖力を取り戻し、すずを守るために想介と戦う。それでも劣勢は否めず、窮地に陥ったところ、そこに男の体になってよみがえった祭里が現れてすずのことを救う。想介に喰われた魄は、シロガネによって体に付与された女の肉体を形作る一部だったのだ。そして祭里は、修行中にどうしても体得できなかった、風と調和して一体化する風巻流・祓忍法「無風陣」を繰り出し、さらに祓忍法「旋散華」による渾身の一撃を叩き込んで想介を打ち倒す。こうして、すずもシロガネも無事だったが、祭里にかけられた秘術「性醒流転(せいせいるてん)」の効果も復活し、祭里は再び女の子の体に戻るのだった。