概要・あらすじ
由緒正しき「大椿神社」を守る家系に生まれた椿美依子は、次期宮司という立場でありながら、まったく霊感がなく、人外のものを見ることも感じることもできなかった。そんなある日、美依子は友人の紫乃に頼まれて、学校一のイケメンである神楽の浮気体質を改善するために、お祓いを行うことになる。そして、なんだかわからないままに、美依子が偶然唱えた呪文によって、神楽は小さなお人形サイズになってしまう。
神楽は女性をエサにする最強妖魔、淫魔だったのだ。偶然とはいえ、最強の妖魔を封じた美依子は、強い力を持つ巫女として、さまざまな妖魔に狙われる存在となる。一方で、美依子の呪文により、妖力ごと弱体化されてしまった神楽は、実は何の力も持たない美依子を妖魔から守る代わりに、自分をもとに戻すように求める。
淫魔は女性との触れ合いによって力を得るため、日々消費する妖力を美依子との触れ合いで補いながら、最強の淫魔と、力を持たない巫女の共同生活が始まる。
登場人物・キャラクター
椿 美依子 (つばき みいこ)
「大椿神社」の巫女を務める女子高生。何百年も続く由緒ある「大椿神社」を代々守る家系に生まれ、現在は43代目の次期宮司として修行中。この家系に生まれた者は、妖魔など、この世のものではない物を見る力を持っているのが通常。しかし、椿美依子にはその力はない。将来は父親の椿行徳のように、妖怪退治をこなせるような宮司になりたいと考えている。 友人の紫乃からの願いを受け、手近な女性に片っ端から手を出す学校一のイケメン・神楽に対して、適当なお祓いを行ったところ、偶然にも彼の正体である淫魔 を小型弱体化させることに成功。それ以降、神楽に触れると妖魔の姿が見えるようになり、妖魔退治ができるようになる。互いのために生活をともにするうちに、自分に対して次第に強くなる神楽の情熱を受け入れ始める。 しかし、神楽に愛されたいと願いながらも、なかなか素直になれないでいる。
神楽 (かぐら)
椿美依子や紫乃の同級生の男子生徒。その正体は妖魔最強を自称する淫魔。美依子のお祓いによって、小型弱体化されてしまう。そして美依子や彼女の家族、美依子の飼うハムスターと生活をともにすることになる。普段は人形のような小さな姿をしているが、呪文によって、もとの姿に戻ることもできる。ただし、そのためには妖力を消耗してしまう。 夜は美依子の夢の中に入り込み、美依子の潜在意識とエッチなことをして妖力を得ている。次第に美依子を愛し始めるが、美依子の態度がいつまでもつれないので、不満を抱いている。普段着ている服は、美依子か母さんの手作りであり、妙にラブリーなものばかり。
紫乃 (しの)
椿美依子の友人の女子生徒。自分の彼氏である神楽が、自分以外の女子生徒に片っ端から手を出し、浮気していることを知る。その人間離れした性欲を、霊のせいではないかと疑って、巫女である美依子に相談に訪れる。
華鳥 (かとり)
男性の姿をした淫魔。かぐわしい匂いで相手を憑り込む「ホレ媚香」を使い、人を操るのが常套手段。神楽を封じ込めた椿美依子の力に惚れ込み、その力を手に入れるため、彼女の学校に生徒としてやって来る。
椿 行徳 (つばき ぎょうとく)
「大椿神社」の宮司であり、椿美依子の父親。妖魔の姿を見ることができるため、神社の宮司としての仕事よりも、妖魔退治やお祓いの仕事の方が多い。淫魔はすべて悪さしかしない化け物として、祓い清めるべきと考えていた。しかし、美依子からの願いを聞き入れ、神楽を清めずに生活をともにすることになる。以降、妻である母さんと一緒になって、神楽を小動物のようにかわいがり、神楽のためにドールハウスを手作りする。
母さん (かあさん)
椿美依子の母親で、椿行徳の妻。鼻が良く利く体質で、匂いを嗅ぐことで妖魔の強さなど、その存在を認識することができる。行徳と一緒になって、淫魔である神楽を着せ替え人形のようにかわいがっている。小さなお人形サイズの衣装を手作りしたり、神楽にヒマワリの種を与えるなどしている。
山元 玉緒 (やまもと たまお)
椿美依子のクラスメイトの女子生徒。地味で控えめな眼鏡っ子。霊感がとても強く憑かれやすいため、知らない土地に行くと、むやみやたらと何者かを連れて帰って来てしまう、という厄介な体質。しかしそれを祓う力はなく、強い力を持つ美依子を頼って、修学旅行では行動をともにすることになる。
狐 (きつね)
ヤマタノオロチに化けて出てきた狐の妖魔。椿美依子たちの修学旅行先である「出雲大社」で出現。神楽によって成敗されるが、美依子の優しさに触れて改心。のちに耳としっぽの付いた青年の姿となって美依子の前に現れ、美依子に交際を申し込む。
醜斗 (しゅうと)
妖魔界一美しいと言われる瑠璃の兄。自身の姿は一つ目で醜く、妖力は貧弱で、コンプレックスを抱えている。捕らわれてしまった大切な妹を助けるため、常盤秋人に入り込み、椿美依子の力を我が物にしようと画策する。
瑠璃 (るり)
醜斗の妹で、妖魔界一美しいと言われている女性の妖魔。今はその美しさゆえ、妖魔の妖術によって、永遠に美しい姿のままのオブジェにされ、捕らわれの身となっている。外見は醜くとも、心が美しく優しい兄が大好き。
常盤 秋人 (ときわ あきと)
椿美依子が通う学校で生徒会長を務める男子生徒。特に女子生徒から絶大な人気を誇る、優しくて誠実なイケメン。校内で美依子に近づく術を窺っていた醜斗に体の中に入り込まれ、自分の意識のない状態で操られてしまう。
山吹 颯 (やまぶき そう)
安倍晴明の生まれ変わりとも言われる陰陽師の青年。甘いルックスをしている。悪霊に対するドSぶりと、悪霊を祓った後の爽やかな笑顔とのギャップが、女性からの支持を得て、今やアイドルやタレントを凌ぐ人気者となっている。以前、椿行徳の弟子になりたいと、椿家に何度も訪れていた。しかし、行徳は弟子を取らない主義だったため願いは叶わず、「大椿神社」にアルバイトとして入ったことがあった。 その頃に行徳と交わした約束を果たすため、再び「大椿神社」に姿を現す。
白神楽 (ぴゅあかぐら)
妖魔の力をすべて封じられた状態の神楽の姿。妖力も、淫魔としての能力も、椿美依子の記憶もすべて失くし、ただの人間のような状態となった。1人の男として山吹颯と勝負するために、神楽が自ら望んで山吹に力を封じさせた結果の状態。
深雪 (みゆき)
雪や氷を操る妖魔で、超美形の雪男。妖魔界で神楽がばら撒いた、妖魔たちを挑発するようなチラシを見て、暇つぶしに力試しをしてみたくなり、神楽と椿美依子のもとを訪れた。雪に閉ざされた世界しか知らないため、色鮮やかな花畑に憧れを抱いている。ところが、触れたものをすべて凍らせてしまうため、一輪の花にすら触れることができない、という悲しい運命を持っている。
桃太 (ももた)
椿美依子が旅行先の温泉で拾った赤ん坊。流れてきた大きな桃の中から生まれた、おかっぱ頭に腹掛けをした金太郎のような子供。神楽のおっぱいから妖力を吸って、あっという間に大きく美しい青年に育った。月から迎えの者が来るといったように、さまざまな昔話の要素をはらんだ存在。美しい桃太の噂は女性の間で広がり、彼を一目見ようと、「大椿神社」にたくさんの参拝客が集まった。
おやじ
神楽の父親で、神楽に負けず劣らずの美形の淫魔。息子が淫魔であるプライドを失くし、人間の巫女にうつつを抜かしているという噂を聞きつけ、真実を確かめるため「大椿神社」を訪れる。いつまでも椿美依子を抱かず、力を得ようとしない神楽に警告を与える。
麻地 輝子 (あさじ てるこ)
アパートの大家の女性。アパートは、椿美依子と神楽が2人で暮らすために借りたもの。アパートの部屋で幽霊が騒ぐため、いろいろな人に除霊を頼んだが効果がなく、借主が決まらないことに困っている。神楽にその様子が見えていることを知り、助けを求める。
座敷童 (ざしきわらし)
小さな子供の姿をした妖魔。昔、自分が住みついていた旅館を出ようとしたとき、それをひきとめようとした主人が呼んだ祈禱師によって、力を封印されてしまった。それ以降、人を幸せにする力を失っただけでなく、悪い気を集めて人を怖がらせる、などの悪行を続けている。
神崎 (かんざき)
椿美依子のアルバイト先の飲食店でマネージャーを務める男性。優しいイケメンだが、美依子に気があり、チャンスを窺っては、おでこにキスをするなど、何かと迫って来る。美依子が彼氏とケンカしているらしいと見て、交際を申し込む。
ララ
アイドルタレントの女性。小さくなって行き倒れていた神楽を拾った。芸能界でやっていきたいという強い願望を持っていたが、無意識のうちに枕営業を行うようになっており、そのことに悩みを抱えている。それは、ララの中に棲みついた淫魔のムラサキが原因となっている。
ムラサキ
醜い女性の姿をした、強い力を持つ淫魔。ララの芸能界に対する強い執着と欲望に引き寄せられ、彼女に取り憑いている。ララの意識のないところで彼女の体を利用し、複数の男性とエッチすることにより、自らの力を満たしている。
谷口 浩二 (たにぐち こうじ)
「集英建設」で現場の責任者を務める男性。大規模マンションの建設予定地にある桜の木を切ろうとすると、作業員に不幸が続いて起こるため、椿美依子と神楽に、桜の木を切ってほしいと依頼する。
須桜 (すおう)
壮年男性の姿をした桜の木の精霊。桜の木は大規模マンションの建設予定地にあり、今にも切られようとしている。鈴花が幼い頃から自分を慕って、会いに来てくれることをとても嬉しく思っていた。しかし、鈴花が成長するにつれて須桜の姿を見ることができなくなっていったため、現在は意思疎通が図れていない。人間が須桜の桜の木の存在を忘れていることを寂しく感じている。
鈴花 (すずか)
桜の木の精霊・須桜を守ろうとしている女子中学生。幼い頃から桜の木に親しみ、須桜を慕っている。しかし、幼い頃は見えていた須桜の姿が、成長するにつれ見えなくなってしまったため、心を痛めている。
綾香 (あやか)
鈴花の母親。仕事に追われる忙しい毎日を送っており、精神的に余裕がない状態が続いている。そのため、鈴花が桜の木の話をしようとしても聞く耳を持たない。彼女にも幼い頃は須桜の姿が見えていた。しかし、それを理由にいじめに遭ったため、心を閉ざしていた。
桐生 容子 (きりゅう ようこ)
「貴龍神社」の巫女を務める女性。椿美依子にそっくりだが、巫女として強力な力を持っている。道で倒れていた神楽を淫魔と知って「貴龍神社」に連れ帰り、巫女としての自分の運命を断ち切りたいと考え、自分を抱くように願い出る。
その他キーワード
淫魔 (いんま)
妖魔界に住む強い妖力を持つ妖魔の一種で、エッチな種族。神楽やムラサキなどが該当する。人間の異性をエサとして、触れ合ったり、温もりをもらうことにより妖力を得ることができる。エッチをすれば、より強い力が得られる。また、巫女の生き血を飲めば、一時的ではあるものの、妖魔界最強の力を得ることができると言われている。寂しがり屋で、やきもちを焼くと、妖力を激しく消費してしまう。 綺麗で温かいものを好むため、妖魔界での淫魔の居住区は美しく、温かみのある場所となっている。